文字の大きさ
大
中
小
345 / 878
連載
マーファの日常⑤
いつものように、警備の人が、魔法陣のある小屋の扉を開けてくれる。
寒いなかお疲れ様です。
ビアンカが魔力を流し、15階にスキップ。
ボス部屋には冒険者パーティーが3つ並んでいたため、話し合い素通りすることになった。並んでいるパーティーに挨拶して、ボス部屋を素通り。そのまま羊部屋に向かう。こちらは1つのパーティーが並ぶ。最後尾に並ぶと、タイミングよくボス部屋が開く。中にいた冒険者パーティーのリーダーが、進む旨を伝えてきた。前に並んでいるパーティーもボス部屋に臨むそうで、復活時間を考えて約2時間待ちか。案の定、軽く運動するからと、ビアンカとルージュがノワールと仔達、晃太、鷹の目の皆さんを引き連れていく。ルージュが念のために光のリンゴを出してくれた。私はアイテムボックスから折り畳み椅子を取り出し、腰を降ろす。さ、魔力を流す訓練しよ。
しばらくして私の後ろに新たなパーティーが並び、ボス部屋復活。前のパーティーが入っていく。ぼちぼち呼び戻すかな。
「帰っておいでー」
…………………………………………
まっしぐらに走って来たのは元気や。
「わふわふっ」
尻尾をぶんぶん振って、私に飛びかかる。お、重かっ。ちょっと元気君、またまたサイズアップしたんやないっ、あぶぶぶ。後ろの冒険者パーティーがわぁぁぁ、みたいな悲鳴をあげてる。
「あ、大丈夫です。うちの従魔ですから」
そういうと、一斉に落ち着く。
軽やかな足取りでコハクも戻って来て、もふもふ。三人娘も戻って来たので、もふもふ、もふもふ、もふもふん。あははん、かわいか。元気は後ろの冒険者パーティーにご挨拶している。
「わあ、かわいいっ」
「ふわふわ~」
鼻がぐーん、と伸びる。それからすぐにビアンカとルージュ、ノワールに晃太、鷹の目の皆さんが帰ってくる。
水分補給と休憩をして、羊部屋が開く。中から冒険者パーティーがぞろぞろ出てくる。
「俺達はこれで出ますので」
「お疲れ様です。お気を付けて」
「ありがとうございます」
冒険者パーティーは丁寧に会釈して帰って行った。
しっかり休憩をして、1時間後、羊部屋復活。
ビアンカが開けて、まずは仔達が飛び込み、支援を受けた鷹の目の皆さんが続く。ビアンカとルージュは援護。ノワールは私と最後尾に再び並ぶ。
「ブヒヒンッ」
不服そうやねノワールや。
「落ち着き、次はノワール単独なんやからね」
さっきの休憩の間にそう決まった。
ほどなくして仔達と鷹の目の皆さん、晃太が出てくる。元気とコハクはまだいけそうだが、三人娘は疲れたようす。鷹の目の皆さんもね。近くのセーフティで休んでもらい、私とノワール、ビアンカとルージュで並ぶ。
『ユイ、今日はずっと羊相手なのですか?』
『明日は上に行くの?』
「そうやね。羊毛頼まれてるしね。出来るだけ手に入れて、持っていきたいけん」
2人とも顔に『つまらない』の文字が浮かぶ。もう、ちょっと我慢して。
それからその日、2回羊部屋に挑戦し、かなりの量の羊毛を手に入れた。属性のある羊毛も手に入ったしね。私達は他の冒険者の皆さんにばれないように、別の場所でルームを開けた。セーフティでキャンプする人達が心配してくれたけど。
「うちの従魔以上に強い魔物はいませんから、ここには。それに私達、場所取りますので、あっちで休みます」
と、ご挨拶して離れた。さて、ルームに入り、確認。
「晃太、属性のある羊毛はどれくらいある?」
「あー、火が36キロ、水が37キロ、土が19キロ、風が27キロ、光が8キロ、闇が26キロ」
「これでよかかね? でも、光属性が少なかね」
「うーん。前回の羊毛、あっという間に売れたって聞いたけん、もうちょい、いるんやない?」
ホークさんも交えて相談。もう2日、羊部屋に挑むことになる。
『ぶー』
『ぶー』
「ブヒヒンッ」
「はいはい。我慢して、夕御飯一品付けるけん」
『油淋鶏なのですっ』
『エビチリよっ』
「ブヒヒーンッ」
『『甘い苺』』
「はいはい」
さ、夕御飯の準備しよ。
それから、順調にボス部屋をちゅどん、ドカン、バキバキ。17階で出る山羊の毛も、需要があるとのことで、せっせと拾う。蛇の18階のボス部屋はスルーした。
上級者向けになると一気に冒険者の姿が見えなくなる。
19階の牛部屋の前には誰も並んでいないし、近くに冒険者パーティーもいない。ルーム、開け放題や。
早速牛肉手に入ったから、なんか作ろうかね。牛肉料理で私が作れるのはカレーかステーキとか、あ、オイスター炒めにしようかな。うーん。よし、ビアンカとルージュと仔達にはステーキ丼にしよっ。それにダンジョン入って一週間経ったし、今日はゆっくりしよう。私達はステーキと、刺身か豆腐でも付けようかな。アルコール解禁っ。野菜がないから、みつよしのI市特産野菜のサラダに付けよ。
「よしっ、作るよっ」
「「はーいっ」」
エマちゃんとテオ君がお手伝いしてくれる。お肉を切り分けてもらう。私はもやしを湯通して、刺身、刺身、よし、レッドツナにしよっ。
「晃太、レッドツナ出して、刺身にするよ」
「ん。わい、ブラックツナも食べたか」
「はいはい。分かった」
せっせと切って、お皿に並べる。
その間に、鷹の目の成人組は、ブラッシングに入ってくれる。
切ってもらった、たっぷりお肉を焼いて、と。白滝入りのご飯、湯通ししたもやしお肉を並べて、和風ステーキソースをかけて特大ステーキ丼の出来上がり。仔達の丼もノワールのご飯もオッケー。
私達の分も準備オッケー。アルコールオッケー。
「明日はゆっくり出発ですよー」
「「「「「「はーい」」」」」」
缶チューハイをぐびり。くうっ。ミゲル君もくううっ。相変わらず一気だね。サラダをぱくり、やはり伯父さんのサラダドレッシングは美味しい。ステーキもぱくり、うーん、柔らかい。ステーキソースのおかげで臭みが少ない。晃太は日本酒片手にせっせとブラックツナとレッドツナを食べている。ホークさんはステーキを食べ、チュアンさんは日本酒を大事に呑み、マデリーンさんはサラダをぱくぱく。ミゲル君は新たにビールを開けて、エマちゃんとテオ君はステーキ丼にして、せっせと食べている。ふう、美味しい。
『ユイ、足りないのです』
『足りないわ』
「それだけ食べて、まだ言うね」
『明日、走るのですぅ』
『お願いユイ~』
結構な大盛のステーキ丼なんやったけどね。必死に皿を咥えて訴えるし、仔達も大合唱だし、小さなステーキ丼にしてみた。
寒いなかお疲れ様です。
ビアンカが魔力を流し、15階にスキップ。
ボス部屋には冒険者パーティーが3つ並んでいたため、話し合い素通りすることになった。並んでいるパーティーに挨拶して、ボス部屋を素通り。そのまま羊部屋に向かう。こちらは1つのパーティーが並ぶ。最後尾に並ぶと、タイミングよくボス部屋が開く。中にいた冒険者パーティーのリーダーが、進む旨を伝えてきた。前に並んでいるパーティーもボス部屋に臨むそうで、復活時間を考えて約2時間待ちか。案の定、軽く運動するからと、ビアンカとルージュがノワールと仔達、晃太、鷹の目の皆さんを引き連れていく。ルージュが念のために光のリンゴを出してくれた。私はアイテムボックスから折り畳み椅子を取り出し、腰を降ろす。さ、魔力を流す訓練しよ。
しばらくして私の後ろに新たなパーティーが並び、ボス部屋復活。前のパーティーが入っていく。ぼちぼち呼び戻すかな。
「帰っておいでー」
…………………………………………
まっしぐらに走って来たのは元気や。
「わふわふっ」
尻尾をぶんぶん振って、私に飛びかかる。お、重かっ。ちょっと元気君、またまたサイズアップしたんやないっ、あぶぶぶ。後ろの冒険者パーティーがわぁぁぁ、みたいな悲鳴をあげてる。
「あ、大丈夫です。うちの従魔ですから」
そういうと、一斉に落ち着く。
軽やかな足取りでコハクも戻って来て、もふもふ。三人娘も戻って来たので、もふもふ、もふもふ、もふもふん。あははん、かわいか。元気は後ろの冒険者パーティーにご挨拶している。
「わあ、かわいいっ」
「ふわふわ~」
鼻がぐーん、と伸びる。それからすぐにビアンカとルージュ、ノワールに晃太、鷹の目の皆さんが帰ってくる。
水分補給と休憩をして、羊部屋が開く。中から冒険者パーティーがぞろぞろ出てくる。
「俺達はこれで出ますので」
「お疲れ様です。お気を付けて」
「ありがとうございます」
冒険者パーティーは丁寧に会釈して帰って行った。
しっかり休憩をして、1時間後、羊部屋復活。
ビアンカが開けて、まずは仔達が飛び込み、支援を受けた鷹の目の皆さんが続く。ビアンカとルージュは援護。ノワールは私と最後尾に再び並ぶ。
「ブヒヒンッ」
不服そうやねノワールや。
「落ち着き、次はノワール単独なんやからね」
さっきの休憩の間にそう決まった。
ほどなくして仔達と鷹の目の皆さん、晃太が出てくる。元気とコハクはまだいけそうだが、三人娘は疲れたようす。鷹の目の皆さんもね。近くのセーフティで休んでもらい、私とノワール、ビアンカとルージュで並ぶ。
『ユイ、今日はずっと羊相手なのですか?』
『明日は上に行くの?』
「そうやね。羊毛頼まれてるしね。出来るだけ手に入れて、持っていきたいけん」
2人とも顔に『つまらない』の文字が浮かぶ。もう、ちょっと我慢して。
それからその日、2回羊部屋に挑戦し、かなりの量の羊毛を手に入れた。属性のある羊毛も手に入ったしね。私達は他の冒険者の皆さんにばれないように、別の場所でルームを開けた。セーフティでキャンプする人達が心配してくれたけど。
「うちの従魔以上に強い魔物はいませんから、ここには。それに私達、場所取りますので、あっちで休みます」
と、ご挨拶して離れた。さて、ルームに入り、確認。
「晃太、属性のある羊毛はどれくらいある?」
「あー、火が36キロ、水が37キロ、土が19キロ、風が27キロ、光が8キロ、闇が26キロ」
「これでよかかね? でも、光属性が少なかね」
「うーん。前回の羊毛、あっという間に売れたって聞いたけん、もうちょい、いるんやない?」
ホークさんも交えて相談。もう2日、羊部屋に挑むことになる。
『ぶー』
『ぶー』
「ブヒヒンッ」
「はいはい。我慢して、夕御飯一品付けるけん」
『油淋鶏なのですっ』
『エビチリよっ』
「ブヒヒーンッ」
『『甘い苺』』
「はいはい」
さ、夕御飯の準備しよ。
それから、順調にボス部屋をちゅどん、ドカン、バキバキ。17階で出る山羊の毛も、需要があるとのことで、せっせと拾う。蛇の18階のボス部屋はスルーした。
上級者向けになると一気に冒険者の姿が見えなくなる。
19階の牛部屋の前には誰も並んでいないし、近くに冒険者パーティーもいない。ルーム、開け放題や。
早速牛肉手に入ったから、なんか作ろうかね。牛肉料理で私が作れるのはカレーかステーキとか、あ、オイスター炒めにしようかな。うーん。よし、ビアンカとルージュと仔達にはステーキ丼にしよっ。それにダンジョン入って一週間経ったし、今日はゆっくりしよう。私達はステーキと、刺身か豆腐でも付けようかな。アルコール解禁っ。野菜がないから、みつよしのI市特産野菜のサラダに付けよ。
「よしっ、作るよっ」
「「はーいっ」」
エマちゃんとテオ君がお手伝いしてくれる。お肉を切り分けてもらう。私はもやしを湯通して、刺身、刺身、よし、レッドツナにしよっ。
「晃太、レッドツナ出して、刺身にするよ」
「ん。わい、ブラックツナも食べたか」
「はいはい。分かった」
せっせと切って、お皿に並べる。
その間に、鷹の目の成人組は、ブラッシングに入ってくれる。
切ってもらった、たっぷりお肉を焼いて、と。白滝入りのご飯、湯通ししたもやしお肉を並べて、和風ステーキソースをかけて特大ステーキ丼の出来上がり。仔達の丼もノワールのご飯もオッケー。
私達の分も準備オッケー。アルコールオッケー。
「明日はゆっくり出発ですよー」
「「「「「「はーい」」」」」」
缶チューハイをぐびり。くうっ。ミゲル君もくううっ。相変わらず一気だね。サラダをぱくり、やはり伯父さんのサラダドレッシングは美味しい。ステーキもぱくり、うーん、柔らかい。ステーキソースのおかげで臭みが少ない。晃太は日本酒片手にせっせとブラックツナとレッドツナを食べている。ホークさんはステーキを食べ、チュアンさんは日本酒を大事に呑み、マデリーンさんはサラダをぱくぱく。ミゲル君は新たにビールを開けて、エマちゃんとテオ君はステーキ丼にして、せっせと食べている。ふう、美味しい。
『ユイ、足りないのです』
『足りないわ』
「それだけ食べて、まだ言うね」
『明日、走るのですぅ』
『お願いユイ~』
結構な大盛のステーキ丼なんやったけどね。必死に皿を咥えて訴えるし、仔達も大合唱だし、小さなステーキ丼にしてみた。
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。