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出発までの日々②
次の日、支度してパーティーハウスを出る。
なに着ていいか分からず、チュアンさんに聞くと、いつもの冒険者スタイルでオッケーだった。支度を整え、私は晃太、ホークさん、チュアンさん、ビアンカ、ルージュ、仔達で出掛ける。母は早速買い物に向かった。現地の新鮮野菜とかみたいそうだ。ミゲル君と御用聞きの冒険者さんが2名ついてくれた。パーティーハウスには父、花、マデリーンさん、エマちゃんとテオ君が残る。ノワールもいるし、ルージュの魔法のカーテンもあるから大丈夫やろ。
いつもの朝のお供えに、昨日のケーキを添えると無くなったから、無事にとどいたんやな。
パーティーハウスを出て、御用聞きの冒険者さんと修道院に向かう。面会時間は僅か10分だけ。短いなあ。出来れば自己紹介したいが、たった10分。なら、チュアンさんに使ってもらわんとね。大事な恩人との面会や、積る話もあるやろうし。帰りは教会に寄って、寄付しようと思っている。併設の孤児院あるからね。
考えていると無事に到着。途中途中で、ものすごく見られたけどね。時間かかるから御用聞きさんに帰ってもらおうとしたけど、職務ですからと、残ってくれた。
チュアンさんが受け付け窓口で手続きをする。同行する私も身分証を提示する。武器の携帯は許されないために提出。私はフライパンを出すが、必要ないですよ、と返された。武器なんですよ、これ。ぶー。チュアンさんは斧や槍、ショートソード、サブ・ウエポンのナイフや斧、槍。量が多いので全て晃太に預けることに。
『ユイ、本当に私達がついて行けないのですか?』
『心配だわ』
「大丈夫よ。チュアンさん、おるし」
『そうなのですが……………』
『まあいざとなれば、壁を破壊して』
「恐ろしい事言わんで。晃太、頼むばい」
「ん」
晃太はおねむモードのルリとクリスをもふもふしている。
『ねえね、どこいくの~』
「ヒスイちゃん、すぐに帰って来るからね~」
すり寄ってくるヒスイをもふん、として、私はチュアンさんに続いて小さなドアをくぐる。
中には白壁の古めの建物。なんだか、閑散としている。私は黙ったまま、チュアンさんに続いて建物の木製のドアを更にくぐる。中はきれいに清掃されているが、質素な感じがする。調度品が一切ない。まあ、そうなんだろうけど。
一室に通される。
ソファーとテーブルだけの部屋。
「すぐに、シスター・アモルが参りますので、お待ちください」
「はい」
とりあえずソファーに腰かけて待つ。堅かあ、ギルドの応接室のソファー、ふかふかなのに。
「チュアンさん」
回りが静かなので、小声でチュアンさんに聞く。
「何でしょう?」
「ここって静かですが、保護されている子供達どうしているんですか?」
全然子供の声が聞こえない。
「ああ。子供がいる区画は奥なんですよ。ここは修道院と外が接する為の場所です」
チュアンさんの説明が進む。
修道院は外界から切り離された場所。この白壁の古い建物は、外界からのお客さんとの面会や、商人との取引に使われている。実際に生活しているのは、私達が今いる建物よりも奥だそうだ。修道院の経営は、その修道院にいる人達の内職によるものだ。もちろん野菜や果物も育てているが、それだけではどうしても不足分が出る為、商人が介入する。なんでわざわざこんな面会のためだけの別館があるかは、奥の区画に侵入を防ぐためだ。
修道院にいる人は神に終生仕える人だけではない。チュアンさんのように保護された子供達には様々な事情がある。主に虐待から守るため。修道院は保護されたら未成年の場合出るのは成人してから。教会との違いは、改心したからと親が迎えにきても、絶対に渡さない。そしてアルブレンの石少年は、許可が出なければ出ることは叶わない。それから30過ぎた貴族女性。こちらは最近はめっきり数は減ったそうだ。皆、何かしらの資格を得て働き、自活することを選んでいる。それから問題を起こした貴族女性だ。犯罪奴隷までにはならないが、その貴族家に多大な迷惑をかけた女性。
「ユイさんに絡んだ女性貴族を覚えてますか?」
「はい」
「おそらく、彼女達の誰かは家の命令で修道院に入れられていますよ」
この家の場合、修道院に入れられる期間は決められる、時期が来たら出るのは可能。
次に貴族女性ではないが、修道院に多いのは、家庭内暴力から逃げてきた女性とその子供の保護だ。理不尽な要求をされてどうしようもなくなった女性達の保護。そして家族や親類を盾に犯罪に荷担させられた軽犯罪奴隷や、正当防衛的な人。こちらはしっかり吟味して保護、必要行政が介入する。
修道院が高い壁に囲まれているのが、なんとなく分かった。そういった人達を守るためなんやね。アノの北にある修道院には、マーファの騎馬隊が定期的に周囲を巡回し、怪しいのがいないかチェックしていると。そうだわなあ、DV夫やストーカーみたいなのから、守らんとね。カルーラの修道院は子供や女性の保護を行っているが、場所よっては問題児や、問題貴族女性だけを扱う場所もある。カルーラのような街中に修道院があるのは珍しく、後は首都くらいにしかない。他は街から少し離れた場所にあるそうだ。
「チュアンさんは、成人してから修道院出たんですか?」
「はい、私の場合はシスター・アモルの勧めがありまして」
チュアンさんは13歳から教会の戦闘部隊に所属。そのころから体格も成人男性並に良かったそうだ。戦闘部隊の人達はチュアンさんに成人したら、来ないか? と誘ってくれていた。
「私も、その方がいいかなって思っていましたが。シスター・アモルがせっかくだからと、新人を受けてくれる冒険者パーティーを探して交渉してくれました。それが先代のリーダーが率いる鷹の目だったんです」
息をつくチュアンさん。
「迷いましたが、あの時の決断が間違っていませんでした。よきリーダーに恵まれ、友にも恵まれました」
きっとホークさんの事ね。
コンコン
話を聞いていると、ノック音が。シスター・アモルさんやね。ソファーから立ち上がり待つ態勢に。
「はい」
『失礼します』
ドアから姿を現したのは、車椅子に乗ったシスター服の高齢女性。車椅子は中年のシスターが押している。車椅子の女性がシスター・アモルさんね。中年のシスターが、車椅子の車輪に車止めを置く。ブレーキないんやね。それが済んで、中年シスターは会釈、私達も会釈、チュアンさんと言葉少なく会話して退室。
改めてシスター・アモルと向き合う。年齢的には高齢者だ。左目は怪我をしていると聞いたから、フードは左目を覆うように調整され、右目は白内障特有で白く濁っている。深い皺が刻まれた顔には穏やかな笑みが浮かぶ。
「お久し振りです、シスター・アモル。チュアンです」
チュアンさんはシスター・アモルさんの前に膝をつく。
「お帰りなさい、チュアン」
優しい声で、差し出された手は、荒れてぼろぼろだ。そう言えば、首都の悪人面さんもそうやったなあ。その手を、ごついチュアンさんの手が包み込む。面会時間は短いので、2人は言葉を交わしていく。
「シスター・アモル。実は今日同行されている方がいます」
あ、私ね。
はい、手筈通りに自己紹介。あくまで同じパーティーメンバーって
風に。私はシスター・アモルの前に移動する。
「初めまして、ユイ・ミズサワです」
「まあ、新しい方ですね。初めてましてシスター・アモルです。チュアンがお世話になっております」
まるでお母さんみたいな感じや。それだけ、チュアンさんを大事に思っているんやね。
「こちらこそ、チュアンさんにはお世話になっています」
私の方に荒れた手を差し出すので、反射的にその手を包む。
「とても優しい声ですが、冒険者なんですか?」
「私は、補助員ですね」
役に立ってないよね。なんせビアンカとルージュの接待戦闘だし。そのビアンカとルージュの為の資格だし、鷹の目のパーティーメンバーってのは建前。チュアンさんが戦闘奴隷だと分かったら、シスター・アモルさんが心配するだろうからね。
「ふふふ」
ふわり、と笑うシスター・アモルさん。
「チュアン、相変わらず嘘が苦手ね。そして貴女も」
なに着ていいか分からず、チュアンさんに聞くと、いつもの冒険者スタイルでオッケーだった。支度を整え、私は晃太、ホークさん、チュアンさん、ビアンカ、ルージュ、仔達で出掛ける。母は早速買い物に向かった。現地の新鮮野菜とかみたいそうだ。ミゲル君と御用聞きの冒険者さんが2名ついてくれた。パーティーハウスには父、花、マデリーンさん、エマちゃんとテオ君が残る。ノワールもいるし、ルージュの魔法のカーテンもあるから大丈夫やろ。
いつもの朝のお供えに、昨日のケーキを添えると無くなったから、無事にとどいたんやな。
パーティーハウスを出て、御用聞きの冒険者さんと修道院に向かう。面会時間は僅か10分だけ。短いなあ。出来れば自己紹介したいが、たった10分。なら、チュアンさんに使ってもらわんとね。大事な恩人との面会や、積る話もあるやろうし。帰りは教会に寄って、寄付しようと思っている。併設の孤児院あるからね。
考えていると無事に到着。途中途中で、ものすごく見られたけどね。時間かかるから御用聞きさんに帰ってもらおうとしたけど、職務ですからと、残ってくれた。
チュアンさんが受け付け窓口で手続きをする。同行する私も身分証を提示する。武器の携帯は許されないために提出。私はフライパンを出すが、必要ないですよ、と返された。武器なんですよ、これ。ぶー。チュアンさんは斧や槍、ショートソード、サブ・ウエポンのナイフや斧、槍。量が多いので全て晃太に預けることに。
『ユイ、本当に私達がついて行けないのですか?』
『心配だわ』
「大丈夫よ。チュアンさん、おるし」
『そうなのですが……………』
『まあいざとなれば、壁を破壊して』
「恐ろしい事言わんで。晃太、頼むばい」
「ん」
晃太はおねむモードのルリとクリスをもふもふしている。
『ねえね、どこいくの~』
「ヒスイちゃん、すぐに帰って来るからね~」
すり寄ってくるヒスイをもふん、として、私はチュアンさんに続いて小さなドアをくぐる。
中には白壁の古めの建物。なんだか、閑散としている。私は黙ったまま、チュアンさんに続いて建物の木製のドアを更にくぐる。中はきれいに清掃されているが、質素な感じがする。調度品が一切ない。まあ、そうなんだろうけど。
一室に通される。
ソファーとテーブルだけの部屋。
「すぐに、シスター・アモルが参りますので、お待ちください」
「はい」
とりあえずソファーに腰かけて待つ。堅かあ、ギルドの応接室のソファー、ふかふかなのに。
「チュアンさん」
回りが静かなので、小声でチュアンさんに聞く。
「何でしょう?」
「ここって静かですが、保護されている子供達どうしているんですか?」
全然子供の声が聞こえない。
「ああ。子供がいる区画は奥なんですよ。ここは修道院と外が接する為の場所です」
チュアンさんの説明が進む。
修道院は外界から切り離された場所。この白壁の古い建物は、外界からのお客さんとの面会や、商人との取引に使われている。実際に生活しているのは、私達が今いる建物よりも奥だそうだ。修道院の経営は、その修道院にいる人達の内職によるものだ。もちろん野菜や果物も育てているが、それだけではどうしても不足分が出る為、商人が介入する。なんでわざわざこんな面会のためだけの別館があるかは、奥の区画に侵入を防ぐためだ。
修道院にいる人は神に終生仕える人だけではない。チュアンさんのように保護された子供達には様々な事情がある。主に虐待から守るため。修道院は保護されたら未成年の場合出るのは成人してから。教会との違いは、改心したからと親が迎えにきても、絶対に渡さない。そしてアルブレンの石少年は、許可が出なければ出ることは叶わない。それから30過ぎた貴族女性。こちらは最近はめっきり数は減ったそうだ。皆、何かしらの資格を得て働き、自活することを選んでいる。それから問題を起こした貴族女性だ。犯罪奴隷までにはならないが、その貴族家に多大な迷惑をかけた女性。
「ユイさんに絡んだ女性貴族を覚えてますか?」
「はい」
「おそらく、彼女達の誰かは家の命令で修道院に入れられていますよ」
この家の場合、修道院に入れられる期間は決められる、時期が来たら出るのは可能。
次に貴族女性ではないが、修道院に多いのは、家庭内暴力から逃げてきた女性とその子供の保護だ。理不尽な要求をされてどうしようもなくなった女性達の保護。そして家族や親類を盾に犯罪に荷担させられた軽犯罪奴隷や、正当防衛的な人。こちらはしっかり吟味して保護、必要行政が介入する。
修道院が高い壁に囲まれているのが、なんとなく分かった。そういった人達を守るためなんやね。アノの北にある修道院には、マーファの騎馬隊が定期的に周囲を巡回し、怪しいのがいないかチェックしていると。そうだわなあ、DV夫やストーカーみたいなのから、守らんとね。カルーラの修道院は子供や女性の保護を行っているが、場所よっては問題児や、問題貴族女性だけを扱う場所もある。カルーラのような街中に修道院があるのは珍しく、後は首都くらいにしかない。他は街から少し離れた場所にあるそうだ。
「チュアンさんは、成人してから修道院出たんですか?」
「はい、私の場合はシスター・アモルの勧めがありまして」
チュアンさんは13歳から教会の戦闘部隊に所属。そのころから体格も成人男性並に良かったそうだ。戦闘部隊の人達はチュアンさんに成人したら、来ないか? と誘ってくれていた。
「私も、その方がいいかなって思っていましたが。シスター・アモルがせっかくだからと、新人を受けてくれる冒険者パーティーを探して交渉してくれました。それが先代のリーダーが率いる鷹の目だったんです」
息をつくチュアンさん。
「迷いましたが、あの時の決断が間違っていませんでした。よきリーダーに恵まれ、友にも恵まれました」
きっとホークさんの事ね。
コンコン
話を聞いていると、ノック音が。シスター・アモルさんやね。ソファーから立ち上がり待つ態勢に。
「はい」
『失礼します』
ドアから姿を現したのは、車椅子に乗ったシスター服の高齢女性。車椅子は中年のシスターが押している。車椅子の女性がシスター・アモルさんね。中年のシスターが、車椅子の車輪に車止めを置く。ブレーキないんやね。それが済んで、中年シスターは会釈、私達も会釈、チュアンさんと言葉少なく会話して退室。
改めてシスター・アモルと向き合う。年齢的には高齢者だ。左目は怪我をしていると聞いたから、フードは左目を覆うように調整され、右目は白内障特有で白く濁っている。深い皺が刻まれた顔には穏やかな笑みが浮かぶ。
「お久し振りです、シスター・アモル。チュアンです」
チュアンさんはシスター・アモルさんの前に膝をつく。
「お帰りなさい、チュアン」
優しい声で、差し出された手は、荒れてぼろぼろだ。そう言えば、首都の悪人面さんもそうやったなあ。その手を、ごついチュアンさんの手が包み込む。面会時間は短いので、2人は言葉を交わしていく。
「シスター・アモル。実は今日同行されている方がいます」
あ、私ね。
はい、手筈通りに自己紹介。あくまで同じパーティーメンバーって
風に。私はシスター・アモルの前に移動する。
「初めまして、ユイ・ミズサワです」
「まあ、新しい方ですね。初めてましてシスター・アモルです。チュアンがお世話になっております」
まるでお母さんみたいな感じや。それだけ、チュアンさんを大事に思っているんやね。
「こちらこそ、チュアンさんにはお世話になっています」
私の方に荒れた手を差し出すので、反射的にその手を包む。
「とても優しい声ですが、冒険者なんですか?」
「私は、補助員ですね」
役に立ってないよね。なんせビアンカとルージュの接待戦闘だし。そのビアンカとルージュの為の資格だし、鷹の目のパーティーメンバーってのは建前。チュアンさんが戦闘奴隷だと分かったら、シスター・アモルさんが心配するだろうからね。
「ふふふ」
ふわり、と笑うシスター・アモルさん。
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