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連載
出発までの日々③
ふふふ、と笑うシスター・アモルさん。
「チュアンは嘘をつくと、ちょっと声のトーンが上がるのは、変わらないわね。貴女も、ミズサワさんも手が僅かに強ばりましたわ」
そうなの? チュアンさんの声のトーン、変わった感じはなかったけど。私、そんなに力んだつもりないけど。
「目が悪いと、別の感覚で補うようになってしまいますのよ」
「そ、そうなんですか」
私はそう答えるしかない。ど、どうしよう、なんて言おう。私はチュアンさんを戦闘奴隷としてパーティーごと購入しましたなんて言えない。
「あの、シスター・アモル。実は」
チュアンさんは一瞬考えて、私に戦闘奴隷として購入されたことを伝える。
「シスター・アモル。私達はあのままでいたらバラバラに売られたでしょう。友のホークも、エマも、ミゲルも、ユイさんが救ってくれた。私に後悔はありません。ユイさんの元で、パーティーメンバーと共に、許される限りユイさんに仕えたいと思っています」
はっきりと告げるチュアンさんに、シスター・アモルさんは優しく見守っている。
「チュアン、貴方の決意、感じました。経緯はどうあれ、ミズサワ様に、チュアンの窮地を救い上げて頂き、感謝申し上げます」
「いいえ。チュアンさんにはお世話になってばかりです」
コンコン
振り返るとあの車椅子を押してきた中年シスター。
え、もう時間? チュアンさんがシスター・アモルさんの前より立ち上がる。やっぱり時間なんや。
「チュアンさん、ポーションば」
「はい。ユイさん」
マジックバッグから例の蛇のポーションと鮫のサプリメントを取り出す。
「シスター・アモル。これは目に効果があるポーションです。こちらは関節に効果があります、内服の仕方は」
チュアンさんがダワーから書いた説明を繰り返す。だけど、シスター・アモルさんは不安そう。
「これは、高級品ではありませんか。私には勿体ないものです」
「シスター・アモルさん。これはチュアンさんが働いた対価です。彼の功績なんですよ」
「そうですシスター・アモル。これで少しでも貴女に元気になってほしいのです。私のように、シスター・アモルを必要としている子供達の為に」
「チュアン…………ありがとうチュアン、なんて優しい子。いいえ、貴方は昔から、優しい子。ミズサワ様、チュアンをお救いくださり、ありがとうございます」
コンコン
ええい、急かさんでよ。時間なんやろうけどさ。
「では、シスター・アモル。私達はこれで」
「チュアン。ミズサワ様に、始祖の神様のご加護を」
最後に、しっかりとチュアンさんはシスター・アモルさんの手を握りしめる。
私も挨拶して、チュアンさんの後に続き建物を出る。
「チュアンさん」
「はい」
「次の予約していきましょう」
「え? 今日ですか?」
「そうですよ。ちゃんとポーション効いたか見ないと。それにいざ出発したら何ヵ月も会えないんですよ。出来れば出発前に会いにこんと」
「ユイさん……………ありがとうございます」
最後のドアをくぐる。
『ねえね~』
『ねぇね~』
『ねーね~』
わ、と三人娘が寄ってくる。よしよし、もふもふ。
「姉ちゃん、どうやったね?」
「問題は、なかったかな? まあ、帰ってから話すよ。チュアンさん、予約を」
「はい」
窓口で面会予約をするチュアンさん。私も並ぶ。近くで昼寝していた元気が、窓口に割り込もうとして顔を出し、ひーっ、と悲鳴が。こらこらとビアンカがリードを引く。
無事に予約できた、次は三日後だ。その面会してから出発やね。
「ユイさん、本当にありがとうございます」
「いいんですよ。さ、次は孤児院ですね。チュアンさん場所分かります?」
「はい、もちろん」
ぞろぞろと移動する。少しあるいた場所に教会があり、孤児院はその奥にある。ただし孤児院に行くには教会を抜けなくてはならない。まずは教会にご挨拶に向かうことに。
入り口を掃除していた若い牧師さんとシスターさん達は、私達にびっくり。まあ、そうだよね、ビアンカもルージュもデカイし、仔達もデカイし。
私は努めて笑顔を浮かべる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
なんとか返事をしてくれた牧師さん。
「初めまして、私はテイマーのユイ・ミズサワと申します」
ペコリ。
「テイマー、あ、あのっ。ようこそわが教会へ」
掃除片手にペコリする牧師さん。シスターさん達もペコリ。しばらくして中年のシスターさんが慌てて出て来た。
「私が孤児院の院長をしております。シスター・カルモと申します」
「ユイ・ミズサワと申します。突然押し掛けて申し訳ありません。本日は孤児院への寄付に参りました」
「まあまあっ。ありがとうございます」
「孤児院を見せてもらえます?」
「はい、どうぞ」
シスター・カルモさんは私達を奥の孤児院へ案内してくれる。掃除していた牧師さんとシスターの1人が付いてきてくれる。
教会の横の狭い道を通る。
『狭いのですー』
『嫌だわ、引っ掛かるわ』
ビアンカとルージュがぷりぷり。特に毛並みの長いビアンカは、色々巻き込んでいる。後でとらんと。細い道を抜けて、開けた場所に出る。広い庭には畑が広がり、成長途中の野菜が並ぶ。その奥には古いがしっかりとした造りの建物。マーファの孤児院は、古くて危なそうだったけど、こちらは違う。歴史建造物みたいな。
「立派な建物ですね」
「はい。こちらは昔の領主の館なのです。なので元々の造りがしっかりしているんです。それに適宜修繕してもらっています」
修繕はボランティアだったり、修道院の人達が適宜してくれていると。
「テイマー様、どうぞこちらへ」
「はい」
私はホークさんと向かう。残りは外で待ってくれる。
「静かですね」
子供達の声がしない。
「今は手習いの時間ですから」
「そうですか」
授業中なのね。
院長室に案内される。ホークさんはソファーの後ろに待機。
促されて、私はソファーに腰かける。
「寄付の前にお聞きしたいことがありますが、よろしいですか?」
「はい」
私は孤児院の経営状況、子供達の数、孤児院の建物の不備はないか等を聞く。
「経営はなんとかやっています。先日のグーテオークションが好評で、資金がいつもより多いため今年は問題なく越せそうです。子供達はいま総勢56名です。不備はちょっとトイレと風呂場の調子が悪いだけで、こちらは先程騎士団から頂いた寄付で修繕できそうで」
騎士団からの寄付って、まさかポーション代? 仕事の早か。だが、こちらはあの頃のかつかつ経営のマーファの孤児院より、多少の余裕がありそう。
「そうですか。あの、こちら、私共よりの寄付です」
私は春祭りで購入した小銭入れを差し出す。大金貨が50枚入り、パンパンだ。
「まあ、ありがとうございますっ」
シスター・カルモが頭を必死に下げる。
「それから、確認したいことがありまして」
「はい」
「母がこちらの子供達に炊き出しをしたいと言っています。それから子供達に新しい服や靴の準備もしたいそうで、採寸の許可も頂きたいのですが」
「まあっ、まあっ、ありがとうございますっ、ありがとうございますっ。子供達もきっと喜びます」
「チュアンは嘘をつくと、ちょっと声のトーンが上がるのは、変わらないわね。貴女も、ミズサワさんも手が僅かに強ばりましたわ」
そうなの? チュアンさんの声のトーン、変わった感じはなかったけど。私、そんなに力んだつもりないけど。
「目が悪いと、別の感覚で補うようになってしまいますのよ」
「そ、そうなんですか」
私はそう答えるしかない。ど、どうしよう、なんて言おう。私はチュアンさんを戦闘奴隷としてパーティーごと購入しましたなんて言えない。
「あの、シスター・アモル。実は」
チュアンさんは一瞬考えて、私に戦闘奴隷として購入されたことを伝える。
「シスター・アモル。私達はあのままでいたらバラバラに売られたでしょう。友のホークも、エマも、ミゲルも、ユイさんが救ってくれた。私に後悔はありません。ユイさんの元で、パーティーメンバーと共に、許される限りユイさんに仕えたいと思っています」
はっきりと告げるチュアンさんに、シスター・アモルさんは優しく見守っている。
「チュアン、貴方の決意、感じました。経緯はどうあれ、ミズサワ様に、チュアンの窮地を救い上げて頂き、感謝申し上げます」
「いいえ。チュアンさんにはお世話になってばかりです」
コンコン
振り返るとあの車椅子を押してきた中年シスター。
え、もう時間? チュアンさんがシスター・アモルさんの前より立ち上がる。やっぱり時間なんや。
「チュアンさん、ポーションば」
「はい。ユイさん」
マジックバッグから例の蛇のポーションと鮫のサプリメントを取り出す。
「シスター・アモル。これは目に効果があるポーションです。こちらは関節に効果があります、内服の仕方は」
チュアンさんがダワーから書いた説明を繰り返す。だけど、シスター・アモルさんは不安そう。
「これは、高級品ではありませんか。私には勿体ないものです」
「シスター・アモルさん。これはチュアンさんが働いた対価です。彼の功績なんですよ」
「そうですシスター・アモル。これで少しでも貴女に元気になってほしいのです。私のように、シスター・アモルを必要としている子供達の為に」
「チュアン…………ありがとうチュアン、なんて優しい子。いいえ、貴方は昔から、優しい子。ミズサワ様、チュアンをお救いくださり、ありがとうございます」
コンコン
ええい、急かさんでよ。時間なんやろうけどさ。
「では、シスター・アモル。私達はこれで」
「チュアン。ミズサワ様に、始祖の神様のご加護を」
最後に、しっかりとチュアンさんはシスター・アモルさんの手を握りしめる。
私も挨拶して、チュアンさんの後に続き建物を出る。
「チュアンさん」
「はい」
「次の予約していきましょう」
「え? 今日ですか?」
「そうですよ。ちゃんとポーション効いたか見ないと。それにいざ出発したら何ヵ月も会えないんですよ。出来れば出発前に会いにこんと」
「ユイさん……………ありがとうございます」
最後のドアをくぐる。
『ねえね~』
『ねぇね~』
『ねーね~』
わ、と三人娘が寄ってくる。よしよし、もふもふ。
「姉ちゃん、どうやったね?」
「問題は、なかったかな? まあ、帰ってから話すよ。チュアンさん、予約を」
「はい」
窓口で面会予約をするチュアンさん。私も並ぶ。近くで昼寝していた元気が、窓口に割り込もうとして顔を出し、ひーっ、と悲鳴が。こらこらとビアンカがリードを引く。
無事に予約できた、次は三日後だ。その面会してから出発やね。
「ユイさん、本当にありがとうございます」
「いいんですよ。さ、次は孤児院ですね。チュアンさん場所分かります?」
「はい、もちろん」
ぞろぞろと移動する。少しあるいた場所に教会があり、孤児院はその奥にある。ただし孤児院に行くには教会を抜けなくてはならない。まずは教会にご挨拶に向かうことに。
入り口を掃除していた若い牧師さんとシスターさん達は、私達にびっくり。まあ、そうだよね、ビアンカもルージュもデカイし、仔達もデカイし。
私は努めて笑顔を浮かべる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
なんとか返事をしてくれた牧師さん。
「初めまして、私はテイマーのユイ・ミズサワと申します」
ペコリ。
「テイマー、あ、あのっ。ようこそわが教会へ」
掃除片手にペコリする牧師さん。シスターさん達もペコリ。しばらくして中年のシスターさんが慌てて出て来た。
「私が孤児院の院長をしております。シスター・カルモと申します」
「ユイ・ミズサワと申します。突然押し掛けて申し訳ありません。本日は孤児院への寄付に参りました」
「まあまあっ。ありがとうございます」
「孤児院を見せてもらえます?」
「はい、どうぞ」
シスター・カルモさんは私達を奥の孤児院へ案内してくれる。掃除していた牧師さんとシスターの1人が付いてきてくれる。
教会の横の狭い道を通る。
『狭いのですー』
『嫌だわ、引っ掛かるわ』
ビアンカとルージュがぷりぷり。特に毛並みの長いビアンカは、色々巻き込んでいる。後でとらんと。細い道を抜けて、開けた場所に出る。広い庭には畑が広がり、成長途中の野菜が並ぶ。その奥には古いがしっかりとした造りの建物。マーファの孤児院は、古くて危なそうだったけど、こちらは違う。歴史建造物みたいな。
「立派な建物ですね」
「はい。こちらは昔の領主の館なのです。なので元々の造りがしっかりしているんです。それに適宜修繕してもらっています」
修繕はボランティアだったり、修道院の人達が適宜してくれていると。
「テイマー様、どうぞこちらへ」
「はい」
私はホークさんと向かう。残りは外で待ってくれる。
「静かですね」
子供達の声がしない。
「今は手習いの時間ですから」
「そうですか」
授業中なのね。
院長室に案内される。ホークさんはソファーの後ろに待機。
促されて、私はソファーに腰かける。
「寄付の前にお聞きしたいことがありますが、よろしいですか?」
「はい」
私は孤児院の経営状況、子供達の数、孤児院の建物の不備はないか等を聞く。
「経営はなんとかやっています。先日のグーテオークションが好評で、資金がいつもより多いため今年は問題なく越せそうです。子供達はいま総勢56名です。不備はちょっとトイレと風呂場の調子が悪いだけで、こちらは先程騎士団から頂いた寄付で修繕できそうで」
騎士団からの寄付って、まさかポーション代? 仕事の早か。だが、こちらはあの頃のかつかつ経営のマーファの孤児院より、多少の余裕がありそう。
「そうですか。あの、こちら、私共よりの寄付です」
私は春祭りで購入した小銭入れを差し出す。大金貨が50枚入り、パンパンだ。
「まあ、ありがとうございますっ」
シスター・カルモが頭を必死に下げる。
「それから、確認したいことがありまして」
「はい」
「母がこちらの子供達に炊き出しをしたいと言っています。それから子供達に新しい服や靴の準備もしたいそうで、採寸の許可も頂きたいのですが」
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