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連載
出発までの日々④
それからシスター・カルモさんと次に来る日を確認する。子供達の中にはどこかの工房に弟子入り、下働きとして行っている子もいる。その子達の採寸はお願いする。次に来るのは三日後、シスター・アモルさんとの面会後になる。子供達にアレルギーがないか聞いたが、1人卵がダメな子と、ナッツがダメな子がいる。メモっと。
さて、そろそろ今日は帰るかね。
シスター・カルモさんに付き添ってもらい、晃太達の待つ庭に出る。
楽しそうな、きゃーきゃー、悲鳴上がってるけど。
庭に出ると、元気が後ろ足で立ち上がり、尻尾ぷりぷりしながら、わんわん言ってる。リードはしっかりビアンカが咥えてびくともしないが、元気の視線の先には、窓にずらりと並んだ子供達。正に興味津々や。あー、もしかしたら、元気のわんわんで気がついて、授業どころやなくなったかな。なら、申し訳ない。
「すみません、授業のお邪魔をしまして」
私はシスター・カルモさんに謝罪。笑って許してくれた。
「さあ、皆、お勉強なさい」
パンパンと、手を叩くシスター・カルモさん。
すると、しぶしぶと、戻っていく子供達。
「さ、私達も帰ろうかね」
『また、あの狭い所なのですか?』
ビアンカがぶー。白い毛並みについた枝や葉は、晃太とチュアンさんが取り払ってくれているが、またあの道を通れば着くなあ。
『そうなのです、魔法で』
「やめて、根こそぎ伐採するきやろ」
狭い道には理由があるはず。だって地面はきちんと砂利が敷き詰められていたからね。
結局、狭い道を抜けて、教会方面に出る。
でもちょっと気になる事を聞く。
「緊急時の避難って、どうしているんですか? まさか、あの細い道だけ?」
「いいえ、孤児院と教会は中で繋がっているんです。後は、建物の向こう側は訓練場としての広場がありますので。向こうの方が出入口が大きいので、次はそちらからご案内しますね」
「そうなんですか」
大きい出入口あるけど、子供達は何故かあの細い道が好きだそうだ。まあ、探検気分になるのかね。
私はぷりぷり言うビアンカの毛並みに絡んだ葉を取り払い、挨拶してパーティーハウスに戻った。
「え? パーヴェルさんが?」
「そう。使いの人が来て、明日の14時って」
「時間はよかけど……………」
帰って来た私に、母がパーヴェルさんからの伝言を受けていた。例の『お願い』やろうけど。きっとホークさんの引き抜きやろうが、ピシャッと断らんと。ピシャッとね。明日は午前中にギルドだけだしね。それから、その日の午後はのんびり過ごす。ブラッシングは鷹の目の皆さんにお願いし、私と母は炊き出しの準備だ。首都のマルシェで購入した、ひよこ豆の具だくさんスープ。小さな子供でも食べやすいように、ひよこ豆サイズに他の野菜をカット。ニンジン、玉ねぎ、キャベツ、かしわ、セロリまで。セロリは匂いがダメな人がいるけど、小さく切って分からなくするし、大量には入れないと、母が。マーファの孤児院から貰ったドライハーブも少し入れて、味を整える。ちょっと味見したら、本当にセロリがわからない。
出来上がり、私は異世界への扉、もへじ生活でお買い物。まだサイズ聞いてないけど、ある程度数を手に入れる。余れば、保管して別の子供がそのサイズになれば、使ってもらえばいいしね。ホークさんが付き合ってくれて、大量に購入した。シャツにズボンに、スカート、ワンピース、靴に靴下、下着。文房具も入れて、と。あ、そうだ、粉ミルクと哺乳瓶。赤ちゃん用に使ってもらうためのナチュラルコットン生地と。せっせと通う。こんなもんかな。ふう、私の魔力がすっからかんや。後足りん分は後日やね。総出でタグを外し、ダイニングキッチン奥の倉庫代わりの部屋に運び込む。晃太がリストを作成する。
夕御飯前にお祈りしてみたが、やはりお返事なし、お忙しいんやね。寂しかなあ。気を取り直して、夕御飯は海鮮鍋にして、〆に雑炊、ああ、うまか。
次の日。
散歩散歩と訴える稼ぎ頭を宥めて、ギルドに向かう。仔達はパーティーハウスでお留守番。チュアンさんとマデリーンさん、エマちゃんとテオ君が残ってくれる。
直ぐに応接室に通され、ラソノさんからオルクにあった魔石の買取り金を貰う。
「確かに、受け取りました」
今回はハイ・オルクはいなかった。結構珍しいらしい。
それからカルーラの無料教室について聞く。こちらもなかなか通う子供が増えない事情もある。やはり、貧しい家庭になればなるほど、子供は労働力と考えている所がある。しかも今は大討伐やら、末のお姫様の輿入れ準備やらで、管理している領主様は大忙しだそうだ。マーファの給食システムは知っているが、なかなか予算や人員が揃わず手が出せないと。
ふっふっふっ。私には、お金がある。どやっ。
私が稼いでいないけど、うちの稼ぎ頭達が、せっせとダンジョンで稼いでくれているから、懐は常夏を通り越し、マグマ状態。ビアンカとルージュの許可もある。無料教室は子供達が少しでも将来、役に立つスキルを得て、夢を掴む為の後押しする場所と説明したら快諾してくれた。
『人が生きるには、色々あるのですね。私達が元気達に闘い方を教えるような場所なのですね』
『そうね。あと、小難しいルールを理解するためなのね』
ビアンカやルージュの様に、狩りをして食べたら生きられる事はない。もちろん自給自足で生きている人達もいるだろうけど。街中では、そうはいかない。物々交換で出来るのも限界がある。働き口だって、読み書き計算出来る出来ないで、選択肢が限られる。就きたい働き口に、就けるように助けになる。それに、文字が読めないで、書類作成が必要な場合、騙されないようにね。
「こちらはカルーラの無料教室の給食の支援金です」
さ、と出したのは春祭りで購入した小銭入れ。中身は白金貨5枚。
「こ、こんなに?」
「はい。どうぞ使ってください。ただ、人員に関しては私達では出来ませんが」
「ありがとうございます。必ず、担当者に渡します」
「よろしくお願いします」
よし、これでギルドはおしまい。
挨拶してギルドを後にする。
軽くお昼を済ませる。私と鷹の目の皆さんは蒼空のサンドウィッチ。晃太と両親はさくら庵の天麩羅蕎麦。ビアンカとルージュと仔達はてんこ盛りのサンドウィッチ。もりもり食べてる。
鯛のフライのサンドウィッチをぱくり。うーん、白身の旨味が広がる。スープも温かい。
「ユイさん、美味しいっ」
エマちゃんも鯛のフライのサンドウィッチだ。
「そう、しっかり食べりいよ」
「うんっ」
もりもり。
『足りないのです』
『ユイ、エビのはないの?』
「もう食べたんね?」
何人前食べたと思ってるんよ、母がオッケー出すわけなかった。
時間になり、ピシャッとパーヴェルさんが馬車でやってきた。レディ・ロストークは今回はお留守番かな。私達も支度は済んでる。念のために、パーカーさんに作って貰った紺色のワンピースだ。両親も晃太も失礼のないような格好してたけど。
「ミズサワ殿、本日は時間を作っていただきありがとうございます」
「い、いえ」
馬車から降りたパーヴェルさん。本日、あの鎧姿ではなく、まるで軍服のような格好。多分、正装かな? セザール様とは違う格好よさが溢れている。セザール様は正統派王子様、パーヴェルさんはワイルド系かな? 髪も後ろに撫で付ける様にして、先日とはイメージが違う。さんやなくて、様にせんとね。
どうぞとパーティーハウスにご案内。花がやっぱりけたたましく吠え、元気がパーヴェルさんに尻尾ぷりぷり飛びかかる。
すかさず母が必殺技、食パンを繰り出し、あっという間に誘導されていった。簡単やー。奥の方でルームを開けっ放しにしているから、中庭でミゲル君やエマちゃんとテオ君に託す。居間にはホークさんが待機、ルーム入り口でチュアンさんとマデリーンさんが待機。
着いてきた従者の皆さんは、外で待つそうだ。パーヴェルさん、いや、パーヴェル様は長居しませんと。
居間のソファーを勧める。マデリーンさんが予め準備していた、さくら庵の紅茶を出してくれる。
「で、お話とは?」
きっと、ホークさんよね。ここは名義上主人の私がピシャッとお断りせんと。
「はい。まどろっこしいのはなしで、お願いがあります」
来た来た。ピシャッと、ピシャッと。
「ミズサワ殿の魔法馬を、我が愛馬、レディ・ロストークのお相手に願えませんか?」
はい、お断り、を。え? え? え?
「は、ノ、ノワールを?」
「はい」
「何故に?」
「レディ・ロストークの気性の荒さはご存知ですか?」
「はい。ホークさんでも半年も調教に時間が必要としたと」
ノワールなんて、3日よ、3日。ぶひひん特急よ。
「今では私を乗せてくれていますがね。レディ・ロストークはその気性の荒さは、他の雄馬を寄せ付けません。みな、逃げてしまいます」
どんだけやねん。ホークさんにはハートマーク飛ばしていたやん。
「レディ・ロストークも出産するにはいい年齢ですし、気性が荒いとは言え優秀な魔法馬です。後継に繋ぎたいのです。現在、カルーラにいる雄馬では、彼女は納得しない。だが、ミズサワ殿の魔法馬には、自ら身体を寄せていました、いままでにないことです。おそらく、今後もないと思い、こうやってお願いに参りました」
「は、はあ」
つまり、あれよね。
ノワール、レディ・ロストークと、こう、パンパカパーン、みたいな有名な音楽付きで、真っ赤な絨毯進むの? え? タージェルさんの言ってた事に現実味が。パンパカパーン。
「えっと、具体的にどうなるんですか? えっと、ノワールがレディ・ロストークと結婚?」
と、どうなるの? そのまま、ノワール、ここで暮らすの? え? 困るし、どうしよう? よく分からん。
「違いますよユイさん。すみませんパーヴェル様、発言の許可を」
「構わない」
ホークさんが馬事情を話してくれる。
こちらは移動手段が限られている、人もそうだが、魔法馬もそうだ。なかなか別の街から移住なんてない。同じ街で生涯出ないなんてザラだ。それは魔法馬も一緒。つまり、血筋の近い同士で番になるが、あまり繰り返すと良くない。なので魔法馬の場合、私達のように旅の途中で寄った先で、お相手を願われる事がある。特にノワールは、進化までする優秀な戦車馬(チャリオット・ホース)だからね。今まで言われなかったのは、ノワールが私の契約している従魔と認識されていないからだ。ギルド所有と思われている。ビアンカとルージュ、仔達がどうしても目立つからね。数日間、一緒に過ごす。あつあつの数日間ね。それだけでも主人の私にパーヴェル様はお金を払わなくてはならないし、もしご懐妊・無事出産となれば、さらにお金の支払いだ。子馬の親権は、母馬の主人だって。
うーん、競走馬の馬主になった気分や。でもなあ、ノワールの子馬、みてみたいけどなあ。
パーヴェル様から金額を示されたけど、本当に馬主になった気分。
とりあえず、3日間で50万とな。それで上手くいかなければ、それまでだけど。パーヴェル様的には、レディ・ロストークの相手は、ノワール以外は考えられないそうだ。今まで、近くに雄馬を近付けさせなかったのに、初めて異性に興味を抱いているからと。
「どうでしょうか?」
「うーん……………」
競走馬の馬主の気持ち。うーん、分からん。だけど、子馬。きっとかわいかはず。見てみたいけど、うーん。
「ノワールの意志を確認してもいいですか?」
「それはもちろん」
ちょっと失礼して、倉庫で待機していたノワールの元に移動。
「ねえ、ノワール、実はね、レディ・ロストークさん覚えとる?」
「ブルブルッ」
『覚えていると言っているわ』
ルージュが通訳してくれる。
「そのレディ・ロストークさんとね」
ゴニョゴニョ、みたいな。ノワールは少し戸惑いの表情。
「ノワールが、嫌なら断るよ」
まあ、そりゃそうよね。まあ、人間の考えだけど。だが、ノワールは徐々に興奮。
「ブヒヒンッ、ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
『会ってみたいと言っているのです』
「ブヒヒーンッ」
『レディ・ロストークーッ、ですって』
「あ、そ。美女に弱いんやね」
ノワールも男の子やね。ブヒヒンッ、と興奮ノワールはなかなか収まらず。パーヴェル様とお話して、そのままノワールお持ち帰り。だけどノワールだけだと心配や。
「ユイさん、俺がノワールに付き添います。レディ・ロストークもよく知ってますし」
いや、あの、そのままパーヴェル様に引き抜かれないか心配なんやけど。そっとホークさんにその事を伝える。
「俺はユイさんの戦闘奴隷ですよ。パーヴェル様もよく分かっています。ですから、俺は引き抜きとかされませんよ」
「そうなんですか、良かった」
ほっ。
それからバタバタと準備。ホークさんとノワールのご飯出してくれると言ってくれたが、絶対に足りない。ノワールは普通の魔法馬の倍食べるからね。
私の時間停止のDサイズのマジックバッグに、ノワールの補助食、ニンジンやキャベツ、果物たっぷり。それからホークさんには波音の作りおきのおにぎり、蒼空のサンドウィッチを追加する。
「ブヒヒン、ブヒヒン」
『早く会いたいと言っているのです』
「ブヒヒーンッ」
『レディ・ロストークーッ、ですって』
「あ、そ」
ノワール君や、私、さっき悩んだんやけど。色々。
「ではホークさん、ノワールをお願いします」
「はい、ユイさん。チュアン、後は頼む」
「分かった」
皆でお見送りした。ノワール、ルンルンで付いていったけど、大丈夫かなあ。でも、レディ・ロストークと相性よかったら、もしかしたら、かわいか子馬がみれるのかなあ。
ノワール、お父さんかあ。タージェルさんがいいよったことが、現実になりそうやけど。
………………………主人の私を差し置いて、ちっ。
さて、そろそろ今日は帰るかね。
シスター・カルモさんに付き添ってもらい、晃太達の待つ庭に出る。
楽しそうな、きゃーきゃー、悲鳴上がってるけど。
庭に出ると、元気が後ろ足で立ち上がり、尻尾ぷりぷりしながら、わんわん言ってる。リードはしっかりビアンカが咥えてびくともしないが、元気の視線の先には、窓にずらりと並んだ子供達。正に興味津々や。あー、もしかしたら、元気のわんわんで気がついて、授業どころやなくなったかな。なら、申し訳ない。
「すみません、授業のお邪魔をしまして」
私はシスター・カルモさんに謝罪。笑って許してくれた。
「さあ、皆、お勉強なさい」
パンパンと、手を叩くシスター・カルモさん。
すると、しぶしぶと、戻っていく子供達。
「さ、私達も帰ろうかね」
『また、あの狭い所なのですか?』
ビアンカがぶー。白い毛並みについた枝や葉は、晃太とチュアンさんが取り払ってくれているが、またあの道を通れば着くなあ。
『そうなのです、魔法で』
「やめて、根こそぎ伐採するきやろ」
狭い道には理由があるはず。だって地面はきちんと砂利が敷き詰められていたからね。
結局、狭い道を抜けて、教会方面に出る。
でもちょっと気になる事を聞く。
「緊急時の避難って、どうしているんですか? まさか、あの細い道だけ?」
「いいえ、孤児院と教会は中で繋がっているんです。後は、建物の向こう側は訓練場としての広場がありますので。向こうの方が出入口が大きいので、次はそちらからご案内しますね」
「そうなんですか」
大きい出入口あるけど、子供達は何故かあの細い道が好きだそうだ。まあ、探検気分になるのかね。
私はぷりぷり言うビアンカの毛並みに絡んだ葉を取り払い、挨拶してパーティーハウスに戻った。
「え? パーヴェルさんが?」
「そう。使いの人が来て、明日の14時って」
「時間はよかけど……………」
帰って来た私に、母がパーヴェルさんからの伝言を受けていた。例の『お願い』やろうけど。きっとホークさんの引き抜きやろうが、ピシャッと断らんと。ピシャッとね。明日は午前中にギルドだけだしね。それから、その日の午後はのんびり過ごす。ブラッシングは鷹の目の皆さんにお願いし、私と母は炊き出しの準備だ。首都のマルシェで購入した、ひよこ豆の具だくさんスープ。小さな子供でも食べやすいように、ひよこ豆サイズに他の野菜をカット。ニンジン、玉ねぎ、キャベツ、かしわ、セロリまで。セロリは匂いがダメな人がいるけど、小さく切って分からなくするし、大量には入れないと、母が。マーファの孤児院から貰ったドライハーブも少し入れて、味を整える。ちょっと味見したら、本当にセロリがわからない。
出来上がり、私は異世界への扉、もへじ生活でお買い物。まだサイズ聞いてないけど、ある程度数を手に入れる。余れば、保管して別の子供がそのサイズになれば、使ってもらえばいいしね。ホークさんが付き合ってくれて、大量に購入した。シャツにズボンに、スカート、ワンピース、靴に靴下、下着。文房具も入れて、と。あ、そうだ、粉ミルクと哺乳瓶。赤ちゃん用に使ってもらうためのナチュラルコットン生地と。せっせと通う。こんなもんかな。ふう、私の魔力がすっからかんや。後足りん分は後日やね。総出でタグを外し、ダイニングキッチン奥の倉庫代わりの部屋に運び込む。晃太がリストを作成する。
夕御飯前にお祈りしてみたが、やはりお返事なし、お忙しいんやね。寂しかなあ。気を取り直して、夕御飯は海鮮鍋にして、〆に雑炊、ああ、うまか。
次の日。
散歩散歩と訴える稼ぎ頭を宥めて、ギルドに向かう。仔達はパーティーハウスでお留守番。チュアンさんとマデリーンさん、エマちゃんとテオ君が残ってくれる。
直ぐに応接室に通され、ラソノさんからオルクにあった魔石の買取り金を貰う。
「確かに、受け取りました」
今回はハイ・オルクはいなかった。結構珍しいらしい。
それからカルーラの無料教室について聞く。こちらもなかなか通う子供が増えない事情もある。やはり、貧しい家庭になればなるほど、子供は労働力と考えている所がある。しかも今は大討伐やら、末のお姫様の輿入れ準備やらで、管理している領主様は大忙しだそうだ。マーファの給食システムは知っているが、なかなか予算や人員が揃わず手が出せないと。
ふっふっふっ。私には、お金がある。どやっ。
私が稼いでいないけど、うちの稼ぎ頭達が、せっせとダンジョンで稼いでくれているから、懐は常夏を通り越し、マグマ状態。ビアンカとルージュの許可もある。無料教室は子供達が少しでも将来、役に立つスキルを得て、夢を掴む為の後押しする場所と説明したら快諾してくれた。
『人が生きるには、色々あるのですね。私達が元気達に闘い方を教えるような場所なのですね』
『そうね。あと、小難しいルールを理解するためなのね』
ビアンカやルージュの様に、狩りをして食べたら生きられる事はない。もちろん自給自足で生きている人達もいるだろうけど。街中では、そうはいかない。物々交換で出来るのも限界がある。働き口だって、読み書き計算出来る出来ないで、選択肢が限られる。就きたい働き口に、就けるように助けになる。それに、文字が読めないで、書類作成が必要な場合、騙されないようにね。
「こちらはカルーラの無料教室の給食の支援金です」
さ、と出したのは春祭りで購入した小銭入れ。中身は白金貨5枚。
「こ、こんなに?」
「はい。どうぞ使ってください。ただ、人員に関しては私達では出来ませんが」
「ありがとうございます。必ず、担当者に渡します」
「よろしくお願いします」
よし、これでギルドはおしまい。
挨拶してギルドを後にする。
軽くお昼を済ませる。私と鷹の目の皆さんは蒼空のサンドウィッチ。晃太と両親はさくら庵の天麩羅蕎麦。ビアンカとルージュと仔達はてんこ盛りのサンドウィッチ。もりもり食べてる。
鯛のフライのサンドウィッチをぱくり。うーん、白身の旨味が広がる。スープも温かい。
「ユイさん、美味しいっ」
エマちゃんも鯛のフライのサンドウィッチだ。
「そう、しっかり食べりいよ」
「うんっ」
もりもり。
『足りないのです』
『ユイ、エビのはないの?』
「もう食べたんね?」
何人前食べたと思ってるんよ、母がオッケー出すわけなかった。
時間になり、ピシャッとパーヴェルさんが馬車でやってきた。レディ・ロストークは今回はお留守番かな。私達も支度は済んでる。念のために、パーカーさんに作って貰った紺色のワンピースだ。両親も晃太も失礼のないような格好してたけど。
「ミズサワ殿、本日は時間を作っていただきありがとうございます」
「い、いえ」
馬車から降りたパーヴェルさん。本日、あの鎧姿ではなく、まるで軍服のような格好。多分、正装かな? セザール様とは違う格好よさが溢れている。セザール様は正統派王子様、パーヴェルさんはワイルド系かな? 髪も後ろに撫で付ける様にして、先日とはイメージが違う。さんやなくて、様にせんとね。
どうぞとパーティーハウスにご案内。花がやっぱりけたたましく吠え、元気がパーヴェルさんに尻尾ぷりぷり飛びかかる。
すかさず母が必殺技、食パンを繰り出し、あっという間に誘導されていった。簡単やー。奥の方でルームを開けっ放しにしているから、中庭でミゲル君やエマちゃんとテオ君に託す。居間にはホークさんが待機、ルーム入り口でチュアンさんとマデリーンさんが待機。
着いてきた従者の皆さんは、外で待つそうだ。パーヴェルさん、いや、パーヴェル様は長居しませんと。
居間のソファーを勧める。マデリーンさんが予め準備していた、さくら庵の紅茶を出してくれる。
「で、お話とは?」
きっと、ホークさんよね。ここは名義上主人の私がピシャッとお断りせんと。
「はい。まどろっこしいのはなしで、お願いがあります」
来た来た。ピシャッと、ピシャッと。
「ミズサワ殿の魔法馬を、我が愛馬、レディ・ロストークのお相手に願えませんか?」
はい、お断り、を。え? え? え?
「は、ノ、ノワールを?」
「はい」
「何故に?」
「レディ・ロストークの気性の荒さはご存知ですか?」
「はい。ホークさんでも半年も調教に時間が必要としたと」
ノワールなんて、3日よ、3日。ぶひひん特急よ。
「今では私を乗せてくれていますがね。レディ・ロストークはその気性の荒さは、他の雄馬を寄せ付けません。みな、逃げてしまいます」
どんだけやねん。ホークさんにはハートマーク飛ばしていたやん。
「レディ・ロストークも出産するにはいい年齢ですし、気性が荒いとは言え優秀な魔法馬です。後継に繋ぎたいのです。現在、カルーラにいる雄馬では、彼女は納得しない。だが、ミズサワ殿の魔法馬には、自ら身体を寄せていました、いままでにないことです。おそらく、今後もないと思い、こうやってお願いに参りました」
「は、はあ」
つまり、あれよね。
ノワール、レディ・ロストークと、こう、パンパカパーン、みたいな有名な音楽付きで、真っ赤な絨毯進むの? え? タージェルさんの言ってた事に現実味が。パンパカパーン。
「えっと、具体的にどうなるんですか? えっと、ノワールがレディ・ロストークと結婚?」
と、どうなるの? そのまま、ノワール、ここで暮らすの? え? 困るし、どうしよう? よく分からん。
「違いますよユイさん。すみませんパーヴェル様、発言の許可を」
「構わない」
ホークさんが馬事情を話してくれる。
こちらは移動手段が限られている、人もそうだが、魔法馬もそうだ。なかなか別の街から移住なんてない。同じ街で生涯出ないなんてザラだ。それは魔法馬も一緒。つまり、血筋の近い同士で番になるが、あまり繰り返すと良くない。なので魔法馬の場合、私達のように旅の途中で寄った先で、お相手を願われる事がある。特にノワールは、進化までする優秀な戦車馬(チャリオット・ホース)だからね。今まで言われなかったのは、ノワールが私の契約している従魔と認識されていないからだ。ギルド所有と思われている。ビアンカとルージュ、仔達がどうしても目立つからね。数日間、一緒に過ごす。あつあつの数日間ね。それだけでも主人の私にパーヴェル様はお金を払わなくてはならないし、もしご懐妊・無事出産となれば、さらにお金の支払いだ。子馬の親権は、母馬の主人だって。
うーん、競走馬の馬主になった気分や。でもなあ、ノワールの子馬、みてみたいけどなあ。
パーヴェル様から金額を示されたけど、本当に馬主になった気分。
とりあえず、3日間で50万とな。それで上手くいかなければ、それまでだけど。パーヴェル様的には、レディ・ロストークの相手は、ノワール以外は考えられないそうだ。今まで、近くに雄馬を近付けさせなかったのに、初めて異性に興味を抱いているからと。
「どうでしょうか?」
「うーん……………」
競走馬の馬主の気持ち。うーん、分からん。だけど、子馬。きっとかわいかはず。見てみたいけど、うーん。
「ノワールの意志を確認してもいいですか?」
「それはもちろん」
ちょっと失礼して、倉庫で待機していたノワールの元に移動。
「ねえ、ノワール、実はね、レディ・ロストークさん覚えとる?」
「ブルブルッ」
『覚えていると言っているわ』
ルージュが通訳してくれる。
「そのレディ・ロストークさんとね」
ゴニョゴニョ、みたいな。ノワールは少し戸惑いの表情。
「ノワールが、嫌なら断るよ」
まあ、そりゃそうよね。まあ、人間の考えだけど。だが、ノワールは徐々に興奮。
「ブヒヒンッ、ブヒヒンッ、ブヒヒーンッ」
『会ってみたいと言っているのです』
「ブヒヒーンッ」
『レディ・ロストークーッ、ですって』
「あ、そ。美女に弱いんやね」
ノワールも男の子やね。ブヒヒンッ、と興奮ノワールはなかなか収まらず。パーヴェル様とお話して、そのままノワールお持ち帰り。だけどノワールだけだと心配や。
「ユイさん、俺がノワールに付き添います。レディ・ロストークもよく知ってますし」
いや、あの、そのままパーヴェル様に引き抜かれないか心配なんやけど。そっとホークさんにその事を伝える。
「俺はユイさんの戦闘奴隷ですよ。パーヴェル様もよく分かっています。ですから、俺は引き抜きとかされませんよ」
「そうなんですか、良かった」
ほっ。
それからバタバタと準備。ホークさんとノワールのご飯出してくれると言ってくれたが、絶対に足りない。ノワールは普通の魔法馬の倍食べるからね。
私の時間停止のDサイズのマジックバッグに、ノワールの補助食、ニンジンやキャベツ、果物たっぷり。それからホークさんには波音の作りおきのおにぎり、蒼空のサンドウィッチを追加する。
「ブヒヒン、ブヒヒン」
『早く会いたいと言っているのです』
「ブヒヒーンッ」
『レディ・ロストークーッ、ですって』
「あ、そ」
ノワール君や、私、さっき悩んだんやけど。色々。
「ではホークさん、ノワールをお願いします」
「はい、ユイさん。チュアン、後は頼む」
「分かった」
皆でお見送りした。ノワール、ルンルンで付いていったけど、大丈夫かなあ。でも、レディ・ロストークと相性よかったら、もしかしたら、かわいか子馬がみれるのかなあ。
ノワール、お父さんかあ。タージェルさんがいいよったことが、現実になりそうやけど。
………………………主人の私を差し置いて、ちっ。
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遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。