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連載
出発までの日々⑤
ノワール大丈夫かなあ。
心配やけど、シスター・アモルとの面会日。
私とチュアンさんは前回と同じ応接室に向かう。本日は総出でお出かけだ。いつもいてくれるホークさんがいないのでちょっぴり不安なのは、気のせいだね。
硬いソファーで待つと、車椅子に乗ったシスター・アモルが笑顔を浮かべてやってきた。前回と同じシスターさんが、車止めして、停車。
「まあ、チュアン。来てくれたのね」
嬉しそうに笑うシスター・アモルさん。私は白内障で濁っていた目を反射的に見ると、ずいぶん綺麗になっている。流石ダワーさんから貰った蛇のポーションや。
チュアンさんはシスター・アモルさんの前に膝を着く。
「貴方の顔が見えるわ。ああ、ミズサワ様、本当にありがとうございます」
「良かったです」
シスター・アモルさんは嬉しそうにチュアンさんの顔に触れながら見ている。鮫のサプリメントも飲んでいるが、まだ効果は出ていない。内服開始してまだ3日やしね。たった10分の面会時間は過ぎて、お別れだ。ニコニコとシスター・アモルが見送ってくれた。次回の面会予約したかったけど、2週間後だ。残念、その頃には出発している。代わりに母に面会に行ってもらおうと思ったけど、全く面識ないからダメだった。
次に教会に向かう。
直ぐにシスター・カルモが出てきてくれた。大きな出入口に案内されて、訓練場を抜ける。ここでよくチュアンさんも訓練していたそうだ。今は訓練されていない。私達が来ると分かっているから、気を使ってくれたのかな。広いから、元気とコハクが走り出す。
『ここで元気達を見ているのですー』
『何かあれば、行くわー』
子供達にわちゃわちゃされるのが、嫌なのね。チュアンさんとマデリーンさん、ミゲル君が残ってくれる。花はチュアンさんの抱っこひもの中。
ルリとクリスはビアンカに張り付き、ヒスイだけ私に着いてきた。
『ねえね、ねえね』
「はいはい、ヒスイ、いい子でね」
「ぐるうぅ」
あはははははん、ヒスイの声が低音にー。
まずは昨日作ったひよこ豆のスープを鍋ごと渡す。大鍋は3つ。おそらくおかわりオッケーだ。配膳はおまかせした。シスター・カルモさんが別のシスターさんに指示を出している。
さ、採寸採寸。
男の子と、女の子に分かれて別室で採寸だ。女の子は私と母、エマちゃん。男の子は父と晃太、テオ君だ。ちゃんと補助してくれるシスターさんが着いてくれる。
ヒスイがごろにゃんとしている。
順番に女の子達が入ってくる。小さな女の子は、お姉さん達に手を引かれている。ごろにゃんしているヒスイには、びっくりだ。少し離れて採寸。母が笑顔で、採寸する。私はメモ、エマちゃんは母のお手伝い。別室を出るとき、ちょっとヒスイをタッチ。それできゃっきゃっと満足して部屋を出ていった。
女の子は全員で31人。みんなかわいか。男の子の方も無事に終了したようだ。ビアンカとルージュが見つかっていたが、男の子達は元気と遊んでいた。綱引きして、そのまま引き倒されている。あーっ、ケガはないかね。みんな土が着いているけど笑顔や。ビアンカに水の玉を出して貰い、ハンカチを湿らせながら、膝や顔を拭いてあげる。余分に出した水の玉を叩いて遊んでびしょびしょ。元気はペロペロペロリン。子供達はきゃっきゃっと笑っている。うんうん、みんなかわいか。ビアンカとルリとクリス、ルージュとコハクは遠巻きに見ているだけ。あははん、ビアンカとルージュは明らかにほっとしている。ヒスイがルージュの元に駆け寄る。
「ほら、みんな、ご飯ですよー」
シスター・カルモさんが呼ぶと、わーっと集まって行った。
小さな子は、お姉さんやお兄さんに手を引かれて、並んで歩いて行った。子供達を見送って、改めて、シスター・カルモさんがお辞儀をする。
「ミズサワ様、本当にありがとうございます。子供達があんなに笑い声を上げております。そしてお食事ありがとうございます。しばらくはしっかり、お腹一杯に食べさせて上げられます。本当にありがとうございます」
頭を下げるシスター・カルモさん。なんとか、経営しているが、やっぱり食費がかかっているんやね。教会の畑もあるけど、足りてないようやね。あー、冷蔵庫ダンジョンからブルーベリーの苗を持ってくればよかった。多少の栄養源になったはずなのに。
母が定期的に炊き出しをするような気配。いや、必ずするね、母の事だから。戦後の食糧難の時代を生き抜いた母は、空腹がどんなものか知っているからだ。シスター・カルモさんに自ら交渉し、成功している。
最後までシスター・カルモさん、別の牧師さんやシスターさんにもお見送りされて、私達は孤児院を去った。
パーティーハウスに戻ってから数日、のんびり過ごす。
私はせっせともへじ生活に通い、いろいろ手に入れる。こんなもんかな。一度修道院にも寄付に行ったが、初めは断られた。でも、チュアンさんのように保護が必要な子供達や、家庭内暴力から逃げてきた人達の将来の為に使ってください、って言ったら受け取ってくれた。
オルクの件で、カルーラの領主イコスティ辺境伯様とも、ギルドで短時間だが面会した。白髪頭の歴戦の猛者って感じで、パーヴェルさんそっくり。とにかく感謝された。私達がいなかったら息子さんであるパーヴェルさんも只では済まなかったはずだったと。
「今は大討伐や娘の婚約でごたつき、お礼が遅くなりました。感謝しますテイマー殿。我が息子パーヴェルは騎士団の中心を担っております、何かあれば騎士達の士気に影響がでたやもしれません。同行していた他の騎士達も皆無事。本当に感謝します」
何度も感謝された。私が凄いわけやないしね。報償金を渡されそうだったが、孤児院の寄付に回して貰った。イコスティ辺境伯様は、ハードスケジュールなのか、僅か数分の面会で席をたった。本当にお忙しいんやね。最後に出来れば、大討伐に少しでもいいので参加してほしいと言われた。善処しますとお答えした。
そして、3日後の夕方、やっとホークさんとノワールが帰って来た。わざわざパーヴェルさんと一緒に。本日のパーヴェルさんは乗馬服みたいな感じ。
「お帰りなさいホークさん」
「只今戻りました」
ノワールの手綱を引いたホークさんを見るとほっとする。うーん、安定感がある。そして、ノワールが艶々している。
「お帰り、ノワール」
「ブルブル…………」
ピンクの空気が漂うノワール。
『レディ・ロストーク……………ですって』
「骨抜きやね」
ルージュの説明で、恥じらうようなノワールに、何かあったか察して上げようかね。
「ミズサワ殿、今回の件ありがとうございました。レディ・ロストークの反応も悪くなかったですから、上手くいけば、来年春にはかわいい子馬が産まれるでしょう」
「是非見たいです」
かわいか子馬。
「カルーラに居を構えるなら物件を紹介しますよ」
「ありがとうございます」
パーヴェルさんの本気か冗談かわからないが、ご厚意だ。挨拶してパーヴェルさんはホークさんと二言三言交わして帰って行った。律儀な人や、わざわざ最後まで付き添ってくれて。
「ホークさん、ノワールの付き添いお疲れ様でした」
「はい」
ホークさんがしみじみ返事をする。どうしたんやろ?
皆でルームに入りながら、話を聞く。ホークさんの足元で、花が歓迎のローリング。ぽちゃぽちゃ。仔達もわらわら。かわいか。
ノワールは夢見心地で厩舎に移動する。ホークさんが誘導しながら話してくれる。
「俺は奴隷なのに、ユイさんの与えてくれるこのルームの恩恵で贅沢になったなあって。パーヴェル様が、厩舎の控え室を準備してくれたんです。奴隷には破格な待遇なんですよ」
その控え室は、きちんと掃除されて、ベッドや机もあり、食事だって出た。ちょっとした宿の待遇だった。
「ただ、空調はないし、ベッドは硬いしであまり眠れなくて」
もちろんお風呂なんてない。身体を拭くだけだったと。
「前は何日も風呂に入れないなんて、当たり前だったんですけど。どうもスッキリしなくて」
ああ、分かる。ベタベタやったんやね。夜勤明けとか、そうやったなあ。ホークさん、ちょっと無精髭に。
「なら、先にホークさんお風呂入ってください。スッキリしてご飯にしましょう」
「ありがとうございます」
嬉しそうなホークさん。軽くノワールのブラッシングをして、鷹の目のスペースのお風呂に向かう。
その間に夕御飯の準備をする。
まずは神様にお祈り。本日はピザ予定なんだけど、いらっしゃいますかな? お祈り。
……………………………………
今日もお留守か。
………………すまんっ、今帰って来たーっ
あ、お久しぶりな時空神様やっ。まさに駆け込みみたいな感じ。
「時空神様、お久しぶりです。お忙しいのに、ありがとうございます」
すまんな、ちょっと込み入ってて、やっと落ち着いた
お忙しいんやね、神様やもん。
「それでも先日は闘神様に助けて頂きました。本当にありがとうございます。時空神様、今日はピザなんですが良かったら如何ですか?」
いつもありがとう。そうだ、いまからそちらに向かってもいいか?
「あ、はい、どうぞ」
私は振り返る。チュアンさん、気絶するまで3秒かな。
「チュアンさん、神様来ますから、お願いしますね」
「は、はい」
チュアンさんからモーター音が聞こえる。
バタバタしていると、ダイニングキッチンの前で、ビアンカとルージュが待機している。ビアンカは尻尾バタバタ、ルージュは赤い目を全開にしている。ブースト目当てね。ぼちぼち期限切れになりそうやもんね。
お風呂にいるホークさん以外は、鷹の目の皆さん、膝を突いている。
いらっしゃいました、黒髪イッケメン時空神様。相変わらずのイッケメン。それから前回お世話になった闘神様、魔法の三柱神様。いらっしゃーい。商いの神様と鍛冶の神様もいらっしゃいましたね。荷物係やないね?
「すまんな、大勢で押し掛けて。恩恵があると聞いたから」
「ありがとうございます。恩恵は本当なので、助かります」
ポイント、ぐふふふふ。
私は、まずは闘神様にお礼を伝える。
「闘神様、先日はありがとうございます」
「ううん、ケーキ美味しかったっ」
ぱあっと笑顔が浮かぶ。
「良かったです」
かわいか。視界の端で、魔法の三柱神様がビアンカとルージュをタッチしている。闘神様もタッチ。ありがとうございます。背中の毛総立ち。
はい、ブースト、ありがとうございます。
さ、豪勢にいきましょう。
まずはオードブルやね。紫竜とJOY-Pのを3つずつ。これは商いの神様と鍛冶の神様に持っていただいて、と。わあ、にこにこしてる。ピザはどうしようかな? 魔法の三柱神様はMサイズを1枚ずつ。照り焼きチキン、明太子とポテト、ツナとコーン。闘神様は2枚持てると、マルゲリータとシーフードミックス。時空神様はLサイズの期間限定のチョリソーピザ×2、プルコギピザ×2、定番のサラミ。
「近々出発だろう?」
「はい」
そう、『彼女さん』に会いに、魔境に向かう。
「灯火の女神のブーストがあれば、迷うことはないだろうが、十分に気を付けろ」
「はい」
「無理と思うなら、立ち止まれ」
「はい」
聞いとる? ビアンカさんやルージュさんや。
「ではな。たくさんありがとう。くれぐれも気を付けろ」
「はい、ありがとうございます」
ビアンカとルージュにブーストのために来ていただいた、これくらいで足りないよね。
「もし、上手く行けば、俺達を呼べ」
「はい」
「じゃあ、これで帰るな」
すうっ、と消えていく神様達。魔法の三柱神様、闘神様がにこにこしていた。
てってれってー
【時空神 商いの神 鍛冶の神 闘神 魔法の三柱神 降臨確認 HP70000追加されます】
久しぶりのポイント。わざわざ、魔境にいくからってブースト与えに来てくれた、感謝や。
数日以内には出発する。
その前に、
『ユイッ、狩りに行きたいのですっ』
『行きたいわっ』
あーあ、やっぱり、目が血走ってるよ。私は必死に宥めすかした。
心配やけど、シスター・アモルとの面会日。
私とチュアンさんは前回と同じ応接室に向かう。本日は総出でお出かけだ。いつもいてくれるホークさんがいないのでちょっぴり不安なのは、気のせいだね。
硬いソファーで待つと、車椅子に乗ったシスター・アモルが笑顔を浮かべてやってきた。前回と同じシスターさんが、車止めして、停車。
「まあ、チュアン。来てくれたのね」
嬉しそうに笑うシスター・アモルさん。私は白内障で濁っていた目を反射的に見ると、ずいぶん綺麗になっている。流石ダワーさんから貰った蛇のポーションや。
チュアンさんはシスター・アモルさんの前に膝を着く。
「貴方の顔が見えるわ。ああ、ミズサワ様、本当にありがとうございます」
「良かったです」
シスター・アモルさんは嬉しそうにチュアンさんの顔に触れながら見ている。鮫のサプリメントも飲んでいるが、まだ効果は出ていない。内服開始してまだ3日やしね。たった10分の面会時間は過ぎて、お別れだ。ニコニコとシスター・アモルが見送ってくれた。次回の面会予約したかったけど、2週間後だ。残念、その頃には出発している。代わりに母に面会に行ってもらおうと思ったけど、全く面識ないからダメだった。
次に教会に向かう。
直ぐにシスター・カルモが出てきてくれた。大きな出入口に案内されて、訓練場を抜ける。ここでよくチュアンさんも訓練していたそうだ。今は訓練されていない。私達が来ると分かっているから、気を使ってくれたのかな。広いから、元気とコハクが走り出す。
『ここで元気達を見ているのですー』
『何かあれば、行くわー』
子供達にわちゃわちゃされるのが、嫌なのね。チュアンさんとマデリーンさん、ミゲル君が残ってくれる。花はチュアンさんの抱っこひもの中。
ルリとクリスはビアンカに張り付き、ヒスイだけ私に着いてきた。
『ねえね、ねえね』
「はいはい、ヒスイ、いい子でね」
「ぐるうぅ」
あはははははん、ヒスイの声が低音にー。
まずは昨日作ったひよこ豆のスープを鍋ごと渡す。大鍋は3つ。おそらくおかわりオッケーだ。配膳はおまかせした。シスター・カルモさんが別のシスターさんに指示を出している。
さ、採寸採寸。
男の子と、女の子に分かれて別室で採寸だ。女の子は私と母、エマちゃん。男の子は父と晃太、テオ君だ。ちゃんと補助してくれるシスターさんが着いてくれる。
ヒスイがごろにゃんとしている。
順番に女の子達が入ってくる。小さな女の子は、お姉さん達に手を引かれている。ごろにゃんしているヒスイには、びっくりだ。少し離れて採寸。母が笑顔で、採寸する。私はメモ、エマちゃんは母のお手伝い。別室を出るとき、ちょっとヒスイをタッチ。それできゃっきゃっと満足して部屋を出ていった。
女の子は全員で31人。みんなかわいか。男の子の方も無事に終了したようだ。ビアンカとルージュが見つかっていたが、男の子達は元気と遊んでいた。綱引きして、そのまま引き倒されている。あーっ、ケガはないかね。みんな土が着いているけど笑顔や。ビアンカに水の玉を出して貰い、ハンカチを湿らせながら、膝や顔を拭いてあげる。余分に出した水の玉を叩いて遊んでびしょびしょ。元気はペロペロペロリン。子供達はきゃっきゃっと笑っている。うんうん、みんなかわいか。ビアンカとルリとクリス、ルージュとコハクは遠巻きに見ているだけ。あははん、ビアンカとルージュは明らかにほっとしている。ヒスイがルージュの元に駆け寄る。
「ほら、みんな、ご飯ですよー」
シスター・カルモさんが呼ぶと、わーっと集まって行った。
小さな子は、お姉さんやお兄さんに手を引かれて、並んで歩いて行った。子供達を見送って、改めて、シスター・カルモさんがお辞儀をする。
「ミズサワ様、本当にありがとうございます。子供達があんなに笑い声を上げております。そしてお食事ありがとうございます。しばらくはしっかり、お腹一杯に食べさせて上げられます。本当にありがとうございます」
頭を下げるシスター・カルモさん。なんとか、経営しているが、やっぱり食費がかかっているんやね。教会の畑もあるけど、足りてないようやね。あー、冷蔵庫ダンジョンからブルーベリーの苗を持ってくればよかった。多少の栄養源になったはずなのに。
母が定期的に炊き出しをするような気配。いや、必ずするね、母の事だから。戦後の食糧難の時代を生き抜いた母は、空腹がどんなものか知っているからだ。シスター・カルモさんに自ら交渉し、成功している。
最後までシスター・カルモさん、別の牧師さんやシスターさんにもお見送りされて、私達は孤児院を去った。
パーティーハウスに戻ってから数日、のんびり過ごす。
私はせっせともへじ生活に通い、いろいろ手に入れる。こんなもんかな。一度修道院にも寄付に行ったが、初めは断られた。でも、チュアンさんのように保護が必要な子供達や、家庭内暴力から逃げてきた人達の将来の為に使ってください、って言ったら受け取ってくれた。
オルクの件で、カルーラの領主イコスティ辺境伯様とも、ギルドで短時間だが面会した。白髪頭の歴戦の猛者って感じで、パーヴェルさんそっくり。とにかく感謝された。私達がいなかったら息子さんであるパーヴェルさんも只では済まなかったはずだったと。
「今は大討伐や娘の婚約でごたつき、お礼が遅くなりました。感謝しますテイマー殿。我が息子パーヴェルは騎士団の中心を担っております、何かあれば騎士達の士気に影響がでたやもしれません。同行していた他の騎士達も皆無事。本当に感謝します」
何度も感謝された。私が凄いわけやないしね。報償金を渡されそうだったが、孤児院の寄付に回して貰った。イコスティ辺境伯様は、ハードスケジュールなのか、僅か数分の面会で席をたった。本当にお忙しいんやね。最後に出来れば、大討伐に少しでもいいので参加してほしいと言われた。善処しますとお答えした。
そして、3日後の夕方、やっとホークさんとノワールが帰って来た。わざわざパーヴェルさんと一緒に。本日のパーヴェルさんは乗馬服みたいな感じ。
「お帰りなさいホークさん」
「只今戻りました」
ノワールの手綱を引いたホークさんを見るとほっとする。うーん、安定感がある。そして、ノワールが艶々している。
「お帰り、ノワール」
「ブルブル…………」
ピンクの空気が漂うノワール。
『レディ・ロストーク……………ですって』
「骨抜きやね」
ルージュの説明で、恥じらうようなノワールに、何かあったか察して上げようかね。
「ミズサワ殿、今回の件ありがとうございました。レディ・ロストークの反応も悪くなかったですから、上手くいけば、来年春にはかわいい子馬が産まれるでしょう」
「是非見たいです」
かわいか子馬。
「カルーラに居を構えるなら物件を紹介しますよ」
「ありがとうございます」
パーヴェルさんの本気か冗談かわからないが、ご厚意だ。挨拶してパーヴェルさんはホークさんと二言三言交わして帰って行った。律儀な人や、わざわざ最後まで付き添ってくれて。
「ホークさん、ノワールの付き添いお疲れ様でした」
「はい」
ホークさんがしみじみ返事をする。どうしたんやろ?
皆でルームに入りながら、話を聞く。ホークさんの足元で、花が歓迎のローリング。ぽちゃぽちゃ。仔達もわらわら。かわいか。
ノワールは夢見心地で厩舎に移動する。ホークさんが誘導しながら話してくれる。
「俺は奴隷なのに、ユイさんの与えてくれるこのルームの恩恵で贅沢になったなあって。パーヴェル様が、厩舎の控え室を準備してくれたんです。奴隷には破格な待遇なんですよ」
その控え室は、きちんと掃除されて、ベッドや机もあり、食事だって出た。ちょっとした宿の待遇だった。
「ただ、空調はないし、ベッドは硬いしであまり眠れなくて」
もちろんお風呂なんてない。身体を拭くだけだったと。
「前は何日も風呂に入れないなんて、当たり前だったんですけど。どうもスッキリしなくて」
ああ、分かる。ベタベタやったんやね。夜勤明けとか、そうやったなあ。ホークさん、ちょっと無精髭に。
「なら、先にホークさんお風呂入ってください。スッキリしてご飯にしましょう」
「ありがとうございます」
嬉しそうなホークさん。軽くノワールのブラッシングをして、鷹の目のスペースのお風呂に向かう。
その間に夕御飯の準備をする。
まずは神様にお祈り。本日はピザ予定なんだけど、いらっしゃいますかな? お祈り。
……………………………………
今日もお留守か。
………………すまんっ、今帰って来たーっ
あ、お久しぶりな時空神様やっ。まさに駆け込みみたいな感じ。
「時空神様、お久しぶりです。お忙しいのに、ありがとうございます」
すまんな、ちょっと込み入ってて、やっと落ち着いた
お忙しいんやね、神様やもん。
「それでも先日は闘神様に助けて頂きました。本当にありがとうございます。時空神様、今日はピザなんですが良かったら如何ですか?」
いつもありがとう。そうだ、いまからそちらに向かってもいいか?
「あ、はい、どうぞ」
私は振り返る。チュアンさん、気絶するまで3秒かな。
「チュアンさん、神様来ますから、お願いしますね」
「は、はい」
チュアンさんからモーター音が聞こえる。
バタバタしていると、ダイニングキッチンの前で、ビアンカとルージュが待機している。ビアンカは尻尾バタバタ、ルージュは赤い目を全開にしている。ブースト目当てね。ぼちぼち期限切れになりそうやもんね。
お風呂にいるホークさん以外は、鷹の目の皆さん、膝を突いている。
いらっしゃいました、黒髪イッケメン時空神様。相変わらずのイッケメン。それから前回お世話になった闘神様、魔法の三柱神様。いらっしゃーい。商いの神様と鍛冶の神様もいらっしゃいましたね。荷物係やないね?
「すまんな、大勢で押し掛けて。恩恵があると聞いたから」
「ありがとうございます。恩恵は本当なので、助かります」
ポイント、ぐふふふふ。
私は、まずは闘神様にお礼を伝える。
「闘神様、先日はありがとうございます」
「ううん、ケーキ美味しかったっ」
ぱあっと笑顔が浮かぶ。
「良かったです」
かわいか。視界の端で、魔法の三柱神様がビアンカとルージュをタッチしている。闘神様もタッチ。ありがとうございます。背中の毛総立ち。
はい、ブースト、ありがとうございます。
さ、豪勢にいきましょう。
まずはオードブルやね。紫竜とJOY-Pのを3つずつ。これは商いの神様と鍛冶の神様に持っていただいて、と。わあ、にこにこしてる。ピザはどうしようかな? 魔法の三柱神様はMサイズを1枚ずつ。照り焼きチキン、明太子とポテト、ツナとコーン。闘神様は2枚持てると、マルゲリータとシーフードミックス。時空神様はLサイズの期間限定のチョリソーピザ×2、プルコギピザ×2、定番のサラミ。
「近々出発だろう?」
「はい」
そう、『彼女さん』に会いに、魔境に向かう。
「灯火の女神のブーストがあれば、迷うことはないだろうが、十分に気を付けろ」
「はい」
「無理と思うなら、立ち止まれ」
「はい」
聞いとる? ビアンカさんやルージュさんや。
「ではな。たくさんありがとう。くれぐれも気を付けろ」
「はい、ありがとうございます」
ビアンカとルージュにブーストのために来ていただいた、これくらいで足りないよね。
「もし、上手く行けば、俺達を呼べ」
「はい」
「じゃあ、これで帰るな」
すうっ、と消えていく神様達。魔法の三柱神様、闘神様がにこにこしていた。
てってれってー
【時空神 商いの神 鍛冶の神 闘神 魔法の三柱神 降臨確認 HP70000追加されます】
久しぶりのポイント。わざわざ、魔境にいくからってブースト与えに来てくれた、感謝や。
数日以内には出発する。
その前に、
『ユイッ、狩りに行きたいのですっ』
『行きたいわっ』
あーあ、やっぱり、目が血走ってるよ。私は必死に宥めすかした。
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