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依頼の品⑦
その日。
のんびり異世界の湯に浸かる。午前中はたまった洗濯物を済ませた。ドラム式洗濯機で、タオルふかふか。冒険者の皆さんはしっかり装備品の整備だ。ノワールは久しぶりにホークさんを乗せて中庭を走った。オシリスは大樹に止まっている。アリスはシルフィ達を遊ばせてから、従魔の部屋で寝ている。
アレスは、私を、ちら、ちら、とみている。
お昼から皆で異世界の湯だ。
異世界の湯にあるレストランで、お昼を賑やかに済ませる。今日はお休みなので、昼からアルコールだ。私はお茶ね。ミゲル君とツヴァイクさんはジョッキを空けている。私はアジフライ定食。それぞれ好きなものを注文してもらう。晃太はざるそばと天麩羅の定食にしている。
「エマちゃん、テオ君どうする?」
「私、ハンバーグがいいっ」
「俺、唐揚げっ」
はいはい、タップ。
ホークさんはチキン南蛮、チュアンさんはカツ丼、ミゲル君はチキンステーキ、マデリーンさんはキノコのスパゲッティ。海鮮サラダとだし巻き卵、天麩羅盛り合わせ、牛蒡の唐揚げ、サーモンのカルパッチョをシェアしている。
エドワルドさんとツヴァイクさんは、和牛のステーキ、豆腐サラダ、唐揚げ、野菜たっぷりピザを仲良くつついてる。
山風の皆さんも好きに食べている。ロッシュさんとシュタインさんは和牛ステーキ定食、ラーヴさんはチキンステーキ定食、マアデン君は唐揚げ定食。ハジェル君はステーキ重、天丼、海鮮サラダ。
満腹、片付けしないので、とっても楽。
食休みしてから、お風呂、ああ、幸せ。家族風呂のある個室の座敷でエマちゃんとお昼寝。シルフィ達もやって来たので、もふもふ、もふもふとしながらお昼寝。あはははん、幸せ。マデリーンさんはサウナで汗を流している。シルフィのお尻、ぽちゃぽちゃ。ふわあ。
一眠り。
うーん、目が覚める。時計を見ると、30分程寝ていたみたい。すっきり。エマちゃんはイフリィにぴったり張りつかれたままだけど、よく寝てる。起こさないでおこう。お茶でも買おうかな。よっこらしょ。
私は自動販売機エリアに。いつも買うメーカーのお茶を選ぶ。ふぅ、一服する。もうひとっ風呂浴びようかなあ。あ、マッサージ機もいいし。
なんて、思っていたら、
「ユイさん」
ドキリ。
振り返ると、館内着を着たシュタインさんが。
「あ、はい」
どう、返答するのが正しいのか分からず、中途半端に答えてしまう。なんや、身構えている自分がいて、すごくいやや。毎日毎日アレス達のペースに合わせていたため、多忙で、まともに話せてない。基本的に私は一人にならないからね。
「ユイさん。俺、避けられてます?」
ちょっと寂しそうなイケメンシュタインさん。し、心臓に悪かっ。
「いや、そうやなくてですね。ダンジョン入って忙しくて」
これは紛れもない事実だ。アレス達に付き合い、ドロップ品拾って、魔境のお母さんウルフと赤ちゃんウルフのお世話。しかも、鼻水君改めてシヴァと、補佐ウルフ、錆び落としのお母さんウルフやレベルアップしたいお父さんウルフの誘導。そして、家事。結構くたくた。
「そうでしたね」
思い出すように罰の悪い顔のシュタインさん。忙しい合間にも、シュタインさんは私と話をしようとしてくれた。だいたいバトルジャンキー達に遮られているけどね。
「少し、時間貰えますか?」
切実そうに言うシュタインさんに、私は、ああ、と思う。私も一度シュタインさんと話さないといけないと思っていた。私はシュタインさんの望む関係にはなれないから。
「はい。いいですよ。私もシュタインさんと話をせんといかんって思っていたので」
ふわあ、と笑うシュタインさん。なんや、罪悪感? よく分からない感情が沸き上がる。
「ユイさん」
「はい」
「俺は貴女が好きです。もっと側にいたいし、もっと触れたいと思っています」
ドキリ、と嬉しいが、嬉しいのだけど。
やっぱり、私の中で、その言葉に対して申し訳ないという感情が、生まれてくる。
一歩、私に近付くシュタインさん。
「シュタインさん」
「はい」
「シュタインさんのご好意は、とても嬉しいのですが。私はシュタインさんの望む関係にはなれません」
以前、中庭で吊り橋だとかなんとか思って悶々としていたけど、やっぱり、私はホークさんが側にいてくれると安心する。ビアンカやルージュ達もそうだけど、ホークさんはまったく違う。
肩の力が抜ける、そんな安心感。
シュタインさんとの決定的な差だ。もし、あの特別ボーナスがなかったら一生気が付かなかったかも知れない、安心感。自覚して、私は更に餃子の具材のように包まっている時、すごく穏やかな気持ちになる。
妙な沈黙が続く。
「………………やっぱり、ダメですか?」
「ダメって。その、そうですね」
なんて言おう。でも、言葉にしないと。
「もし、ホークさんみたいに、シュタインさんに包まれたとしても、私はきっと混乱して安心出来ない、ですね」
はぁっ、と大きくため息をつくシュタインさん。
「やっぱりダメでしたね。分かりました、俺は引きます」
あ、その言葉に私は喪失感と共に申し訳ないけど、ちょっとほっとした。シュタインさん、格好よく引いてくれた。
「これが、最後です」
す、と私の手を取るシュタインさん。そして、ちゅ。私は成すがまま。
「これから、一冒険者として、改めてお願いします」
あ、本当に格好いい。
「はい。こちらこそ」
お願いします。
と、続けようとした時。
「ユイさんっ、ユイさんっ」
テオ君の声。びっくりして、私は思わず手を引っ込める。内心、どっ、どっ、としている。
「な、な、なんね、テオ君」
「アレスさんが」
テオ君はシュタインさんを見て、なぜかその背後に、シャーッとなってる子猫が見えた。
「ア、アレスがどうしたん?」
「あそこ」
テオ君が示した先には、入り口付近に見える白いモコモコ。
アレスや。
「わぁぁ…………」
私は思わず呟く。
壁に隠れるようにしてこちらを見ている。顔半分だけ出しているが、緑の目がアメーバみたいにうるうるしてる。鼻水オプション付きで。
なんて、情けない顔。かわいか。
レベル700越えで、厄災クラスに強いアレスが、うるうる、うるうる。
「きゅうーん」
と、前肢をぴょこん、と出して引っ込める。
「きゅうーん」
と、前肢をぴょこん、と出して引っ込める。
「きゅうぅぅーん」
と、前肢をぴょこん、と出して引っ込める。
か、かわいか。かわいかぁぁぁぁぁぁぁっ。
丁度男湯から出てきた晃太が、ぶるぶるしている。
ちょっと、アレス君や、かわいかね。これあれよね、おねだりよね?
近くで見ていたマアデン君とハジェル君はぽかん、としている。
「どうしたねアレス?」
『あ、主よ、ずずうっ、主よ~』
鼻水垂らして、もう、かわいかね。
『一回でいいのだ。ボス部屋、ずずうっ、一回でいいのだ。ずずうっ』
アメーバみたいにうるうるの目に、鼻水オプションで訴えられて、悪い飼い主は陥落した。
今日は休みにするはずだったのに。
皆さん、ドロップ品拾いに付き合ってくれ、申し訳ない。夕御飯は豪勢にしよう。
のんびり異世界の湯に浸かる。午前中はたまった洗濯物を済ませた。ドラム式洗濯機で、タオルふかふか。冒険者の皆さんはしっかり装備品の整備だ。ノワールは久しぶりにホークさんを乗せて中庭を走った。オシリスは大樹に止まっている。アリスはシルフィ達を遊ばせてから、従魔の部屋で寝ている。
アレスは、私を、ちら、ちら、とみている。
お昼から皆で異世界の湯だ。
異世界の湯にあるレストランで、お昼を賑やかに済ませる。今日はお休みなので、昼からアルコールだ。私はお茶ね。ミゲル君とツヴァイクさんはジョッキを空けている。私はアジフライ定食。それぞれ好きなものを注文してもらう。晃太はざるそばと天麩羅の定食にしている。
「エマちゃん、テオ君どうする?」
「私、ハンバーグがいいっ」
「俺、唐揚げっ」
はいはい、タップ。
ホークさんはチキン南蛮、チュアンさんはカツ丼、ミゲル君はチキンステーキ、マデリーンさんはキノコのスパゲッティ。海鮮サラダとだし巻き卵、天麩羅盛り合わせ、牛蒡の唐揚げ、サーモンのカルパッチョをシェアしている。
エドワルドさんとツヴァイクさんは、和牛のステーキ、豆腐サラダ、唐揚げ、野菜たっぷりピザを仲良くつついてる。
山風の皆さんも好きに食べている。ロッシュさんとシュタインさんは和牛ステーキ定食、ラーヴさんはチキンステーキ定食、マアデン君は唐揚げ定食。ハジェル君はステーキ重、天丼、海鮮サラダ。
満腹、片付けしないので、とっても楽。
食休みしてから、お風呂、ああ、幸せ。家族風呂のある個室の座敷でエマちゃんとお昼寝。シルフィ達もやって来たので、もふもふ、もふもふとしながらお昼寝。あはははん、幸せ。マデリーンさんはサウナで汗を流している。シルフィのお尻、ぽちゃぽちゃ。ふわあ。
一眠り。
うーん、目が覚める。時計を見ると、30分程寝ていたみたい。すっきり。エマちゃんはイフリィにぴったり張りつかれたままだけど、よく寝てる。起こさないでおこう。お茶でも買おうかな。よっこらしょ。
私は自動販売機エリアに。いつも買うメーカーのお茶を選ぶ。ふぅ、一服する。もうひとっ風呂浴びようかなあ。あ、マッサージ機もいいし。
なんて、思っていたら、
「ユイさん」
ドキリ。
振り返ると、館内着を着たシュタインさんが。
「あ、はい」
どう、返答するのが正しいのか分からず、中途半端に答えてしまう。なんや、身構えている自分がいて、すごくいやや。毎日毎日アレス達のペースに合わせていたため、多忙で、まともに話せてない。基本的に私は一人にならないからね。
「ユイさん。俺、避けられてます?」
ちょっと寂しそうなイケメンシュタインさん。し、心臓に悪かっ。
「いや、そうやなくてですね。ダンジョン入って忙しくて」
これは紛れもない事実だ。アレス達に付き合い、ドロップ品拾って、魔境のお母さんウルフと赤ちゃんウルフのお世話。しかも、鼻水君改めてシヴァと、補佐ウルフ、錆び落としのお母さんウルフやレベルアップしたいお父さんウルフの誘導。そして、家事。結構くたくた。
「そうでしたね」
思い出すように罰の悪い顔のシュタインさん。忙しい合間にも、シュタインさんは私と話をしようとしてくれた。だいたいバトルジャンキー達に遮られているけどね。
「少し、時間貰えますか?」
切実そうに言うシュタインさんに、私は、ああ、と思う。私も一度シュタインさんと話さないといけないと思っていた。私はシュタインさんの望む関係にはなれないから。
「はい。いいですよ。私もシュタインさんと話をせんといかんって思っていたので」
ふわあ、と笑うシュタインさん。なんや、罪悪感? よく分からない感情が沸き上がる。
「ユイさん」
「はい」
「俺は貴女が好きです。もっと側にいたいし、もっと触れたいと思っています」
ドキリ、と嬉しいが、嬉しいのだけど。
やっぱり、私の中で、その言葉に対して申し訳ないという感情が、生まれてくる。
一歩、私に近付くシュタインさん。
「シュタインさん」
「はい」
「シュタインさんのご好意は、とても嬉しいのですが。私はシュタインさんの望む関係にはなれません」
以前、中庭で吊り橋だとかなんとか思って悶々としていたけど、やっぱり、私はホークさんが側にいてくれると安心する。ビアンカやルージュ達もそうだけど、ホークさんはまったく違う。
肩の力が抜ける、そんな安心感。
シュタインさんとの決定的な差だ。もし、あの特別ボーナスがなかったら一生気が付かなかったかも知れない、安心感。自覚して、私は更に餃子の具材のように包まっている時、すごく穏やかな気持ちになる。
妙な沈黙が続く。
「………………やっぱり、ダメですか?」
「ダメって。その、そうですね」
なんて言おう。でも、言葉にしないと。
「もし、ホークさんみたいに、シュタインさんに包まれたとしても、私はきっと混乱して安心出来ない、ですね」
はぁっ、と大きくため息をつくシュタインさん。
「やっぱりダメでしたね。分かりました、俺は引きます」
あ、その言葉に私は喪失感と共に申し訳ないけど、ちょっとほっとした。シュタインさん、格好よく引いてくれた。
「これが、最後です」
す、と私の手を取るシュタインさん。そして、ちゅ。私は成すがまま。
「これから、一冒険者として、改めてお願いします」
あ、本当に格好いい。
「はい。こちらこそ」
お願いします。
と、続けようとした時。
「ユイさんっ、ユイさんっ」
テオ君の声。びっくりして、私は思わず手を引っ込める。内心、どっ、どっ、としている。
「な、な、なんね、テオ君」
「アレスさんが」
テオ君はシュタインさんを見て、なぜかその背後に、シャーッとなってる子猫が見えた。
「ア、アレスがどうしたん?」
「あそこ」
テオ君が示した先には、入り口付近に見える白いモコモコ。
アレスや。
「わぁぁ…………」
私は思わず呟く。
壁に隠れるようにしてこちらを見ている。顔半分だけ出しているが、緑の目がアメーバみたいにうるうるしてる。鼻水オプション付きで。
なんて、情けない顔。かわいか。
レベル700越えで、厄災クラスに強いアレスが、うるうる、うるうる。
「きゅうーん」
と、前肢をぴょこん、と出して引っ込める。
「きゅうーん」
と、前肢をぴょこん、と出して引っ込める。
「きゅうぅぅーん」
と、前肢をぴょこん、と出して引っ込める。
か、かわいか。かわいかぁぁぁぁぁぁぁっ。
丁度男湯から出てきた晃太が、ぶるぶるしている。
ちょっと、アレス君や、かわいかね。これあれよね、おねだりよね?
近くで見ていたマアデン君とハジェル君はぽかん、としている。
「どうしたねアレス?」
『あ、主よ、ずずうっ、主よ~』
鼻水垂らして、もう、かわいかね。
『一回でいいのだ。ボス部屋、ずずうっ、一回でいいのだ。ずずうっ』
アメーバみたいにうるうるの目に、鼻水オプションで訴えられて、悪い飼い主は陥落した。
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