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総仕上げ⑬
ご指摘ありがとうございます。
あの連続の警報器で気絶した時ね。そういえば、あの時、ホークさんに抱えられて気絶したんよね。
………………………わあ、恥ずかしか。ホークさんの腕の中って、わあ、頭の中が乙女みたいになる。
照れ照れ。
やけど、ホークさんにしたら、本当に血の気が引いたはず。
「呼び掛けても返事はないし、晃太さんも慌てて。気絶しただけだと、アレスさんに言われるまで、他の皆もパニックでしたよ」
「ご、ご迷惑をお掛けしまして」
そんなことになってたのっ。も、申し訳ない。
「いえ、本当に何事もなくて良かった」
ホークさんのかさついた指先が、私の頬に触れる。ドキッとする。だけど、嬉しか。ビアンカとルージュが帰ってきたあの日見せた、痛そうな顔は、心底安心したんやな。
でも、ホークさんにそうやって心配してもらえるの、不謹慎かもしれないけど、嬉しい。
「ユイさん」
「あ、はい」
心地よくて眠くなりそうになった瞬間、ホークさんが真顔に。
「あいつに他に何か言われました?」
ホークさんのあいつ、はシュタインさんなんだよね。
「えっと、その」
ゴニョゴニョ。
じーっ、と見てくるホークさんの視線が痛い。
「その、ホークさんと上手く行ってるか、し、心配してくれて」
「それだけ?」
くっ、ホークさん鋭いっ。
「……………付け入るとかなんとか………………」
ぽつり、と呟くと、ぴくう、とホークさんの眉がひきつる。
「冗談ですよ、きっと」
へへっ、と笑うが、ホークさんはピクピク。
「そんな風に見られてましたか……………」
「だって、ほら、今忙しいから」
私はルームを駆使してバトルジャンキー達の誘導にご飯の準備。ホークさんは鷹の目のリーダーとして奔走、矢の製作、エマちゃんとテオ君の訓練、暇があれば騎士団の牧場にお母さん馬とまだらちゃんの様子を見に行く。結構バタバタしている。
「ヤマタノオロチの件が済めば、落ち着きますよ。そうしたら、ゆっくりしましょう。シーラにも行きましょうね」
そう、特別ボーナスでもある、シーラ行き。マデリーンさんのお姉さんやミゲル君のご家族に、会いにいかんとね。
「覚えてて、くれたんですね」
「当たり前やないですか」
私がそう言うと、ホークさんは嬉しそうや。あ、良かった。
そっと、ホークさんの手が私の手を包んでくれる。わぁ、嬉しいっ。
「ユイさん、俺は貴女の戦闘奴隷です。立場を弁えなくては、と思っています」
戦闘奴隷、今のホークさんの正式な立場。
嫌な響きやけど、仕方ない。
「弁えなくてはならないんです。でも、俺は貴女を愛しています」
そうやって見つめてくるホークさんは、すごく真剣な目で言ってくる。う、嬉しい、嬉しい、嬉しい。ホークさんはちゃんと言葉にしてくれて、こうやって手を繋いでくれる。
あの人とは違う。そもそもそこまで仲が深まってなかったはず。なのに、私が勝手に傷ついただけやん。
「ホークさん」
私もちゃんと、せんとなあ。
「はい、ユイさん」
「もう何年も前に、仲が深まりそうになった人がいて」
以前、エマちゃんとテオ君のお母さんの話を、ホークさんがしてくれた。それは私を信頼してくれているから。だから、きっとホークさんに話しても、私を信じてくれる。母にすら話せなかった事。従姉妹にも言えなかった事。
「当時、あの人といると肩肘張らなくて、とても気楽に話せる人だったんです。しばらくして、動物園に行って、それから、それから」
私は息をつく。
「急に、避けられて、訳が分からなかったんです。ただ、同じ頃に華憐があの人に絡んでいるのを、たまたま知り合いが見聞きして、多分私の悪口あることないこと吹き込んだみたいで」
全部、聞いたわけではないけど、私の名前がちらっと出ていたのは確かだった。
当時は辛かった。でも。
「直接、避けた理由を聞いた訳じゃない。たまたま華憐が一緒だっただけかもしれない。私が共通の知り合いだから、話しただけかもしれない。ただ、怖かった」
私は当時、吐き出せなかった思いを吐き出す。
「お前に幻滅したとか、軽蔑するって、言われるんじゃないかって」
華憐が二度目の離婚後に、他人の彼氏をねとっていた。実際に被害者が私の知り合いで、彼氏にそう言われて、別れたそうだ。彼女の場合、勝ち気な人で壮絶な口論して、言い負かして、平手打ちしたそうだ。だけど、私はそんなこと出来ないし、そこまで深い仲になっていなくて、口をつぐんだ。背を向けた。
「私、自分に女としての自信がなくて、あの人は弁解すれば帰ってくるっていう思いより、そんな言葉を投げ掛けられる事の方が怖かった。結局、逃げたんです。華憐に邪魔されたって、言い訳して」
私は息を呑む。
「私は卑怯なんです。すごく、卑怯なんです」
なんや、泣きそうや。
私の手を包むホークさんの手が強くなる。
「シュタインさんに好意を寄せられてると言われて、思い出して、辛くて、中途半端な対応しかできなくて、申し訳なくて」
それはすべて、私の自信のなさ、それから逃げようとする卑怯な性格。
「それでも、あの夜、ホークさんが家庭を私と築きたいって言ってくれて、嬉しかった。私がおくるみ抱いて、両親や、ビアンカやルージュ達に囲まれて、笑ってて」
なんや、不思議と涙が浮かびそう。
ホークさんの両手が、私の頬を包み込む。
「夢みたいな空想するくらい嬉しかった。凄く、凄く、嬉しくて」
私はホークさんの手に、自分の手を重ねる。やっぱり、安心する。ホークさんに包まれていると。
「ああ、私も、そうなんだなって、思えてきて。だけど、凄く自分に自信がない自分がいて、でも」
言葉にならない。
「私は、私は」
ホークさんの青みがかった目が、綺麗に私を写している。
「私は、ホークさんと家庭を築きたい。お父さんとお母さんみたいに」
ローンを抱えながらも、私を専門学校、晃太を大学まで行かせてくれた。母はずっとお弁当を作ってくれた。家の中はいつも綺麗で。父は真面目になん十年も同じ会社で働いていた。隣近所の皆さんは気さくで優しくて。庭を走り回るのは、花の先代ミックス犬。穴ばっかり掘ってた。
そんな家庭を築きたい。
他の誰でもない、ホークさんと。
「身に余る光栄です」
嬉しそうに、ホークさんが言う。
ちゅ、とされる。
「もっと先に進みたいのが、俺の本心ですが。今はこれだけが限界です。立場上は」
もう一度、ちゅ。
奴隷から解放されたら、その先、なんや、現実味が帯びてきた。あのワイン護送を依頼した商隊はやはりばらばらになり、ユリアレーナから出国していた。追跡調査をしているそうだ。
鷹の目の皆さんとは、次はその商隊が見つかった時、もう一度話すことになってる。
「愛しています、ユイさん」
「はい」
これが愛だと分からないけど、私はホークさんを信頼している。ノワールに騎乗した時に包まれる、肩の力が抜ける安心感。こうやって話すだけで、穏やかな気持ちになる。母にすら話せなかった気持ちを、吐き出せる。
ああ、これが、もしかしたら、私の愛の形なんやな。
しばらく、ホークさんの手に包まれる。暖かくて、心地よい。ああ、眠くなる。
「ユイさん、そろそろ休みましょう」
「え、あっ、もうこんな時間やっ、すみませんホークさん長々と」
時計を見てびっくり。後4時間後くらいには『ダンジョンダンジョンダンジョンぶひひんくうくうわふわふ』が始まってしまう。
私達はそれぞれの部屋に引き揚げる。
「ユイさん、お休みなさい」
「はい、お休みなさい」
ちゅ。
あ、なんか、よく眠れそうや。
あの連続の警報器で気絶した時ね。そういえば、あの時、ホークさんに抱えられて気絶したんよね。
………………………わあ、恥ずかしか。ホークさんの腕の中って、わあ、頭の中が乙女みたいになる。
照れ照れ。
やけど、ホークさんにしたら、本当に血の気が引いたはず。
「呼び掛けても返事はないし、晃太さんも慌てて。気絶しただけだと、アレスさんに言われるまで、他の皆もパニックでしたよ」
「ご、ご迷惑をお掛けしまして」
そんなことになってたのっ。も、申し訳ない。
「いえ、本当に何事もなくて良かった」
ホークさんのかさついた指先が、私の頬に触れる。ドキッとする。だけど、嬉しか。ビアンカとルージュが帰ってきたあの日見せた、痛そうな顔は、心底安心したんやな。
でも、ホークさんにそうやって心配してもらえるの、不謹慎かもしれないけど、嬉しい。
「ユイさん」
「あ、はい」
心地よくて眠くなりそうになった瞬間、ホークさんが真顔に。
「あいつに他に何か言われました?」
ホークさんのあいつ、はシュタインさんなんだよね。
「えっと、その」
ゴニョゴニョ。
じーっ、と見てくるホークさんの視線が痛い。
「その、ホークさんと上手く行ってるか、し、心配してくれて」
「それだけ?」
くっ、ホークさん鋭いっ。
「……………付け入るとかなんとか………………」
ぽつり、と呟くと、ぴくう、とホークさんの眉がひきつる。
「冗談ですよ、きっと」
へへっ、と笑うが、ホークさんはピクピク。
「そんな風に見られてましたか……………」
「だって、ほら、今忙しいから」
私はルームを駆使してバトルジャンキー達の誘導にご飯の準備。ホークさんは鷹の目のリーダーとして奔走、矢の製作、エマちゃんとテオ君の訓練、暇があれば騎士団の牧場にお母さん馬とまだらちゃんの様子を見に行く。結構バタバタしている。
「ヤマタノオロチの件が済めば、落ち着きますよ。そうしたら、ゆっくりしましょう。シーラにも行きましょうね」
そう、特別ボーナスでもある、シーラ行き。マデリーンさんのお姉さんやミゲル君のご家族に、会いにいかんとね。
「覚えてて、くれたんですね」
「当たり前やないですか」
私がそう言うと、ホークさんは嬉しそうや。あ、良かった。
そっと、ホークさんの手が私の手を包んでくれる。わぁ、嬉しいっ。
「ユイさん、俺は貴女の戦闘奴隷です。立場を弁えなくては、と思っています」
戦闘奴隷、今のホークさんの正式な立場。
嫌な響きやけど、仕方ない。
「弁えなくてはならないんです。でも、俺は貴女を愛しています」
そうやって見つめてくるホークさんは、すごく真剣な目で言ってくる。う、嬉しい、嬉しい、嬉しい。ホークさんはちゃんと言葉にしてくれて、こうやって手を繋いでくれる。
あの人とは違う。そもそもそこまで仲が深まってなかったはず。なのに、私が勝手に傷ついただけやん。
「ホークさん」
私もちゃんと、せんとなあ。
「はい、ユイさん」
「もう何年も前に、仲が深まりそうになった人がいて」
以前、エマちゃんとテオ君のお母さんの話を、ホークさんがしてくれた。それは私を信頼してくれているから。だから、きっとホークさんに話しても、私を信じてくれる。母にすら話せなかった事。従姉妹にも言えなかった事。
「当時、あの人といると肩肘張らなくて、とても気楽に話せる人だったんです。しばらくして、動物園に行って、それから、それから」
私は息をつく。
「急に、避けられて、訳が分からなかったんです。ただ、同じ頃に華憐があの人に絡んでいるのを、たまたま知り合いが見聞きして、多分私の悪口あることないこと吹き込んだみたいで」
全部、聞いたわけではないけど、私の名前がちらっと出ていたのは確かだった。
当時は辛かった。でも。
「直接、避けた理由を聞いた訳じゃない。たまたま華憐が一緒だっただけかもしれない。私が共通の知り合いだから、話しただけかもしれない。ただ、怖かった」
私は当時、吐き出せなかった思いを吐き出す。
「お前に幻滅したとか、軽蔑するって、言われるんじゃないかって」
華憐が二度目の離婚後に、他人の彼氏をねとっていた。実際に被害者が私の知り合いで、彼氏にそう言われて、別れたそうだ。彼女の場合、勝ち気な人で壮絶な口論して、言い負かして、平手打ちしたそうだ。だけど、私はそんなこと出来ないし、そこまで深い仲になっていなくて、口をつぐんだ。背を向けた。
「私、自分に女としての自信がなくて、あの人は弁解すれば帰ってくるっていう思いより、そんな言葉を投げ掛けられる事の方が怖かった。結局、逃げたんです。華憐に邪魔されたって、言い訳して」
私は息を呑む。
「私は卑怯なんです。すごく、卑怯なんです」
なんや、泣きそうや。
私の手を包むホークさんの手が強くなる。
「シュタインさんに好意を寄せられてると言われて、思い出して、辛くて、中途半端な対応しかできなくて、申し訳なくて」
それはすべて、私の自信のなさ、それから逃げようとする卑怯な性格。
「それでも、あの夜、ホークさんが家庭を私と築きたいって言ってくれて、嬉しかった。私がおくるみ抱いて、両親や、ビアンカやルージュ達に囲まれて、笑ってて」
なんや、不思議と涙が浮かびそう。
ホークさんの両手が、私の頬を包み込む。
「夢みたいな空想するくらい嬉しかった。凄く、凄く、嬉しくて」
私はホークさんの手に、自分の手を重ねる。やっぱり、安心する。ホークさんに包まれていると。
「ああ、私も、そうなんだなって、思えてきて。だけど、凄く自分に自信がない自分がいて、でも」
言葉にならない。
「私は、私は」
ホークさんの青みがかった目が、綺麗に私を写している。
「私は、ホークさんと家庭を築きたい。お父さんとお母さんみたいに」
ローンを抱えながらも、私を専門学校、晃太を大学まで行かせてくれた。母はずっとお弁当を作ってくれた。家の中はいつも綺麗で。父は真面目になん十年も同じ会社で働いていた。隣近所の皆さんは気さくで優しくて。庭を走り回るのは、花の先代ミックス犬。穴ばっかり掘ってた。
そんな家庭を築きたい。
他の誰でもない、ホークさんと。
「身に余る光栄です」
嬉しそうに、ホークさんが言う。
ちゅ、とされる。
「もっと先に進みたいのが、俺の本心ですが。今はこれだけが限界です。立場上は」
もう一度、ちゅ。
奴隷から解放されたら、その先、なんや、現実味が帯びてきた。あのワイン護送を依頼した商隊はやはりばらばらになり、ユリアレーナから出国していた。追跡調査をしているそうだ。
鷹の目の皆さんとは、次はその商隊が見つかった時、もう一度話すことになってる。
「愛しています、ユイさん」
「はい」
これが愛だと分からないけど、私はホークさんを信頼している。ノワールに騎乗した時に包まれる、肩の力が抜ける安心感。こうやって話すだけで、穏やかな気持ちになる。母にすら話せなかった気持ちを、吐き出せる。
ああ、これが、もしかしたら、私の愛の形なんやな。
しばらく、ホークさんの手に包まれる。暖かくて、心地よい。ああ、眠くなる。
「ユイさん、そろそろ休みましょう」
「え、あっ、もうこんな時間やっ、すみませんホークさん長々と」
時計を見てびっくり。後4時間後くらいには『ダンジョンダンジョンダンジョンぶひひんくうくうわふわふ』が始まってしまう。
私達はそれぞれの部屋に引き揚げる。
「ユイさん、お休みなさい」
「はい、お休みなさい」
ちゅ。
あ、なんか、よく眠れそうや。
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