銀の鬼神とかわいいお嫁さん

鐘ケ江 しのぶ

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会議と味方⑦

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 ちゃきん。ちゃきん。ちゃきん。

 モーリスが鼻唄混じりに、髪を切る。
 その中で両親からいくつもの質問が飛ぶ。
 せっかくこれから先の未来が分かるのだからと。

「では、来年の西街道で土砂崩れが起きると?」

「はい。確かに大雨で」

「人的被害は?」

「ありません。いや、違いますね。復興作業中の二次被害があって、作業員が複数巻き込まれました」

「ここには村があったはず」

 父が地図を示しながら聞いてくる。

「はい。ああ、オレンジ畑が壊滅したはずです。作業員もその村から複数人出ました」

 ふーむ、と悩む両親。

「雨による土砂崩れなら、我等が太刀打ち出来んが、被害を最小限にしなくては。特に人命を救わなくては」

「それにここのオレンジはフォン辺境伯の貴重な輸出品ですわ。この畑が壊滅したら、この村は経済困窮します。それに復興作業員は、おそらく男手のはず。下手をしたら、大黒柱を失う家もあるはずですわ」

 セバスが新しくお茶を淹れている。
 細々と指示を出していく両親。街道整備や、災害対策など次から次へと。そしてそれを速記していくマギー。

「バルド、この大雨の影響は、我が領だけではないはず。思い出せ」

 ちゃきん。ちゃきん。ちゃきん。

「確か…………」

 記憶を絞り出す。
 時折、両親は顔をしかめたり、にやぁっ、と笑う。何を考えているんだか。
 どれくらい時間が経過したか、モーリスの手により、髭まで綺麗に剃り上がる。

「あら、いい感じじゃない。きっとエミリア嬢にも好評よ」

 と、かつて社交界の薔薇と呼ばれた母からのお墨付きあり。
 鏡を見せられたが、確かに母譲りの顔立ちだが、見慣れているので、いいのかよく分からない。眉はしっかり父の形だ。
 てきぱきと、眉まで整えられると、昼間になってしまった。
 軽く食事が運ばれてくる。運んできたメイド達にびっくりされたが、母が口止めしていた。メイド達は、すぐに察していたが、生暖かい目でニヤニヤしていた。
 同時にエミリアの様子が伝わる。
 仕立て屋と靴職人に遠慮の姿勢が強かったそうだが、マギーが任せた若いメイド達と、中堅メイドがうまい具合やってくれたそうで、エミリアは笑顔で採寸は終わったそうだ。午後からはフォン辺境伯の館を見て回りたいと言ったそうなので、書庫を案内するそうだ。フォン辺境伯邸の書庫は二つある。領民の憩いの場になればと祖母が解放した書庫は、毎日たくさんの領民が通っている。祖母も亡くなる直前まで、子供達に絵本の読み聞かせや、家が貧しいが字を覚えたいと思う歳も性別も関係ないと、読み書きを教えていた。今ではそれ母が引き継いでいて、数年前きちんとした、学舎を造ってしまった。母が始めた海運業で得た利益をすべてそそいだそうだが。十年後には、実を結べばラッキー。二十年後なら確実だと言っていた。

「あ、そうだわ。ねえバルド、エミリア嬢の貴族学園だけど、ひとつ考えがあるの」

「はい、なんでしょうか?」
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