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自分は⑤
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感謝祭。収穫祭のようなものだ。
教会で大々的に行われ、旅芸人が来たり、様々な出店も出て、沢山の人達が集まる。
ただ、ローザ伯爵家が行くのは、ただの感謝祭ではない。ある程度の社会的地位、つまり爵位があるか、教会にある程度の額を寄付しているか、積極的にチャリティーバザーに関わっているかしないと入れない特別な場所での感謝祭。
一般人との差別化したのは、以前、貴族夫人や子供を、ごった返す中から誘拐された事に起因する。無事に帰って来たものももちろんいたが、中には誘拐しすぐに絞め殺されり、女性の場合は凄惨な目に合い自殺者を多数出してしまったために、このような対応がなされるようになった。
ローザ伯爵家は馬車で教会まで移動。ウィンティアは荷物入れに押し込められた。狭くて埃っぽい中で、昨日の祖母の友人を思い出す。きっとあの人な助けに来てくれると、信じて耐えた。
馬車が止まり、荷物入れから出されたが、ドレスを掴まれ、放り出されるように出された。よろけたウィンティアは膝と手を付いた。痛みが走る。だが、泣いてもなにもしてくれないのは、身体に染み込んでいた。
「お父様っ、お母様っ、早く行きましょうっ」
「こらキャサリン、走ってはダメだよ」
「お菓子は逃げないわ」
「でも、あの綺麗なお花キャンディー、早くしないとなくなってしまうわ」
「そうだね、買いに行こう」
「待ってキャサリン、手を繋がないとはぐれてしまうわ」
急かすキャサリンを両親は優しく嗜める。すぐ近くには執事長とメイド長がしっかり固める。当然、ウィンティアは蚊帳のそとだ。
さっさと感謝祭の会場に向かうので、ウィンティアははぐれないように着いていくしかない。馬車はとっくに行ってしまったから。
きらびやかな感謝祭。
美しく着飾った貴族や裕福な平民が、思い思いに楽しんでいる。
ただ、ローザ伯爵家の後に小さくなって着いていくウィンティアに、奇妙な視線だ。
「お母様っ、あれが欲しいわっ。あのクッキーと、あ、あのリボンも欲しいわっ、ぬいぐるみっ」
次々にねだるキャサリン。母親は優しく微笑み、執事長に合図を送り、購入している。目につくものを片っ端から買っている。
感謝祭は祖母と来たことがある。ただ、このように別々の会場ではく、平民も貴族も一緒に楽しんでいた。祖母と暮らしていたのは地方の別荘地で閑散期だったこともある。そしてローザ伯爵家本家があるのは、ルルディ王国最大の人口を抱えた、王都だったからだ。
華やか感謝祭にウィンティアは戸惑い、ますます疎外感を覚えた。祖母との感謝祭では、必ずお菓子を買ってくれた。
「一つよ、ウィンティア。家に帰ればご馳走がありますからね」
祖母の優しい声。
会いたい、無性に、祖母に会いたい。
ぽろぽろ、涙が溢れる。
「何をぐずぐずしているのっ、さっさと来なさいっ」
母親が相変わらず眉を寄せて吐き捨てるように怒鳴る。ウィンティアは思わず竦み上がる。嫌そうにメイド長がウィンティアの腕を掴み、歩き出す。子供の歩調に合わせる訳がない、ウィンティアは途中で何度も躓き、この度に無理やり引き上げられて痛みが走る。靴も片方脱げてしまった。
周囲はそんなローザ伯爵家一行を、不思議そうに見るだけ。
やっと解放されたのは、教会の正面入口だった。
そこでは、子供達に、教会職員がピンクのリボンで飾られたお菓子の袋を配布していた。あれは子供一人に一つ配布されるもので、去年、祖母に連れられて行った感謝祭で貰った。
久しぶりに甘いお菓子をもらえる。
メイド長はウィンティアの腕から手を離すと、エプロンで手を拭いて離れていった。
まずはキャサリンがお菓子を貰っている。キャサリンは今日も着飾り、周囲の子供達に比べても、飛び抜けて容姿は目立っていた。それを誇らしい顔で見ている両親。
寂しい、そう思うのが疲れてきた。
「さあ、お菓子ですよ」
ぼんやりと見ていたら、年老いた牧師がウィンティアにお菓子の袋を差し出していた。
ウィンティア、なんと言うんですか?
「あ、あ、ありがとう」
「はい。どうぞ」
牧師は体臭を纏っていたウィンティアに嫌な顔せず、お菓子の袋をくれた。
嬉しい。
本家に来て、初めて心が沸き立つように嬉しい。ウィンティアはお菓子の袋を抱き締めた。
「おや? 靴の片方どうしたのかな?」
靴下も履かず、素足で履いていた靴。メイド長に引っ張られて、途中で脱げてしまった。探しましょうね、と優しく言ってくれて、ウィンティアは涙が浮かぶのを感じた。久しぶりに感じた優しさに、涙が浮かぶ。
「ずるいわっ。あの子、私のドレスを盗んだくせにっ、お菓子貰っているわっ。お母様っ、あっちのリボンが方が綺麗だわっ」
キャサリンが耳障りな甲高い声を張り上げた。
教会で大々的に行われ、旅芸人が来たり、様々な出店も出て、沢山の人達が集まる。
ただ、ローザ伯爵家が行くのは、ただの感謝祭ではない。ある程度の社会的地位、つまり爵位があるか、教会にある程度の額を寄付しているか、積極的にチャリティーバザーに関わっているかしないと入れない特別な場所での感謝祭。
一般人との差別化したのは、以前、貴族夫人や子供を、ごった返す中から誘拐された事に起因する。無事に帰って来たものももちろんいたが、中には誘拐しすぐに絞め殺されり、女性の場合は凄惨な目に合い自殺者を多数出してしまったために、このような対応がなされるようになった。
ローザ伯爵家は馬車で教会まで移動。ウィンティアは荷物入れに押し込められた。狭くて埃っぽい中で、昨日の祖母の友人を思い出す。きっとあの人な助けに来てくれると、信じて耐えた。
馬車が止まり、荷物入れから出されたが、ドレスを掴まれ、放り出されるように出された。よろけたウィンティアは膝と手を付いた。痛みが走る。だが、泣いてもなにもしてくれないのは、身体に染み込んでいた。
「お父様っ、お母様っ、早く行きましょうっ」
「こらキャサリン、走ってはダメだよ」
「お菓子は逃げないわ」
「でも、あの綺麗なお花キャンディー、早くしないとなくなってしまうわ」
「そうだね、買いに行こう」
「待ってキャサリン、手を繋がないとはぐれてしまうわ」
急かすキャサリンを両親は優しく嗜める。すぐ近くには執事長とメイド長がしっかり固める。当然、ウィンティアは蚊帳のそとだ。
さっさと感謝祭の会場に向かうので、ウィンティアははぐれないように着いていくしかない。馬車はとっくに行ってしまったから。
きらびやかな感謝祭。
美しく着飾った貴族や裕福な平民が、思い思いに楽しんでいる。
ただ、ローザ伯爵家の後に小さくなって着いていくウィンティアに、奇妙な視線だ。
「お母様っ、あれが欲しいわっ。あのクッキーと、あ、あのリボンも欲しいわっ、ぬいぐるみっ」
次々にねだるキャサリン。母親は優しく微笑み、執事長に合図を送り、購入している。目につくものを片っ端から買っている。
感謝祭は祖母と来たことがある。ただ、このように別々の会場ではく、平民も貴族も一緒に楽しんでいた。祖母と暮らしていたのは地方の別荘地で閑散期だったこともある。そしてローザ伯爵家本家があるのは、ルルディ王国最大の人口を抱えた、王都だったからだ。
華やか感謝祭にウィンティアは戸惑い、ますます疎外感を覚えた。祖母との感謝祭では、必ずお菓子を買ってくれた。
「一つよ、ウィンティア。家に帰ればご馳走がありますからね」
祖母の優しい声。
会いたい、無性に、祖母に会いたい。
ぽろぽろ、涙が溢れる。
「何をぐずぐずしているのっ、さっさと来なさいっ」
母親が相変わらず眉を寄せて吐き捨てるように怒鳴る。ウィンティアは思わず竦み上がる。嫌そうにメイド長がウィンティアの腕を掴み、歩き出す。子供の歩調に合わせる訳がない、ウィンティアは途中で何度も躓き、この度に無理やり引き上げられて痛みが走る。靴も片方脱げてしまった。
周囲はそんなローザ伯爵家一行を、不思議そうに見るだけ。
やっと解放されたのは、教会の正面入口だった。
そこでは、子供達に、教会職員がピンクのリボンで飾られたお菓子の袋を配布していた。あれは子供一人に一つ配布されるもので、去年、祖母に連れられて行った感謝祭で貰った。
久しぶりに甘いお菓子をもらえる。
メイド長はウィンティアの腕から手を離すと、エプロンで手を拭いて離れていった。
まずはキャサリンがお菓子を貰っている。キャサリンは今日も着飾り、周囲の子供達に比べても、飛び抜けて容姿は目立っていた。それを誇らしい顔で見ている両親。
寂しい、そう思うのが疲れてきた。
「さあ、お菓子ですよ」
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「あ、あ、ありがとう」
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「おや? 靴の片方どうしたのかな?」
靴下も履かず、素足で履いていた靴。メイド長に引っ張られて、途中で脱げてしまった。探しましょうね、と優しく言ってくれて、ウィンティアは涙が浮かぶのを感じた。久しぶりに感じた優しさに、涙が浮かぶ。
「ずるいわっ。あの子、私のドレスを盗んだくせにっ、お菓子貰っているわっ。お母様っ、あっちのリボンが方が綺麗だわっ」
キャサリンが耳障りな甲高い声を張り上げた。
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