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行方不明⑩
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ユミル学園による保護者説明会は荒れに荒れた。
過激な体罰が当たり前だった時代はとうの昔。
ルルディ王国最大にして、唯一の王立学園だからと、高い授業料を支払い安心して通わせているのに。
代理とはいえ、寮母が寮管生により踊らせて、体罰・監禁、あげく行方不明だ。
逆恨みにて唆した女子生徒の処遇、寮母に対してはどうするのか? 行方不明となった女子生徒を真剣に探しているのか? 学園の責任はどうするのか?
そもそも何故体罰が? 嫡子でなければ、次子以降は手荒に扱うのか?
聞きながら、ジョージは耳を塞ぎたかった。
中には、真剣に自分の子供を預けても大丈夫なのかと、案じているものもいる。だが、中には怒鳴るだけ、無関係、興味本意、自分勝手なものばかり。貴族は他人の醜聞を好み、嗤い、それを使い見下し、何かしらの利権や評判を奪い取る。
ウィンティアの身を案じているのは、ほんの僅かだ。
あの新聞が出てから、準特進クラスに通う生徒の保護者が集められた。どこから情報がもれたか、だ。結局、どこから漏れたか不明だったが。アンネと言う女子生徒の保護者である子爵の叔父からは、ウィンティアの身を案じていると言われて、どれだけありがたかったか。他のクラスメートの保護者からもだ。
新聞ではウィンティアの名前は出ていなかったが、該当するのはウィンティアしかいない。アンネの叔父が、心配そうに見てくる。
とうとう、クラーラは倒れてしまった。ウーヴァ公爵もウィンティアの捜査をしてくれているが、あれからすでに二週間も経過している。ローザ伯爵家の中には絶望視するものもいる。ナタリアは時間があれば、学力裏側の森に行っている。
ジョージはまだ、諦めていない。いないが。
もどかしく、情けない気持ちでいっぱいだ。
あの日、レオナルド・キーファーさえ時間通りに来たら、いや、それ以前に、もっと昔、自身がキャサリンの『魅力』に操られてさえいなければ、こんな結果にはならなかった。
ピアノ教師だって、留守を託した父親が勝手にクビにして、あの女子生徒の母親に変更した。ペルク侯爵令嬢だって、キャサリンが節度ある対応さえしていれば。
ああしていれば、こうしていれば。
ふいに、飛び交う怒号が止まる。
誰かが、説明会会場に入って来たようだ。
軽く会釈して入って来たのは、端正な顔立ち、褐色の肌、銀色の髪のテヘロン人。
ジョージの記憶が甦る。
四年前に、キャサリンが不敬を働いた、テヘロン王国第二王子、アサーヴ殿下だ。
テヘロン王国の大使として、ルルディ王国に滞在しているのは知っていたが、何故ここに。
アサーヴ殿下は保護者席に座る前に、遅れて来たのを謝罪する。
そして、とんでもないことを口にした。
「この新聞に出た生徒に該当する令嬢を、我がテヘロン大使館で保護している」
と。
騒然となった。
騒然となったが、ジョージは足元が崩れ落ちて行く程の安堵が浮かぶ。
ウィンティアは無事だ。すぐに会いに行きたい、たとえ、ウィンティアに拒絶されてもその姿をみたい。すぐにクラーラに伝えたい。
会場から何故今頃になって、と。
アサーヴ殿下の説明はこうだ。
保護した令嬢は、当初酷い熱を出したこともあるが、精神的なショックで、事情を聞き出したのはつい最近。あの新聞記事が出た次の日だった。
そして、その令嬢の持ち物だと、レオナルド・キーファーとペアで作られた懐中時計と、片方の白い靴を提示した。
過激な体罰が当たり前だった時代はとうの昔。
ルルディ王国最大にして、唯一の王立学園だからと、高い授業料を支払い安心して通わせているのに。
代理とはいえ、寮母が寮管生により踊らせて、体罰・監禁、あげく行方不明だ。
逆恨みにて唆した女子生徒の処遇、寮母に対してはどうするのか? 行方不明となった女子生徒を真剣に探しているのか? 学園の責任はどうするのか?
そもそも何故体罰が? 嫡子でなければ、次子以降は手荒に扱うのか?
聞きながら、ジョージは耳を塞ぎたかった。
中には、真剣に自分の子供を預けても大丈夫なのかと、案じているものもいる。だが、中には怒鳴るだけ、無関係、興味本意、自分勝手なものばかり。貴族は他人の醜聞を好み、嗤い、それを使い見下し、何かしらの利権や評判を奪い取る。
ウィンティアの身を案じているのは、ほんの僅かだ。
あの新聞が出てから、準特進クラスに通う生徒の保護者が集められた。どこから情報がもれたか、だ。結局、どこから漏れたか不明だったが。アンネと言う女子生徒の保護者である子爵の叔父からは、ウィンティアの身を案じていると言われて、どれだけありがたかったか。他のクラスメートの保護者からもだ。
新聞ではウィンティアの名前は出ていなかったが、該当するのはウィンティアしかいない。アンネの叔父が、心配そうに見てくる。
とうとう、クラーラは倒れてしまった。ウーヴァ公爵もウィンティアの捜査をしてくれているが、あれからすでに二週間も経過している。ローザ伯爵家の中には絶望視するものもいる。ナタリアは時間があれば、学力裏側の森に行っている。
ジョージはまだ、諦めていない。いないが。
もどかしく、情けない気持ちでいっぱいだ。
あの日、レオナルド・キーファーさえ時間通りに来たら、いや、それ以前に、もっと昔、自身がキャサリンの『魅力』に操られてさえいなければ、こんな結果にはならなかった。
ピアノ教師だって、留守を託した父親が勝手にクビにして、あの女子生徒の母親に変更した。ペルク侯爵令嬢だって、キャサリンが節度ある対応さえしていれば。
ああしていれば、こうしていれば。
ふいに、飛び交う怒号が止まる。
誰かが、説明会会場に入って来たようだ。
軽く会釈して入って来たのは、端正な顔立ち、褐色の肌、銀色の髪のテヘロン人。
ジョージの記憶が甦る。
四年前に、キャサリンが不敬を働いた、テヘロン王国第二王子、アサーヴ殿下だ。
テヘロン王国の大使として、ルルディ王国に滞在しているのは知っていたが、何故ここに。
アサーヴ殿下は保護者席に座る前に、遅れて来たのを謝罪する。
そして、とんでもないことを口にした。
「この新聞に出た生徒に該当する令嬢を、我がテヘロン大使館で保護している」
と。
騒然となった。
騒然となったが、ジョージは足元が崩れ落ちて行く程の安堵が浮かぶ。
ウィンティアは無事だ。すぐに会いに行きたい、たとえ、ウィンティアに拒絶されてもその姿をみたい。すぐにクラーラに伝えたい。
会場から何故今頃になって、と。
アサーヴ殿下の説明はこうだ。
保護した令嬢は、当初酷い熱を出したこともあるが、精神的なショックで、事情を聞き出したのはつい最近。あの新聞記事が出た次の日だった。
そして、その令嬢の持ち物だと、レオナルド・キーファーとペアで作られた懐中時計と、片方の白い靴を提示した。
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