ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
122 / 338

テヘロン大使館⑦

しおりを挟む
 レオナルド・キーファーはそこまでして私との婚約に拘るのは、後見のウーヴァ公爵から脅されているんじゃないかな? だから、あれだけ必死だったのかな?
 そう言えば、婚約の経緯、しらないや。
 だからと言って知りたくはない。もう、散々な目に合ってるからね。
 アサーヴ殿下の学園の捜索状況を聞く。
 私が行方不明だと言うのはクラスメートには知られたが、口止めされていること。教職員達が総動員で捜索しているって。わぁ、申し訳ない気持ちが沸き上がる。確かに代理の寮母やあのペルク侯爵令嬢や寮管生二人には腹が立っているけど。探してくれてる教職員達には申し訳ない。
 
「それで、だ。ウィンティア嬢」

 アサーヴ殿下が改まる。

「はい」

「いずれは君がここにいるのは勘づかれるだろう。そうなれば、君はどうしたい?」

「帰ろうと思います。ナタリアも心配しているでしょうし、探してくれている先生達にも申し訳ないので」
 
 まだ、微熱あるけどね。
 これくらいなら、寮のベッドでも大丈夫だ。ムチ打ちされた後もいいしね。

「ティアさん、まだ熱があるでしょう? なら、もう少しここにいたら?」

「皆さんのご好意は嬉しいのですが、やはり、迷惑をおかけします。何もお返しできないのが、心苦しいのですが」
 
 やはり、探し回っているナタリアや教職員には申し訳ない。ウーヴァ公爵やローザ伯爵には、なんとも感じないけど。スティーシュルラ様とそんな話をしていると、ふーん、みたいな顔でアサーヴ殿下がみてくる。
 な、なんだろ? まるで、探るような視線。

「な、なんでしょうか?」

「いや、失礼。本当にあの女の妹かと思って」

 びしっ。

「あれと同列にみないで欲しいです」

 他国の王子様、アサーヴ殿下にとても失礼な言い方を。

「す、すみませんっ」

「いや、構わないよ。君の言い分も分かる気がするよ。あの女は酷かったしな」

 思い出すように言うアサーヴ殿下。
 まるで、見ていたみたい。
 まさか。

「あの、アサーヴ殿下。キャサリンが起こした騒動をご覧になったりしてますか?」

 おずおずと聞くと、アサーヴ殿下は少し口ごもる。

「君は、どこまで知っている?」

 と、確認される。
 実はキャサリンが何故テヘロン王国に、永久入国禁止になったトラブルは、詳しく知らない。ローザ伯爵家に昔から支える使用人や、生物学上の両親なら知っているだろうけど、正直長い時間話をするのは拒絶反応が出る。
 ただ、永久入国禁止になるような事、よっぽどな事を、マナー違反女キャサリンがやらかしたって事しか分からない。

「それくらいしか知らないんです」

「その認識で間違い。キャサリン・ローザは、我が父と母達の怒りを買ったのだ」

 何をやらかしたんだ、あのマナー違反女は?

「ウィンティア・ローザ。まだ君は幼い。あの時の話は、こちらの事情もあるから、もう少し大人になってからにしなさい」

 う、子供扱い。
 確かに、ウィンティアは子供だけど。
 何をやらかしたんだ?
 ウィンティアの記憶では、あの八歳の時のローズマリー勲章の話辺り。

「ローザ伯爵がローズマリー勲章の時ですよね」

 呟く私に、アサーヴ殿下は首を横にする。

「ウィンティア嬢、話はここまでだ。まだ微熱があるのだ、休みなさい。君の存在に関しては明日話そう」

 無理やり話を終わらせようとしている。聞いた方がいいんだろうけど、八歳の頃、ローズマリー勲章の言葉がぐるぐる回る。

「ティアさん? ティアさんどうしたの? ティアさん、ティアさん?」

 なんだろ? なんだろ? 息が、苦しくなってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて

奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】 ※ヒロインがアンハッピーエンドです。  痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。  爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。  執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。  だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。  ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。  広場を埋め尽くす、人。  ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。  この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。  そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。  わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。  国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。  今日は、二人の婚姻の日だったはず。  婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。  王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。 『ごめんなさい』  歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。  無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。

処理中です...