ミルクティーな君へ。ひねくれ薄幸少女が幸せになるためには?

鐘ケ江 しのぶ

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新学期に向けて⑦

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 午後から、アンジェリカ様による講義が始まる。
 私が現在のルルディ王国内の貴族のパワーバランスを知らないからね。それに、赤い本の中で、被害者と名を連ねた事があるリリーナ・エヴァエニエス嬢の事もあるから詳しく知っておいた方がいいだろうと。

「全部は無理でしょうから、まず、確認からしていくわね。それを修正していくわ」

 まずは。

「まず王太子殿下、オーガスト殿下は当然知っているわね?」

「はい」

 姿絵でしか見たことないけどね。
 確か今年で五十歳のダンディーなおじさま、と言う噂が。

「素敵な方であるのは変わりないわ。とても尊敬できる方よ。正室のエリザベス妃殿下と側室のモニカ妃殿下は?」

「えっと、エリザベス妃殿下はマリーン公爵家のご令嬢で、才色兼美な方」

 ユミル学園の入学式で挨拶していた姿を見たが、それは美しい方だ。

「そうね。正解には、マリーン公爵家ゆかりの伯爵家から養女となり、オーガスト殿下に嫁いだのよ。王家に嫁ぐ最低限の資格は?」

 教えてアンジェリカ先生。

「まず、侯爵家以上であること。当時オーガスト殿下の妃殿下になれる妙齢の令嬢が侯爵家以上にいなかったのよ」

 ルルディ王国では従兄弟同士での結婚は認められない。ただ、これには条件がある。同じ母親から生まれた兄弟の子供達と限定される。つまり、私の子供とキャサリンの子供は結婚出来ない。当時セシリア・ウーヴァがいたが、この条件に当てはまってしまい除外された。現在の国王様の実の姉が、ウーヴァ公爵に降嫁し、レオナルド・キーファーの父親、シーザー・ウーヴァと、セシリア・ウーヴァを生んだ。
 で、他国から、と思ったそうだけど、国内で探したらドンピシャのエリザベス様がいた。オーガスト殿下とも波長が合ったこともあった。
 貴族間のパワーバランスを考えて、マリーン公爵家が養女にして、オーガスト殿下に嫁いだ。

「次に諸外国に外交ができるだけの教養があること」

 王家の役割ね。

「そして、後続となる子を産むこと。では、ウィンティア嬢。エリザベス妃殿下のお子さまの名前は?」

「第一王女セーラ殿下、第二王女アメリア殿下、第二王子レオンハルト殿下」

「正解」

 良かったっ。

「では、それぞれの現在の王女殿下はどうしていますか?」

「えっと、セーラ殿下はシルヴァスタ王国の公爵家に嫁ぎ、アメリア殿下はリィフシテ王国の王子に」

「まあまあね」

 微妙な返答だったんだ。

「セーラ殿下はシルヴァスタ王国国王の実弟、つまり大公閣下に嫁いだのよ。政略ではあったけど、お互いを尊重して支えあっているわ。三人の子宝にも恵まれているし。アメリア殿下はリィフシテ王国の第二王子に嫁いだけど、第一王子が身体が弱くてとても王族としての責務に耐えられないと、アメリア殿下が嫁ぐと同時に王太子になられたわ。現在二人目を懐妊中よ」

 おめでたい。

「では、側室の役割と資格は?」

「それは、もし正室に子供ができなかった場合に」

 と、答えて、ふと思う。
 あれ、なんでモニカ妃殿下、側室に入れたの?
 確か、モニカ妃殿下が側室になったのは二十年前。既にセーラ殿下とアメリア殿下がいたはず。ルルディ王国は男でなければ、と言う考え方はない。だって優秀な女王様がいた事実があるから。あ、もしかしたらそれぞれ嫁いでしまうから、次の子供が必要で? あら? レオンハルト殿下いるよね? あ、まだ、生まれてないか。でも、まだ、あの当時ならエリザベス妃殿下も懐妊できる年齢のはずなのに。
 昔は側室やら妾やらいたらしいが、今では基本的には側室はよほどの理由でないと認められないはず。
 以前、アサーヴ殿下がモニカ妃殿下について、言っていたけど、あまり好印象ではなかったはず。
 そんな人がなぜ側室に?

「あのアンジェリカ様、どうしてモニカ妃殿下は側室にはいれたんですか?」
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