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舞台は整う⑩
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二階の一室に通されて、一息つく。
「ナタリア大丈夫?」
「はい、思ったより」
けろり、とした顔。
「あの二人のみっともない姿で冷静になれました」
ですって。
ナタリアが傷ついてないならいいけど。
「ウーヴァ公爵令嬢様、かつての家族がご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」
ナタリアが深々と頭を下げる。
「いいのよ。こちらが仕掛けた事だし。さ、あなたもお座りなさい」
本来ならナタリアはこの場でソファーには座れないけど、アンジェリカ様の許可あり。
深い色合いのソファー、私の隣に座る。対面にはアンジェリカ様。バトレルさんは慣れた手つきで、お茶の準備をし始めたので、慌てナタリアが手伝いに行くが、すげなく却下されてる。
しゅん、と再び座るナタリア。
「さあ、これで下地の半分って事ね」
「半分?」
バトレルさんが出してくれたお茶は、ナタリアのお茶とは違い、僅かに柑橘の香りがした。
茶葉が違うんだね。ミルクも砂糖もないのに美味しい。
アンジェリカ様は相変わらず優雅にカップを傾ける。
「そうよ。裁判になればゾーヤとティーシモンのおバカップルは自滅だけど、あのアデレーナにも自爆して貰わないとね」
おバカップル?
「それに思ったより協力者が出来たのよ。キリール・ザーデクの騎士仲間達が、証言台に立つと言ってくれたの。流石に全員は無理だけど、発言力の高い方に出廷してもらうし、出来なかった方は証言を書面化して提出してくれるわ。本当に人望がある方ね」
ナタリアが嬉しそうだ。あ、涙が浮かんでる。私のハンカチの出番ね。
「それから、葬儀の後、貴女達を一時保護してくれたモロッカ男爵が帰国されます」
「え? おじ様が?」
モロッカ男爵はキリール・ザーデクとはユミル学園からのお友達で、あの葬儀の日に駆けつけてナタリア達を保護してくれた人だ。確か、カルメンに仕事に行ってるって聞いたけど。任期はまざ先だから、ご家族一緒に行ったってナタリアから聞いた。
この人がゾーヤにキリール・ザーデクの死亡した原因を再調査するように言い募った人ね。他にも何人かいたらしいが、ずっと言い募ったのはこの人。ちなみに、夜会でいちゃこらしていたゾーヤとティーシモンに向かって、暴露もどきをしたのは、キリール・ザーデクの直属の上司だった。この人も証言台に立つと。
「でも、まだ、任期が」
「だから『一時』帰国よ。たまたま『一時』帰国した時にキリール・ザーデクの名誉の回復の為の裁判を知り、『たまたま』休みが重なった日が証言台に立つ日よ」
ほっほっほっ。
権力者、こわっ。
ナタリアもなんとなくそんな顔。
「それから、私の傘下のご婦人にお願いして、夜会かお茶会かのどちらかにあの親子を引っ張りだすわ。おそらくあの様子なら行き先々で今日の話をするだろうし、話題好きのご婦人なら彼女達から面白いおかしく聞き出すでしょう。一度、夜会やお茶会に呼ばれたら、次に私がなにもしなくても、ゴシップ好きが呼ぶでしょうからね」
そうなんだ。
「でも、もしかしたらウーヴァ公爵令嬢様の悪し様に言うかもしれません。あの人達には配慮が」
ナタリアが心配している。
「心配してくれているのね。ありがとう。でも、私が石女なのは事実だし、悩むのも面倒になってるわ。それに私には私を愛してくれるジョナサンがいるの、十分よ」
ふ、と笑うアンジェリカ様。
デリケートな問題だけど、アンジェリカ様だけではないと思うけどな。
「あのアンジェリカ様だけに問題があるとは思えません。妊活とかどうなっていますか? その旦那様はどれくらい協力してくれてます?」
「妊活?」
はい? と、聞き返してくるアンジェリカ様。
それを見た瞬間、世界が白に染まった。
「ナタリア大丈夫?」
「はい、思ったより」
けろり、とした顔。
「あの二人のみっともない姿で冷静になれました」
ですって。
ナタリアが傷ついてないならいいけど。
「ウーヴァ公爵令嬢様、かつての家族がご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」
ナタリアが深々と頭を下げる。
「いいのよ。こちらが仕掛けた事だし。さ、あなたもお座りなさい」
本来ならナタリアはこの場でソファーには座れないけど、アンジェリカ様の許可あり。
深い色合いのソファー、私の隣に座る。対面にはアンジェリカ様。バトレルさんは慣れた手つきで、お茶の準備をし始めたので、慌てナタリアが手伝いに行くが、すげなく却下されてる。
しゅん、と再び座るナタリア。
「さあ、これで下地の半分って事ね」
「半分?」
バトレルさんが出してくれたお茶は、ナタリアのお茶とは違い、僅かに柑橘の香りがした。
茶葉が違うんだね。ミルクも砂糖もないのに美味しい。
アンジェリカ様は相変わらず優雅にカップを傾ける。
「そうよ。裁判になればゾーヤとティーシモンのおバカップルは自滅だけど、あのアデレーナにも自爆して貰わないとね」
おバカップル?
「それに思ったより協力者が出来たのよ。キリール・ザーデクの騎士仲間達が、証言台に立つと言ってくれたの。流石に全員は無理だけど、発言力の高い方に出廷してもらうし、出来なかった方は証言を書面化して提出してくれるわ。本当に人望がある方ね」
ナタリアが嬉しそうだ。あ、涙が浮かんでる。私のハンカチの出番ね。
「それから、葬儀の後、貴女達を一時保護してくれたモロッカ男爵が帰国されます」
「え? おじ様が?」
モロッカ男爵はキリール・ザーデクとはユミル学園からのお友達で、あの葬儀の日に駆けつけてナタリア達を保護してくれた人だ。確か、カルメンに仕事に行ってるって聞いたけど。任期はまざ先だから、ご家族一緒に行ったってナタリアから聞いた。
この人がゾーヤにキリール・ザーデクの死亡した原因を再調査するように言い募った人ね。他にも何人かいたらしいが、ずっと言い募ったのはこの人。ちなみに、夜会でいちゃこらしていたゾーヤとティーシモンに向かって、暴露もどきをしたのは、キリール・ザーデクの直属の上司だった。この人も証言台に立つと。
「でも、まだ、任期が」
「だから『一時』帰国よ。たまたま『一時』帰国した時にキリール・ザーデクの名誉の回復の為の裁判を知り、『たまたま』休みが重なった日が証言台に立つ日よ」
ほっほっほっ。
権力者、こわっ。
ナタリアもなんとなくそんな顔。
「それから、私の傘下のご婦人にお願いして、夜会かお茶会かのどちらかにあの親子を引っ張りだすわ。おそらくあの様子なら行き先々で今日の話をするだろうし、話題好きのご婦人なら彼女達から面白いおかしく聞き出すでしょう。一度、夜会やお茶会に呼ばれたら、次に私がなにもしなくても、ゴシップ好きが呼ぶでしょうからね」
そうなんだ。
「でも、もしかしたらウーヴァ公爵令嬢様の悪し様に言うかもしれません。あの人達には配慮が」
ナタリアが心配している。
「心配してくれているのね。ありがとう。でも、私が石女なのは事実だし、悩むのも面倒になってるわ。それに私には私を愛してくれるジョナサンがいるの、十分よ」
ふ、と笑うアンジェリカ様。
デリケートな問題だけど、アンジェリカ様だけではないと思うけどな。
「あのアンジェリカ様だけに問題があるとは思えません。妊活とかどうなっていますか? その旦那様はどれくらい協力してくれてます?」
「妊活?」
はい? と、聞き返してくるアンジェリカ様。
それを見た瞬間、世界が白に染まった。
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