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二年の年月⑥

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「お、お綺麗ですっ。お嬢様っ、お綺麗ですっ」

 ナタリアが感涙。
 ウーヴァ公爵家のメイドさんの力作となった私。ナタリアとヴァレリーだけが先に会いに来た。おそらく会場では長く話せないからね。
 私のデビュタントのドレスは真っ白のドレスだ。基本的にデビュタントは白で、差し色を少し入れるらしいが、私は真っ白。繊細なレースのドレスだ。いつかみた、セシリア女公爵が見にまとっていたドレスを参考にされている。うん、あれ、おしゃれだったし。それを聞いたマダム・ガーヤが気を良くして作ってくれたのが、このドレスだ。私のささやか希望も取り入れてくれて、ウィンター・ローズの飾りが襟元を飾るドレスだ。

「ナタリア、化粧が落ちちゃうよ」

 ナタリアもしっかり支度してきている。いつもの三つ編みをアップにして、きちんと化粧をして、大人っぽくなってるのに。素早くウーヴァ公爵家のメイドさんが手直ししてくれた。

「あ、あのお嬢様っ」

 ヴァレリーがやや緊張した声をあげる。今日はスーツだ。これは、ローザ伯爵家の当主、つまりウィンティアの生物学上の父親のスーツを直した。ヴァレリーはこの二年の年月が、子供から少年への変貌を遂げた。この分なら背丈もあっという間に追い越さそう。

「お、お綺麗ですっ」

「ありがとうヴァレリー」

 素直なんだか、良く分からないがもじもじしながらいう姿はかわいいかな。

「キーファー様が浮気したら、すぐに迎えに来ますからっ」

「こら、ヴァレリーッ」

 ナタリアがぽかり、とする。
 何を言うかねこの子。でも、ヴァレリーなりの優しさと取ろう。

「ありがとうヴァレリー、そうなったら、よろしくね」

「ウィンティア嬢、その様なことはありませんからっ、ほら、君、お姉さんと会場でもお菓子でも食べてなさいっ」

 慌てた様子でレオナルド・キーファーが肩を抱いてくる。本日はウーヴァ公爵家の皆さんに磨き上げられて、更なるイケメンとなっている。

「子供扱いしないでください」

 きゃんきゃん吼えるヴァレリー。子犬みたいでかわいいなあ。

「実際子供だ。今日のお菓子はウィンティア嬢監修だ、味わって食べたまえ」

 う、とつまるヴァレリー。お菓子で釣られるなんて、子供だない。
 ナタリアがペコペコしながらヴァレリーを引きずって行った。
 見送って、招待客の皆さんが来る頃合いだ。既に主宰のウーヴァ公爵夫妻はスタンバってる。私はレオナルド・キーファーに引率されて向かった。私達の婚約発表なんて、今回のお茶会ではおまけにはなるはず。もっと大きな発表が控えているのだから。
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