無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

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第一章

学園生活その2

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学園での暮らしにもなじみ始めた。

ある朝、クラスに行くとキースが話しかけてきた。
「ようユージ。ところでお前はクラブには入らないのか?」
え?クラブ??そんなものがあるのか。

どうも魔術系、武術系に分かれていて主に授業内容をより深く学ぶためのクラブ活動があるらしい。

クラブ活動か・・・入るとしたら武術系か風魔法系だろうか。

「キースはクラブ入ってんのか?」
「いや、俺ははいってねぇ。それよりもやることが多くてよ!」
とニャハハと笑った。

特に義務というわけでもないらしい。

ならばいいか・・いや見学だけでも行ってみるか。

俺は放課後を待ちとりあえず風魔法の研究をしているクラブに行ってみた。

部室を除くと風魔法研究部とそのままの表紙がかかっている。

ノックをして
「すいません、見学希望なんですが・・・」
というと中から、「ああ、空いてるから入って~と間延びした返答が」

中に入ってみると部員は3名ほど。なんとアカネもいた。

「あら、ユージじゃない!風魔法研究したいの?」

「ああ、実はそうなんだ。ちょっと興味があって・・」

「そう。なんでもいいから自分の武器になるものを身につけたほうがいいわよ。風魔法は汎用性が高いし。」

そこで部長らしき男が話しかけてきた。
スラっとした長身のイケメンだ。藍色の髪がサラサラとなびいている。
「やあ。君が2年次生に編入してきたユージ君だね。僕はウェイ・フーシン。」
今度は中国っぽい名前だな。珍しくないんだろうか。

「色々と噂は聞いてるよ、ユージ君」

どんな噂なんだろう?チンピラに絡まれてた、とかだろうか?

「『英雄の村』出身で賢者ルース・アインハルト、前騎士長ベルフェ・グールに教えてもらっていたんだろう?」

「ああ、はい・・でもあまり魔術の才能はなくて・・」
と苦笑いすると、

「いや、その経験はこれから君が成長するにつれ、生きてくるよ。」
そんなもんなのかな。俺はとにかくホーンテッドをいかした戦いに風魔法を使うつもりなんだけど。

「まぁ、今日はいつも僕らがやってる活動を見ていくといい。」
と爽やかに笑った。

「ウェイ部長は3年次生でSクラスなのよ。風魔法を使わせたら中等部一ね。貴族で生徒会の副会長もやってるのよ」
アカネが追加情報を教えてくれる。
文部両道というやつか。おまけにイケメンで長身。モテそうだなぁ・・
などと早くも劣等感を感じていると、

「貴族といってもしがない男爵さ。じゃあちょっと外に出て研究を見てもらおうか」
とウェイ部長が誘ってきた。

外に出る道すがら、
「なぁ、アカネはなんで風魔法なんだ?火魔法じゃないのか?」
と聞いてみた。

すると
「甘いわね。火魔法と風魔法は相性がいいのよ。例えば魔術で起こした炎を好きな方向に飛ばせたり、竜巻に混ぜれば炎をまとったフレイムストームという複合魔術になるわ」

なるほど。確か中国の風水あたりでも似たようなことを言ってたような・・細かくは覚えていないけど。

あ、そういえばキースにアイリスのこと頼まれてたんだっけ。あとで聞いてみるか。

校舎の外に出てしばらく歩くと古代コロッセオのようなだだっぴろい闘技場に着いた。

「ここなら周辺への被害を気にしなくていいからね。じゃあ始めようか」
とウェイ部長が言う。
しかし校舎内にコロッセオって、どんだけ広いんだこの学園。
土地事情が日本と全然違うな。地球でも海外の学校とかこんなもんなんだろうか。

「じゃあ、まずハンナ。見本を見せてくれ」

するとおとなしそうな栗色の髪をした少女がおずおずと出てきて
「あ・・あの私も部長やアカネさんほど上手じゃないのであまり参考にならないかもしれませんが・・・」

と断りを入れてきた。何だろう?同族的な何かを感じる。

ハンナは『風刃!』と唱えるとその手を中央付近に建てられた木の杭に向け、魔法を放った。真空の刃は見事に杭を両断し、やがて風の刃は消えていった。

・・十分上手じゃないか・・

「ありがとうハンナ!さすがに精度が安定してるね!」
とウェイ部長が褒める。

「じゃあ次はアカネだ。なんでもいいから複合魔法を見せてくれるとありがたいな。」

アカネは頷き、前に足を進めると
フレイムウォール!』と唱えた。

すると目の前に5メートルほどはありそうな炎の壁が現出し天空にそびえたっていた。
続いて
円壁サークル!』
ととなえると炎の壁が上から見て円形に変化し、その両端を合わせ丁度〇の字になった。
これ、魔物の集団とか攻めて来たら、包み込んで焼くとかできるんじゃないだろうか。
すごいなアカネ。さすがだ。

「じゃあ、最後は僕が見せるね」
ウェイ部長が一歩進んで呪文を唱える。
サンダーストーム!』
唱えるなり、雷を伴った嵐が巻き上がりコロッセオ中心部から激しく立ち上っていく。
これは・・魔物は嵐で巻き上げられ抵抗もできず雷で焼き切られるな・・。

凝縮コンデンス!』
次の呪文で竜巻が空間に吸い込まれるように圧縮されていく。
これは・・空間魔法だろうか?生き残った魔物もこの圧縮重力場では生き残れないだろうと思われた。

はー、想像以上にすごいな・・。

呪文を収めたウェイ部長が
「どうだった?ユージ君?風魔法研究部もなかなかやるだろう?」
と爽やかに微笑みかけてきた。

「あ、なんかもう全部すごくて・・言葉が見つかりません。」

この部に入ってみようかという気になりつつ、質問をぶつけることにした。
「あの・・やってみたいことがあるんですが、こんなことは可能でしょうか?」

そこで俺は考えていた高速移動とジャンプ、剣に真空をまとわせることについて聞いてみることにした。

「うーん、なるほどね・・剣と魔術を合わせた戦い方では面白いかもね。ただ・・高速移動やジャンプなどは風魔法の基礎だからできると思うけど、剣に真空をまとって射程を伸ばすのは上級の操気の術が必要になる。操気の術は風魔法の基本なんだけど、真空を作り出して形を固定するのは難しいんだ。もちろんできれば剣の助けになることは間違いないけどね。」

なるほど。そう簡単にはいかないってことだな。でも不可能ではないらしい。

「わかりました。僕も風魔法研究部に入部させてください」

「おお!入部してくれるかい?正直部員が少なくて生徒会に回してもらえる予算が厳しかったんだ!助かるよ!!副会長の肩書も予算には関係ないからね・・」
予算が厳しかったのか?こんなに使える魔法研究してるなら、もっと部員がいてもいいようなもんだが。部長もイケメンだし。

「ほかに幽霊部員が一人いるんだけど、なかなか顔出さないやつでね。活動報告するときにいつも突っ込まれて困ってたんだ。
生徒はどうしても火魔法や武術系などに派手さを感じていってしまうからね・・・」
風魔法は人気ないのか。意外だ。この世界の常識はよくわからないな。

「アカネのように複合魔法を使えるレベルなら問題ないけど、単体の威力ではどうしても風魔法は炎や雷に負けるからね・・仕方ないんだよ。」

確かに単体の属性なら炎や雷のほうが手っ取り早く殺傷能力の高い魔法を身に着けられるだろう。言われてみればわかる気がする。

すると
「ユージ君の言った方向で風魔法をまとう方法については僕も協力させてもらうよ。大事な部員だからね!」
と言ってくれた。

明日から本格的に風魔法を研究するぞ。

――――――――

コロッセオからの戻り道で、
「あ・・あのアカネさん。ちょっと話があるんだけど・・・」
とアカネに聞いてみた。

アカネは
「アカネでいいわよ。何??」
とどこか期待したようなまなざしで聞き返してきた。

「あ、じゃあアカネで。アイリスのことなんだけど・・」

するとその瞬間、アカネはがっかりしたように
「ユージも?アイリスを狙っているの??」
と盛大な勘違いをされてしまう。
いや、俺はどっちかというとアカネのほうが好みなんだけど・・

「もうしょっちゅう聞かれてうんざりしてるのよね。本人に聞けばいいのに直接。
手紙渡してくれって頼まれたり、告白を私経由でしようとしたり・・」

「あ、違うんだ。俺じゃなくて、その、友人が・・」

アカネは少し気を持ち直した様子で
「友人?あなたキースくらいしか友人いないでしょ?で、キースがアイリスの何だって?」
とあっさり看破されてしまう。

「いや、まぁそうなんだけどね・・(苦笑)」
「さっさと言いなさいよ」
「まぁ、そのアイリスが好きなものとか好みのタイプとか教えてほしいんだ」
「ふーん・・・」

しばしの沈黙のうち

「まぁいいわ。同じ部に入ったよしみで教えてあげる。アイリスは、歴史とか考古学が好きみたいよ。趣味としてね。将来の夢としては前にも言ったけどアイリスは優秀なヒーラーだから将来は国の医療体制を改善したいって思ってるみたいね」

「なるほどね・・。なんか歴史とか考古学ってアイリスを考えればすっきり感じるな・・それで好みのタイプは?」

「それは・・趣味の会う人じゃない?普通に考えて。」
いや、そんな一般常識みたいなこと言われても困るんだが・・まぁいいだろう。趣味や夢がわかっただけでもキースにはいいネタになるだろう。

「ありがとう。助かったよ。ところでアカネのタイプは?」

「内緒!」
とアカネはかわいく舌を出して先に言ってしまった。
しまった・・先にアカネのタイプを聞いておくべきだったか・・
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