無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

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第二章

信長からの呼び出し

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レインの誘拐事件からしばらくして、俺の下にウェイ部長が来て言った。
「ユージ、ご老公がお呼びだ。」

「普通に学校を休めってことですか?」

「いや、三日後に迎えの者をよこすそうだ。準備だけして待っていてくれ。寮まで迎えに行くから。」

「ちょうど休みの日ですね。わかりました。」

――――――――

三日後。

俺は迎えに来た馬車に乗り、王宮へと向かっていた。

これで王宮も二度目か。

前回はビビってたけど、今回は少し慣れてきた気がする。

色々と考えるうち、馬車は王宮へ到着した。

案内の方が俺を信長さまの部屋に連れていく。

「ご老公。ユージ殿をお連れしました。」

「入れ。」

短い応答の後、部屋に通される。

今回は以前のような戦国時代ファッションではなく、この国の上流階級の格好をしていた。

しかし、何を着ても似合うなぁ・・さすが尾張一の美男子と言われただけはある。

などと不躾なことを考えていると、

「久しい・・くもないかの。ユージよ。」

「ええ、ひと月ほど前にお目にかかりました。」

「ふん。まぁ良いわ。時候の挨拶などは嫌いじゃからな。」

信長はそう言うと

「ところでコルトン家の誘拐騒動を収めたそうだの?」
と聞いてきた。

「ええ・・まぁまた仲間に助けられました。」

「フッ、謙遜せずともよい。情報は入っておるからの。」

「は、はあ・・。」

「お主は草の真似事もできるようじゃな。実はその腕を見込んで頼みたいことがあるのじゃ。」

俺に頼み?

「実はお主の通う学園の西方にちと怪しい動きがあっての。」

「怪しい動き・・ですか?」

「うむ。普段は群れることない魔獣どもがどうやら集まりだしておるようなのじゃ。」

「魔獣が群れを・・」

「現在のところ。百匹程度だが・・いまだその数を増やし、集結させつつある。」

「それは・・恐ろしいですね。」

「一気に軍で片を付けてもよいのだが、その前に気になることがあってな。」

「気になること・・ですか?」

「どうやら魔物たちの背後に『テイマー』がいるらしいのよ。面倒にもな。」

テイマー・・魔獣を使役する術者だったか?

「その顔は『テイマー』について知っておるようだな。では『蒼狼の会』はどうだ?」

「!・・つい最近コルトン家の事件で耳にはさみました。」

「そうか。厄介な連中でな。国をまたがって組織を運営しているうえ、なかなか尻尾を見せん。一箇所拠点をつぶしてもすぐにまた別拠点が立ち上がるといった具合でな。面倒なことこの上ないわ。」

「はい、同じようなことを聞きました。上流階級の者は知っているようです。」

「奴ら、特に隠し立てて行動をするわけではないからの。むしろ名前を売るためにテロ行為を行うことすらある。」

「信長さまのいた時代での本願寺のようなものでしょうか?」

「本願寺よりタチが悪いわ!奴らならばまだ拠点やおおよその戦力がわかったが、『蒼狼の会』はその規模も目的も見えん。」

「なるほど。」

「そして今回の魔獣集結の背後に『蒼狼の会』のテイマーがいると儂は睨んでいる。」

「!」

「何回か草も放ったが、なかなか思ったような結果が返ってこなくてな。・・未だに背後の影がつかめん。」

信長様の草だ。優秀に違いないだろうが・・それでもダメだったのか。

「そこでふと、コルトン家の事件を解決したお主の顔が浮かんだのよ。お主の力ならば草としても働けるであろう?」

「確かに・・可能ですが、以前お話させていただいた通り、コールには三分の制限があります。最近少し時間は伸びましたが・・それでもたかが知れています。」

「わかっておる。何も一人でやれといっておるわけではない。心当たりものを見繕って情勢を見て来い。背後にいるものの姿がわかれば上出来じゃ。難しければ始末しなくともよい。」

テイマーは殺さずともいいということか。

「わかりました。費用や時間の制約はありますか?」

「費用はつぎ込んでも構わん。が、時の猶予は十日以内じゃ。これ以上魔獣が集結すると被害が大きすぎるからな。」

「わかりました。やってみます。」

――――――――・・・

数日後。

俺、アカネ、アイリス、アイズは魔獣集結の噂があった学園さらに西の森近くに来ていた。

一応、ウルヴァンにも声をかけてみたが、
「ああ?魔獣だぁ?俺のメンタルブレイクは知能の低い獣には通用しにくいんだよ!そんな面倒なことやってられねぇなぁ!」
と断られてしまった。

そして・・

「ここか・・」

「ユージ。魔獣には鼻の利くものも多いわ。一応風上から探るようにしたほうがいいわよ。」
アカネの助言で俺たちはできるだけ風上から森に近づいていく。

今のところ何も見えないが・・

「!ユージ!もうだいぶ近づいてきてるよ!そろそろ見えそう。」
とアイズがいち早く敵の存在を察知する。

より慎重に歩を進めていく。

皆、簡易な鎧に風魔法が付与されたブーツ、籠手などを装備している。
助けになればいいんだけど。

森に入ってから一時間ほど経過した。

「・・いた。」

森の中、少し開けた草原に狼型の魔獣が集結していた。

!これは・・千匹はいるんじゃないのか?
前情報の百匹くらいと差があり過ぎる。

「!ブルータル・ウルフよ。好戦的ですばしっこいわ!ユージ気を付けて!」

俺たちは少し離れた木の陰から様子をうかがった。

今のところブルータル・ウルフに動きはない。

テイマーらしき影は見えない。

一度引き返すべきだろうか?

しかし・・もう少しテイマーの正体に迫りたい。
この数の魔獣が街に押し寄せたら大惨事だ。

その時、ふとブルータル・ウルフの数匹が妙な動きを始めた。
群れの周囲を警戒するように歩き始めたのだ。

「あれは・・警戒行動よ。リーダー格のブルータル・ウルフが仲間に警戒を呼び掛けているのよ。」
アカネが説明する。

しばらく観察していると大体十匹に一匹の割合でリーダー格が存在しているようだ。

リーダー格を倒せば群れは四散するのではないだろうか?

アカネに話してみると、
「やってみないと分からないけど・・難しいと思うわ。リーダー格は魔法も避けるくらい俊敏性に優れているし・・リーダーがやられたくらいで四散するかしら?」
と懐疑的だった。

・・ふと風向きが変わった。

まずい。このタイミングでか?

敏感な数匹が早くもこちらに鼻を向けている。

テイマーの指示だろうか?

数匹のブルータル・ウルフがこちらにやってくるのが見える。

一気に仕留められればなんとかなるだろうか?

「アイズ、こちらにやってくる数匹を凍らせることができるか?」
できればアカネの炎では鳴き声などが漏れてしまう恐れがあるため、一気に無力化したい。

「やってみる。」

アイズは少し俺たちが潜んでいた木陰から離れると偵察隊のブルータル・ウルフの方向へ歩いて行った。

アイズとブルータル・ウルフの距離が詰まる。

そして・・

5匹ほどのブルータル・ウルフが見えた。

息吹ブレス!」
アイズの手から氷の息吹ブレスが放たれる。

ブルータル・ウルフは吠える間もなく氷漬けになった。

しかし・・

「ごめん。失敗した。僕小さい的狙うの苦手。」

周辺の木々まで凍り付いてしまった。

これは・・ばれただろうな・・。

仕方ない。

「ユージ君!今度は大量に来るよ!」
アイリスが言う。

見つかったか。

数十匹のブルータル・ウルフがこちらに向けて駆け出してくる。

行くしかないか。

「アカネ、アイズ、奴らを一掃してくれ!」

「「わかった!」」

フレイムストーム!」
息吹ブレス!」

アカネとアイズの魔法でそれぞれこちらに向かってきた魔獣が吹き飛ばされる。

千匹対4人。戦闘開始。
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