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第三章
修練の日々
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インディーズカフェの一件が収束し、ハンナ先輩一家はコルトン家に移り住んだ。
これで一安心かな。
俺は数日して、クラブ後、フレンダの道場に連れて行ってもらった。
「やぁ、君がユージか。」
そこにはいかにも武道家といった風体の男性が待ち構えていた。
「私は、ゴートン・ライムだ。ここの道場の師範をやっている。」
「父上は王宮の武術師範だったのよ。」
フレンダが教えてくれた。
「まぁ、王宮の師範にも飽きていたところ、近所の子供たちを好意で教えているうちに好きな武術を教えて生きていこうと思ったのさ。」
お父さんはそう付け加えた。
「ただ、うちは厳しいからね。君も覚悟しておいたほうがいい。」
「は、はい。聞いています。どうぞよろしくお願いいたします。」
「ふむ・・。君は剣を使うそうだが・・まずは剣の腕を見せてもらおうか。」
俺はホーンテッドを持つと何度か素振りして見せた。
「全くの素人というわけではなさそうだが・・誰か師についたことは?」
「はい。僕は英雄の村の出身なのでそこでベルフェ・グールという方に教えていただきました。」
「ほう。もと騎士長のベルフェ殿か。ならば基礎はできているとみていいな。」
「それが・・先日狼型の魔獣と戦ったのですが、バランスを崩すと一撃で仕留められなかったんです。そういうこともあって死にかけてしまって・・。」
「なるほどな。正しい姿勢ならばきちんと打てるが、崩された時というのは難しい。まずは崩されぬように。そして次に崩された時の対応を学ぶべきだな。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
「ところで、君のその剣は・・かなりの業物のようだが、その剣はどこで?」
・・俺はざっくりとホーンテッドの詳細を話した。
「ふむ・・その制限時間が問題だな。要するにそのコール時間以外でもまともに戦えるようになりたいのだろう?」
「はい、その通りです。」
「ならばまずは基礎からだ。君には剣だけでなく、剣を活かせた体術も覚えてもらったほうがよさそうだな。」
「父上、ユージ君は武術大会でBクラスの男子を倒しているのよ。」
「それはフレンダ、お前が優勝した大会か?」
フレンダが優勝してたのか。
確認してみると、
「ええ、そうよ。最も私は剣無しで戦ったけどね。剣を使ったら相手に悪いから。」
フレンダは武術だけでなく総合的な格闘技術に秀でているようだ。
「まぁ、学生レベルではそこそこということだな。ちなみにうちの道場では戦いに関することは何でも教えている。」
いよいよ始まりそうだ。人に教えてもらうのは久々だな。
「まずは君にはその剣のことは忘れてもらう。代わりにこれを使うんだ。」
と渡されたのは先端が太くなっている木の棒のようなものだった。
ちょっとプロレスラーが訓練に使う奴に似ている。
振ってみると・・
「お・・重い・・。」
「はっはっは。そうだろう。それには特殊な木材に鉄棒を仕込んであるからな。普通の木刀を振り回すようにはいかん。」
これを普通に扱えるようになれば確かに剣力はあがりそうだ。
「また、その棒を扱えるだけでいかん。同時に剣をかいくぐってくる相手にも対応しなければな。」
と、ゴートン先生は俺から棒を受け取ると、ブンブンと振り回しながら道場の中で演武を見せてくれた。
剣を使いながら蹴りであったり、肘であったり、時に片手で、時に片足で、千変万化で動きを追うことができなかった。
そのうち、ゴートン先生は木の棒を2本、3本と増やしながらまったくスピードを落とすことなく動きを見せてくれた。
「この重い剣のイメージを固定化し、そのイメージを剣に乗せることができるようになれば重力魔法を剣に付与することができるようになる。」
!それはありがたいな・・。重力魔法は気になっていたところだ。
「また、剣を離してしまった時の対応も大事だ。瞬時に剣を取り戻せない時があるからな。」
と言って、
「フレンダ、例のものを。」
「はい、父上。」
と持ってこさせたものは木の板を幾重にも重ねたものだった。
「修練すればこういうことも可能になる。剣を失った時に使える技だ。」
いうや否や、
『チェイッ!』
と気合一閃、抜き手で木の板を砕いてしまった。
すごい・・。畳などを抜き手で貫通するのは見たことがあるが木板を重ねたものを破壊するなんて尋常な威力じゃない。
「またこの訓練を行うことで自然と指の強化が図られ、ひいては剣の力にもつながる。君にはこの練習もやってもらう。まずは砂袋からだ。」
「わかりました。」
「まぁ何事も一歩一歩だ。弛まず精進すれば必ず強くなれる。励みなさい。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
俺はそれ以来、学園後はライム道場へ通い始めた。
――――――――
「へぇなかなか役に立ちそうじゃない?私も通おうかしら?」
食堂でアカネがそんなことを言い出す。
「いや、あれは女の子には結構厳しいと思うぞ。道着も日本風ですぐはだけちゃいそうだし。」
実際、フレンダの稽古姿には、時折目を奪われていた。
汗まみれの戦う少女ってのは好きな人にはたまらないだろうけど。
アカネにそんな恰好されたら稽古どころじゃなくなる気がする。
「そうなの?でも魔法だけじゃ接近戦が不安になるのよね・・。」
「いや、アカネなら瞬時に爆風で吹き飛ばしちゃうだろ・・。」
「まぁそうなんだけどね。ユージが強くなる努力をしてるのを聞いたらつい・・。」
これ以上、緋色の姫の名前が轟かない方がいいと思うが。
「まぁともかくライム道場は実戦的だよ。ある意味、ベルフェの特訓より厳しいかもしれない。」
ベルフェの訓練は基礎訓練が多かったので、戦うことに特化したライム道場は今の俺にぴったりかもしれない。まぁそれもこれもベルフェの鍛えてくれた基礎があってのことだけれども。
俺はそんなこんなで授業、クラブ活動、道場と、再び、それなりに忙しい日々に戻っていった。
――――――――
道場での稽古にも慣れてきたある日。
俺はここでもう一つ、コールの時間をなんとか増やすための訓練を開始することにした。
道場でヘトヘトになって帰宅後、食事を取り、寮の庭に出る。
ぶっ倒れたら部屋まで運んでおいてほしいとアイズに頼んでおいた。
俺はホーンテッドを持っていくと、
「コール!宮本武蔵!」
と唱えた。
体に力が湧き上がる。
そのまま3分強、効果がなくなるまで素振りを続けた。
効果が消え、体から力が消えていく。
初めは興味深そうにアイズも来て見ていたが、
「僕、飽きた。」
といってすぐ帰ってしまった。
俺はアイズを見送ると再度、
「こ・・コール!宮本・・武蔵!」
連続でコールする。
体中がきしむ。
力が湧き上がるどころかバラバラになりそうだ。
そのまま無理やり体を動かし続ける。
そして・・それは意識を失うまで続けられた。
「ユージ。そろそろだと思って来た。」
アイズがそう声をかけてくれたようだがぼんやりとして覚えていない。
俺はアイズに背負われてベッドに倒れこんだ・・らしい。
さすがドラゴン、人一人運ぶのなんてわけないようだ。
これが効果があるのかわからないが・・コール時間を増やすことは至上命題だ。
この前のテイマー戦ももし、もう少し長く使えていたらテイマーをとらえることができたかもしれない。
そう考えて、編み出した特訓法だ。
俺はこれも毎日続けることにした。
アイズにはお世話になってしまうが・・
そうして、ややのんびりした学園生活が特訓の生活に変わっていった。
これで一安心かな。
俺は数日して、クラブ後、フレンダの道場に連れて行ってもらった。
「やぁ、君がユージか。」
そこにはいかにも武道家といった風体の男性が待ち構えていた。
「私は、ゴートン・ライムだ。ここの道場の師範をやっている。」
「父上は王宮の武術師範だったのよ。」
フレンダが教えてくれた。
「まぁ、王宮の師範にも飽きていたところ、近所の子供たちを好意で教えているうちに好きな武術を教えて生きていこうと思ったのさ。」
お父さんはそう付け加えた。
「ただ、うちは厳しいからね。君も覚悟しておいたほうがいい。」
「は、はい。聞いています。どうぞよろしくお願いいたします。」
「ふむ・・。君は剣を使うそうだが・・まずは剣の腕を見せてもらおうか。」
俺はホーンテッドを持つと何度か素振りして見せた。
「全くの素人というわけではなさそうだが・・誰か師についたことは?」
「はい。僕は英雄の村の出身なのでそこでベルフェ・グールという方に教えていただきました。」
「ほう。もと騎士長のベルフェ殿か。ならば基礎はできているとみていいな。」
「それが・・先日狼型の魔獣と戦ったのですが、バランスを崩すと一撃で仕留められなかったんです。そういうこともあって死にかけてしまって・・。」
「なるほどな。正しい姿勢ならばきちんと打てるが、崩された時というのは難しい。まずは崩されぬように。そして次に崩された時の対応を学ぶべきだな。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
「ところで、君のその剣は・・かなりの業物のようだが、その剣はどこで?」
・・俺はざっくりとホーンテッドの詳細を話した。
「ふむ・・その制限時間が問題だな。要するにそのコール時間以外でもまともに戦えるようになりたいのだろう?」
「はい、その通りです。」
「ならばまずは基礎からだ。君には剣だけでなく、剣を活かせた体術も覚えてもらったほうがよさそうだな。」
「父上、ユージ君は武術大会でBクラスの男子を倒しているのよ。」
「それはフレンダ、お前が優勝した大会か?」
フレンダが優勝してたのか。
確認してみると、
「ええ、そうよ。最も私は剣無しで戦ったけどね。剣を使ったら相手に悪いから。」
フレンダは武術だけでなく総合的な格闘技術に秀でているようだ。
「まぁ、学生レベルではそこそこということだな。ちなみにうちの道場では戦いに関することは何でも教えている。」
いよいよ始まりそうだ。人に教えてもらうのは久々だな。
「まずは君にはその剣のことは忘れてもらう。代わりにこれを使うんだ。」
と渡されたのは先端が太くなっている木の棒のようなものだった。
ちょっとプロレスラーが訓練に使う奴に似ている。
振ってみると・・
「お・・重い・・。」
「はっはっは。そうだろう。それには特殊な木材に鉄棒を仕込んであるからな。普通の木刀を振り回すようにはいかん。」
これを普通に扱えるようになれば確かに剣力はあがりそうだ。
「また、その棒を扱えるだけでいかん。同時に剣をかいくぐってくる相手にも対応しなければな。」
と、ゴートン先生は俺から棒を受け取ると、ブンブンと振り回しながら道場の中で演武を見せてくれた。
剣を使いながら蹴りであったり、肘であったり、時に片手で、時に片足で、千変万化で動きを追うことができなかった。
そのうち、ゴートン先生は木の棒を2本、3本と増やしながらまったくスピードを落とすことなく動きを見せてくれた。
「この重い剣のイメージを固定化し、そのイメージを剣に乗せることができるようになれば重力魔法を剣に付与することができるようになる。」
!それはありがたいな・・。重力魔法は気になっていたところだ。
「また、剣を離してしまった時の対応も大事だ。瞬時に剣を取り戻せない時があるからな。」
と言って、
「フレンダ、例のものを。」
「はい、父上。」
と持ってこさせたものは木の板を幾重にも重ねたものだった。
「修練すればこういうことも可能になる。剣を失った時に使える技だ。」
いうや否や、
『チェイッ!』
と気合一閃、抜き手で木の板を砕いてしまった。
すごい・・。畳などを抜き手で貫通するのは見たことがあるが木板を重ねたものを破壊するなんて尋常な威力じゃない。
「またこの訓練を行うことで自然と指の強化が図られ、ひいては剣の力にもつながる。君にはこの練習もやってもらう。まずは砂袋からだ。」
「わかりました。」
「まぁ何事も一歩一歩だ。弛まず精進すれば必ず強くなれる。励みなさい。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
俺はそれ以来、学園後はライム道場へ通い始めた。
――――――――
「へぇなかなか役に立ちそうじゃない?私も通おうかしら?」
食堂でアカネがそんなことを言い出す。
「いや、あれは女の子には結構厳しいと思うぞ。道着も日本風ですぐはだけちゃいそうだし。」
実際、フレンダの稽古姿には、時折目を奪われていた。
汗まみれの戦う少女ってのは好きな人にはたまらないだろうけど。
アカネにそんな恰好されたら稽古どころじゃなくなる気がする。
「そうなの?でも魔法だけじゃ接近戦が不安になるのよね・・。」
「いや、アカネなら瞬時に爆風で吹き飛ばしちゃうだろ・・。」
「まぁそうなんだけどね。ユージが強くなる努力をしてるのを聞いたらつい・・。」
これ以上、緋色の姫の名前が轟かない方がいいと思うが。
「まぁともかくライム道場は実戦的だよ。ある意味、ベルフェの特訓より厳しいかもしれない。」
ベルフェの訓練は基礎訓練が多かったので、戦うことに特化したライム道場は今の俺にぴったりかもしれない。まぁそれもこれもベルフェの鍛えてくれた基礎があってのことだけれども。
俺はそんなこんなで授業、クラブ活動、道場と、再び、それなりに忙しい日々に戻っていった。
――――――――
道場での稽古にも慣れてきたある日。
俺はここでもう一つ、コールの時間をなんとか増やすための訓練を開始することにした。
道場でヘトヘトになって帰宅後、食事を取り、寮の庭に出る。
ぶっ倒れたら部屋まで運んでおいてほしいとアイズに頼んでおいた。
俺はホーンテッドを持っていくと、
「コール!宮本武蔵!」
と唱えた。
体に力が湧き上がる。
そのまま3分強、効果がなくなるまで素振りを続けた。
効果が消え、体から力が消えていく。
初めは興味深そうにアイズも来て見ていたが、
「僕、飽きた。」
といってすぐ帰ってしまった。
俺はアイズを見送ると再度、
「こ・・コール!宮本・・武蔵!」
連続でコールする。
体中がきしむ。
力が湧き上がるどころかバラバラになりそうだ。
そのまま無理やり体を動かし続ける。
そして・・それは意識を失うまで続けられた。
「ユージ。そろそろだと思って来た。」
アイズがそう声をかけてくれたようだがぼんやりとして覚えていない。
俺はアイズに背負われてベッドに倒れこんだ・・らしい。
さすがドラゴン、人一人運ぶのなんてわけないようだ。
これが効果があるのかわからないが・・コール時間を増やすことは至上命題だ。
この前のテイマー戦ももし、もう少し長く使えていたらテイマーをとらえることができたかもしれない。
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