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第三章
インディーズ・カフェ焼失。そして・・
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「お父さん!お母さん!」
ハンナ先輩が叫ぶ。
俺も慌ててインディーズ・カフェ跡地に走りこんでいった。
建物はほとんど残っていない。
俺たちが慌てて声を上げて探していると、
「おや、ハンナちゃんかい!?」
と近くのおばさんが声をかけてきた。
「おばさん!家が・・家が!お父さんとお母さんは・・!」
ハンナ先輩がせき込んで尋ねる。
「ハンナちゃん。大丈夫だよ。お父さんもお母さんも無事に抜け出したそうだよ。今頃は医者に行ってるんじゃないかねぇ。」
「!ありがとうございます!」
ハンナ先輩は近くの医者へと駆け出す。
俺も慌ててついていった。
――――――――
医者はさながら野戦病院のようだった。
あちこちに火傷をした様子の人々が見て取れる。
「お父さん!お母さん!」
ハンナ先輩が探し回る。
「ハンナ!」
メグ母さんだ。
「お母さん!良かった・・無事だったのね!」
「ああ、ああ。建物は焼けちまったけど、幸い近所の人が助け出してくれてねぇ・・お父さんも無事だよ。」
「良かった・・本当に!」
ハンナ先輩が涙ぐむ。
「それにしても・・どうしたんですか?一体?」
一応、俺は少し時間をおいて聞いてみた。
「おや、ユージも来てくれたのかい。それがねぇ・・夜の仕込みをしてたとき・・夕方くらいだね・・いきなり四方から火が上がったのさ。始めは父さんがなんかやらかしたのかと思ったがそんな規模じゃなかったからねぇ・・」
「・・放火ですか?」
「それはわからないんだよ・・あたしらだけじゃない。近所の家も焼かれたからね。放火の可能性は高いだろうけどさ。」
なんだろう。嫌な感じだ。
その時、ダムド父さんがやってきた。
腕を包帯で吊っている。
「いやぁ・・まいったよ・・いきなり火があがってね・・」
「!お父さん!大丈夫?」
「ああ、心配いらない。少し腕を火傷しただけだ。それにしてもいきなり火事だからなぁ・・。」
「良かった・・お父さんお母さんが無事ならいいよ・・」
ショックだろうな・・。
!・・もしかすると、サンダユウに頼めるかもしれない。
俺は一応、呼びかけてみた。
「サンダユウ、いるか??」
しばらくして。
「はい。ここに。」
傍にサンダユウがいた。
さすがシノビだ。
「今回の火事の原因はわかるか?」
「お時間をいただければ・・調べられると思います。任務とは多少違いますが。」
「是非頼む。」
「わかりました。ユージ殿の指示に従うよう言いつけられておりますので。少々日数を下さい。」
俺はとりあえずサンダユウの報告を待つことにした。
――――――――
やがて数日たったころ。
「ユージ殿。火事の原因がわかりました。」
教室でサンダユウが教えてきた。
「やはり・・放火のようです。痕跡をうまく消しておりますが・・恐らく『蒼狼の会』の仕業かと。」
・・『蒼狼の会』?なんでここで出てくるんだ?
「どうやら家屋を買い占めて拠点とする予定だったのが、はねのけられたのが原因のようです。他にも近くの店や家が同様の理由で被害にあっています。」
逆恨みみたいなもんか・・規模が違うけど・・。
「以前にも似たようなケースが数件ございました。この街ではないですが・・。どうも『蒼狼の会』は自分たちに従わないものに容赦しないようですね。」
ハンナ先輩が可哀想だ・・。
「手を下した奴はわかるのか?」
「はい。組織の末端も末端。時々雇われるチンピラのようです。」
「そいつから命令者に辿ることはできるか?」
「それは・・いささか難しいかと。完全に組織は細分化しておりますので。」
スパイ組織みたいなもんか・・厄介だな。
俺は・・少し考えて、とりあえず、自分にできることをしようと決めた。
――――――――
俺は休み時間にレインを見つけると、
「なぁ、レイン実はちょっとお願いがあるんだけど・・」
と話しかけてみた。
「あら!ユージさんが私にお願い事って珍しいですわね?あなたは私の恩人ですもの。できることなら引き受けますわよ?」
と言ってくれた。
「実は風魔法研究部のハンナ先輩の家が焼かれちゃってさ・・住む場所を提供してあげてくれないかな?親子三人なんだけど。」
「あら!そんなことならお安い御用ですわ!自宅には余っている部屋がたくさんありますもの。」
と気持ちよく請け負ってくれた。ありがたい。
「それで、もう一つお願いなんだけど、コルトン家に預けてるお金をちょっと使いたいんだ。」
「それこそ簡単ですわ!もともとユージさんのお金ですもの。」
「ありがとう。詳細がわかったらまた相談させてくれ。」
俺は放課後、ハンナ先輩のところに向かった。
――――――――
ハンナ先輩は医者の近くの知り合いの家に居候していた。
「ハンナ先輩!その後のご両親はどうですか?」
「ユージ君!おかげさまでもうすぐ退院だって・・。でもどうしよう・・住むところがなくなっちゃった・・」
「ああ、それは僕のクラスメートのレイン、コルトン家の令嬢に頼んでみたらご両親とハンナ先輩の住まいを提供してくれることになりました。」
「!え?あのコルトン家?本当にお邪魔しちゃっていいのかな・・?」
「大丈夫です。部屋は余っているみたいですから。」
と笑うと、
「ユージ君、ありがとう・・このあたりは親戚もいないからどうしようと思ってたんだよ・・いつまでもご近所さんにお世話になるわけにもいかないしね・・。」
「それと・・お父さんとお話はできますか?」
「ああ・・うん。もうだいぶ火傷も良くなってもうすぐ退院できそうだよ。」
「じゃあちょっとお話させてもらっていいですか?」
「いいよ。私も丁度行こうと思ってたから一緒に行こう。」
俺たちは連れ立ってご両親が入院している医者に行った。
「ようハンナにユージ君。今日はどうした?見舞いにきてくれたのかい?」
「いや、もちろんそれもあるんですけど、ちょっとお話がありまして。」
ダムド父さんは何か察したらしく、
「二人の方がいいかな?」
と言ってくれた。
「はい、できれば。」
「じゃあ、こっちの部屋で話そうか。今丁度空いてるらしいから。」
と空き部屋に案内してくれた。
――――――――
「で?話ってなんだい?」
「実はお金のことなんですが・・お店は再建する予定ですか?」
「ああ、貯金と、知り合いから借りて何とかやり直すつもりだよ。僕たちはあのお店を愛しているからね!」
「それなら、不躾ですが、いくらほど必要になりそうですか?」
ダムド父さんは少し考え込むと、
「うーん、貯金とあとはなんとか工面して3万ベルムくらい何とかなりそうだから・・あと15万ベルムくらいいるかなぁ・・。」
と教えてくれた。
「それならその15万ベルムを僕に払わせて下さい。どうせ持ってても使わない金ですし。」
「!それは助かるが・・いや、君みたいな学生に払わせるわけには・・。」
「大丈夫です。これでも最近小金持ちなんで。」
と笑いかける。
「いや、しかし・・うーむ・・」
さすがに学生に金を融通してもらうのは抵抗があるようだ。
「じゃあ、将来的に返してくれるということではいかがですか?あるときで構いませんし。」
「うーん・・そりゃ助かるが・・本当に頼んでいいのかい?」
「ええ。『インディーズ・カフェ』には僕も復活してほしいですし。なんだかんだ学生にも人気あるお店ですから。」
「・・わかった。好意に甘えることにするよ!」
良かった。もしかしたら絶対にダメだとはねのけられるかと思った。
15万ベルムを払ってもまだ3万ベルムほどある。300万円残る計算だ。学生には十分だ。
「本当にありがとう!ユージ君!実はどう工面するか悩んでたんだ・・。」
「お助けになればなによりです。あ、あとお店が復活するまで、コルトン家が住まいを提供してくれるそうです。」
「・・本当かい?何から何まで・・この恩は忘れないよ!」
ダムド父さんは感極まっていた。
「いえ、こちらこそ不良バイトを雇っていただいてましたから。」
と笑うと、ダムド父さんもようやく笑顔を見せた。
俺はダムド父さんと部屋を出ると、メグ母さんとハンナ先輩が心配そうに待っていた。
「あんた・・ユージと二人で話なんて・・なんか悪い話かい?」
「いや、メグ。実はこういう次第で・・」
と父さんが二人に説明する。
「本当かい!ユージ!・・ありがとうねぇ・・。」
「ユージ君!本当にいいの?ありがとう・・」
お母さんもハンナ先輩も涙ぐんでいる。
少しでも役に立てたならいい。
「いえ、僕にできることはこれくらいなんで・・それじゃ、今日はこの辺で失礼します。」
とその場を辞した。
あまり感謝されてもくすぐったい。
ホーンテッドには『剣に選ばれものは弱きものを救い正義を行う』という伝説があった。
別に魔獣や強敵を倒さなくても身近な人を助けられればいいと思う。
幸いにも俺はたまたまそれができる立場だったから助けると決めたのだ。
――――――――
翌日、レインに事の詳細を話した。
「ユージさん・・あなたお馬鹿ですわね・・でも素敵なお馬鹿さんですわ!」
と微笑んでくれた。
「ああ、馬鹿でいいんだ。と言うわけで預けてるお金、ハンナ先輩のお父さんに届けてくれるか?」
「うけたまりましたわ!確実に届けさせましょう!それにお店ができるまでの間はできるだけ素敵なおもてなしを約束いたしますわ!」
「ありがとう。でもあんまり豪華すぎると萎縮しちゃうだろうから、ほどほどにしといてやってくれ。」
「ふふ、わかりましたわ。」
皆が話を聞いてやってきた。
「おいおい、ユージよ・・お前せっかくの大金を・・人がいいのもいい加減にしとけよ?」
ダースがあきれたように言う。
「ふふ、ユージ君らしいね?私も家から出すようにお願いしてみようか?」
アイリスがそんなことを言う。
「いや、アイリスはまだ自分で稼いだお金は少ないだろう?今回は何も慈善事業じゃないんだ。ちゃんと返してもらえるし。」
・・とはいえ、実はあんまり返済は期待してないけど。お店の経営もあるだろうし。
「ユージ君。君は武士の情けがあるね。大したもんだ。」
フレンダまでやってきた。
あ、しまった。もっとこっそりレインに話しとくべきだった。噂が広まるのはハンナ先輩に気を使わせてしまうな。
おっとフレンダには話があったんだ。
「ああ、そうそう。実はフレンダにはお願いがあるんだ。」
俺はそう切り出してみた。
「私に?言っとくが金はないぞ。家も貧乏道場だからね。」
「はは、いや、そうじゃない。実はフレンダの道場に興味があるんだ。フレンダの家では剣術も教えてるのか?」
「これでも総合武術の家だからな。剣はもちろん総合体術を教えてる。」
「そうか。実はこれでバイトもなくなったし。時間があくから自分を鍛えなおしたいんだ。」
「おいおい、ユージお前まだ強くなる気なのか??」
ダースが目を見開いて驚く。
「いや、俺は実は全然強くないことが良くわかったんだよ。この前の戦いで死にかけたし。」
「それにしてもよう・・」
ダースがぶつぶつ言っているが、実は前から考えていたことだ。
ホーンテッドの力を使うためにコール時間を増やすのは自分でもできるかもしれないが、(というより誰も教えられないだろうが)、基本的な剣術や体術を上げたいと思っていたのだ。それにはその道のプロに教わるのが手っ取り早い。
「ふむ。うちは貧乏道場だが、実力は保証する。実戦的すぎて門下生が集まらないがな。」
とフレンダは笑った。
「じゃあ今度クラブの後にでもお邪魔するよ。紹介してくれると助かる。」
「わかった。もう一度言うがうちの稽古は厳しいぞ?覚悟しておけよ?」
ちょっと後悔した。でももう決めたことだ。
「ああ、よろしく頼む。」
「それと皆、ハンナ先輩も気を使うだろうから、あまり周りに言わないでいてくれると助かる。」
「ええ、わかりましたわ!」「しゃあねぇな!」「うふふ、わかったよユージ君。」「ふむ・・人知れずに徳を積むということか・・了解した。」
と、レイン、ダース、アイリス、フレンダが言ってくれた。
――――――――
放課後。
俺はアカネにだけは事の成り行きを話して、今後、フレンダの家に通うことを言っておいた。
「はぁ・・せっかくお金も入って時間もできたっていうのに・・貧乏性なの?」
・・そ、そうかもしれない。
「まぁいいわ。なんかあったら私も助けるから。今度は一人で決めないで相談してよ?」
「うん。わかった。ありがとうアカネ。」
「ああ、そうそう。そのハンナ先輩のお父様が自分で工面すると言ってた3万ベルム、私が払うわ。」
「!それは・・アカネ、大丈夫なのか?」
「何言ってるのよ!私は何度もユージと一緒に戦ってきたのよ!今までの報酬もあるし、領地もいただいたし、なんてことないわよ。あって困るものでもないでしょう?」
確かにな・・俺と一緒にいたせいで(おかげで?)アカネもだいぶ報酬をもらっている。
「わかった。きっとお父さんも楽になると思う。ありがとう、アカネ。」
「あなたがお礼をいうことでもないでしょ?」
とアカネは笑った。
男前だなぁ。
俺たちはハンナ先輩やご両親に事の次第を説明しに行くと、ハンナ先輩もご両親も、喜んでくれた。
「本当にハンナはいい友達を持ったもんだねぇ・・」
またお母さんが涙ぐむ。
「ありがとう!君たち!大事に使わせてもらうよ!」
お父さんも。涙をこらえているようだ。
ここ最近の苦難で涙もろくなっているのだろうか。
「ありがとうね!ユージ君、アカネちゃん!」
ハンナ先輩だけは朗らかに笑っていた。
このほうが気が楽だな。
「いえいえ、その代わり、今後とも風魔法のご教授、よろしくお願いします。」
「私はたいしたことないけど・・うん!私にできることはするからね!」
とまた笑った。
「ハンナ先輩。気を落とさずにまた元気に学園に来てくださいね!」
アカネが励ます。
「うん・・うん!ありがとうアカネちゃん!」
俺たちは長居するのもなんだし、早々に帰ることにした。
ハンナ先輩たちは明日にもコルトン家に引っ越すそうだ。
アカネの助けもあったし、衣食住はとりあえず大丈夫だろう。
「アカネ、やっぱりお礼を言わせてくれ。今日のお父さんの顔を見てると俺の金だけじゃやっぱり苦しかったみたいだ。」
「いいのよ。私はハンナ先輩のためにやったんだから。」
と笑った。
はは・・アカネらしいな。
そして・・早くハンナ一家が復活してくれるとうれしいな。
ハンナ先輩が叫ぶ。
俺も慌ててインディーズ・カフェ跡地に走りこんでいった。
建物はほとんど残っていない。
俺たちが慌てて声を上げて探していると、
「おや、ハンナちゃんかい!?」
と近くのおばさんが声をかけてきた。
「おばさん!家が・・家が!お父さんとお母さんは・・!」
ハンナ先輩がせき込んで尋ねる。
「ハンナちゃん。大丈夫だよ。お父さんもお母さんも無事に抜け出したそうだよ。今頃は医者に行ってるんじゃないかねぇ。」
「!ありがとうございます!」
ハンナ先輩は近くの医者へと駆け出す。
俺も慌ててついていった。
――――――――
医者はさながら野戦病院のようだった。
あちこちに火傷をした様子の人々が見て取れる。
「お父さん!お母さん!」
ハンナ先輩が探し回る。
「ハンナ!」
メグ母さんだ。
「お母さん!良かった・・無事だったのね!」
「ああ、ああ。建物は焼けちまったけど、幸い近所の人が助け出してくれてねぇ・・お父さんも無事だよ。」
「良かった・・本当に!」
ハンナ先輩が涙ぐむ。
「それにしても・・どうしたんですか?一体?」
一応、俺は少し時間をおいて聞いてみた。
「おや、ユージも来てくれたのかい。それがねぇ・・夜の仕込みをしてたとき・・夕方くらいだね・・いきなり四方から火が上がったのさ。始めは父さんがなんかやらかしたのかと思ったがそんな規模じゃなかったからねぇ・・」
「・・放火ですか?」
「それはわからないんだよ・・あたしらだけじゃない。近所の家も焼かれたからね。放火の可能性は高いだろうけどさ。」
なんだろう。嫌な感じだ。
その時、ダムド父さんがやってきた。
腕を包帯で吊っている。
「いやぁ・・まいったよ・・いきなり火があがってね・・」
「!お父さん!大丈夫?」
「ああ、心配いらない。少し腕を火傷しただけだ。それにしてもいきなり火事だからなぁ・・。」
「良かった・・お父さんお母さんが無事ならいいよ・・」
ショックだろうな・・。
!・・もしかすると、サンダユウに頼めるかもしれない。
俺は一応、呼びかけてみた。
「サンダユウ、いるか??」
しばらくして。
「はい。ここに。」
傍にサンダユウがいた。
さすがシノビだ。
「今回の火事の原因はわかるか?」
「お時間をいただければ・・調べられると思います。任務とは多少違いますが。」
「是非頼む。」
「わかりました。ユージ殿の指示に従うよう言いつけられておりますので。少々日数を下さい。」
俺はとりあえずサンダユウの報告を待つことにした。
――――――――
やがて数日たったころ。
「ユージ殿。火事の原因がわかりました。」
教室でサンダユウが教えてきた。
「やはり・・放火のようです。痕跡をうまく消しておりますが・・恐らく『蒼狼の会』の仕業かと。」
・・『蒼狼の会』?なんでここで出てくるんだ?
「どうやら家屋を買い占めて拠点とする予定だったのが、はねのけられたのが原因のようです。他にも近くの店や家が同様の理由で被害にあっています。」
逆恨みみたいなもんか・・規模が違うけど・・。
「以前にも似たようなケースが数件ございました。この街ではないですが・・。どうも『蒼狼の会』は自分たちに従わないものに容赦しないようですね。」
ハンナ先輩が可哀想だ・・。
「手を下した奴はわかるのか?」
「はい。組織の末端も末端。時々雇われるチンピラのようです。」
「そいつから命令者に辿ることはできるか?」
「それは・・いささか難しいかと。完全に組織は細分化しておりますので。」
スパイ組織みたいなもんか・・厄介だな。
俺は・・少し考えて、とりあえず、自分にできることをしようと決めた。
――――――――
俺は休み時間にレインを見つけると、
「なぁ、レイン実はちょっとお願いがあるんだけど・・」
と話しかけてみた。
「あら!ユージさんが私にお願い事って珍しいですわね?あなたは私の恩人ですもの。できることなら引き受けますわよ?」
と言ってくれた。
「実は風魔法研究部のハンナ先輩の家が焼かれちゃってさ・・住む場所を提供してあげてくれないかな?親子三人なんだけど。」
「あら!そんなことならお安い御用ですわ!自宅には余っている部屋がたくさんありますもの。」
と気持ちよく請け負ってくれた。ありがたい。
「それで、もう一つお願いなんだけど、コルトン家に預けてるお金をちょっと使いたいんだ。」
「それこそ簡単ですわ!もともとユージさんのお金ですもの。」
「ありがとう。詳細がわかったらまた相談させてくれ。」
俺は放課後、ハンナ先輩のところに向かった。
――――――――
ハンナ先輩は医者の近くの知り合いの家に居候していた。
「ハンナ先輩!その後のご両親はどうですか?」
「ユージ君!おかげさまでもうすぐ退院だって・・。でもどうしよう・・住むところがなくなっちゃった・・」
「ああ、それは僕のクラスメートのレイン、コルトン家の令嬢に頼んでみたらご両親とハンナ先輩の住まいを提供してくれることになりました。」
「!え?あのコルトン家?本当にお邪魔しちゃっていいのかな・・?」
「大丈夫です。部屋は余っているみたいですから。」
と笑うと、
「ユージ君、ありがとう・・このあたりは親戚もいないからどうしようと思ってたんだよ・・いつまでもご近所さんにお世話になるわけにもいかないしね・・。」
「それと・・お父さんとお話はできますか?」
「ああ・・うん。もうだいぶ火傷も良くなってもうすぐ退院できそうだよ。」
「じゃあちょっとお話させてもらっていいですか?」
「いいよ。私も丁度行こうと思ってたから一緒に行こう。」
俺たちは連れ立ってご両親が入院している医者に行った。
「ようハンナにユージ君。今日はどうした?見舞いにきてくれたのかい?」
「いや、もちろんそれもあるんですけど、ちょっとお話がありまして。」
ダムド父さんは何か察したらしく、
「二人の方がいいかな?」
と言ってくれた。
「はい、できれば。」
「じゃあ、こっちの部屋で話そうか。今丁度空いてるらしいから。」
と空き部屋に案内してくれた。
――――――――
「で?話ってなんだい?」
「実はお金のことなんですが・・お店は再建する予定ですか?」
「ああ、貯金と、知り合いから借りて何とかやり直すつもりだよ。僕たちはあのお店を愛しているからね!」
「それなら、不躾ですが、いくらほど必要になりそうですか?」
ダムド父さんは少し考え込むと、
「うーん、貯金とあとはなんとか工面して3万ベルムくらい何とかなりそうだから・・あと15万ベルムくらいいるかなぁ・・。」
と教えてくれた。
「それならその15万ベルムを僕に払わせて下さい。どうせ持ってても使わない金ですし。」
「!それは助かるが・・いや、君みたいな学生に払わせるわけには・・。」
「大丈夫です。これでも最近小金持ちなんで。」
と笑いかける。
「いや、しかし・・うーむ・・」
さすがに学生に金を融通してもらうのは抵抗があるようだ。
「じゃあ、将来的に返してくれるということではいかがですか?あるときで構いませんし。」
「うーん・・そりゃ助かるが・・本当に頼んでいいのかい?」
「ええ。『インディーズ・カフェ』には僕も復活してほしいですし。なんだかんだ学生にも人気あるお店ですから。」
「・・わかった。好意に甘えることにするよ!」
良かった。もしかしたら絶対にダメだとはねのけられるかと思った。
15万ベルムを払ってもまだ3万ベルムほどある。300万円残る計算だ。学生には十分だ。
「本当にありがとう!ユージ君!実はどう工面するか悩んでたんだ・・。」
「お助けになればなによりです。あ、あとお店が復活するまで、コルトン家が住まいを提供してくれるそうです。」
「・・本当かい?何から何まで・・この恩は忘れないよ!」
ダムド父さんは感極まっていた。
「いえ、こちらこそ不良バイトを雇っていただいてましたから。」
と笑うと、ダムド父さんもようやく笑顔を見せた。
俺はダムド父さんと部屋を出ると、メグ母さんとハンナ先輩が心配そうに待っていた。
「あんた・・ユージと二人で話なんて・・なんか悪い話かい?」
「いや、メグ。実はこういう次第で・・」
と父さんが二人に説明する。
「本当かい!ユージ!・・ありがとうねぇ・・。」
「ユージ君!本当にいいの?ありがとう・・」
お母さんもハンナ先輩も涙ぐんでいる。
少しでも役に立てたならいい。
「いえ、僕にできることはこれくらいなんで・・それじゃ、今日はこの辺で失礼します。」
とその場を辞した。
あまり感謝されてもくすぐったい。
ホーンテッドには『剣に選ばれものは弱きものを救い正義を行う』という伝説があった。
別に魔獣や強敵を倒さなくても身近な人を助けられればいいと思う。
幸いにも俺はたまたまそれができる立場だったから助けると決めたのだ。
――――――――
翌日、レインに事の詳細を話した。
「ユージさん・・あなたお馬鹿ですわね・・でも素敵なお馬鹿さんですわ!」
と微笑んでくれた。
「ああ、馬鹿でいいんだ。と言うわけで預けてるお金、ハンナ先輩のお父さんに届けてくれるか?」
「うけたまりましたわ!確実に届けさせましょう!それにお店ができるまでの間はできるだけ素敵なおもてなしを約束いたしますわ!」
「ありがとう。でもあんまり豪華すぎると萎縮しちゃうだろうから、ほどほどにしといてやってくれ。」
「ふふ、わかりましたわ。」
皆が話を聞いてやってきた。
「おいおい、ユージよ・・お前せっかくの大金を・・人がいいのもいい加減にしとけよ?」
ダースがあきれたように言う。
「ふふ、ユージ君らしいね?私も家から出すようにお願いしてみようか?」
アイリスがそんなことを言う。
「いや、アイリスはまだ自分で稼いだお金は少ないだろう?今回は何も慈善事業じゃないんだ。ちゃんと返してもらえるし。」
・・とはいえ、実はあんまり返済は期待してないけど。お店の経営もあるだろうし。
「ユージ君。君は武士の情けがあるね。大したもんだ。」
フレンダまでやってきた。
あ、しまった。もっとこっそりレインに話しとくべきだった。噂が広まるのはハンナ先輩に気を使わせてしまうな。
おっとフレンダには話があったんだ。
「ああ、そうそう。実はフレンダにはお願いがあるんだ。」
俺はそう切り出してみた。
「私に?言っとくが金はないぞ。家も貧乏道場だからね。」
「はは、いや、そうじゃない。実はフレンダの道場に興味があるんだ。フレンダの家では剣術も教えてるのか?」
「これでも総合武術の家だからな。剣はもちろん総合体術を教えてる。」
「そうか。実はこれでバイトもなくなったし。時間があくから自分を鍛えなおしたいんだ。」
「おいおい、ユージお前まだ強くなる気なのか??」
ダースが目を見開いて驚く。
「いや、俺は実は全然強くないことが良くわかったんだよ。この前の戦いで死にかけたし。」
「それにしてもよう・・」
ダースがぶつぶつ言っているが、実は前から考えていたことだ。
ホーンテッドの力を使うためにコール時間を増やすのは自分でもできるかもしれないが、(というより誰も教えられないだろうが)、基本的な剣術や体術を上げたいと思っていたのだ。それにはその道のプロに教わるのが手っ取り早い。
「ふむ。うちは貧乏道場だが、実力は保証する。実戦的すぎて門下生が集まらないがな。」
とフレンダは笑った。
「じゃあ今度クラブの後にでもお邪魔するよ。紹介してくれると助かる。」
「わかった。もう一度言うがうちの稽古は厳しいぞ?覚悟しておけよ?」
ちょっと後悔した。でももう決めたことだ。
「ああ、よろしく頼む。」
「それと皆、ハンナ先輩も気を使うだろうから、あまり周りに言わないでいてくれると助かる。」
「ええ、わかりましたわ!」「しゃあねぇな!」「うふふ、わかったよユージ君。」「ふむ・・人知れずに徳を積むということか・・了解した。」
と、レイン、ダース、アイリス、フレンダが言ってくれた。
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放課後。
俺はアカネにだけは事の成り行きを話して、今後、フレンダの家に通うことを言っておいた。
「はぁ・・せっかくお金も入って時間もできたっていうのに・・貧乏性なの?」
・・そ、そうかもしれない。
「まぁいいわ。なんかあったら私も助けるから。今度は一人で決めないで相談してよ?」
「うん。わかった。ありがとうアカネ。」
「ああ、そうそう。そのハンナ先輩のお父様が自分で工面すると言ってた3万ベルム、私が払うわ。」
「!それは・・アカネ、大丈夫なのか?」
「何言ってるのよ!私は何度もユージと一緒に戦ってきたのよ!今までの報酬もあるし、領地もいただいたし、なんてことないわよ。あって困るものでもないでしょう?」
確かにな・・俺と一緒にいたせいで(おかげで?)アカネもだいぶ報酬をもらっている。
「わかった。きっとお父さんも楽になると思う。ありがとう、アカネ。」
「あなたがお礼をいうことでもないでしょ?」
とアカネは笑った。
男前だなぁ。
俺たちはハンナ先輩やご両親に事の次第を説明しに行くと、ハンナ先輩もご両親も、喜んでくれた。
「本当にハンナはいい友達を持ったもんだねぇ・・」
またお母さんが涙ぐむ。
「ありがとう!君たち!大事に使わせてもらうよ!」
お父さんも。涙をこらえているようだ。
ここ最近の苦難で涙もろくなっているのだろうか。
「ありがとうね!ユージ君、アカネちゃん!」
ハンナ先輩だけは朗らかに笑っていた。
このほうが気が楽だな。
「いえいえ、その代わり、今後とも風魔法のご教授、よろしくお願いします。」
「私はたいしたことないけど・・うん!私にできることはするからね!」
とまた笑った。
「ハンナ先輩。気を落とさずにまた元気に学園に来てくださいね!」
アカネが励ます。
「うん・・うん!ありがとうアカネちゃん!」
俺たちは長居するのもなんだし、早々に帰ることにした。
ハンナ先輩たちは明日にもコルトン家に引っ越すそうだ。
アカネの助けもあったし、衣食住はとりあえず大丈夫だろう。
「アカネ、やっぱりお礼を言わせてくれ。今日のお父さんの顔を見てると俺の金だけじゃやっぱり苦しかったみたいだ。」
「いいのよ。私はハンナ先輩のためにやったんだから。」
と笑った。
はは・・アカネらしいな。
そして・・早くハンナ一家が復活してくれるとうれしいな。
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彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
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ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
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※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
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