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第四章
皇国魔法学院最後の日
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翌日。
俺達の皇国魔法学院での滞在も最終日となった。
「ユージ様?教皇猊下とのご対面はいかがでしたか?」
「正教騎士の位をいただいたとか?」
「すごいですね~」
全く今までの待遇はなんだったのかと言いたいくらいの賞賛、そして羨望まじりの声の嵐だ。
「ああ、おかげさまで滞りなく済みました。ところで正教騎士についてはどこから聞いたんですか?」
「学院長がおっしゃっていましたよ?」
やはりケース学院長はいささか口が軽い気がする。
「アカネ様も祓魔師の位をうけられたとか。羨ましいですねぇ・・」
「さすがアカネ様だ。」
「素敵!」
アカネは苦笑いだ。
アイリスとアイズは知らん顔をして席についていた。
「ああ、先生、ちょっとお願いがあるんですが・・」
俺は先生に頼みごとをした。
「!いや!それは!しかし・・」
「教皇猊下には許可をいただきました。」
「・・う・・うむ。わかった。それでは学院長に相談のうえで・・」
「よろしくお願いします。」
俺はそこで話を切り上げて席へ着いた。
――――――――
授業は滞りなく進んでいった。
結果として、俺は相変わらず授業についていくのがやっとだったが、アカネやアイリス、そしてアイズまでもが見事に授業についていっていた。
ローム王国との違いはやはりエルフ族の興亡に主眼が置かれていることだっただろうか。
人間側の目から見た興亡史とは一味違った歴史観が味わえて中々興味深かった。
言語については人間族の者とは違うものだったが、みなロームで勉強していたおかげもあり、支障なくついていっていたようだ。
俺だけここでも苦戦していた。言語についてはしばらくの間課題だな・・。
そして午前の授業が終わり、昼食となる。
「ねぇユージ。例の話、したんでしょう?」
アカネが聞いてくる。
「ああ、先生にお願いしておいた。学院長の許可がおりれば可能となるはずだ。」
「そう・・ふふ、楽しみね。」
アカネは目を光らせる。
午後の授業も滞りなく進み、俺達は最後の授業を終えた。
そこで先生が来て俺に学院長との話の結果を教えてくれた。
――――――――
ホーリー聖教皇国での最後の夜。
「なんか色々なことがあったわね。」
俺達は宿舎のロビーで話し合っていた。
「そうだな。レオル達との決闘に始まり、底辺の悲惨な日々、ギガントシャークとの戦い、周りの手のひら返し、教皇との面談・・10日間にしてはてんこ盛りだ。」
「私はいまだに生徒にいたずらされたのがショックだよ・・」
そういえばアイリスは胸を触られたりしていたんだったな。女の子にはショックだろう。
俺も久々にいじめられていた時代を思い出させられていた。
ちょっと外交に影響を与えるかも、とか言われて気を使いすぎたかな・・
「まぁそれもきっと時間が解決してくれるさ。明日以降はきっとな・・」
俺はそう慰めた。
「僕はここの食事が美味しかった。他は美味しくなかった。」
アイズが不満げに言う。
アイズは大食漢だからな。薄味、少量の学生寮の食事は物足りなかっただろう。
「まぁ、あと少しでローム王国で帰れるんだ。そうしたらまた好きなものをいくらでも食べられるさ。アイリスもBクラスが懐かしいだろう?」
「うん!そうだね!早くみんなに会いたいよ!」
アイリスが笑顔を取り戻した。
「そういえば、アイズはしばらく学生寮の時、ボロボロになって帰って来てたな。何してたんだ?」
「修業してた。でももう必要ない。」
?
「まぁいいさ。明日は朝に馬車が迎えに来る。それから学院に挨拶して帰国だ。」
俺達は早々に切り上げると寝床についた。
――――――――
翌朝。
馬車が迎えに来た。
俺達は荷物をもって馬車に乗り込む。
「皆さま昨夜はよくお休みになられましたか?」
「ええ、おかげさまで。」
アカネがどこか決意に満ちた顔で答える。
「ではこれより学院に向かい最後のご挨拶をしていただき、その後ローム王国へ出発いたします。」
御者はそういうと馬車を走らせた。
馬車はすぐに学園についた。
生徒たちが送りに来てくれている。
「アカネ様~!」
「アイリス様~お健やかに!」
「アイズ様!今度はドラゴンの姿できてください!」
生徒たちが思い思いに見送りの言葉を贈ってくれる。
中にはレオル、イオン、レィディン、パルティの姿や、俺達をいじめていた以前のクラスの面々も見える。
「皆さまお世話になりました。僕たちはこれからローム王国へ帰ります。」
わーっと声があがる。
「ですが、その前に。」
?
「レオル、イオン、レィディン、パルティ出てきてくれ。」
レオル達が渋い顔で出てきた。
「最後にレオル達と試合を行いたいと思います。」
生徒たちがざわっとする。
「話は聞いている。まったく、たかが魔獣を倒したくらいで、10日間で何ができたというんだ?」
レオルが複雑そうな顔で言う。
「俺たちはお前たちに負け、研鑽を積んできた。最後にその成果を見てほしい。」
「ああ?まったく調子にのりやがってよ?今回は無事じゃすまねえぜ?ロームには半殺しの体で帰ってもらうかもなぁ?」
大柄のイオンがそう言うと一歩前に出てくる。
「10日で何ができるというの?あなたたちの考えていることはわからない。」
レィディンがクールな顔でそう言う。
「きゃはは!魔獣倒したから自信つけちゃったんだよ!まあまた自信失って帰ることになるけどねぇ?」
パルティがそう挑発する。
「じゃあ、この前の対戦相手で頼む。早速はじめよう。」
「まったく仕方ないね・・。やれやれ・・君たちにわがエルフ族の優秀さを今一度、思い知ってもらうことにしようか。」
仕方ないといった感じでレオルが木剣をもって出てきた。
「ああ、今回は悪いが木剣じゃない。真剣を使ってくれ。槍もだ。俺も使うから。」
「!なんだって?なんのつもりだい?死にたいのか?」
「死ぬつもりはないし、ケガもさせる気はない。とにかく頼む。」
「・・・何かあっても責任は取らないよ。」
レオルはそう言うと腰から細剣を抜いた。
「コール・・沖田総司・・」
俺は戦いの開始前にそうつぶやき、コールを済ませていた。
沖田総司は言わずと知れた新選組の天才剣士だ。有名なのが「三段突き」であり、構えから踏み込みの足音が一度しか鳴らないのに、その間に3発の突きを繰り出したと言われている。
「ではいくぞ!くらぇっ!」
レオルが瞬動で上段から剣を振り下ろしてくる。
だが・・。
レオルの首には俺の剣が付きつけられていた。
「な・・?」
レオルの目に驚愕の色が浮かぶ。
「さぁ次はお前だったな?イオン・・だったか?」
「て・・てめぇ・・調子に乗りやがって・・いくぜ!」
今度は相手に攻撃もさせない。俺はレオルを同じくイオンの首に剣を突き付けていた。
「な・・なぁ?何が起こった!?」
イオンが目を剥く。
「これが俺の技だ。楽しんでもらえたか?」
「全く動きが見えなかった・・なんだこの技は・・」
レオルが膝をつき、放心している。
「ま・・まだだ!もう一回!!」
イオンは槍を握りなおすともう一度突きかかってきた。
俺は今度は槍を巻き上げるように上にはじくとみぞおちに剣をつきつけていた。
「な・・!」
「確か初日はここに突きを入れられたんだったな。これで満足してもらえたか?」
「クッ・・!」
イオンが膝をつく。
「次は私の番ね。レィディン・・だったかしら。お相手をお願いするわ。」
「・・あなたじゃ私には勝てない。」
「まぁそれは見てからのお楽しみよ。」
瞬間、レィディンの手から雷閃が放たれる。
アカネは・・それを熱線で防いでいた。
「!あなた・・!」
「炎魔法とと雷魔法じゃ相性悪いからね。空間魔法で凝縮した熱線で防ぐことを考えたのよ。もちろん魔力を練る速度も大幅に上げているわ。」
「クッ!」
レィディンは更に複数の雷閃を放ってきた。
「それは悪手よ。複角度熱線!」
アカネは雷閃のことごとくを熱線で撃ち落としていた。
そして・・
「今度はこっちの番ね!喰らいなさい!」
と複角度熱線をレィディンに放つ。
レイディンは防ぎようもなく、体を焼かれていた。
そしてゆっくりと膝をつく。
「当然、威力は押さえてあるから死ぬことはないわ。まぁ火傷3日ってところかしら。女の子だから傷は残したくないしね。アイリス、一応ヒールかけてあげて。」
「うん、わかったよ!」
アイリスはうずくまるレイディンに駆け寄るとヒールをかける。
火傷の傷が癒えていった。
「あなた・・どうしてこんな短期間で・・」
「魔力を練る時間を大幅にあげたといったけど・・それ以外に常に日常で魔力を練る修練をしていたのよ。いついかなるときでも即応できるようにね。」
「・・お見事だわ。」
「あなたのおかげで、1段上の魔術師になれた。お礼を言わせてくれるかしら?」
「・・受け取っておくわ・・」
レイディンはフッと微笑むと後ろに下がっていった。
「ちょっとちょっと皆どうしちゃったの?初日あんなに弱かった相手がいきなり強くなるはずないでしょ?」
パルティが出てきて言う。
確かこの子は重力魔法使いだったか?
「君の相手は僕。かかってきて。」
アイズが一歩前に出る。
「ハァ?あんな無様な姿さらしといてまだ懲りないわけ?いいわよ、もう一度地面に這いつくばらせてあげるわ!」
パルティはそう言うとアイズに向かって重力魔法を放った。
瞬間。
「竜化!」
アイズが竜化する。
一瞬で大きな小山のような姿に変貌した。
「あ・・」
パルティはあっけにとられながらも、
「クッ!重力強化!」
と重量魔法を放つ。
アイズはびくともしない。
『この前のサメとの戦いでわかった。君は小さな相手は得意だけど大きな相手は苦手」
アイズがそう念話で言ってパルティを睥睨する。
「そんなはずは・・重力強化!重力強化!」
『効かない。体全体に魔法が散ってる。』
アイズはそういうとパルティの口を開けて息吹の構えを取る。
『今度は大きな息吹を放つ。空に逃げても空に放つ。氷槍で貫くこともできる。周りを巻きこんじゃうけど・・やってみる?』
「うう・・ダメだわぁ・・負けよ・・私の・・」
パルティが膝をつく。
アイズは竜化を解くと人間体に戻った。
「僕は小さい相手が苦手。でも君は大きい相手が苦手。」
「・・・」
「そんな・・パルティまで・・」
レオルがあっけにとられている。
「さぁもういいだろう?これで終了だ。」
俺が言うと
「くっ!今度は負けないからな!さらに修行してまた勝って見せる!」
レオルが悔しそうに言う。
「ああ、これで1勝1敗だ。次を楽しみにしてるよ。」
俺は言う。
「そんな・・レオル様が・・」
「パルティまで・・」
「なんで?初日と正反対じゃない・・」
生徒たちが驚きの声を隠し切れない
俺は最後に
「皆さん、お世話になりました。今回はいい勉強になりました。また会うこともあるでしょう。そのときはまたよろしくお願いします!」
と挨拶した。
しばらく間があって。
生徒から
「「「わぁぁぁぁぁ!」」」
と感嘆の声が上がる。
ケース学院長は渋い顔をしている。
「最後にアドバイスさせてほしい。ここの皇国魔法学院の生徒は少々速度に頼りすぎていて、威力に欠けるきらいがある。大きな魔獣相手では通用しない。今度はそっちを鍛えることをお勧めする。」
俺は余計なお世話かなと思いながらそうアドバイスしておいた。
「ああ・・胸に刻み込んでおくさ・・」
レオルがそうつぶやく。
「さぁ!みなロームへ帰ろう!」
俺は言うと皆と馬車へ乗り込んだ。
俺達の皇国魔法学院での滞在も最終日となった。
「ユージ様?教皇猊下とのご対面はいかがでしたか?」
「正教騎士の位をいただいたとか?」
「すごいですね~」
全く今までの待遇はなんだったのかと言いたいくらいの賞賛、そして羨望まじりの声の嵐だ。
「ああ、おかげさまで滞りなく済みました。ところで正教騎士についてはどこから聞いたんですか?」
「学院長がおっしゃっていましたよ?」
やはりケース学院長はいささか口が軽い気がする。
「アカネ様も祓魔師の位をうけられたとか。羨ましいですねぇ・・」
「さすがアカネ様だ。」
「素敵!」
アカネは苦笑いだ。
アイリスとアイズは知らん顔をして席についていた。
「ああ、先生、ちょっとお願いがあるんですが・・」
俺は先生に頼みごとをした。
「!いや!それは!しかし・・」
「教皇猊下には許可をいただきました。」
「・・う・・うむ。わかった。それでは学院長に相談のうえで・・」
「よろしくお願いします。」
俺はそこで話を切り上げて席へ着いた。
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授業は滞りなく進んでいった。
結果として、俺は相変わらず授業についていくのがやっとだったが、アカネやアイリス、そしてアイズまでもが見事に授業についていっていた。
ローム王国との違いはやはりエルフ族の興亡に主眼が置かれていることだっただろうか。
人間側の目から見た興亡史とは一味違った歴史観が味わえて中々興味深かった。
言語については人間族の者とは違うものだったが、みなロームで勉強していたおかげもあり、支障なくついていっていたようだ。
俺だけここでも苦戦していた。言語についてはしばらくの間課題だな・・。
そして午前の授業が終わり、昼食となる。
「ねぇユージ。例の話、したんでしょう?」
アカネが聞いてくる。
「ああ、先生にお願いしておいた。学院長の許可がおりれば可能となるはずだ。」
「そう・・ふふ、楽しみね。」
アカネは目を光らせる。
午後の授業も滞りなく進み、俺達は最後の授業を終えた。
そこで先生が来て俺に学院長との話の結果を教えてくれた。
――――――――
ホーリー聖教皇国での最後の夜。
「なんか色々なことがあったわね。」
俺達は宿舎のロビーで話し合っていた。
「そうだな。レオル達との決闘に始まり、底辺の悲惨な日々、ギガントシャークとの戦い、周りの手のひら返し、教皇との面談・・10日間にしてはてんこ盛りだ。」
「私はいまだに生徒にいたずらされたのがショックだよ・・」
そういえばアイリスは胸を触られたりしていたんだったな。女の子にはショックだろう。
俺も久々にいじめられていた時代を思い出させられていた。
ちょっと外交に影響を与えるかも、とか言われて気を使いすぎたかな・・
「まぁそれもきっと時間が解決してくれるさ。明日以降はきっとな・・」
俺はそう慰めた。
「僕はここの食事が美味しかった。他は美味しくなかった。」
アイズが不満げに言う。
アイズは大食漢だからな。薄味、少量の学生寮の食事は物足りなかっただろう。
「まぁ、あと少しでローム王国で帰れるんだ。そうしたらまた好きなものをいくらでも食べられるさ。アイリスもBクラスが懐かしいだろう?」
「うん!そうだね!早くみんなに会いたいよ!」
アイリスが笑顔を取り戻した。
「そういえば、アイズはしばらく学生寮の時、ボロボロになって帰って来てたな。何してたんだ?」
「修業してた。でももう必要ない。」
?
「まぁいいさ。明日は朝に馬車が迎えに来る。それから学院に挨拶して帰国だ。」
俺達は早々に切り上げると寝床についた。
――――――――
翌朝。
馬車が迎えに来た。
俺達は荷物をもって馬車に乗り込む。
「皆さま昨夜はよくお休みになられましたか?」
「ええ、おかげさまで。」
アカネがどこか決意に満ちた顔で答える。
「ではこれより学院に向かい最後のご挨拶をしていただき、その後ローム王国へ出発いたします。」
御者はそういうと馬車を走らせた。
馬車はすぐに学園についた。
生徒たちが送りに来てくれている。
「アカネ様~!」
「アイリス様~お健やかに!」
「アイズ様!今度はドラゴンの姿できてください!」
生徒たちが思い思いに見送りの言葉を贈ってくれる。
中にはレオル、イオン、レィディン、パルティの姿や、俺達をいじめていた以前のクラスの面々も見える。
「皆さまお世話になりました。僕たちはこれからローム王国へ帰ります。」
わーっと声があがる。
「ですが、その前に。」
?
「レオル、イオン、レィディン、パルティ出てきてくれ。」
レオル達が渋い顔で出てきた。
「最後にレオル達と試合を行いたいと思います。」
生徒たちがざわっとする。
「話は聞いている。まったく、たかが魔獣を倒したくらいで、10日間で何ができたというんだ?」
レオルが複雑そうな顔で言う。
「俺たちはお前たちに負け、研鑽を積んできた。最後にその成果を見てほしい。」
「ああ?まったく調子にのりやがってよ?今回は無事じゃすまねえぜ?ロームには半殺しの体で帰ってもらうかもなぁ?」
大柄のイオンがそう言うと一歩前に出てくる。
「10日で何ができるというの?あなたたちの考えていることはわからない。」
レィディンがクールな顔でそう言う。
「きゃはは!魔獣倒したから自信つけちゃったんだよ!まあまた自信失って帰ることになるけどねぇ?」
パルティがそう挑発する。
「じゃあ、この前の対戦相手で頼む。早速はじめよう。」
「まったく仕方ないね・・。やれやれ・・君たちにわがエルフ族の優秀さを今一度、思い知ってもらうことにしようか。」
仕方ないといった感じでレオルが木剣をもって出てきた。
「ああ、今回は悪いが木剣じゃない。真剣を使ってくれ。槍もだ。俺も使うから。」
「!なんだって?なんのつもりだい?死にたいのか?」
「死ぬつもりはないし、ケガもさせる気はない。とにかく頼む。」
「・・・何かあっても責任は取らないよ。」
レオルはそう言うと腰から細剣を抜いた。
「コール・・沖田総司・・」
俺は戦いの開始前にそうつぶやき、コールを済ませていた。
沖田総司は言わずと知れた新選組の天才剣士だ。有名なのが「三段突き」であり、構えから踏み込みの足音が一度しか鳴らないのに、その間に3発の突きを繰り出したと言われている。
「ではいくぞ!くらぇっ!」
レオルが瞬動で上段から剣を振り下ろしてくる。
だが・・。
レオルの首には俺の剣が付きつけられていた。
「な・・?」
レオルの目に驚愕の色が浮かぶ。
「さぁ次はお前だったな?イオン・・だったか?」
「て・・てめぇ・・調子に乗りやがって・・いくぜ!」
今度は相手に攻撃もさせない。俺はレオルを同じくイオンの首に剣を突き付けていた。
「な・・なぁ?何が起こった!?」
イオンが目を剥く。
「これが俺の技だ。楽しんでもらえたか?」
「全く動きが見えなかった・・なんだこの技は・・」
レオルが膝をつき、放心している。
「ま・・まだだ!もう一回!!」
イオンは槍を握りなおすともう一度突きかかってきた。
俺は今度は槍を巻き上げるように上にはじくとみぞおちに剣をつきつけていた。
「な・・!」
「確か初日はここに突きを入れられたんだったな。これで満足してもらえたか?」
「クッ・・!」
イオンが膝をつく。
「次は私の番ね。レィディン・・だったかしら。お相手をお願いするわ。」
「・・あなたじゃ私には勝てない。」
「まぁそれは見てからのお楽しみよ。」
瞬間、レィディンの手から雷閃が放たれる。
アカネは・・それを熱線で防いでいた。
「!あなた・・!」
「炎魔法とと雷魔法じゃ相性悪いからね。空間魔法で凝縮した熱線で防ぐことを考えたのよ。もちろん魔力を練る速度も大幅に上げているわ。」
「クッ!」
レィディンは更に複数の雷閃を放ってきた。
「それは悪手よ。複角度熱線!」
アカネは雷閃のことごとくを熱線で撃ち落としていた。
そして・・
「今度はこっちの番ね!喰らいなさい!」
と複角度熱線をレィディンに放つ。
レイディンは防ぎようもなく、体を焼かれていた。
そしてゆっくりと膝をつく。
「当然、威力は押さえてあるから死ぬことはないわ。まぁ火傷3日ってところかしら。女の子だから傷は残したくないしね。アイリス、一応ヒールかけてあげて。」
「うん、わかったよ!」
アイリスはうずくまるレイディンに駆け寄るとヒールをかける。
火傷の傷が癒えていった。
「あなた・・どうしてこんな短期間で・・」
「魔力を練る時間を大幅にあげたといったけど・・それ以外に常に日常で魔力を練る修練をしていたのよ。いついかなるときでも即応できるようにね。」
「・・お見事だわ。」
「あなたのおかげで、1段上の魔術師になれた。お礼を言わせてくれるかしら?」
「・・受け取っておくわ・・」
レイディンはフッと微笑むと後ろに下がっていった。
「ちょっとちょっと皆どうしちゃったの?初日あんなに弱かった相手がいきなり強くなるはずないでしょ?」
パルティが出てきて言う。
確かこの子は重力魔法使いだったか?
「君の相手は僕。かかってきて。」
アイズが一歩前に出る。
「ハァ?あんな無様な姿さらしといてまだ懲りないわけ?いいわよ、もう一度地面に這いつくばらせてあげるわ!」
パルティはそう言うとアイズに向かって重力魔法を放った。
瞬間。
「竜化!」
アイズが竜化する。
一瞬で大きな小山のような姿に変貌した。
「あ・・」
パルティはあっけにとられながらも、
「クッ!重力強化!」
と重量魔法を放つ。
アイズはびくともしない。
『この前のサメとの戦いでわかった。君は小さな相手は得意だけど大きな相手は苦手」
アイズがそう念話で言ってパルティを睥睨する。
「そんなはずは・・重力強化!重力強化!」
『効かない。体全体に魔法が散ってる。』
アイズはそういうとパルティの口を開けて息吹の構えを取る。
『今度は大きな息吹を放つ。空に逃げても空に放つ。氷槍で貫くこともできる。周りを巻きこんじゃうけど・・やってみる?』
「うう・・ダメだわぁ・・負けよ・・私の・・」
パルティが膝をつく。
アイズは竜化を解くと人間体に戻った。
「僕は小さい相手が苦手。でも君は大きい相手が苦手。」
「・・・」
「そんな・・パルティまで・・」
レオルがあっけにとられている。
「さぁもういいだろう?これで終了だ。」
俺が言うと
「くっ!今度は負けないからな!さらに修行してまた勝って見せる!」
レオルが悔しそうに言う。
「ああ、これで1勝1敗だ。次を楽しみにしてるよ。」
俺は言う。
「そんな・・レオル様が・・」
「パルティまで・・」
「なんで?初日と正反対じゃない・・」
生徒たちが驚きの声を隠し切れない
俺は最後に
「皆さん、お世話になりました。今回はいい勉強になりました。また会うこともあるでしょう。そのときはまたよろしくお願いします!」
と挨拶した。
しばらく間があって。
生徒から
「「「わぁぁぁぁぁ!」」」
と感嘆の声が上がる。
ケース学院長は渋い顔をしている。
「最後にアドバイスさせてほしい。ここの皇国魔法学院の生徒は少々速度に頼りすぎていて、威力に欠けるきらいがある。大きな魔獣相手では通用しない。今度はそっちを鍛えることをお勧めする。」
俺は余計なお世話かなと思いながらそうアドバイスしておいた。
「ああ・・胸に刻み込んでおくさ・・」
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それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
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