無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

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第五章

カース

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俺達は朝方門の前に集合すると兵の集合を待っていた。

「なぁキース。籠城ってっ手はなかったのか?確か城を攻めるには三倍以上の兵力が必要だとか聞いたことがあるんだけど・・」

「まぁそれは魔法がない場合だな。特に今回の相手のラファエルはカースを使うから籠城はほとんど意味がない。」

「そのカースってなんなんだ?」

「一言でいうと『呪い』だ。人を病においやることもできれば死を与えることもできる。魔法とは異なるから魔法障壁で防ぐこともできない。」

「そんな厄介な技なのか・・」

「ああ、だからこそラファエルはその実力で魔族幹部にまでのし上がった。それがまさか『蒼狼の会』に入って反旗を翻すとはな・・。」

「・・・」

「まぁ今回は丁度お前たちもいてくれて助かった。魔族同士の戦いでは魔法と魔法障壁の争いで埒があかない場合が多いが、今回はユージの剣や、アイズ、エリスの属性攻撃もあるからな。」

「そうだといいんだが・・」

・・・

やがて兵が集まり始めた。全兵力は五千といったところだろうか。

「よし!では各員準備でき次第進軍する。油断するなよ?相手はあのラファエルだからな!」

キースが指揮を執って軍を進める。

「この先の草原に敵が集結していると情報があった。戦いは恐らくそこの場所になるだろう。各員気を引き締めよ!」

「「「おお!」」」と声が上がる。

指揮ぶりも見事なもんだな。チャラチャラしていたキースはすっかり魔族幹部トールの顔になっていた。

魔王軍は草原を目指して進軍を始めた。

やがて敵の姿が見えてくる。数は三千といったところだろうか。

「まさかとは思うが・・サンダユウ、来ているか?」

「は。ここに。」

やっぱりいた。いつもどうやって移動しているのだろう。

それを察したのか
「王家には速度に優れるヒポグリフが飼われております。今回のようにユージ様達が空の旅をなさるときは私も空を飛んでまいります。」
と答えてくれた。

なるほど。そういうことだったのか。

「敵首領の位置はわかるか?」

「はい。丁度中央の奥部分に黒いフードをかぶった男が見えました。恐らくあの男かと。」

うーん、やっぱり前線には出てきてないよな。

「わかった。ありがとう。また何かあったら頼む。」

「は。かしこまりました。」
言うや否やサンダユウはその姿を消していった。

さて、兵の数ではこちらが優っているが、敵はどうでてくるのだろう?

既に両軍とも戦地に到着し、見合っている。

さてどちらが先に動くか・・

「先制攻撃だ!魔法を放て!」
キースの声が飛ぶ。

その声を受けて自陣魔王軍から次々と炎弾、氷弾、雷閃が発射される。

数で優っているのだ。先制攻撃は悪い手ではない。
ましてやここは障害のない平地だ。

こちらの攻撃を受けて敵軍は次々と魔力障壁張り始めた。
こちらの攻撃を次々と防いでいく。
が、しかし数の差はいかんともしがたく、徐々に敵の軍が崩れ始めた。

「今だ!全軍前進せよ!」
キースの命令が飛んだ。

その声を受けて前線が更に押し上げられる。

敵は左右に陣を分散し始めた。
しかし、戦国の戦術などを考えると数に劣る場合これは悪手だ。鶴翼の陣だったか?確か兵数で優るときに敵を包み込むように使う戦術のはずだ。

こちらは敵中央陣を押し開き、突き進んでいく。

敵は更に左右に開いていく。
徐々に敵陣本陣が見えてきた。

「よし敵本陣を囲むように押し包め!」

ここは突破じゃないのか?

しかしすぐにキースの意図がわかった。

敵本陣に突撃していってしまった部隊がバタバタと倒れ始めたのだ。

「ラファエルのカースだ!近づきすぎるな!遠巻きに魔法を放て!」
そうか。これがカースの威力か。

カースを喰らった味方はピクピクと痙攣し、倒れこんでいる。

味方が次々と魔法弾を放つが、ラファエルの体をすり抜けるように通り過ぎていく。

「ここでいくしかないな・・。ユージ、アイズ、エリス、頼む!」
キースの声を受け俺たちが走り出す。
いよいよ出番か!

「アイズ、エリス!行くぞ!」
「了解!」
「いよいよですわね!雷竜族の力、お見せしますわ!」

俺はアイズの背に乗って一気に敵本陣を目指した。

「アイズ、一気にいくぞ!」

「了解!上空までいくよ!」

アイズとエリスが息吹ブレスを放ちながら敵本陣近くの敵をなぎ倒していく。
味方でよかった。敵だったらやっぱり恐ろしいな。

しかし、その時、一人の男が前面に出てくる。

「パスカルだ!ユージ、気を付けろ!奴は魔族ながら強力な剣闘士だ!」
キースの注意が聞こえてくる。

しかし、いくら強いといってもコールを使った龍翔ほどではあるまい。
俺はいささかタカをくくっていた。

「大丈夫だ!いくぞ!コール!宮本武蔵!」
俺は一気にアイズから飛び降りるとその勢いのままパスカルへ切りつけた。

しかし、パスカルは難なく俺の剣を受け止める。

なんだと・?コールを使っているんだぞ?

「ふ・・人間か。そう簡単にこのパスカルを抜けるとは思わぬことだ。」

「果たしてそうかな?でやぁあ!」
俺は更に横薙ぎに剣を払う。パスカルはそれを剣を縦にして受け止める。

俺は更に下段から剣を跳ね上げ、そして突きに持っていった。

「ふふ・・遅い遅い。それではこのパスカルは抜けんぞ?」

何だと・・?

仕方ない。奥の手だ。

「ダブル・コール!柳生宗矩!」
ガツン!

今度は手ごたえがあった・・がパスカルはなんとその剣をも受け止めていた。

「く・・中々重いな。やるな人間。今度はこちらの番だ!」

パスカルがその大刀を大きく振りかぶり振り下ろしてきた。

これは・・マズい気がする!

「コール!宮本武蔵!」
俺はもう一度武蔵をコールし、ホーンテッドを二刀の状態にしてクロスしてパスカルの大刀を受け止めた。

・・く、重い!

「ほう、剣の形が変化するとは中々面白い武器を持っているな・・?」

二刀にして良かった。一刀ならはじかれてそのまま頭を潰されていたかもしれない。

この男・・強い!

「今度はこれでどうだ!コール!本田忠勝!」
二刀が槍の形に変化していく。

「いくぞ!ダブル・コール!沖田総司!」
ザクッザクッザクッ!

よし、手ごたえあり!

しかし、パスカルは傷を負っているものの、未だに立っていた。

「やるな・・人間よ・・しかしこのパスカルをなめてもらっては困る!」

再び切りあいに入る。

俺達はお互いに一歩も引かず3合、4合と切り結んでいった。

「ユージ!パスカルは魔力をその筋力に変換できる肉体強化術の能力を持っている!通常の攻撃ではびくともしないぞ!!」
キースの声が飛んできた。

そういう事か。

ならば、傷口を更にえぐるまでだ!

「アイズ!氷槍アイシクル・ランスを喰らわせてくれ!」
「了解!でやぁ!!」

アイズから氷槍アイシクル・ランスがパスカルに飛ぶ。

さすがに全て避け切ることはできなかったようでいくつか氷槍が突き刺さった。

「む・・やるな。ドラゴンとの連携攻撃とは・・!」

「これでお前にも弱点ができたってことだ!いくぞ!真空エバキュエイテッド固定フィックス伸長エクステンション!そして重力付与!」

俺は本田忠勝の力と沖田総司の速度を保ちつつアイズが付けた傷口目掛けて突きを放つ!
魔法で更に強化された攻撃ならどうだ?

「グゥッ!」

ようやくパスカルの腹深くに槍が突き刺さった。
よし、とどめだ!

「パスカルよ、下がれ。」
重々しい声がするので振り向いてみると、黒いフードの男が立っていた。短身痩躯、長髪の男だ。

「ははっ!」
パスカルがその声を聞いて下がる。

今のやり取り、黒いフード・・この男がラファエルか?

「ちょうどいい!お前のところまで行く手間が省けた!」

「ふ・・人間よ。少々調子に乗り過ぎたな。」

「何・・?」

「カース。」

・・!なんだこれは・・体から力が抜けていく・・

「いかん!皆ユージを助けよ!」
キースの声が聞こえるが意識を持っていかれそうになっている俺には遠い声に聞こえる・・。

「お前にはパスカルの礼をせねばならんな。喰らうがよい・・『デス』」

・・・
・・

俺はそこで死んだ。
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