無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

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第六章

ライン・ビーチ、とんぼ返り

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「それでお話と言うのは?何か手紙では伝えられない事がおわりなのでしょう?」

「ああ、実はライン郡に消費税というものを導入してほしいんだ。」

「ショウヒゼイ?」

「物の売買をするときにかける税金のことだ。とりあえず十%程度でやってほしい。」

「しかし、それではせっかく増え始めた人口が・・また民からの反感もあるでしょう。」

「ああ、その分を医療、教育、福祉、軍事に回してほしいんだ。」

「今まで低い税率でやってまいりましたが・・」

「ああ。だけどこれからライン郡が発展するためにはしっかりとした土壌が必要だ。そのためにライン郡は税金は高いけど安心して暮らせる所だという風にしていきたいんだ。」

「ふむ・・医療はわかりますが・・教育、福祉、軍事というのは?」

「教育は子供を安心して預けられる教育機関を作っていきたい。王国立魔術学園の小型版のようなものを作りたいんだ。親が安心して子供を通わせられるようにな。ライン郡は教育水準も高いという風にしていきたい。」

「なるほど・・福祉と言うのは?」

「今はライン郡は比較的若い街だが、これから老人も増えていくだろう。その時のために年金と言う制度を作っておきたいんだ。」

「ネンキンというのはなんですか?」

「政府があらかじめ税を取って保管しておき、働けなくなった老人たちに分配していく制度だ。これで老人たちも安心して老後を迎えることができる。また、制度が広まれば若者もこの地に居つくものも増えるだろう。」

「なるほど・・」

「そして最後に軍事だが、これは俺が考えた部隊を新たに編成してもらいたい。内容はこうだ・・」

と、俺とクリスはしばらく話し合った。

「なるほど・・いや、面白い案かもしれませんな。さすがユージ様、様々なことをご存じだ。とても学生の身とは思えませんな。」

「いや、これは全部俺の世界にあった制度なんだ。ただこちらの国でも使えるんじゃないかと思っただけさ。」

「軍備についてはライン郡だけではいささか物足りなくも感じますが」

「大丈夫だ。とりあえずはライン郡の兵数だけで十分だ。その代わり訓練はしっかりとやってもらいたい。」

「わかりました!では優秀な軍事教官を探してそのようにいたしましょう。」

「よろしく頼む。」

「それで・・ユージ様には決済いただかなければならないものがございます。」

「え?手紙のやり取りだけじゃダメなのか?」

「せっかくいらしたのですから少々書類を片付けていただきましょう。これでもほとんどのものはこちらでやっております。」

「仕方ないな・・では書類を持って来てくれ・・」

俺はしばらくそれから書類と格闘した。
なんとか終えると、

「それで・・これから街は視察されますか?」
クリスが聞いてきた。

「ああ、少しだけ見てこようと思う。もう夜だが、アイズもいるし、大丈夫だろう。見送りは結構だ。勝手に飛んで帰っていくから。」
と俺が笑うと、

「まったくあなたと言う方は・・来るときも去るときも風のようですな。」
クリスが苦笑する。

「まぁそんな主を持ったことを後悔してくれ。」

「いいえ!このような面白い仕事、王宮ではできません。今回のユージ様の案を大いに宣伝させていただき、民の理解を得ると共に、更なる発展のため、このクリス・レーニン全力で事にあたりましょう!」

「ああ、クリスの事は信頼している。よろしく頼む。」

「はい!」

「ところで、先日会ったハリーという少年はどうだ?」

「は・・あの者は機敏のみならず非常に勉強熱心で様々なことを吸収しております。内政官の資質がありそうですな。」

「うん。良かった。これからも大いに鍛えてやってくれ。今回の案に関わらせてみるのも面白いかもしれない。」

「ユージ様は人を見る目もお持ちですな・・そういたしましょう。」

「じゃあ、ちょっと街に行ってくる。アイズ待たせたな!そろそろ出かけよう。」

アイズは待っている間に何か食事を提供されたらしく口をモグモグさせていた。

「ひょっとまっれ。もうひゅこひではべおわる。」

「ああ、わかった。待ってるからゆっくり噛んで食べてくれ。」

俺はクリスと目を合わせると笑いあった。

・・・

俺とアイズは街に繰り出してみた。

以前来た時より一層発展しているのが見て取れる。

まずはダースの親父さんの店にでも行ってみるか。

「こんばんは~」

「おおこれはユージ様!よくいらっしゃいました!」

「商売は順調にいってますか?」

「おお、先日ユージ様の提案で作った波乗りの器具が思った以上に売れておりましてな!今では他国からも買い付けに来るものまでおりますぞ!近々大会でも開こうかと商店街の皆で話し合っておりますわい!」

やっぱりサーフィンは面白いんだな。俺はやったことないけど。

「そりゃ何よりです。ダイビングの方は?」

「海に潜る道具ですな。こちらも客が増えてもう一人では回しきれなくなって人をやとっております!」

なるほど。店内を見ると数人の従業員らしき者が忙しそうに働いている。

「もう、武具はやめにしてこちらに鞍替えしようかと思っているくらいですわい!」

「ああ、それはまた大きな需要があるだろうから続けておいた方がいいと思います。」

「ほう、そうですか。それではそのようにいたしましょう。」

「実は言っておかなければならないことがありまして・・」
と俺は消費税の話をした。

「ふむふむ・・なるほど・・医療、教育、福祉ですか。それならば、我々のような者も安心して暮らせそうですな。」

「一時的に反発はあるかと思いますが、結局はライン郡の為になると思っています。」

「そうですなぁ・・儂からも商店街の連中に話しておきましょう。」

「そうしてくれると助かります。その分、安心して暮らせる街にしていきますので。」

「なにせユージ様はこの街の英雄ですからな!ご心配は無用かと思いますぞ!」

「そう言っていただけると助かりますが、どうか皆へよろしくお伝えください。」

「かしこまりました!このドワル・ガンビルにお任せください!」

「よろしくお願いいたします。」

俺はそこで話を終えると店内を興味深げに見ていたアイズに声をかけた。

「アイズ待たせたな。次はインディーズ・カフェに行ってみよう。」

「ねぇ、ユージ。僕もこの波乗りとかやってみたい。」

「それはまた今度な。今回は時間がないんだ。すまないけど。」

「うー。わかった。我慢する。」

アイズには悪いが学校が終わった後の時間を利用してるからな。

次に俺達はインディーズ・カフェにやってきた。

「こんばんは~」

「おお!ユージ君かい?いや今はもう伯爵様だったね!ユージ様と呼んだ方がいいね!」

「いえ、君付けで十分です。景気はどうですか?」

「おかげさまで繁盛してるよ!魚料理だけじゃなくて肉料理も充実してきたんだ。」

「せっかくだ。食べていくか?アイズ?」

「うん。僕はいつでも食べられる。」
さっき官邸で食べ物を頬張っていたのになぁ・・さすがだ。

俺達は適当な料理を頼むと、とりあえず食事にありついた。
うん。肉料理もいける。

「どうだい?コルトン家の料理人から教わった料理の味は?なかなかのもんだろう?」

「はい。美味しいです。」

「そろそろ例の三号店の話も本格化してきてね!まったくユージ君様様だよ!あ、借金のことは忘れてないからね!」

「それは何よりです。ところで少しお話があるのですが・・」
と俺はダースの親父さんに話した新しい税金の話をした。

「ふむふむ・・なるほどねぇ・・色々と考えているね。まぁ一時的には厳しいかもしれないがここはユージ君を信じて飲食店の他の皆にも伝えておこうじゃないか!」

「そうしていただけると助かります。」

「安心して暮らせる街か・・こんな世界に住んでたら考えたこともなかったなぁ・・僕が老人になって引退しても大丈夫になるんだね。」

「はい。そういう街を目指しています。」

「そうかそうか。大きく見たらありがたい話だね!」

「はい。長い目で見たら皆のためになると思っています。」

「了解だ!どんな街ができるのか楽しみにしようじゃないか!」

「はい!」

俺達はそこで話を切り上げてインディーズ・カフェを出た。

「うーん・・まだちょっと食べられそう・・」
アイズがやや不服そうだ。

「アイズ、今度は寮の食事が待ってるから。これ以上ここにいたら深夜になってしまうだろ?」

「うーん仕方ない。じゃあ行くよ!」

俺達は再び空に舞い上がっった。
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