無職メンヘラ男が異世界でなりあがります

ヒゲオヤジ

文字の大きさ
69 / 72
第六章

修学旅行

しおりを挟む
「アカネ!すごいじゃないか!優勝なんて!」
昼食時、早速アカネに祝辞を言うと、

「あんなもの、時の運よ。私元々興味なかったし。」

「それでもあのアイリスちゃんを破ったんだ!大したもんだぜ!」
今日はランチに参加してきたキースが言う。

「あら、雷神トール様にそう言っていただけるのは光栄だわ。」
アカネはいかにもクールにいなす。

「おかしいですわ・・私が優勝できなかったなんて・・」
エリスが悔しそうにしている。

「まぁ、エリスはこの学校に来て日も浅いしな。来年はもっといいところ行くんじゃないか?」

「そうだといいのですけど・・それにしても、アカネ様やアイリス様は強敵ですわ・・」

「あはは・・私はたまたま運が良かっただけだよ。」
アイリスがフォローするが、いかにも学園のマドンナにふさわしいのはアイリスなんだろうな。美貌、スタイル、性格、男が理想とする女性に最も近いだろう。

「まぁ、五十年後には勝って見せますわ!」
確か竜人族の寿命は人間の十倍だったな。すると五年後ということになるのか。まぁそれは勝つだろう。その時に美少女コンテストがあるのかどうかわからないが。そもそも皆卒業しているだろう。と、それは言わないことにした。

「ところでもうすぐ修学旅行ね。」
アカネが話題を変える。

修学旅行なんてこっちの世界でもあるのか。

「旅行ってどこにいくんだ?」

「確かキョートよ。ご老公の肝いりで作られた街って聞いてるわ。」

ああ、なるほど。信長様が京都を再現したのか。それは中々面白そうだ。

「私キョートって行ったことないの。確かいろんな木造の古い建物や像があるんでしょう?」
アイリスがウキウキとした顔で言う。

「ああ、多分それは俺がいた国の街を模したものだな。信長様が作られたんなら間違いないだろう。」

「どんなところなの?」
アカネが聞く。

「うーん、古い街並みに仏像やお寺など、行ってみれば宗教的な情緒のある街かなぁ?宗教っていってもこっちの宗教とは全く違うけど。」

「ブツゾー?」

「俺のいた世界の神様だよ。お寺はそれらをまつる為に作られたものなんだ。まぁ実際に宗教目的で行く人は少ないんじゃないかな?皆情緒を楽しむようなところだよ。」

「へぇ?何か楽しみね!」
アカネも乗り気になってきたようだ。

「まぁ俺も二三回しかいったことはないけど、面白い街だよ。街を歩くだけで結構楽しめると思う。」

「観光地って聞いたけど?」

「ああ、もうその側面の方が大きいだろうな。きっとアカネやアイリスには異国に感じると思うよ。」

「ふーん。ちょっとユージの国に触れる機会が出てきそうね。」

京都を俺の国と思われてもちょっと違う気もするが。

「まぁ、普通の俺の国とはちょっと違うけどな。歴史的な建造物が多いところだよ。俺の国のものでは確か千年以上前の建物とか残ってたはずだ。」

「良く壊れなかったわね。」

「うーん、確か戦争とかもあったはずなんだけど、敵国が歴史を重んじて攻撃を避けたって話を聞いたことがあるなぁ。」

「そうなの?戦争でも破壊をやめるなんて敵の国もやるわね!」

確かアメリカは京都の爆撃は避けたんだよな。まだ若い国だから古いものに憧憬があったんじゃないかって聞いたことがあるけど。

「まぁそんあこんなで残ってきた町なんだ、商人も数百年前のお得意様を覚えていたりして時の流れが他の街と違うところだな。」

「信長様もやるわね!そんな街を再現しちゃうなんて!」

確か信長様は仏教には批判的だった気がしたが、それでも祖国を少しは懐かしんだのだろうか。散々本願寺一派との戦いで苦労したはずなんだけどな。それでも本能寺を京都の宿舎にしていたくらいだ。敵対勢力以外にはこだわりはないのかもしれないな。

「まぁ俺も信長様がどういう風に再現したのか楽しみだな。」

俺達はキョートの話で盛り上がった。

・・・

「えーそんなわけで来週から修学旅行になります。」
マーティン先生がクラスで皆に伝えた。

「古い木造の建物が多い場所だからみな落書きしたりいたずらしたりしないようにね。国から罰せられるから。」

「えー!」
「国から罰せられるの?」
「よっぽど貴重なんだな~」

生徒がそれぞれ思いをはせている。

「旅程は三泊四日になります。みな準備をしておくように。ああ、服装は学生服だからね。少し寒い場所だから上に羽織るものを持っていくといい。」

先生は慣れているのかそんなことを言っていた。

後ろからアイリスがつんつんしてくる。
「ねぇユージ君。キョートって寒い場所なの?」

「うーんと、氷竜国や雷竜国みたいなことはないけど、俺のいた国の街なら寒暖差が結構ある土地のはずだ。」

「そうなの!じゃあ防寒もしっかりしなきゃだね!」

京都は確か盆地で気候としては、瀬戸内海式気候と内陸性気候を併せ持っており、冬は降水量が比較的少なく、夏と冬、昼と夜で寒暖差が激しいはずだ。俺も先輩の家に行った時に春にも関わらず寒さを感じた覚えがある。

「そうだな。夜なんかは結構冷えると思う。準備していったほうがいいかもな。」

「そうだね・・」

そこでマーティン先生が、
「京都では男女六人のグループを作ってもらいます。皆早めにグループ決めを行うように!」
げ!グループ決めなんかあるのか!俺の最も苦手とする分野じゃないか・・。

そして休み時間。
「ユージ君、一緒のグループになろう?」
おっと早速アイリスが誘ってくれた。ありがたい。

「ユージ、俺達とも組もうぜ?」
ダースも誘ってくれた。

うう・・・こんなことは日本じゃなかったなぁ・・いつも最後まで取り残されていたっけ・・

「いや、しかしダースたちは三人だろう?男女比に差が出るんじゃないのか?」

「大丈夫だろ?男四人に女二人でぴったりじゃねぇか!」

そうなのかな?

「ふむ。なら私もそちらのグループに入れてもらいましょうか。その・・色々あるので。」
サンダユウが言ってきた。任務だな、間違いなく。

そして俺たちはあっさりと六人グループを結成することになった。

段々楽しみになってきたな。

・・・

食堂にて。
その話をアカネ達にすると、
「あら、私は龍翔と一緒のグループになったわよ。龍翔が一人で寂しそうだったから誘ってあげたの。」
さすがアカネ。男前だ。

「ウルヴァンは参加するのか?」
「あいつはこういった催しには参加しないんじゃないかしら?特待生扱いだしね?」

アカネに龍翔か・・ケンカなんか売ってくる奴がいたらひどい目に合わされそうだな。

「まぁグループが分かれちゃったのは仕方ないわね。別のクラスだし。お互いに楽しみましょ!」
それもそうだな。せっかくの機会だ。こっちの世界の修学旅行を満喫するとするか。

・・・

帰り道。俺は珍しく時間が合ったのでアイズと一緒に下校していた。アイズは補習帰り、俺はクラブ帰りだ。これから俺はライム道場へ。アイズは寮へと帰ることになる。

すると黒いフードをかぶった男が近づいてきた

「ユージ・ミカヅチだな。」
いかにも怪しい雰囲気を出している。

「ああ、そうだが・・あんたは?」

「フッ。私のことを覚えておけ。そのうち会うことになるだろう。」
と言うや否や、男は姿を消してしまった。

なんだ?気になる男だな・・

「ユージ。今の男、普通じゃない。」
アイズが警戒心剥き出しの顔になっている。

「ああ、そうだな・・こう何か掴みどころがない感じだった。」

また会うと言っていたな・・

謎の男だ。

まあいい。今はアイズに話があったんだ。

「アイズ、ちょっと明日にでも俺をライン・ビーチに連れて行ってくれないか?」

「いいけど、何で?」

「今度郡を賜ったからな。クリスと色々話しておきたいんだ。」

「そう。わかった。」

手紙でやり取りしていたが、ライン・ビーチはライン郡の郡都を兼ねることになった。ちょっと修学旅行の前に手紙じゃ伝えられないことを話しておきたい。

俺達はそこで別れた。

・・・

翌日。
授業が終わった時間を見計らってFクラスに顔を出してみた。

「おお!ユージじゃないか!久しぶりだな!」
ブリッツ先生が話しかけてきた。

「あはは・・ご無沙汰してます。」

「活躍は聞いているぞ!学生の身でずいぶんと出世したもんだ。」

「いやぁ・・周りの力のおかげです。たまたま運に恵まれただけです。」

「はっはっは!そういう事にしておこうか。ところで今日は何の用だ?」

「ちょっとアイズをお借りしたいと思いまして・・」

「伯爵様のお言葉では逆らうことはできんな!では今日の補修は無しとしよう。」

「ありがとうございます。」

「ユージ」
アイズがとことこやってきた。

「ああ、アイズ昨日話した通り、ライン・ビーチまで頼む。」

「うんわかった。」

俺達は校庭に行くとアイズが竜化ドラゴナイズするのを待って乗り込んだ。
生徒が幾人か見ていたがもう慣れたものだ。大騒ぎするものもいない。

「じゃあ、アイズ頼む。」

『うん、行くよ』

俺達は空に飛びあがった。

ものの十数分でライン・ビーチについた。馬車だと半日かかるのに本当に助かるな。

俺達は官邸の前に降りた。

クリスが慌てて駆け出してくる。
「ユージ様!ですからアイズ様のドラゴン姿では皆が驚くので事前に伝えてくれと・・」

「ああ、すまんすまん。今回は時間がなかったんだ。」

「全く・・まあもうここの者たちも慣れてきましたがね。」

「あはは・・そうだと助かる。」

俺達は官邸に連れ立って入っていった。
これから色々と話しておきたいことがあるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

処理中です...