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二章
(8)隣国の落とし子と襲撃
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「女王様!?」
レクセルは驚きを隠せない。
「驚かれるのも無理ないと思います。しかしこれは本当です。だから、もしあなたが望むなら、レクセルさんには私の護衛になって欲しいのです」
「護衛……」
それが本当なら騎士を目指すレクセルには願ってもない話である。しかしロゼッタの言うことが本当か分からなかった。
「何故身を追われているんだい?」
「私が女王になるのを良く思ってない人達の仕業です。私の母は民間の出身でした。なので私の王位継承権の順位は低かったのですけど、王妃マリアンヌには不倫の疑惑が持たれていました。継承権第一位の姫は王の血を引いていないと、王である父に疑いをかけられ、父は次期女王として私を指名したのです。しかし王妃マリアンヌはクーデターを起こしました。母は処刑され父は幽閉の身となっています」
エルドヴィエでクーデターがあったことはレクセルも知っていた。しかし当事者が目の前にいるとは思わなかった。
「……でもどうしてこの国に?」
「私も殺されそうになりました。一部の付き人を連れて国外へ逃げたのです。その一人がジャック・スレイヤー。彼以外のお付きの騎士達は皆殺されてしまいました。」
ジャックはロゼッタの騎士だったのか。
「命からがら逃げているところをアネモネさんに拾われました。私は名前を変えて、ジャックと共にアネモネさんの元に身を寄せることになりました」
「そんなことが……」
「分かった……ちょっと時間をくれないか?」
「えぇ、すぐにとは言いません」
レクセルは頭の中で整理する時間が必要だった。ロゼッタの話が全て真実なのか、それとも嘘で自分を利用しようとしているのか。
その後レクセルとロゼッタは身体検査を終わらせ、ロゼッタは帰った。
アネモネと二人きりになったとき、アネモネに聞いてみた。
本当にロゼッタはエルドヴィエのお姫様なのか。
するとアネモネはあっさりと白状した。
「本当だよ。彼女はエルドヴィエの王女第一候補だ」
「なっ!?」
レクセルは言葉を失う。
「しかし、今はエルドヴィエから追われる身だ。彼女は王族であることを隠して生活している」
「どうしてそれを僕に教えてくれたんですか?しかもあんなに簡単に……」
「君が信用できると思ったからだ」
「どうしてアネモネは彼女を保護することになったんですか?」
「暗殺部隊、エルドヴィエの追手はカザドの内部にまで侵入してきた。彼女のお付きの騎士団では手は負えなくなってきた。騎士団は一人ひとり減っていき、やがてジャック一人になった。そこでジャックが私に匿って欲しいと懇願してきたんだ。カザドの王政から近すぎず遠すぎない、丁度いい距離感を持つ私にね」
「そうだったのか……」
「私はあまり表立った行動はとらないようにしてた。目立つのは好きじゃないからね。だからロゼッタ、いやルーラを匿うのも丁度いいと思っていた。しかし先日、君がジェラルドを破ったことがニュースになったとき、私の研究室のメンバーも調べられ上げてしまってね。ロゼッタがルーラだということが、カザドに潜伏している追手達にバレたらしい。刺客を差し向けられてしまったよ」
「大丈夫だったんですか!?」
「相手は一人だった。ジャックが返り討ちにしたよ。しかしアレは様子見という感じだった。本格的に動かれたらジャックでは太刀打ちできない」
「それで僕を……ですか?」
「あぁ。君の実力を見込んでのことだろう」
「君は騎士を目指しているんだろう?彼女の騎士になってあげてみないか?」
「騎士……ロゼッタの……」
レクセルは迷っていた。これは正式な騎士と言えるのだろうか。しかし、ロゼッタの事情も考えればここで辞退するのも忍びない。
「俺はカザドの騎士になるのを夢見ていました。ここでロゼッタの騎士になるかについては迷っています」
「君の思う通りにすればいい。しかし君がロゼッタの騎士になるというならそれなりの覚悟が必要だ。エルドヴィエの未来、ひいてはカザドの未来を背負って立つことになるかもしれない」
「考えてみます」
「あぁ。時間はたっぷりあるとは言えないがな」
その後、レクセルは家に帰った。そしてベッドに寝転んで考えた。ここで騎士になるか否か。
ロゼッタの護衛を自分がしない場合どうなる?ジャックがロゼッタを守り続けることになる。それでいいのか?しかし自分に何ができる?あの鎧があれば……しかし……あの鎧はできれば使いたくない……!
レクセルはそんな思案をつづけていた。
次の日。アネモネの研究室にて。ロゼッタと対面するレクセル。
「君の護衛になるという話だけど、いいよ。君の安全が確保されるまでは僕は期間限定で君の騎士になる」
「ありがとうございます!」
ロゼッタは微笑んだ。
「じゃあさっそく、今日からよろしくお願いします」
「具体的には何をすればいいの?」
「帰り道のエスコートをお願いします。ジャックと一緒に」
「分かった」
その日の帰り道、ロゼッタの前方をジャックとレクセルで護衛しながら帰ることになった。
「お前が護衛についてくれて嬉しいぜ」
ジャックは言った。
「ジャックさんは騎士だったんですね。俺、知らなかった」
「正しく言えば騎士見習いだった。運良く生き延びただけだ」
「兎に角お前には期待している。俺だけじゃ姫を守りきれない」
3人は暗い林を歩いていた。ロゼッタの家はこの先にある。
すると茂みの影から人が出てきた。暗がりでよく見えない。
ジャックもレクセルも、アネモネに強度と切れ味強化の付呪をしてもらった剣を構える。
「エルドヴィエ王の落とし子の命、貰いに来た」
向こうは3人。その内の一人の男がそう言うと、3人の男はそれぞれ腰から刀を抜き放った。
3人の刺客は顔をマスクで覆っている。
「ロゼッタ。下がってください」
レクセルとジャックはロゼッタの前に出た。
「邪魔だ」
男は斬りかかってきた。レクセルはなんとか受け止めるが、その衝撃でレクセルは吹き飛ばされる。
「くっ」
立ち上がり、敵を見据えるレクセル。
もう一人の男はジャックと剣戟をしていた。
ジャックは一人の男を抑えるのが限界でもう一人の男は手隙となってしまう。
その男がロゼッタを手に掛けようとする。
「駄目だ間に合わない……!」
レクセルは瞬時に頭を巡らせた。どうすればいい。どうすれば彼女を助けられる?俺は騎士なのだろう?彼女を守ると誓ったその日に彼女を殺させるのか?
そんな思考が駆け巡り、これしかないという結論に至った。
右手の指輪に僅かな魔力を込める。
『着装!』
レクセルの身体が金属のプレートで覆われていく。身体を金属の板が包み、頭をフルフェイスの鎧が覆う。
そして意識は、海に飲み込まれるように溶けていった。
「なんだ!?コイツ?」
突如として鎧の姿となったレクセルの姿にロゼッタを殺そうとする男の手が一瞬止まる。
一方、最初にレクセルを吹き飛ばした男が、レクセルに再び斬りかかる。
剣で迎え撃つレクセル。
キィィン!!
剣と剣が激しくぶつかる音。
レクセルの剣撃は凄まじく、斬りかかってきた男の剣は柄から先が吹き飛んでいった。
「バカな……!」
レクセルはそのまま剣を薙ぎ払う。
斬られた男は胴体から血を流して斃れた。
残る2人も呆気に取られていた。が、ロゼッタを殺そうとしていた男は我に返るとロゼッタの首に再び刃を向ける。
しかし、その男の背後に一瞬で回ったレクセルが背後からの一撃を決める。
「ぐはっ!」
崩れ落ちる男。男の体から剣を引き抜くレクセル。
「ありえない……一瞬で……二人やられただと……!」
残った男は、ジャックと戦いながらも呆然としていた。
「お前の相手は俺だぜ……!」
なんとかその男を斬り伏せるジャック。
戦いの決着はついた。
ロゼッタはその場にへたり込んでいた。
レクセルは立ち尽くしていた。
「おい。レクセル。大丈夫か!?」
ロゼッタに歩み寄りながらもレクセルに声をかけるジャック。
レクセルは膝をつき、その場に倒れた。
「レクセル!」
「レクセルさん!」
ロゼッタは立ち上がると、レクセルの元に駆け寄る。ジャックもそれに付き添う。
レクセルの鎧が解除され、レクセルはうつ伏せに倒れていた。
気を失っている。
ジャックがレクセルの身体を起こしてやり、頭をもたげさせた。
「う、うぅ……」
レクセルは目をあけた。その目は虚ろだったが意識はあるようだった。
「レクセルさん!聞こえますか?」
レクセルに問いかけるロゼッタ。
「ロゼッタ。よくご無事で……」
レクセルはロゼッタの顔を見ると安心したように微笑んだ。
「今回は鎧の装着時間が短かったから、少し気を失うだけで済んだようだな」
ジャックは分析する。
「立てるか?レクセル?」
「ごめん。しばらく無理っぽい」
「しゃあねーなー。おぶってやるよ」
ジャックはレクセルをおんぶした。
3人はロゼッタの家まで帰った。
家に着く頃にはレクセルは自分で歩けるまで回復していた。
「迷惑おかけしました」
ジャックに謝るレクセル。
ロゼッタの家は質素だったが、綺麗だった。馬小屋然としたレクセルの家とは大違いだった。そして、ロゼッタの家の隣にジャックの家があった。
「一緒に暮らしてるんじゃないんですね」
レクセルはニヤニヤしながら言った。
「馬鹿野郎。仮にも一国の姫だぞ。一介の騎士見習いが一緒に住めるか」
ジャックは言った。
ジャックの家はロゼッタの家よりさらに質素で、一回り小さくしたような家だった。
「今日はありがとうございました」
2人にお礼を言うロゼッタ。
「私には夢があります。今の王妃、マリアンヌが実権を握っている状態を解除し、父の身を解放すること。そしてエルドヴィエを元の国に戻すこと。今エルドヴィエはクーデターのせいで混乱状態です。レクセルさんには国を元通りにするときまで付き合ってくれとはいいません。しかし私が国に戻る日まで一緒に居てほしいのです」
「俺たちは貴方の騎士ですから。その身をお守りします」
レクセルが言った。
「それにしてもアネモネや国の軍に早急に連絡した方がいいな。あの刺客達の身元調べる必要がある」
ジャックは戦いのあった現場のことを気にしてるようだった。刺客達の亡骸は放置したままだ。
「そうですね。明日早急にアネモネに報告しましょう。それではまた明日」
レクセルとジャックはロゼッタが家に入るのを見守った。
「レクセル。頼みがある。明日から俺の家で暫く生活してくれないか?ロゼッタが家に居るとき襲撃されたら隣の俺らが何とかできるように」
「分かった。妹はアネモネ邸に面倒見てもらうことにするよ」
レクセルとしては野郎と二人暮らしはそんなに気が進まなかったのだが、ロゼッタの危機を前にそんなことも言ってられない。
そうして長い一日が終わった。
◇◆◇◆
次の日アネモネと警備隊が襲撃のあった場所を調べた。
「興味深いことが分かった。刺客の身元を調査したところ、カザド軍の一員であることが分かった」
調査が終わったあと研究室でアネモネはレクセルとジャック、ロゼッタにそう言った。
「この国の内部にロゼッタを亡き者にしようとしている連中がいる」
レクセルは驚きを隠せない。
「驚かれるのも無理ないと思います。しかしこれは本当です。だから、もしあなたが望むなら、レクセルさんには私の護衛になって欲しいのです」
「護衛……」
それが本当なら騎士を目指すレクセルには願ってもない話である。しかしロゼッタの言うことが本当か分からなかった。
「何故身を追われているんだい?」
「私が女王になるのを良く思ってない人達の仕業です。私の母は民間の出身でした。なので私の王位継承権の順位は低かったのですけど、王妃マリアンヌには不倫の疑惑が持たれていました。継承権第一位の姫は王の血を引いていないと、王である父に疑いをかけられ、父は次期女王として私を指名したのです。しかし王妃マリアンヌはクーデターを起こしました。母は処刑され父は幽閉の身となっています」
エルドヴィエでクーデターがあったことはレクセルも知っていた。しかし当事者が目の前にいるとは思わなかった。
「……でもどうしてこの国に?」
「私も殺されそうになりました。一部の付き人を連れて国外へ逃げたのです。その一人がジャック・スレイヤー。彼以外のお付きの騎士達は皆殺されてしまいました。」
ジャックはロゼッタの騎士だったのか。
「命からがら逃げているところをアネモネさんに拾われました。私は名前を変えて、ジャックと共にアネモネさんの元に身を寄せることになりました」
「そんなことが……」
「分かった……ちょっと時間をくれないか?」
「えぇ、すぐにとは言いません」
レクセルは頭の中で整理する時間が必要だった。ロゼッタの話が全て真実なのか、それとも嘘で自分を利用しようとしているのか。
その後レクセルとロゼッタは身体検査を終わらせ、ロゼッタは帰った。
アネモネと二人きりになったとき、アネモネに聞いてみた。
本当にロゼッタはエルドヴィエのお姫様なのか。
するとアネモネはあっさりと白状した。
「本当だよ。彼女はエルドヴィエの王女第一候補だ」
「なっ!?」
レクセルは言葉を失う。
「しかし、今はエルドヴィエから追われる身だ。彼女は王族であることを隠して生活している」
「どうしてそれを僕に教えてくれたんですか?しかもあんなに簡単に……」
「君が信用できると思ったからだ」
「どうしてアネモネは彼女を保護することになったんですか?」
「暗殺部隊、エルドヴィエの追手はカザドの内部にまで侵入してきた。彼女のお付きの騎士団では手は負えなくなってきた。騎士団は一人ひとり減っていき、やがてジャック一人になった。そこでジャックが私に匿って欲しいと懇願してきたんだ。カザドの王政から近すぎず遠すぎない、丁度いい距離感を持つ私にね」
「そうだったのか……」
「私はあまり表立った行動はとらないようにしてた。目立つのは好きじゃないからね。だからロゼッタ、いやルーラを匿うのも丁度いいと思っていた。しかし先日、君がジェラルドを破ったことがニュースになったとき、私の研究室のメンバーも調べられ上げてしまってね。ロゼッタがルーラだということが、カザドに潜伏している追手達にバレたらしい。刺客を差し向けられてしまったよ」
「大丈夫だったんですか!?」
「相手は一人だった。ジャックが返り討ちにしたよ。しかしアレは様子見という感じだった。本格的に動かれたらジャックでは太刀打ちできない」
「それで僕を……ですか?」
「あぁ。君の実力を見込んでのことだろう」
「君は騎士を目指しているんだろう?彼女の騎士になってあげてみないか?」
「騎士……ロゼッタの……」
レクセルは迷っていた。これは正式な騎士と言えるのだろうか。しかし、ロゼッタの事情も考えればここで辞退するのも忍びない。
「俺はカザドの騎士になるのを夢見ていました。ここでロゼッタの騎士になるかについては迷っています」
「君の思う通りにすればいい。しかし君がロゼッタの騎士になるというならそれなりの覚悟が必要だ。エルドヴィエの未来、ひいてはカザドの未来を背負って立つことになるかもしれない」
「考えてみます」
「あぁ。時間はたっぷりあるとは言えないがな」
その後、レクセルは家に帰った。そしてベッドに寝転んで考えた。ここで騎士になるか否か。
ロゼッタの護衛を自分がしない場合どうなる?ジャックがロゼッタを守り続けることになる。それでいいのか?しかし自分に何ができる?あの鎧があれば……しかし……あの鎧はできれば使いたくない……!
レクセルはそんな思案をつづけていた。
次の日。アネモネの研究室にて。ロゼッタと対面するレクセル。
「君の護衛になるという話だけど、いいよ。君の安全が確保されるまでは僕は期間限定で君の騎士になる」
「ありがとうございます!」
ロゼッタは微笑んだ。
「じゃあさっそく、今日からよろしくお願いします」
「具体的には何をすればいいの?」
「帰り道のエスコートをお願いします。ジャックと一緒に」
「分かった」
その日の帰り道、ロゼッタの前方をジャックとレクセルで護衛しながら帰ることになった。
「お前が護衛についてくれて嬉しいぜ」
ジャックは言った。
「ジャックさんは騎士だったんですね。俺、知らなかった」
「正しく言えば騎士見習いだった。運良く生き延びただけだ」
「兎に角お前には期待している。俺だけじゃ姫を守りきれない」
3人は暗い林を歩いていた。ロゼッタの家はこの先にある。
すると茂みの影から人が出てきた。暗がりでよく見えない。
ジャックもレクセルも、アネモネに強度と切れ味強化の付呪をしてもらった剣を構える。
「エルドヴィエ王の落とし子の命、貰いに来た」
向こうは3人。その内の一人の男がそう言うと、3人の男はそれぞれ腰から刀を抜き放った。
3人の刺客は顔をマスクで覆っている。
「ロゼッタ。下がってください」
レクセルとジャックはロゼッタの前に出た。
「邪魔だ」
男は斬りかかってきた。レクセルはなんとか受け止めるが、その衝撃でレクセルは吹き飛ばされる。
「くっ」
立ち上がり、敵を見据えるレクセル。
もう一人の男はジャックと剣戟をしていた。
ジャックは一人の男を抑えるのが限界でもう一人の男は手隙となってしまう。
その男がロゼッタを手に掛けようとする。
「駄目だ間に合わない……!」
レクセルは瞬時に頭を巡らせた。どうすればいい。どうすれば彼女を助けられる?俺は騎士なのだろう?彼女を守ると誓ったその日に彼女を殺させるのか?
そんな思考が駆け巡り、これしかないという結論に至った。
右手の指輪に僅かな魔力を込める。
『着装!』
レクセルの身体が金属のプレートで覆われていく。身体を金属の板が包み、頭をフルフェイスの鎧が覆う。
そして意識は、海に飲み込まれるように溶けていった。
「なんだ!?コイツ?」
突如として鎧の姿となったレクセルの姿にロゼッタを殺そうとする男の手が一瞬止まる。
一方、最初にレクセルを吹き飛ばした男が、レクセルに再び斬りかかる。
剣で迎え撃つレクセル。
キィィン!!
剣と剣が激しくぶつかる音。
レクセルの剣撃は凄まじく、斬りかかってきた男の剣は柄から先が吹き飛んでいった。
「バカな……!」
レクセルはそのまま剣を薙ぎ払う。
斬られた男は胴体から血を流して斃れた。
残る2人も呆気に取られていた。が、ロゼッタを殺そうとしていた男は我に返るとロゼッタの首に再び刃を向ける。
しかし、その男の背後に一瞬で回ったレクセルが背後からの一撃を決める。
「ぐはっ!」
崩れ落ちる男。男の体から剣を引き抜くレクセル。
「ありえない……一瞬で……二人やられただと……!」
残った男は、ジャックと戦いながらも呆然としていた。
「お前の相手は俺だぜ……!」
なんとかその男を斬り伏せるジャック。
戦いの決着はついた。
ロゼッタはその場にへたり込んでいた。
レクセルは立ち尽くしていた。
「おい。レクセル。大丈夫か!?」
ロゼッタに歩み寄りながらもレクセルに声をかけるジャック。
レクセルは膝をつき、その場に倒れた。
「レクセル!」
「レクセルさん!」
ロゼッタは立ち上がると、レクセルの元に駆け寄る。ジャックもそれに付き添う。
レクセルの鎧が解除され、レクセルはうつ伏せに倒れていた。
気を失っている。
ジャックがレクセルの身体を起こしてやり、頭をもたげさせた。
「う、うぅ……」
レクセルは目をあけた。その目は虚ろだったが意識はあるようだった。
「レクセルさん!聞こえますか?」
レクセルに問いかけるロゼッタ。
「ロゼッタ。よくご無事で……」
レクセルはロゼッタの顔を見ると安心したように微笑んだ。
「今回は鎧の装着時間が短かったから、少し気を失うだけで済んだようだな」
ジャックは分析する。
「立てるか?レクセル?」
「ごめん。しばらく無理っぽい」
「しゃあねーなー。おぶってやるよ」
ジャックはレクセルをおんぶした。
3人はロゼッタの家まで帰った。
家に着く頃にはレクセルは自分で歩けるまで回復していた。
「迷惑おかけしました」
ジャックに謝るレクセル。
ロゼッタの家は質素だったが、綺麗だった。馬小屋然としたレクセルの家とは大違いだった。そして、ロゼッタの家の隣にジャックの家があった。
「一緒に暮らしてるんじゃないんですね」
レクセルはニヤニヤしながら言った。
「馬鹿野郎。仮にも一国の姫だぞ。一介の騎士見習いが一緒に住めるか」
ジャックは言った。
ジャックの家はロゼッタの家よりさらに質素で、一回り小さくしたような家だった。
「今日はありがとうございました」
2人にお礼を言うロゼッタ。
「私には夢があります。今の王妃、マリアンヌが実権を握っている状態を解除し、父の身を解放すること。そしてエルドヴィエを元の国に戻すこと。今エルドヴィエはクーデターのせいで混乱状態です。レクセルさんには国を元通りにするときまで付き合ってくれとはいいません。しかし私が国に戻る日まで一緒に居てほしいのです」
「俺たちは貴方の騎士ですから。その身をお守りします」
レクセルが言った。
「それにしてもアネモネや国の軍に早急に連絡した方がいいな。あの刺客達の身元調べる必要がある」
ジャックは戦いのあった現場のことを気にしてるようだった。刺客達の亡骸は放置したままだ。
「そうですね。明日早急にアネモネに報告しましょう。それではまた明日」
レクセルとジャックはロゼッタが家に入るのを見守った。
「レクセル。頼みがある。明日から俺の家で暫く生活してくれないか?ロゼッタが家に居るとき襲撃されたら隣の俺らが何とかできるように」
「分かった。妹はアネモネ邸に面倒見てもらうことにするよ」
レクセルとしては野郎と二人暮らしはそんなに気が進まなかったのだが、ロゼッタの危機を前にそんなことも言ってられない。
そうして長い一日が終わった。
◇◆◇◆
次の日アネモネと警備隊が襲撃のあった場所を調べた。
「興味深いことが分かった。刺客の身元を調査したところ、カザド軍の一員であることが分かった」
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