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三章
(17)竜との生活
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ギルドの受付にて。
受付嬢のミーナはレクセルの姿を確認すると、安心したように一息ついた。
「レクセルさん、無事で良かった……!」
「今回はギリギリでした……依頼の報告お願いします。」
「あ、はい! えっとですね…………」
レクセルは報告を終えて、報酬を受け取った。
「生存者はレクセルさん一人……凄惨な戦いだったようですね……」
「誰一人守ることが出来ませんでした……」
レクセルは悔やむように下を向く。
「でも、おかげで地表に接近していた隕石は軌道を変えたようです。先程天体観測所から連絡がありました」
「それは良かった……」
「ところで……その子誰なんです……?」
ミーナがレクセルの後ろに顔を向ける。レクセルが振り向くとコーラルピンクの髪をした少女が興味深そうに受付の机を覗いていた。
「ジア、外で待ってろって言っただろ!」
「ジア……!?」
ミーナが不審な顔で少女の方を見た。
「セツナ、何やってるの?」
少女はレクセルに尋ねる。
「あはは!この子は帰りの道で出会った迷子の子でして!ジア―ナっていうんですよ!俺のことをセツナっていう名前の自分の親と勘違いしてるみたいで」
「な。ジアーナ、お前の家探しはギルドでの仕事が終わったあとしてやるからなー」
レクセルは少女の背中を押して、ギルドの外まで連れて行こうとする。
「セツナ、私何言ってるのか分からない」
「いいからいいから~」
「あ、あの。迷子ということでしたらギルドの方で面倒見ますよ?」
ミーナは二人を見て言った。
「いいんです!この子両親とはぐれた後によっぽど酷い目にあったのか、俺を親だと思い込んでて、俺から離れるとパニックになるんですよ。責任を持って両親を探します」
「そ、そうですか……」
レクセル達はギルドを出て行った。
ミーナはその様子を見て、ふぅっとため息をつく。
(誰の子供……?レクセルさんと同い年くらいなのに……。)
ミーナは気を取り直して、いつも通り笑顔で業務に戻った。
そのコーラルピンクの髪をした少女の正体は魔竜ジアだった。彼女は頭に剣を刺された時、記憶を失い、人間の姿となっていた。
彼女の今ある記憶は、セツナという少女と人間界で暮らしていた頃まで遡る。
◇◆◇◆
アネモネの研究室にて。
アネモネはジアを見て言った。
「その子、どこに住まわせる気だ」
「うちで面倒見ますよ」
レクセルは言った。レクセルはジアをアネモネの研究室に連れ帰った。
しかし、アネモネ邸で面倒見てくれとは言えない。
レクセルが持ち帰った問題だし、彼女の実態を考えると自分が近くに居ないと危険すぎる。
「しかし、竜の子ねぇ……。また凄い子を拾ってきたもんだな」
レクセルはアネモネ達にジアの正体を話していた。
彼女達なら信用できると思ったのだ。
「ティックスの次は本物の竜を連れ帰るなんてね」
近くにいたアリスが言った。アリスは肩をすくめた。
「あの子最近ようやく餌を自分で獲れるようになったのよ」
アリスが言った。
「用心しておけ、レクセル。彼女は記憶がないとは言え何人もの人間を殺している。他の連中にその存在が知られたらタダじゃ済まないぞ」
アネモネが言った。ジアはキョトンとしている。
「それに、確認したいのだが、ジアはかつて人間の絶滅を願っていた。なぜ彼女と一緒に暮らす?」
「それは……ほっとけないじゃないですか。この子は俺をセツナと呼んだんです」
「竜と共存できると?」
アネモネは鋭い視線を向ける。レクセルはその威圧感に押された。
「……少なくとも俺はそう思っています」
「……そうか」
「私は別に反対はしない。彼女の面倒を見るというなら好きにしろ。だが、くれぐれも注意しろ。彼女が記憶を取り戻した時、何が起こるか分からんぞ」
「はい!」
レクセルは力強く返事をした。
「じゃあ、とりあえず帰るぞ、ジア」
ジアは黙ってレクセルについていく。
その日は解散となった。
帰り道。ベルディも加わり、3人で帰路を歩く。
「ふふっ。なんか妹ができたみたい」
道を歩きながら、ジアを見てベルディが言った。
「見かけはお前が妹だけどな」
「いいの!今は私がお姉ちゃん」
「……?」
ジアはよく分からないといった様子で首を傾げる。
そして、3人は家に着いた。
改めて我が家を見るベルディとレクセル。
「なんか……」
「狭いね」
2人が同時に言った。
「……増築しよう」
レクセルが意を決したように言った。
「お金あるの?」
「お兄ちゃんは最近大活躍だからな。その心配はない」
実際、エルドヴィエ奪還においても活躍を評価され、レクセルのギルドでの評判も高くなっている。だからこそ魔竜退治の仕事がギルドよりあてがわれ、その成功報酬も割高だった。
レクセルの懐事情は今ある程度潤っている。
「とりあえず今日はご飯食べて寝よう」
「うん」
ベルディは返事をするとレクセルと一緒に晩御飯の準備をする。
ジャガイモのスープとパン、ハムである。
「いただきます!」
3人揃って夕食を食べる。
しかし、ジアは手を付けようとしない
「遠慮しなくて良いんだよ」
「おいしいよ」
「……」
ジアは2人の言葉を無視して食事に手をつけない。
「どうした?」
「……いらない」
「え?」
「ごちそうさま」
ジアは部屋を出て行ってしまった。
食後、レクセルはジアの元へ行く。
ジアは部屋の窓から月を見ていた。
「お前の食事、蓋を被せてあるからな。腹減ったら食べろ」
「……セツナが死ぬ夢を見た」
ジアは月を見ながら言った。
「とても怖かった」
ジアはレクセルの方を見た。
「……」
レクセルは迷った。自分はセツナではないという事を白状すべきか。
しかし、ジアのすがるような目を見て何も言えなかった。
「約束して。いつまでも傍に居るって」
「ああ、約束するよ」
レクセルは言った。
「今日は遅いからもう寝よう」
レクセルはジアを寝室に案内した。その日はレクセルのベッドにジアを寝かせて、レクセルは床に寝た。
次の日、レクセルは増築の依頼をするために街に出た。ジアも一緒だった。
街の大工に頼み、その日の内に下見と、施工が行われることになった。
街のショーケースに釘付けになるジア
中には赤い豪華なドレスが飾られていた。
「欲しいのか?」
「別に」
「買ってや……ん?」
値段を見て仰天した。買えない訳じゃないが、増築の値段も考えるとおいそれと手を出せるものではない。
「ま、また今度な……」
レクセルとジアは家に戻った。増築の作業がある。
大工はもう家に着いていて寸法を測っていた。
家が隣接してない方向の庭を拡大させて一部屋増築する。
庭を掘り、石材や木材を運ぶ。レクセルとベルディも手伝う。
ジアは黙ってその様子を見ていた。
夕方過ぎには作業は終わった。
「いやぁ、ありがとうございます!こんな立派な家を増築していただけるなんて」
「いえ、こちらこそ手伝ってもらってありがとうございます」
「では、失礼します!」
大工は帰って行った。
「さぁ入るぞ」
レクセル達は家の中に入った。リビングに入ると、新たに増えた部屋への扉があった。
「ジアの部屋だぞ」
レクセルは、ジアを扉の中に案内してやる。
「ここが……私の部屋」
ジアは感動しているように見えた。そして、部屋を見回す。
ベッド、机、タンスなどが備え付けられており、ジアは早速ベッドに座ってみる。
「ふかふかなの」
「気に入ったか?」
「うん」
レクセルは微笑む。
「じゃあ、飯にしよう」
ジアは表情を曇らせた。
「……いらない」
「なんでだ?腹減ってないのか?」
「減ってない」
その時、ジアのお腹がぎゅるるると鳴った。
「ほら、やっぱり腹が減ってるじゃないか」
「……」
「一緒に食べよう」
「……が、……たい」
ジアは小さな声で呟いた。
「なんて?」
「……栗が、食べたい……!」
ジアは言った。
「セツナ、よく採ってくれた……!」
ジアは少し涙ぐんでいた。
「あの栗が、また食べたいの……!」
「……」
レクセルはしばらく黙っていた。彼女はうすうす気づいているのかもしれない。彼女の慕うセツナはもう遠くに行ってしまったことに。
レクセルはそう思った。
「……分かった。採ってきてやる」
レクセルはそう言うと出かける準備を始めた。
「お兄ちゃん、こんな遅くにどこか行くの?」
ベルディが心配そうに聞く。
「ベルディ。ジアと留守番してろ。ご飯は自分の分だけ作ればいいから」
「……どこに行くの?」
「すぐ戻るよ」
レクセルはそう言って、家を出た。
レクセルは街を歩く。栗の木を探すために。
(確かこの辺りにあったはずなんだが……)
レクセルは記憶を頼りに探すが見つからない。
(仕方ない。山に入るか)
レクセルは森に入っていく。
レクセルはランタンを点け、草根をかき分け探す。
しかし見つからない。1,2時間経っても見つからなかった。
(あんまりこういう使い方はしたくないんだが)
レクセルは臂力の鎧を使うことにした。強化された嗅覚で栗のありかを探す算段である。
『着装』
レクセルの身体と頭を金属のプレートが包む。
(……こっちだな)
空中の匂いを嗅いで栗の在処をキャッチする。
高速で、栗の元へ走るレクセル。その速さに周りの木々が揺れる。
やがて、栗の木の群生地についた。
落ちている栗を籠に詰めていった。
30分後。
家に着いたレクセルは鎧を解除した。
時刻は明け方に近かった。
「ただいま」
「……セツナ!」
ジアが駆け寄ってくる。
「これ、全部栗だよ」
レクセルは袋ごと渡した。
「ありがとう……!」
ジアはわずかに涙ぐんでいた。
「剝いてやるよ」
台所に行ってイガをハンマーで割り、殻を包丁で剥く。20分くらいで皿いっぱいの栗の身が並んだ。そしてそれを茹でた。
レクセルはそれをジアの前に出してやる
「さぁ、召し上がれ」
「……」
しかしジアは、手を付けようとしない。
「……るの」
「え?」
「一緒に、食べるの!」
「……ああ」
レクセルは、ジアと一緒に栗を食べた。
ジアはレクセルが栗の実を食べるのを見て、自分も口に運んだ。
そしてジアは初めて笑顔を見せた。それは今までで一番可愛らしいものだった。
レクセルはそう思った。
「セツナは、何の食べ物一番好き……?」
ジアは言った。
「俺?……オムレツかなぁ。母さんが昔作ってくれたんだ」
「じゃあ、今度私が拾ってきてあげる」
「……オムレツは落ちているものじゃないぞ」
時刻は朝になっていた。
受付嬢のミーナはレクセルの姿を確認すると、安心したように一息ついた。
「レクセルさん、無事で良かった……!」
「今回はギリギリでした……依頼の報告お願いします。」
「あ、はい! えっとですね…………」
レクセルは報告を終えて、報酬を受け取った。
「生存者はレクセルさん一人……凄惨な戦いだったようですね……」
「誰一人守ることが出来ませんでした……」
レクセルは悔やむように下を向く。
「でも、おかげで地表に接近していた隕石は軌道を変えたようです。先程天体観測所から連絡がありました」
「それは良かった……」
「ところで……その子誰なんです……?」
ミーナがレクセルの後ろに顔を向ける。レクセルが振り向くとコーラルピンクの髪をした少女が興味深そうに受付の机を覗いていた。
「ジア、外で待ってろって言っただろ!」
「ジア……!?」
ミーナが不審な顔で少女の方を見た。
「セツナ、何やってるの?」
少女はレクセルに尋ねる。
「あはは!この子は帰りの道で出会った迷子の子でして!ジア―ナっていうんですよ!俺のことをセツナっていう名前の自分の親と勘違いしてるみたいで」
「な。ジアーナ、お前の家探しはギルドでの仕事が終わったあとしてやるからなー」
レクセルは少女の背中を押して、ギルドの外まで連れて行こうとする。
「セツナ、私何言ってるのか分からない」
「いいからいいから~」
「あ、あの。迷子ということでしたらギルドの方で面倒見ますよ?」
ミーナは二人を見て言った。
「いいんです!この子両親とはぐれた後によっぽど酷い目にあったのか、俺を親だと思い込んでて、俺から離れるとパニックになるんですよ。責任を持って両親を探します」
「そ、そうですか……」
レクセル達はギルドを出て行った。
ミーナはその様子を見て、ふぅっとため息をつく。
(誰の子供……?レクセルさんと同い年くらいなのに……。)
ミーナは気を取り直して、いつも通り笑顔で業務に戻った。
そのコーラルピンクの髪をした少女の正体は魔竜ジアだった。彼女は頭に剣を刺された時、記憶を失い、人間の姿となっていた。
彼女の今ある記憶は、セツナという少女と人間界で暮らしていた頃まで遡る。
◇◆◇◆
アネモネの研究室にて。
アネモネはジアを見て言った。
「その子、どこに住まわせる気だ」
「うちで面倒見ますよ」
レクセルは言った。レクセルはジアをアネモネの研究室に連れ帰った。
しかし、アネモネ邸で面倒見てくれとは言えない。
レクセルが持ち帰った問題だし、彼女の実態を考えると自分が近くに居ないと危険すぎる。
「しかし、竜の子ねぇ……。また凄い子を拾ってきたもんだな」
レクセルはアネモネ達にジアの正体を話していた。
彼女達なら信用できると思ったのだ。
「ティックスの次は本物の竜を連れ帰るなんてね」
近くにいたアリスが言った。アリスは肩をすくめた。
「あの子最近ようやく餌を自分で獲れるようになったのよ」
アリスが言った。
「用心しておけ、レクセル。彼女は記憶がないとは言え何人もの人間を殺している。他の連中にその存在が知られたらタダじゃ済まないぞ」
アネモネが言った。ジアはキョトンとしている。
「それに、確認したいのだが、ジアはかつて人間の絶滅を願っていた。なぜ彼女と一緒に暮らす?」
「それは……ほっとけないじゃないですか。この子は俺をセツナと呼んだんです」
「竜と共存できると?」
アネモネは鋭い視線を向ける。レクセルはその威圧感に押された。
「……少なくとも俺はそう思っています」
「……そうか」
「私は別に反対はしない。彼女の面倒を見るというなら好きにしろ。だが、くれぐれも注意しろ。彼女が記憶を取り戻した時、何が起こるか分からんぞ」
「はい!」
レクセルは力強く返事をした。
「じゃあ、とりあえず帰るぞ、ジア」
ジアは黙ってレクセルについていく。
その日は解散となった。
帰り道。ベルディも加わり、3人で帰路を歩く。
「ふふっ。なんか妹ができたみたい」
道を歩きながら、ジアを見てベルディが言った。
「見かけはお前が妹だけどな」
「いいの!今は私がお姉ちゃん」
「……?」
ジアはよく分からないといった様子で首を傾げる。
そして、3人は家に着いた。
改めて我が家を見るベルディとレクセル。
「なんか……」
「狭いね」
2人が同時に言った。
「……増築しよう」
レクセルが意を決したように言った。
「お金あるの?」
「お兄ちゃんは最近大活躍だからな。その心配はない」
実際、エルドヴィエ奪還においても活躍を評価され、レクセルのギルドでの評判も高くなっている。だからこそ魔竜退治の仕事がギルドよりあてがわれ、その成功報酬も割高だった。
レクセルの懐事情は今ある程度潤っている。
「とりあえず今日はご飯食べて寝よう」
「うん」
ベルディは返事をするとレクセルと一緒に晩御飯の準備をする。
ジャガイモのスープとパン、ハムである。
「いただきます!」
3人揃って夕食を食べる。
しかし、ジアは手を付けようとしない
「遠慮しなくて良いんだよ」
「おいしいよ」
「……」
ジアは2人の言葉を無視して食事に手をつけない。
「どうした?」
「……いらない」
「え?」
「ごちそうさま」
ジアは部屋を出て行ってしまった。
食後、レクセルはジアの元へ行く。
ジアは部屋の窓から月を見ていた。
「お前の食事、蓋を被せてあるからな。腹減ったら食べろ」
「……セツナが死ぬ夢を見た」
ジアは月を見ながら言った。
「とても怖かった」
ジアはレクセルの方を見た。
「……」
レクセルは迷った。自分はセツナではないという事を白状すべきか。
しかし、ジアのすがるような目を見て何も言えなかった。
「約束して。いつまでも傍に居るって」
「ああ、約束するよ」
レクセルは言った。
「今日は遅いからもう寝よう」
レクセルはジアを寝室に案内した。その日はレクセルのベッドにジアを寝かせて、レクセルは床に寝た。
次の日、レクセルは増築の依頼をするために街に出た。ジアも一緒だった。
街の大工に頼み、その日の内に下見と、施工が行われることになった。
街のショーケースに釘付けになるジア
中には赤い豪華なドレスが飾られていた。
「欲しいのか?」
「別に」
「買ってや……ん?」
値段を見て仰天した。買えない訳じゃないが、増築の値段も考えるとおいそれと手を出せるものではない。
「ま、また今度な……」
レクセルとジアは家に戻った。増築の作業がある。
大工はもう家に着いていて寸法を測っていた。
家が隣接してない方向の庭を拡大させて一部屋増築する。
庭を掘り、石材や木材を運ぶ。レクセルとベルディも手伝う。
ジアは黙ってその様子を見ていた。
夕方過ぎには作業は終わった。
「いやぁ、ありがとうございます!こんな立派な家を増築していただけるなんて」
「いえ、こちらこそ手伝ってもらってありがとうございます」
「では、失礼します!」
大工は帰って行った。
「さぁ入るぞ」
レクセル達は家の中に入った。リビングに入ると、新たに増えた部屋への扉があった。
「ジアの部屋だぞ」
レクセルは、ジアを扉の中に案内してやる。
「ここが……私の部屋」
ジアは感動しているように見えた。そして、部屋を見回す。
ベッド、机、タンスなどが備え付けられており、ジアは早速ベッドに座ってみる。
「ふかふかなの」
「気に入ったか?」
「うん」
レクセルは微笑む。
「じゃあ、飯にしよう」
ジアは表情を曇らせた。
「……いらない」
「なんでだ?腹減ってないのか?」
「減ってない」
その時、ジアのお腹がぎゅるるると鳴った。
「ほら、やっぱり腹が減ってるじゃないか」
「……」
「一緒に食べよう」
「……が、……たい」
ジアは小さな声で呟いた。
「なんて?」
「……栗が、食べたい……!」
ジアは言った。
「セツナ、よく採ってくれた……!」
ジアは少し涙ぐんでいた。
「あの栗が、また食べたいの……!」
「……」
レクセルはしばらく黙っていた。彼女はうすうす気づいているのかもしれない。彼女の慕うセツナはもう遠くに行ってしまったことに。
レクセルはそう思った。
「……分かった。採ってきてやる」
レクセルはそう言うと出かける準備を始めた。
「お兄ちゃん、こんな遅くにどこか行くの?」
ベルディが心配そうに聞く。
「ベルディ。ジアと留守番してろ。ご飯は自分の分だけ作ればいいから」
「……どこに行くの?」
「すぐ戻るよ」
レクセルはそう言って、家を出た。
レクセルは街を歩く。栗の木を探すために。
(確かこの辺りにあったはずなんだが……)
レクセルは記憶を頼りに探すが見つからない。
(仕方ない。山に入るか)
レクセルは森に入っていく。
レクセルはランタンを点け、草根をかき分け探す。
しかし見つからない。1,2時間経っても見つからなかった。
(あんまりこういう使い方はしたくないんだが)
レクセルは臂力の鎧を使うことにした。強化された嗅覚で栗のありかを探す算段である。
『着装』
レクセルの身体と頭を金属のプレートが包む。
(……こっちだな)
空中の匂いを嗅いで栗の在処をキャッチする。
高速で、栗の元へ走るレクセル。その速さに周りの木々が揺れる。
やがて、栗の木の群生地についた。
落ちている栗を籠に詰めていった。
30分後。
家に着いたレクセルは鎧を解除した。
時刻は明け方に近かった。
「ただいま」
「……セツナ!」
ジアが駆け寄ってくる。
「これ、全部栗だよ」
レクセルは袋ごと渡した。
「ありがとう……!」
ジアはわずかに涙ぐんでいた。
「剝いてやるよ」
台所に行ってイガをハンマーで割り、殻を包丁で剥く。20分くらいで皿いっぱいの栗の身が並んだ。そしてそれを茹でた。
レクセルはそれをジアの前に出してやる
「さぁ、召し上がれ」
「……」
しかしジアは、手を付けようとしない。
「……るの」
「え?」
「一緒に、食べるの!」
「……ああ」
レクセルは、ジアと一緒に栗を食べた。
ジアはレクセルが栗の実を食べるのを見て、自分も口に運んだ。
そしてジアは初めて笑顔を見せた。それは今までで一番可愛らしいものだった。
レクセルはそう思った。
「セツナは、何の食べ物一番好き……?」
ジアは言った。
「俺?……オムレツかなぁ。母さんが昔作ってくれたんだ」
「じゃあ、今度私が拾ってきてあげる」
「……オムレツは落ちているものじゃないぞ」
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