エトランゼ・シュヴァル

hikumamikan

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サーペンと母。

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リファールは有名な種牡馬で、サーペンはサーペンアップを短くした。
どちらも日本競馬の中に多くの血を残している。
コンキスタシェロは本当は、コンキュスタドールシェロと言う希代の名馬から取っている。アリシーバと同じで日本では種牡馬として余り活躍出来なかった。
2頭ともスピードとスタミナで他馬をぶっちぎって勝った馬だ。

₪₪────────────₪₪

リファールからサーペン迄の中間で、街道から少し外れた草地で野営した。
流石主幹道で夜中でも2台の馬車が篝火を炊いて通って行った。

「パショット交代よ」
「ああ、じゃあ後は頼む」
「はいよ任せな」

朝に成りオトナシが2時間ちょい寝てから出発した。
サーペンの手前でシロとランクルからダイナの馬車に乗り替えて町の門をくぐる。

魔物に出会わなかったので採取しておいた薬草を冒険者ギルドに納めて換金した。これはもう冒険者としての癖みたいなものだ。こうして日々の宿と飯を確保して旅をしたものだから。


「昔来た時は酷く活気が無かったけどましには成ったかな?」
「そうね二年続きで凶作に見舞われたからね。元々半分が火山灰のシラスだし冷温が続いたから」
「エルブレス子爵も大変だなあ」
「燐領にかなりの借金をしたみたいよ」
「テムノエヤは肥えた土地柄だからかなりの食糧を援助したとは聞いているけど、今の領主は余り評判は良く無いな」
「前の公爵バウンズ・テムノエヤ様は優しくて良いお方だったけど、後継の公爵シャッセ・テムノエヤ様は傲慢で情け容赦ないらしい」
「大体三代までって言うからな家柄は」
「ここが良いよ」
「オトナシの地元だから宿も信用出来そうだ」
「それじゃ三人一部屋で取るね」
「待て待て、男女同室はまずいだろ」
「あんたねえブエナちゃんがいるのに襲う気なの?」
「んな訳無いだろう。一応世間体だ」
「はっ今更。それに宿代勿体無いし」
「ウムムム・・・気にしないならエエけど」
「うん、襲ってくれたら責任は取って貰うけどね」
「襲うかよアホ」
そうは言ったがブエナがいなけりゃ正直理性を保てるかどうか。
俺だって若い男だし・・・それに・・・それに。

『それになんじゃ。ほれ早よ言うてみ』
『うるせー』

その夜俺はオトナシの寝息が耳に憑いて中々寝れなかった。
宿屋の娘を諦めたからって、今度は手近なオトナシって節操無さ過ぎな自分に腹が立つわ本当。


朝飯を食うと宿屋の前で俺達を待ち受ける豪奢な馬車が有った。

「ああ、あれが子爵邸。元我が家だ」
「そう言やあ勘当されてたんだな」
宿屋の前に来ていた馬車は子爵邸からの迎えだった。
勘当された身だが父親とはそれ程険悪でも無く、むしろ再開した時に俺には仲睦まじい親子に思えた。

「オトナシそちらを紹介してくれるか」
「ああ、同じパーティーのパショットにブエナちゃん」
「別に伴侶と言う訳では無いのだな」
「無いね残念な事に」
「ああすまない、私がここの領主サンド・エルブレスで、これが家内のピアリス・エルブレスだ。御二人には少しすまないがオトナシと大事な話が有ってな、宿に使いを出した。別室で待ってて貰えないだろうか」
「わかった」
「うんわかった」

しばらくしてオトナシが家族内の込み入った話が有って、当分の間屋敷に留まるので先にパーソヘ戻ってくれないかと伝えに来た。

その日は仕方無く前の同じ宿を取り3日滞在した。
3日目に子爵邸からの使者が俺とブエナ宛にオトナシからの手紙を持って来た。

シャッセ・テムノエヤ公爵の子息モンジュー・テムノエヤとの婚姻が決まったとの事だ。
震える手で続きを読んだ俺には現状打開策は見出だせ無かった。
手紙の続きにはエルブレス家のテムノエヤ家からの借金は、俺の資産の一千倍にも成った。
姉貴やお袋に借金しても到底十分の一にも届かない、莫大な物だった。
オトナシは借金の為に婚姻を受け入れた事に成る。
なんだかんだ言っても家族を愛しているオトナシなのだ。

それから俺達とオトナシは会う事も無くサーペンを後にした。
3日の滞在が二週間に成っていた。
輿入れの馬車列を見送ったがオトナシが顔を出す事は無かった。

後でブエナに聞くと俺はまるで脱け殻だったらしい。
その話を聞いた時は自分で笑った。


気を取り直して俺はブエナを連れパーソヘ久し振りに帰還した。

パーソでは母が(まあお袋が)大層喜んだ。孫が出来たと大はしゃぎだ。
母に睨まれて仕方無く俺は一人で旅に出た。
ブエナも連れて行くと言ったら母にしばかれたのだ。
ブエナにはランクルを預けたので、牙猫共々護衛としては充分だろう。
それに何と言ってもアヤカゼがいる。
そう言えばダイナをアヤカゼは大層可愛がっていた。
母に聞くとやはり孫らしい。
俺がダイナを連れて旅に出る時随分睨まれたものだ。
勘弁してくれー。
正直アヤカゼには勝てる訳無いので。
出掛けに母が縁談が来てるけど断るかいって聞いたので、先方には放蕩息子でご免なさいと言っといてと答えた。


今回の旅は色々有りすぎやわ。
一寸堪えたので今回の旅は一人で丁度良いのかもと思ってましたが・・・。


『あんたねえ神様やろ、俺の人生色々とハチャメチャに成って来てないか?』
『じゃあ止めるかえこの戦』
『いやいや結局はやるんだけど、何で母とブエナ迄来てん。子供に戦さす気なのか』
『あ~、スズカが風刃教えてもうてな。それと空間魔法の首切りとか・・・』
『あっ・・・』
『そっその他魔法をアヤカゼからも教わっててのう。多分お前より強い』
『いやいや、いやいや、子供だよ。まだ子供だからね』
『しかしのう母上救出作戦だからと』
『何でオトナシ救出がブエナの母上救出に成るん?』
『だってブエナはお主の養女ではないか』
『いや、それは』
『まさかその気が無いとは言わせんぞ』
『・・・母子共々救出するぞ神様、補助を頼む』
『今回は特別じゃ。承けたもうた!』


あれから五年時たまブエナと旅をしたり、アヤカゼとダイナを連れて旅をしたりと、ああ姉貴の手伝いもさせられたなあ。
弟は姉貴や俺より魔力量が少ないから、ストレージの容量が一寸だけ無いのだけど、めっちゃ剣術に長けてる。
でも農民だからね。
親父の土地を継ぐからね。
今回もついて来ようとしたけど、お袋に止められて渋々引き下がった。
この国の剣術大会で優勝してるんだよあいつ、とんでもねーよな。


事の起こりはシャッセ・テムノエヤがオトナシに手を出そうとしたらしい。
当然息子が怒って殴り掛かったが、シャッセは魔法が上手くて息子のモンジューでは歯が立たなかった。
結果モンジューを人質にされて、オトナシ共々魔封じの手枷をされて地下牢に入れられたらしい。
その情報がエルブレス家に漏れて、当然エルブレス家が激怒したが、シャッセ・テムノエヤが逆ギレして戦に発展したのだ。

国も急いで仲介の軍を出したけど、隣り合わせの領地だけに間に合いそうも無いと、アヤカゼの孫が知らせて来た。
アヤカゼの孫はエルブレス領にもテムノエヤ領にもいるらしいのだ。
二頭目の仔が牡馬として頑張った様で、あちらこちらの牝馬にDNA注ぎまくったらしい。
山地を超えて大急ぎで来た孫はぶっ倒れたが、アヤカゼのヒールで事なきを得た。



てな訳でアヤカゼ・母のスズカ・ブエナにランクルに牙猫そして、シロに俺とダイナがエルブレス軍とテムノエヤ軍との陣を、離れた山頂から見据えている。

「どうするパショット」
「う~ん、あの両側の山に陣取ってるテムノエヤ軍はシロに任せる」
「えっ、シロだけなの」
「ブエナ、シロは氷結魔法の使い手で、神獣でもありアヤカゼとタメをはれるぞ。特にあの傾斜を降りる軍は格好の餌食だ」
「滑降だけにな」
シロが珍しく洒落を言った。

「ブエナはダイナに乗って風刃な。弓の届かない高さでだぞ」
「りょーかい」

「お袋は・・・アヤカゼとよろしく」
「なんだい指示なしかい」
「2人でテムノエヤ軍壊滅出来るやん」
「「俺は・・・」ちょい待ち!、あんたは一目散にテムノエヤ邸に、ダイナに乗って牙猫ちゃんと行きな」
「お袋・・・」
「五年も待たせたんだ、オトナシさんに一発叩かれて来な。この甲斐性無しが」
「すまん」
「シロちゃんあいつ等滑落したらほぼ戦力にならんから急いで息子を助けに行ってね」
「母上よ相解った」


「はあ~、まさかエルブレス領から逃げた私がエルブレス領主を助けるとはねえ」
「あはは、これは競馬より面白い」
涼風コンビ行くよぉー!!。
ブエナとシロもイクヨー!。








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