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第6話 アシュタベル領ムスクナの代官。
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ミスリル鉱山迄の道は追々整備されるだろうが、小さな村を作る必要が有る。
魔物の討伐も必要だ。
まあ幸いにもあの辺の魔物はそんなに強くは無い。
それは領主の仕事だが、ミスリルの事で国から補助金が出るので大丈夫とか。
私の仕事はこれで終わりだ。
流石に今回は依頼金にかなり上乗せされる上に、国からも報償金が貰えるとの事。
大体の目安でも私が一生暮らせる額の様だ。
・・・良いのだろうか、こんな子供に。
(日本円換算なら2億ぐらい)
「山家をやめてこの領で暮らしても良いぞ。国からも男爵位を与えて良いと言われとるしな」
そんな領主様の言葉に御断りを入れた。
「私には貴族の生活は無理です、・・・里の者の仇も討ちたいので、あの山賊達を見付けたいのです」
「・・・あの事件か。隣の領の事だが王にも話が伝わる程酷い事件だったな」
「私の里の者は中級冒険者並みの人が多いので、痺れ薬の散布を夜中にされました。風上の離れた場所から散布したと後に解りましたし、その場所も私が割り出しました。兎に角全員の胸に刃を立てたあの惨状は今も夢で見ます。出来ればこの手でとはいかなくても、奴等を締め上げたいです」
「手掛かりは確か頭目の顔をそなたが覚えている事位だったな」
「はい、里に入る前に妙な薬の臭いに気が付いて高台に移り里を見た時、下の崖道を山賊達三十名くらいが通って行きました。その時にお頭と呼ばれた男の顔は今でもはっきりと覚えています」
「そうか・・・何故山賊達が里の鉱脈発見による報償金の情報を得たかは知らんが、用意周到な襲撃をしたのは知っている。その惨状も伝え聞いた。もし情報を得たなら真っ先にわしか、王都のナイールと言う城にいる者に伝えてくれ。出来るだけ援助しよう。間違えても焦って単独行動をするなよ」
「有り難う御座います。肝に命じます」
「うむ達者でな。年に一度位は何かしらの連絡をする様にな」
「解りました有り難う御座います」
まあ大金を持ってる少女なので気を使われた様だ。
「マッセラ」
「はい」
マッセラは領主の小飼の工作員で有る。
「それとなくあの娘を見守ってやってくれないか。元山家のお前にしか任せられん仕事だでな」
「私の様な山賊上がりに情けを掛けて頂いたのです。身に余るお仕事で御座います。出来るだけ知られぬように御守りいたします」
「頼む。報酬は家族とお前のギルド預金に月々半々に入れておくな」
「有り難う御座います。では行って参ります」
「全く律儀な男よのう。妻の病気が無ければ山賊などにはなりはせんが、全く浮き世は世知辛い。まあそれで良き人材を得たのだがな」
マッセラが出ていった後の領主の独り言で有った。
レイナこと私は今はアシュタベル領の山の拠点にいる。
う~ん、ちょっと寒く成って来たなあ。
今年からは冬の間町の安宿に泊まるかな。
私は本当なら各拠点の薪を補充しないといけないのだが、今年は余り補充してあげられなかった。
食事時に使うぐらいで本格的な冬用にはもう少し補充しておかないとね。
私は木の下部の枝打ちをして乾燥するために小屋の軒下に積み上げて置いた。
まあ乾燥したら誰かが切るだろう。
各小屋には斧や鎌等が置いて有る。
流石に盗む者はいない。
粗方用意したら私は町へ下りた。
ムスクナと言う町で昔の里からは歩いて2日の所に有る。
領主の町はここから馬車で2日だ。
ここは男爵が管理して税を領主に納めている。
男爵は領主である伯爵の依子に成る。
私は冒険者ギルドで良い安宿を聞いてみた。
「う~んそれは宿より一軒家を借りた方が良いかもね」
「有るんですか」
「大体は商人用なんだけど冒険者も人数が多いパーティーやクランなら借りているわよ。冬は移動が大変に成るからね」
「お願いしても良いですか」
「小さめの一軒家なら三つ紹介出来るわ」
ギルドのお姉さんは奥へ消えると直ぐに三枚の紙を手に持って出て来た。
「家賃は全て同じで1ヶ月銀貨一枚よ」
「随分安いですね」
「古い民家だしね薪や何かも買わないとね、普通の工夫の3日分のお給金かしら」
(日本円で1万くらい)
私は三枚の間取りが書かれた地図を便りにその日は借家巡りをした。
「お姉さんここにします。何時から借りれますか?」
「明日にでも大家さんに連絡するわ。3日後に来て頂戴。あっ、今日の宿決めた?」
「いえ未だです」
「それならギルドの裏の小梢亭が良いわよ。部屋も空いてる筈だし」
「分かりました有り難う」
「どういたしまして」
直ぐ脇道を行くとギルドの裏に小梢亭なる宿が有ったので入った。
カランカラン。
「らっしゃい。お一人ですか」
「はい三・四日お願いします」
「あいよ朝晩飯つきで小銀貨三枚ね、飯無しだと二枚だよ」
「飯ありでお願い。取り敢えず3日分」
私は金貨一枚を置いた。
「はいこれお釣りの小銀貨11枚ね」
「どうも」
「部屋は三階のうずらの間だよ。扉にうずらの絵が有るよ。それでいい」
「大丈夫です」
「後一時間後、鐘の音が九つしたらご飯だよ。それからお風呂は一階のそこの奥に有るよ。男女別で鐘の音十から十一の間ね頼むね。貴重品は部屋に鍵を掛けて置いといてね。お風呂で失くしても責任取れないから。鍵は受け付けに預けておくれ」
矢継ぎ早に主人に教えられて、部屋に行って寛いでたら九つの鐘が鳴った。
「わあ~美味しい」
「ありがとさん」
宿のご飯は美味しかった。
パンも白パンでやわらかく旨い。
スープと言うかシチューも美味しい。
食事が終わってまた部屋で寛ぐ。
時間に成ったのでお風呂に行った。
久々のお風呂だ。
軽石で体の汚れをよく落とし湯船に浸かると、隣の男風呂から代官の噂が聞こえた。
「最近また冒険者崩れみたいな輩が出入りしているらしいな」
「なんか人を探しているらしいぞ」
「胡散臭え代官だからな何やってるか」
「男爵の地位も上の兄弟が皆死んだからな。何か怪しいよな」
ムスクナはきな臭い町かも知れない。
魔物の討伐も必要だ。
まあ幸いにもあの辺の魔物はそんなに強くは無い。
それは領主の仕事だが、ミスリルの事で国から補助金が出るので大丈夫とか。
私の仕事はこれで終わりだ。
流石に今回は依頼金にかなり上乗せされる上に、国からも報償金が貰えるとの事。
大体の目安でも私が一生暮らせる額の様だ。
・・・良いのだろうか、こんな子供に。
(日本円換算なら2億ぐらい)
「山家をやめてこの領で暮らしても良いぞ。国からも男爵位を与えて良いと言われとるしな」
そんな領主様の言葉に御断りを入れた。
「私には貴族の生活は無理です、・・・里の者の仇も討ちたいので、あの山賊達を見付けたいのです」
「・・・あの事件か。隣の領の事だが王にも話が伝わる程酷い事件だったな」
「私の里の者は中級冒険者並みの人が多いので、痺れ薬の散布を夜中にされました。風上の離れた場所から散布したと後に解りましたし、その場所も私が割り出しました。兎に角全員の胸に刃を立てたあの惨状は今も夢で見ます。出来ればこの手でとはいかなくても、奴等を締め上げたいです」
「手掛かりは確か頭目の顔をそなたが覚えている事位だったな」
「はい、里に入る前に妙な薬の臭いに気が付いて高台に移り里を見た時、下の崖道を山賊達三十名くらいが通って行きました。その時にお頭と呼ばれた男の顔は今でもはっきりと覚えています」
「そうか・・・何故山賊達が里の鉱脈発見による報償金の情報を得たかは知らんが、用意周到な襲撃をしたのは知っている。その惨状も伝え聞いた。もし情報を得たなら真っ先にわしか、王都のナイールと言う城にいる者に伝えてくれ。出来るだけ援助しよう。間違えても焦って単独行動をするなよ」
「有り難う御座います。肝に命じます」
「うむ達者でな。年に一度位は何かしらの連絡をする様にな」
「解りました有り難う御座います」
まあ大金を持ってる少女なので気を使われた様だ。
「マッセラ」
「はい」
マッセラは領主の小飼の工作員で有る。
「それとなくあの娘を見守ってやってくれないか。元山家のお前にしか任せられん仕事だでな」
「私の様な山賊上がりに情けを掛けて頂いたのです。身に余るお仕事で御座います。出来るだけ知られぬように御守りいたします」
「頼む。報酬は家族とお前のギルド預金に月々半々に入れておくな」
「有り難う御座います。では行って参ります」
「全く律儀な男よのう。妻の病気が無ければ山賊などにはなりはせんが、全く浮き世は世知辛い。まあそれで良き人材を得たのだがな」
マッセラが出ていった後の領主の独り言で有った。
レイナこと私は今はアシュタベル領の山の拠点にいる。
う~ん、ちょっと寒く成って来たなあ。
今年からは冬の間町の安宿に泊まるかな。
私は本当なら各拠点の薪を補充しないといけないのだが、今年は余り補充してあげられなかった。
食事時に使うぐらいで本格的な冬用にはもう少し補充しておかないとね。
私は木の下部の枝打ちをして乾燥するために小屋の軒下に積み上げて置いた。
まあ乾燥したら誰かが切るだろう。
各小屋には斧や鎌等が置いて有る。
流石に盗む者はいない。
粗方用意したら私は町へ下りた。
ムスクナと言う町で昔の里からは歩いて2日の所に有る。
領主の町はここから馬車で2日だ。
ここは男爵が管理して税を領主に納めている。
男爵は領主である伯爵の依子に成る。
私は冒険者ギルドで良い安宿を聞いてみた。
「う~んそれは宿より一軒家を借りた方が良いかもね」
「有るんですか」
「大体は商人用なんだけど冒険者も人数が多いパーティーやクランなら借りているわよ。冬は移動が大変に成るからね」
「お願いしても良いですか」
「小さめの一軒家なら三つ紹介出来るわ」
ギルドのお姉さんは奥へ消えると直ぐに三枚の紙を手に持って出て来た。
「家賃は全て同じで1ヶ月銀貨一枚よ」
「随分安いですね」
「古い民家だしね薪や何かも買わないとね、普通の工夫の3日分のお給金かしら」
(日本円で1万くらい)
私は三枚の間取りが書かれた地図を便りにその日は借家巡りをした。
「お姉さんここにします。何時から借りれますか?」
「明日にでも大家さんに連絡するわ。3日後に来て頂戴。あっ、今日の宿決めた?」
「いえ未だです」
「それならギルドの裏の小梢亭が良いわよ。部屋も空いてる筈だし」
「分かりました有り難う」
「どういたしまして」
直ぐ脇道を行くとギルドの裏に小梢亭なる宿が有ったので入った。
カランカラン。
「らっしゃい。お一人ですか」
「はい三・四日お願いします」
「あいよ朝晩飯つきで小銀貨三枚ね、飯無しだと二枚だよ」
「飯ありでお願い。取り敢えず3日分」
私は金貨一枚を置いた。
「はいこれお釣りの小銀貨11枚ね」
「どうも」
「部屋は三階のうずらの間だよ。扉にうずらの絵が有るよ。それでいい」
「大丈夫です」
「後一時間後、鐘の音が九つしたらご飯だよ。それからお風呂は一階のそこの奥に有るよ。男女別で鐘の音十から十一の間ね頼むね。貴重品は部屋に鍵を掛けて置いといてね。お風呂で失くしても責任取れないから。鍵は受け付けに預けておくれ」
矢継ぎ早に主人に教えられて、部屋に行って寛いでたら九つの鐘が鳴った。
「わあ~美味しい」
「ありがとさん」
宿のご飯は美味しかった。
パンも白パンでやわらかく旨い。
スープと言うかシチューも美味しい。
食事が終わってまた部屋で寛ぐ。
時間に成ったのでお風呂に行った。
久々のお風呂だ。
軽石で体の汚れをよく落とし湯船に浸かると、隣の男風呂から代官の噂が聞こえた。
「最近また冒険者崩れみたいな輩が出入りしているらしいな」
「なんか人を探しているらしいぞ」
「胡散臭え代官だからな何やってるか」
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ムスクナはきな臭い町かも知れない。
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