異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第15話 エンコの秘技。

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エンコは猿の魔物。
手が少し長く賢い。
永く生きるとシャウジャウと言う魔物に成るらしい。
シャウジャウは滅多な事では人目に触れない。
賢さはドラゴンに匹敵すると言われ神獣扱いだ。
人に悪さもせずひっそり暮らし、時には人が助けられる話も聞く。

だがエンコは違う。
人や作物その他悪さをする。
だがそれは山や森を追われた時だ。
他の強い魔物が増えればエンコも食い物を失う。
そうすると人里に出て畑や干し物を荒らしてしまう。
仕方無く討伐隊が組まれると言う訳だ。


「冒険者ギルドよりの通達。13歳以上の魔物討伐経験者は東のカヤン町近くの山裾の森で、エンコ討伐に参加する事。これはギルド推奨依頼でランク上げのポイントに加算される」
「エンコかあ必殺技が有るからなあ」
「あれは辛いな・・・精神的に」

そうエンコの秘技は辛いのだ。
私も偶に被害を被る。
死にはしないが嫌なものだ。

「レイナさんも参加しますよね」
ニコニコ顔で受付嬢が揉み手をしてくるのは、皆が参加を渋るからに相違無い。
「きょっ今日は借家を紹介して貰いたくて来たので・・・」
「当然参加して下さると安くて良い物件をお勧めできますよお~」
・・・語尾を伸ばすな語尾を。

ギルドの心証を悪くしたくないので渋々参加すると伝えた。

えっ借家?。
まあ安くて割りと良いかな。
うん・・・。
てな訳でエンコの秘技対策をギルドの宿に戻って考えている。
出立は明後日。


翌日ギルドの購買部に来ている。
武器を見る為だ。
「う~ん、何か良いのは無いかなあ?」
「おう、嬢ちゃん何を探してる」
「エンコ相手の良い武器は無いかなと思って」
「遠距離攻撃用だよな」
「はい投擲術は有るんですが、木の上だと距離が問題なので」
「あ~あいつら高い所に逃げるからなあ」
「飛び移りますしね」
「短弓か弩になるなあ。けど外れると矢が高くつく。回収はほぼ無理だしな」
「数が多いので難しいですね。投擲もそれが問題なんです。手裏剣も安くないですから」
「嬢ちゃん魔法は?」
「私の魔法は遠距離は無理ですね。あと森や木とか草が多いと雷撃でも火事の心配が、近くだと直接当てられるんですけど」
「そっかあ・・・でもエンコだとお嬢ちゃん等は勢子役か」
「そうですね大半は衛士の弓隊任せだと思います。ただ脇へ逃げる奴を始末しないと、一応参加者なので」
「弩を見せて貰っても」
「・・・実は全部売れててなあ」
「あ~やっぱり」
「短弓は有るけど強いのしか無い」
「私は昔から弓は上手く無くて」


仕方無く帰ろうとしたらおじさんに声を掛けられた。
「嬢ちゃん・・・悪いんだけど何か携帯食に成る物なんか持って無いかな」
「携帯食売り切れたの?」
「まあな」
「・・・これ使える」
「!?、これは・・・」
それは紙袋に入ったキューブ型のスープと具にラーメン。
「湿気なければ一年は持つよ」
「これ熱湯で戻すのか?」
「うん熱湯だと煮なくても少ししたら食べられるよ。二百歩歩くぐらいの時間かなあ」
「そりゃまた。・・・でも高く無いか」
「堅パンと同じ値段だよ」
(日本円で50円くらい)


私はインスタントスキルで500食卸した。
インスタントの重ねが卦してないから一番安いラーメンだけど。
この世界の土工の3日分くらいのお金に成った。
うんこれだけでも暮らせるね。



次の日の朝早く私はギルドの宿の裏庭で、昨夜の夢の中で見た透明の盾をインスタントで出して何度か重ねが卦した。
壊れたら大惨事だからね、主に私が。
これも夢で出たのだが、エンコに仕返しするための木の実を出した。
「うっ・・・成る程仕返しだ」
それらをアイテム袋に納め部屋に戻る。

朝食を頂き準備をして東門へ向かうともう馬車も来ていた。


私はカヤンと言う町は馴染みが無い。
低い丘のような山々と平地の森は山家には用が無いから。
弱い魔物や山菜か椎の実は主に子供達の獲物だからね。
今回のエンコの様な相手は普通はいない。
それだけ今年は違うと言う訳だ。
数十年に一回有るか無いかの現象らしい。



夕方に町の門の側で夜営をして、翌朝準備を整え森に出発した。
少しして衛士の弓隊も合流。
歩いて一時間半の距離だ。
先遣隊の斥候から近くに3つの群れがいると報告が有り、私達主に勢子の役はぐるりと一時間掛けて後を扇状に取り囲んだ。
ピィーっと笛の合図で距離を保ち前へ進む。
ザカザカと音を立てて進むと間を色々な小動物や弱い魔物がすり抜ける。
今回は完全にスルーして目的のエンコが間を抜けようとしたら、短弓や弩そして剣と槍で倒されていた。
私も投擲物で2匹倒した。


一時間追うと弓隊の待つ所へと到達した。
私がおもむろに透明の盾を出すと、横の冒険者が驚いていた。
盾を持つ人は皆が盾を出している。


騒ぎ立てるエンコが尻から出る固形物を握って、弓隊や私達に投げて来る。
これぞ秘技ウ○コ投擲!。
「「「「「うわっ」クッセェー」わっ付いた」」」
まさに阿鼻叫喚。
私の盾にも既に3つ付いている。
そこで私は皮手袋の上に例の木の実を出してエンコに投げつけた。
「仕返しだざまあ・・・えっ?」
夢で見た木の実は銀杏。
くっさいあの実をなんとエンコ達は食べ始めたのだ・・・。
私は呆然。
レデイ・ボーゼンゼン。
「はっ、食べるの実だけ、種は吐くのね」
しかしそこへ矢の雨あられ。
私の手裏剣も殆どが命中。
あわて木から飛び降りて逃げ出す個体に、投網を投げつける人もいる。
私も当然インスタントスキルで投網を上から被せた。
殆どが弓での撃破だが投網等での袋叩き・・・もあり、逃げたエンコは見当たらない。
可哀想だが人の作物を荒らせばこうなる。

魔石を取りエンコ達は穴に放り込まれ火魔法で焼かれて埋められた。
南無三。
臭いので殆どの人は森を離れ草原の河原へ集まっている。
必殺ウ○コ投げの被害に有った人や盾に付いたウ○コやそれらを洗う為だ。


人心地ついた処で各々遅い昼飯と成った。
インスタントラーメンにお湯をかけて食べてる人が割りといた。
それを珍しそうに貰って食べる人もいる。
私もインスタントだ。
だけどラーメンじゃない。
スパイスの効いたあれをご飯にかけたやつ。


私がそれを出した途端。
「わっ何を出しゃあがる」
「うわっ止めろ」
「何でスプーンで掬ってんだ」
「飯時に何をするか!」
皆私の側から鼻をつまんで逃げて行く。
「・・・いやこれ違うから」
「しかも下痢じゃねえか」
「いやカレーだからこれ。カレー美味しいから」
私が皆に見せるから余計に皆は逃げ惑う。


阿鼻叫喚だ。


私はその後銀杏の実を拾って川で籠で洗って帰った。


通りすがりの冒険者が言った。
「やっぱりウ○じゃねえか」
あっ銀杏・・・。


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