異世界で山家として生きる者。

hikumamikan

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第77話 進言。

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どうもデージーが5歳の時の教会での神託で、神様の書くホワイトボードを拡大したのは誰かの進言が有ったかららしい。

その人は女の人で私と同い年に見えるとか。

だから当時だと21歳くらいかな。

ただ、私でも知らないし、まして神様の神託の義にてホワイトボードなるものは、神様以外に知る人がいるとは思えなかった。
何者なんだろうか?。
そしてそんな物を拡大出来るデージーの魔力量を見抜くなんて・・・。

だけどニューラに居た人よね。
未だ居るのかしら?。


私は夫に冒険者で特殊な能力の持ち主はいないか聞いてみた。
すると夫は、それは秘匿項目に違反するので、たとえ妻でも言えないとの事。

そりゃそうだ、冒険者個人の重大な能力公開をギルドがするわけ無い。

しかし、神の力を知る人間?。
興味が有るし、有る意味脅威でもある筈。
今現在悪用はされていないけど、その(ひととなり)は知りたい。
娘のデージーは悪い事はしないと思うけど、どうしてホワイトボードの事を教えたのか謎なのよね。
娘以外には教えていないもの。


それと彼女自身の力・・・おそらくは隠している。
オークの幼体でも、マーシャル・キュプロプスにおいても、更にキメラ討伐でもそれらしき力の人は見ていない。
何より神様からの要請は私しか受けていないと思う。
普通に考えて空恐ろしい力の持ち主の筈だと認識出来る。


私の予測はモグラ叩きの第三の犠牲者では無いだろうか。
そして神々は彼女には余り関わらない。
その理由にも興味が有る。

とは言え私から探すのは止めた方が良いだろう。
何せ神々が関わらない事だし。


一つわからないのは、イシタント様がデージーの能力を止めようとしない事なんだけどね?。
モンスターだよはっきり言ってね。

あっ、私もねスキル・インスタントを拡大しようと試みたけど、もうステータスボードに固定されて駄目だった。
一度全面に書くと固定されるとイシタント様に言われたよ。
拡大しようとした処を見られてた。

そしてデージーのは余白が多い為に未だ拡大縮小が可能らしいのだ、野田阪神。


今は娘のユーホーに乗って旅をしているよ。
夫は俺も連れて行けと煩いけど、休みを取れたらねと言ってある。

息子はどうすべ、これ。
イシタント様に尋ねたら、止めてくれと懇願された。
そりゃそうだよね。
スキル・ホワイトボードが2人もいたら困るよね神様。
息子は平々凡々で我慢してね。
そう頭を撫でてあげる。
息子はきょとんとしていた。
あと一年半後には教会でスキルを授かるけど、どうなる事やら。


私は町で買った玉子に洗浄魔法をかけるが、あの町外れの農場の玉子は生で食べられる。
何でも息子の嫁が浄化を使えるので、産みたて玉子から浄化魔法を掛けているらしいのだ。
だからわざわざ買いに行く。
私の浄化魔法だと玉子の細胞まで壊してしまうからね。
彼処の嫁さんのは細菌だけ滅するらしい。
だからソフトクリームやその他のお菓子も美味しい。
ただ、量は少なくて直ぐに無くなる。
そんなに嫁の魔力量は多くないとの事。


のんびりとした夏の終わりの日、私の夫ノマシが慌てて帰って来た。
「レイナ!、高ランク冒険者に緊急招集がかかった」
「どうしたの?」
「ニューラとムスクナとの間の平原でミノタウロスが3体目撃された」


私は息子を背負いノマシと冒険者ギルドに来ている。
ギルマスの説明が始まった。

「ミノタウロス3体ははぐれ者だろうが、脚が速く突進が強烈だ。まともに当たれば死ぬだろう。距離と速度を間違えず横に躱せば大丈夫だ。頭はそれ程良くないが、何せ力が半端ない。角や頭突きを食らうのは論外だが、脚の蹴りには注意しろ、当たれば死ぬ。先程距離と速度を間違えるなと言ったが、割りと早めに避けてもあの巨体なので、簡単には曲がれんから大丈夫だ。・・・矢は効かんと言うか通らん。魔法攻撃に成るが、かなり数を撃たんと倒せん。魔力枯渇に気を付けてくれ。それでは明日の朝出発だ、皆頼むぞ」


「レイナ、その子はギルドで預かろう」
「結界を張れば大丈夫なんだけど、・・・お願いするわ」
「うむ、アースナ明日この子を預かってくれるか」
「分かりましたお任せ下さい」
「アースナは育児経験が有るから安心してくれ」
「アースナさんお願いしますね」
「はい、任せて下さい」


「ノマシ、私ミノタウロスは初めてなんだけど」
「俺も一回だけだな。キュプロプスよりは脚は速いが咄嗟に曲がれないとは言え、少しなら方向も変えて来る。だから余りに回避が早いと危ないぞ。外皮に魔力を巡らせ刃物は効かないな。レイナの弩弓なら分からんが、大体は魔法をかなり当てて倒すのが一般的だ」
「キュプロプスより強いの?」
「強さならキュプロプスの方が頭が良いのと機動性で遥かに上だが、兎に角外皮が硬い為に魔力枯渇の危険を伴う」


翌朝早くに集まった高ランク冒険者達と私達夫婦は息子を預けて、町の門を出て討伐に向かった。
「20人かまあこんなもんだな」
ギルマスが言うが確かにニューラならこんなものだろう。
ただし、半分は物理系なので勢子か囮に成る。
刃物が効かないな相手では仕方無い。
勿論メイスでは無理だ。


暫く馬車で街道を行くと草の丈が一際低く成る場所に着いた。
「この奥だ歩いて行くぞ、足下に気を付けろ」
ギルマスを先頭に徒歩で向かうと、大分先に3体牛の様なものが見えた。

1体が此方を向くや否や突進して来た。
「速!」
「来るぞ、合図と共に避けろ」
「・・・ゴクッ」

「避けろ!!」
冒険者達は二手に分かれ魔法を放つ用意に入る。
「レイナ弩を頼む」
「あいよ」
ノマシに言われ弩弓の台車を銛をセットした状態で出す。

二手に分かれた間を抜けたミノタウロス
は速度を落とすと、冒険者達の一斉攻撃に合う。
聞いてはいたが魔法を物ともせずに、今度は二足歩行で此方に向かって来た。
あれだけ炎槍や氷槍を受けてもびくともしない。
ノマシは銛を打ち込んだ。
銛が表皮に刺さったままミノタウロスは此方に来る。
私は二本目を弩にセットした。
それと同時に久々の光チューブ電撃を食らわす。
オークやオーガなら貫通するけど、こいつは表皮で爆裂した。
でもそれなりに効いている。
血だらけに成ったミノタウロスに更に魔法攻撃が浴びせられる。

一番魔法が効きそうな傷が酷いところに光チューブ電撃を食らわすと、頭が半分吹っ飛んだ。
ミノタウロスが倒れるや否や、「もう2体が来たぞ回避準備しろ!」そうギルマスが叫んだ。
ミノタウロスが倒れると同時に物凄い蹄の音がして、ミノタウロス2体が眼前に迫る。
直ぐ様横に回避したが弩が台車ごと粉々にされた。

1体が二足歩行で此方に迫る。
速度が遅かったので頭上から例の水準器で有る分銅を落としてやった。
流石に頭から血を流し手で頭を抱えている。
私は脚を狙い光チューブ電撃を5発放った。
するとミノタウロスの片足は吹っ飛んで行った。
「んっ・・・もう1体は何処?」

遠くでキャーって悲鳴がする。

悲鳴の方向を見るとサイロみたいな物が見えた。
「しまった!、あの牧場が」
私が目視での亜空間移動で行くと、ノマシも続いて来た。


ズズーン。
「「・・・」」
ミノタウロスが消えた。
いや、地中から這い上がろうとしている。
そこへ私が光チューブ電撃を続けて放つ、そしてノマシも炎槍を放った。
相乗効果なのか、ミノタウロスの背中に大きな穴が開いて、ミノタウロスは土の穴の中で絶命した。

向こうのミノタウロスも倒れるのが見えた。
「「ふ~う、危なかった」」

前方を見ると私と同じ年格好の女の人が見える。
どうやらあの人が土魔法でミノタウロスを穴に落とした様だ。
「「ああそうか、俺達何で落とし穴を思いつかなかったんだ・・・」」
ミノタウロスにこれ程効く魔法も無いだろうに。
人間咄嗟には本当に思い付かないものだとしみじみ思うよ。


こうして牧場の嫁さんの活躍も有りミノタウロス3体は討伐された。


後に討伐の報償金とミノタウロスの素材の中から、ギルドと冒険者の話し合いで十分の一が牧場に支払われた。
迷惑料も込みだ。


ソフトクリームを作った嫁さんは土魔法の腕も大したものだ。
良く見るとかなり別嬪さんだったよ。
報償金を渡しに行ったノマシに私も付いて行ったからね。


その時だけど・・・、あの嫁さん。
私の鑑定が通じなかったんだよね。
見えなかった。



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