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8皿目 野生児の少女

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「おまえらぁ!! この島の宝を、ごくぅ!! 狙ってきたのかぁ!! うまぁ!!」

「食べるか、吠えるかどっちかにしてよ…」

 襲撃者の少女に傷をいやす「ヒーリングカレー」を出し既に空の皿が3枚も積まれていた。イエローの隣には少女を睨むイースがおり「主様、今すぐこんな島出ましょう」とイエローの腕を引っ張る。

「まぁ、私たちは遭難…じゃないか。いや、この島出た後の生活の足しになる物を探してて…」

「やっぱり、宝が狙いかぁ!! げほぉ、げほぉ!!」

「あぁ、こら!! 話ながらしゃべるから…ほら、水」

 器官にカレーが入りむせてしまった少女に水が入ったコップを渡すと、少女は一気に飲み干した。

「げほぉ、げほぉ!! と、とにかく!! ムラサキは、宝の事、絶対に話さないぞ!! バァバと約束したぁ!!」

短く紫色の髪だからムラサキなのか。とイエローは内心「単純だな」と名前と性格のどちらともについてつぶやいた。

「バァバ? この島にはあなたの他に誰かいるのですか? 」

「…バァバは、ムラサキの13の誕生日の後、すぐに死んだ。他のみんな、呪術の完成させるために、自分から生贄になった…今、島にいるのムラサキだけ」

 ムラサキの悲しい顔を見てイースは何も言わなくなった。いつからかは知らないがこんな何もない小島で一人でいるムラサキを見て、ランプの中で一人孤独で過ごしていた自分と似ているとイースは思った。

「…呪術? 生贄って…な~んか嫌な予感が…」

 勇者達との旅の中でイエローは呪術を使う「呪術師」を見たことがある。
 虫の死骸や呪われたアイテムなんかを使い、憎い相手の呪う商売をしていた。
 そして、呪われた人間は呪いを払うために教会か聖職者に寄付を払って呪いを払う。
 
呪術師と聖職者がグルで金持ちを狙って呪って資産を絞り取るという、犯罪が横行していた国もあった。

「…念のために、これ食べとこうか」

 カレー鍋をポケットから出し紫色をしたカレーを一口だけ食べる。

「あの、主様…その、紫色のカレーは…?」

「一応保険ね。呪いとか毒に耐性をつける「紫芋カレー」よ」

 イースにも一口食べさせる。ムラサキは「おかわりか!!」とイエローから素早く紫芋カレーを奪い平らげてしまった。
 
「ぷはぁ!! お腹いっぱい!! ムラサキ、寝る!! くかぁ~~」

「寝るのはや!! 主様、この子とんでもない野生児ですよ!?」

 イースがいびきをかいて寝るムラサキを見てつっこむ。
 「まぁ、そっとしてあげなよ」よイエローが告げてポケットからかけ布団を出しムラサキにかけてあげた。

「その、主様。これからいかがされます? この島はどうも呪術師の隠れ家のようですし…」

「あれ? イース。呪術師の事知ってるの?」

「はい。呪術は元は人々の生活に役に立つ天候の予測や、人の未来を暗示するために私たち精霊が作り上げた術ですので…けれど、いつしか人間が勝手に改造してしまい、相手を陥れて利益を得ようと悪用し始めたので…正直、複雑です」

 人間のために作った自分の物が悪用されてイースの表情が曇る。
 
「確かに,,,人間だけじゃなくて怪人も食べ物やらおもちゃやら武器に改造して子供に売って金儲けなんかあったからなぁ…」

 元の世界でも便利な物があればそれを悪用する人間と悪の組織である怪人たちによる被害はあった。

「元の世界?」

「あ、いや、こっちの話だから…さて、ムラサキには悪いけど…」

 いびきをかいて寝ているムラサキを置いて二人は島の奥に進み小さな集落があった。



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