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18皿目 一方で二人の少女は (イース視点)

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「おい、どうなってる…あれだけいた屍どもがいないぞ…」

「えと、…ここに来る間に主様がビリビリって全部倒してくれたんだった…」

 祠の外に出てアンデットに警戒していたムラサキ。だが、辺り一目にはイエローの放電攻撃により大量にいたアンデットは黒炭となり風に吹かれ粉々に消えていく。

「おい…あの黄色のは何者だ…? どうしてあんなに強い?」

「あ、…主様は主様です…って、答えになってないよね…」

 ムラサキの質問にイースはなんて答えればいいのか分からなかった。
 
封印されたランプを拾い始めて出会ったときはカレーを食べ、イエローから自由を与えられて数日も共にしているのに、イエローの事は何も知らなかった。

「その、主様の事、私もよくわからない…けど、これだけは言える。もし、主様に出会っていなかったら今の私はいなかった…」

 イースの表所が悲しくなり、言葉が小さくなる。
 もしランプを拾ったのがイエローではなく他の人間だったら? 
 
金銀財宝を欲して死ぬまで豪遊する人間は飽きるほどみてきた。
中には好きな人を無理やり自分の元へ連れてこいと命令され、対象を魔法で誘惑して拉致してきた事もあった。
 
イエローと出会わなかったらひたすら誰かの欲を満たし、誰かの幸や富を奪う犯罪者の片棒を担がされ続けただろう。まるで、今イエローが戦っている死神の中に囚われている魂たちのように死ぬまで消費されるみたいに。

「こうやって誰かと自由に行動して…カレーを一緒に食べるなんて死ぬまでなかったかもしれなかったから…例え、主様が魔王だったりしても私はついていきたい」

「自由…」 

イースの瞳に強い意志を感じ、ムラサキは先ほどイエローから受け取った二つの品を見つめる。

1つは赤子の時から持っていた紋章入りの証。
既に両親は死んでいるが、自分がどこの国の人間で、自分を知っている人間はどこかにいるんじゃないか? 物心ついた時から島の外に出る事ばかり考えていた。

(バァバ…アタシ、どうしたらいいの?)

二つ目はバァバが紫のために残したとされる呪石。
 死神に魂を食われる前のバァバからのメッセージがあるのだが、聞くのが怖い。
 
 バァバの事を思い出そうとすると、さっきの死神の醜いバァバの顔と声が浮かぶ。
 島の外での生き方を知らず長年不自由なまま老婆にまでなり、外の世界から来たムラサキに対して愛情は本当にあったのか? 実は全て死神の言うとうりだったんじゃないか。
 
「バァバ…アタシ…っ!? な、なんだ?」

「きゃぁ!? 今の音…祠の方から?」

 突然、大きな振動と轟音が聞こえ驚く二人。
 祠から同じ振動と音が聞こえた後、祠が崩れて中から何かが飛び出した。

「ぐぁぁぁ!! くそぉぉぉ!! 小娘がぁぁ!! 絶対に、絶対にその魂を全て食らってやるぅぅぅ!!」

「もう私の魂の一部を食べてるでしょうがぁ!! 」

宙に浮かぶ人間と魔物。
ボロボロの死神と全身に黄金の雷を纏い雷神化し吠えるイエローが姿を現した。
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