Al戦艦と異世界ドラゴン

やるふ

文字の大きさ
31 / 53

花竜草

しおりを挟む
目を覚ましたグリペンの視界に、まず最初に映ったのは真っ白な天井だった。
何処かのベッドの中に居ることは何となく分かる。

ぼーっとした頭の中で考えを巡らせる。
まるで、今までずっと眠っていて、何かの悪夢を見ていたかのような感覚だ。

不意に、真っ白な視界に誰かの顔が重なった。

『ひゃあ!
何してるんですか!?』

グリペンは驚いた声を上げて飛び起きた。

『おわ!目覚めたみたいだな。
良かった…』

そこに居たのはダンイルだった。
小さな机と棚くらいしか無い、そう広くはない部屋の中に、グリペンは寝かされていた。

枕元には綺麗な一輪の花が花瓶に咲いている。

『ダンイルさん…僕…此処は一体…』

状況が把握できずに、グリペンの頭は一気に混乱する。

『もう安心だ。ここはタワン基地の医務室だ。
お前、あの地獄の楽園島の山中で、ラッジストの介抱をしながら身を隠していたらしいな。
大したもんだ、お陰でラッジストはあれだけの重症を負いながらも命には別状がない』

『地獄の…楽園…島…?
ラッジスト…さんを…介抱…?』

ダンイルの言葉の後、グリペンは頭痛に襲われ、その脳裏におぞましい何かが過った。

『そういえば、さっき医者が薬を置いていったぞ。
ただのビタミン鎮痛剤だから、目が覚めたら飲ませてくれって』

ダンイルが錠剤の入った小瓶を見せたその瞬間、グリペンは目を見開き両手で胸を押さえだした。

『グリペン…?
おい、どうした!苦しいのか!?』

思い出す…。

灰色の巨船、一瞬で塵と化したナンシー、ラッジストの叫び声、流れる鮮血、仮面の男たち、
そして…
軍服を剥ぎ取られ、肢体を舐め回す不気味な舌の感触と生臭い吐息がもたらす嗚咽感…。

悲鳴を上げると殴られ、許しを乞いながら自ら身体を差し出すしか選択肢が無かった
絶望なる刻…。

暗闇から這い出してきた記憶が、一気にグリペンの全身を貫いていった。

ダンイルには知らされていないようだが、女性軍人であるグリペンには一目で分かった。
それが…ビタミン錠剤などではなく、堕胎薬だということを…。

『う…うう…ぐぅ…』

憧れの仲間たちとの未来も、軍人としての誇りも、人間として女としての尊厳も…何もかもが汚されて踏みにじられ目も当てられない程に無様な今の自分…。

叫び声を上げて、いっそのこと壊れてしまいたくなるような衝動にグリペンは涙を流し唇を噛みながら必死に堪えている。

『待ってろ!今、医者を呼んで来るからな!』

ただならぬグリペンの様子にダンイルが部屋を出ようとした途端、病室の扉が勢いよく開いた。

そこには、二人にとって見慣れた女の姿があった。
その胸には両手いっぱいの白い花束を抱えている。

『ロサード…?何でお前が…』

ダンイルの問いかけに、ロサードは眉を微かに動かした。

『ばーか。これが見えねぇのか?
花屋が来る理由なんて決まってんだろ。
花を届けに来たんだよ』

ロサードはぶっきらぼうにそう言って、ダンイルの足を蹴り乱暴に退かすと、呆気にとられているグリペンの方へと歩を進める。

『おい、待て…。
花を届けに…って、それは飛竜の餌の*花竜草*じゃ…』

基本的にドラゴンは肉食だが、飛竜だけは草食であり、特に季節に限らず一年中白い花を咲かせるこの植物の独特の香りを好み食す。
それにより、いつしかこの花は花竜草と呼ばれるようになったのだった。


ロサードは 、そんなダンイルの戸惑いに構わず、両手の花竜草をグリペンのベッドへと勢いよく放り投げてばら蒔いた。

『ひゃあ!』

『おい!ロサード!』

驚いた二人が声を上げるが、ロサードは楽しげな笑みを浮かべ、グリペンを見つめながら言う。

『グリペンちゃんは確か…この花が好きだったよな?』












    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ
恋愛
 初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。  それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。  囚人の名は『イエニー・フラウ』  彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。  その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。  しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。  人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。  その手記の内容とは…

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...