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尋問
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『えっと…はい、ですから…』
元老院の円卓を真ん中に挟み、皇女リノハルが座る場所と向かい合う壇上に立たされているガウロッサは、もう直に会うことすらないのだろうと思っていた雲の上の存在である元老院の長老たちを前に、しどろもどろになりながら額に浮かぶ汗を拭っていた。
『はっきり答えてもらうぞ港警備長。
知ってはいると思うが、ここで嘘を吐こうものなら即厳罰に処されることになる。
さて…もう一度訊ねるが、何故、あの不審船に入港許可書が発行されたのだ?』
シデンはそう言うと、ガウロッサを見据えながら机に肘をつき顎のところで両手を組んだ。
『え…と、それにつきましては…はい、警備団長からの要請があり、危険性は無いとの報告を受けまして…私、港警備長の権限により入港許可書を発行致しました…』
『危険性が無いだと…?
この*報告書*によると、あの船はシーナ空軍やノスカリア海軍に攻撃をくわえたんだぞ!!』
カーガの怒鳴り声に、ガウロッサが怯えたように肩をすくめる。
長老たち全員のもとにある報告書は、グレンダが紅蛍艦内で作成したものを持参し、この議場に入るなり配ったものだ。
『それに関しましては、私としましては……その報告書を拝見しておりませんでしたので…はい…』
泣きそうな声を絞り出しているガウロッサとは違い、背後に座るグレンダは、今のところ予定通りに進んでいる質疑応答に胸を撫で下ろす気分でいた。
実は、ガウロッサには予め全てを伝えていた。
紅蛍が別次元より現れし意思をもつ兵器であり、水竜やシーナ飛竜隊、ノスカリア海軍の船団を容易く撃破したこと、そして…この紅蛍の存在がシャーハンに光明をもたらすであろうということを…。
そして、元老院の長老たちに何を訊かれても知らぬ存ぜぬを貫き通すだけで良いと。
嘘はバレなければ嘘にはならない。
特に出世もしないまま警備団員として燻っていたガウロッサを港警備長に引っ張り上げたのはグレンダだ。
そのこともあり、彼はグレンダに心酔に近い感情を寄せていたのだ。
『ふむ…。
警備団長直々の要請故に疑う理由もなかったというわけか』
カイテンはそう含み笑いを見せると、それが気にくわないような表情のキリシマが口を開いた。
『この報告書通りでいけば、あの船が国家に属するドラゴンや船を攻撃したということであり、それは国際的に見て明らかにテロ行為です。
そのテロリストを港に招き入れたということになれば、シャーハンはテロに加担したことになってしまうわけです。
警備団長はもとより、港警備長…何も知らなかったとしても、貴方にも厳しい処罰が課せられるでしょうな』
『異議あり!』
声を響かせ、グレンダが手を上げた。
ガウロッサは強張った表情のまま脂汗でずり落ちる眼鏡を指で何度も直している。
『異議だと!?
分際を弁えんかグレンダ!
貴様への尋問は、まだ後だぞ!』
マヤが声を荒げたその直後
「カシャ―ン!!」という鋭い金属音が議場を駆け抜けた。
これは、皇女の両脇に立つ二人の巫女が銀剣を交わらせた音であり、それは、これより今、皇女が発言する事を意味している。
一瞬にして場が静まり返る中、リノハルが少し顎を上げて透き通るような声で言った。
『異議を認めよう。
警備団長の発言を許可する』
この場では、皇女の意思決定こそが最優先されることになっている。
マヤは言葉を呑み込み、不満げな表情で俯く。
『感謝致します皇女リノハル様』
グレンダは立ち上がると、ガウロッサと場所を交代して確信をおびた瞳で長老たちを見渡したのだった。
元老院の円卓を真ん中に挟み、皇女リノハルが座る場所と向かい合う壇上に立たされているガウロッサは、もう直に会うことすらないのだろうと思っていた雲の上の存在である元老院の長老たちを前に、しどろもどろになりながら額に浮かぶ汗を拭っていた。
『はっきり答えてもらうぞ港警備長。
知ってはいると思うが、ここで嘘を吐こうものなら即厳罰に処されることになる。
さて…もう一度訊ねるが、何故、あの不審船に入港許可書が発行されたのだ?』
シデンはそう言うと、ガウロッサを見据えながら机に肘をつき顎のところで両手を組んだ。
『え…と、それにつきましては…はい、警備団長からの要請があり、危険性は無いとの報告を受けまして…私、港警備長の権限により入港許可書を発行致しました…』
『危険性が無いだと…?
この*報告書*によると、あの船はシーナ空軍やノスカリア海軍に攻撃をくわえたんだぞ!!』
カーガの怒鳴り声に、ガウロッサが怯えたように肩をすくめる。
長老たち全員のもとにある報告書は、グレンダが紅蛍艦内で作成したものを持参し、この議場に入るなり配ったものだ。
『それに関しましては、私としましては……その報告書を拝見しておりませんでしたので…はい…』
泣きそうな声を絞り出しているガウロッサとは違い、背後に座るグレンダは、今のところ予定通りに進んでいる質疑応答に胸を撫で下ろす気分でいた。
実は、ガウロッサには予め全てを伝えていた。
紅蛍が別次元より現れし意思をもつ兵器であり、水竜やシーナ飛竜隊、ノスカリア海軍の船団を容易く撃破したこと、そして…この紅蛍の存在がシャーハンに光明をもたらすであろうということを…。
そして、元老院の長老たちに何を訊かれても知らぬ存ぜぬを貫き通すだけで良いと。
嘘はバレなければ嘘にはならない。
特に出世もしないまま警備団員として燻っていたガウロッサを港警備長に引っ張り上げたのはグレンダだ。
そのこともあり、彼はグレンダに心酔に近い感情を寄せていたのだ。
『ふむ…。
警備団長直々の要請故に疑う理由もなかったというわけか』
カイテンはそう含み笑いを見せると、それが気にくわないような表情のキリシマが口を開いた。
『この報告書通りでいけば、あの船が国家に属するドラゴンや船を攻撃したということであり、それは国際的に見て明らかにテロ行為です。
そのテロリストを港に招き入れたということになれば、シャーハンはテロに加担したことになってしまうわけです。
警備団長はもとより、港警備長…何も知らなかったとしても、貴方にも厳しい処罰が課せられるでしょうな』
『異議あり!』
声を響かせ、グレンダが手を上げた。
ガウロッサは強張った表情のまま脂汗でずり落ちる眼鏡を指で何度も直している。
『異議だと!?
分際を弁えんかグレンダ!
貴様への尋問は、まだ後だぞ!』
マヤが声を荒げたその直後
「カシャ―ン!!」という鋭い金属音が議場を駆け抜けた。
これは、皇女の両脇に立つ二人の巫女が銀剣を交わらせた音であり、それは、これより今、皇女が発言する事を意味している。
一瞬にして場が静まり返る中、リノハルが少し顎を上げて透き通るような声で言った。
『異議を認めよう。
警備団長の発言を許可する』
この場では、皇女の意思決定こそが最優先されることになっている。
マヤは言葉を呑み込み、不満げな表情で俯く。
『感謝致します皇女リノハル様』
グレンダは立ち上がると、ガウロッサと場所を交代して確信をおびた瞳で長老たちを見渡したのだった。
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