Al戦艦と異世界ドラゴン

やるふ

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有事

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『キリシマ様、貴方はあの船をテロリストと仰いましたが、では今は、シャーハン領海内にテロリストがいる状態だということになりますな?』

『何が言いたい。
テロリストが領海内にいるからこそ、警備船に監視をさせ、港に陸警備団を待機させているのだろう』

グレンダの問い掛けにキリシマは眉をひそめる。

だが、次にグレンダはカーガの方へと顔を向ける。

『カーガ様、その報告書にも記載しておりますが、ノスカリア海軍所属の船が撃沈されたのはシャーハン領海内です。
宜しいですかな?』

カーガは返答を返さず、グレンダを見つめている。

『つまり…我がシャーハン領海内に、何故か、ノスカリアの軍船がいて、それに対してテロリストが武力攻撃を行った…ということで宜しいですかな?
そう新聞社に、国民に発表するおつもりですか?
我が国で有事が勃発した…と』

『くだらん!!』

またしてもマヤが声を荒げた。

『これは、誰がどう見ても有事だ!
殆どの新聞社は黙ってはいるが、ノスカリアの軍船が密漁を行っていることなど北方海域警備団や漁師たちにとっては周知の事実!
つまり、我が領海内で他国の軍船が撃沈させられたことを含め、少なくとも、この首都に住む国民には危険を報せ、避難場所への誘導を行うべきであろう!』

『では、私がユーナイトに掛け合い*限定的安全保障合意*の履行を打診するとしよう。
ドラゴンを倒す程の力を持つ船など、どう考えても警備団だけでは手に負えまい』

カイテンが言葉をかぶせるが、次の一声がそれを掻き消した。


『ならん』

その重い声に、一同の視線がジンリュウへと注がれる。

『このシャーハンは、大戦後、ただの一度も戦争も紛争も起こしておらぬ。
それは、平和的外交に徹してきた我々の努力とクジョー神の御加護であると、国民にも教育してきたはず。
この国で、有事など起こってはならんのだ』

ジンリュウの言葉にカイテンがため息をつく。
マヤも何か言いたげだが、諦めた様子で背凭れへと身体を投げた。

『それに、*北海危機*を忘れたか?
安易に他国の武力に頼り、多額の用心棒代と新聞社への口止め料を払わされたことを…』

北海危機とは、8年前に突如発生したシャーハンの領海である北方海域に、24隻ものノスカリアのドラゴン船団が現れて数日間居座り続けた事態のことだ。

直ちに、シャーハン政府は警備船3隻を派遣し速やかな退去を求めたが応じる気配もなく、元老院が外交ルートを通じてノスカリア政府に抗議をしたが、民間の船団であり軍は関与していない、の一点張りで全く効果はなかった。

そこで、元老院は遂に苦渋の決断を下すことになる。
それは、敗戦後に三大国と交わした、シャーハンが竜武装を放棄するにあたり、他国による軍事侵略等の非常事態が発生した場合、三大国が協力してシャーハン領内及び国民の安全を保障する…、という限定的安全保障合意の履行だ。

これを受けユーナイト政府は合意履行を認め、すぐさまユーナイト軍の飛竜3騎がシャーハン北方海域に飛ぶことになる。

現場海域では、相変わらず赤色の煙を上げるシャーハン警備船とノスカリア船団が睨み合う緊迫した空気が流れていたが、ユーナイト飛竜軍の3騎が姿を見せた途端に状況は一変した。

飛竜が警告無しに対竜槍2発を発射し、ノスカリア船団の中央に水柱を上げさせたのだ。

まさかユーナイト軍が動いただけでなく、威嚇発射までしてくるとは想定していなかった船団はこれに驚愕し、まるで蜘蛛の子を散らすかのようにノスカリア本国の方へと引き返して行ってしまい、それ以来は数隻こそ姿を見せど、ノスカリアの大船団が現れることは無くなった。

『だからジンリュウ殿!
あの時、口止めなどせず国民に危機を知らせるべきだったのだ!
たった3騎の飛竜で、危機を回避できたという事実を!』

マヤが拳で卓を叩いた。
だが、ジンリュウは何も答えず、他の長老たちも同様の様子だ。

『では、交渉…ということになりますな』

静まりかえった隙間に差し込むようにグレンダが言葉を入れる。

長老たちが改めて報告書の末尾辺りに目をやる中、グレンダは言う。

『見ての通り…ベニボタル殿はシャーハン国皇女リノハル様との直接対話を望んでおります!』







 
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