Al戦艦と異世界ドラゴン

やるふ

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VRルーム

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空に突き刺さるように建ち並ぶ巨大なビル、二重にも三重にも迷路のように交わった道路には、ひっきりなしに車が列をなして走っている。

商業施設の壁にはプロジェクションマッピングによって形成されたバーチャルアイドルが歌って踊り、その眼下のアスファルトの上の、無数の目的によりそれぞれの方向へと歩いているはずの人々は、まるで1つの意思によって操られている群のようにも見え、システム化された都市を無機質に冷たく彩っている。

そんな大都会の雑踏の中、エリーは目を丸くしてと立ち尽くしていた。

前を、横を、通り過ぎてゆく人々の服装といい周りの風景といい、そこはエリーにとっては初めて目にするものばかりで溢れていた。

『パパ!今日は、ずっとお仕事休みなんだよね?』

ふと、聞こえてきた声に導かれるようにエリーの視線が動いた。
少し離れた先にある噴水の側のベンチに、幼い少女とその子の父親であろう白髪の男性が並んで座っている。

『ああ、もちろんだ。
今日はホタルの8歳の誕生日だからね』

『やったー!
パパ大好き!』

雑音だらけの街中にも関わらず、不思議とその二人の会話ははっきりとエリーの耳に届いてくる。

しかし、エリーはそんなことよりも、ホタルと呼ばれた可愛らしい少女の姿に驚きの表情を浮かべていた。

『ベニ…ボタル…さん…?』

そう…声は違えどその少女はどう見ても、巨船に宿っている水槽の少女と全く同じ姿だったのだ。

『ね!早く行こう!』

満面の笑みを浮かべた少女が立ち上がり走りだす。

『おいおい、迷子になっても知らないぞ』

『早く!早くー!』

娘にせかされ、白髪の男性がおもむろに立ち上がった、その瞬間…天を引き裂くかのような轟音と共に、上空に一機の戦闘機が飛来してきた。

そして、それと同時に辺りは一瞬にして炎に包まれたのだ。

悲鳴と絶叫がこだます地獄絵図の中、エリーは腰を抜かしてその場に座り込んだ。
こんなにも凄まじい炎が間近にあるというのに、熱は一切感じとれない。

『ホタルーーー!!
ホタルーー!!』

噴水に落ちたことで助かった白髪の男が少女の名を何度も叫び呼んでいるが、燃え盛る業火に染められた景色の中にその姿は確認できない。


《彼は赤城博士。
私の創造主です》

突然、頭の後ろの方から響いてきた声に、エリーが驚いて振り返ると、そこには紅蛍が立っていた。

『あれ…?ベニボタルさん…?
あの女の子は…?』

戸惑うエリーの視界に映る周りの風景が、少しずつ分解しだした。
やがて、何も無い真っ白な空間へと変貌した部屋の中にエリーと紅蛍だけが佇んでいる。

《いかがでしたか?
*記録の部屋*での体験は。
今のが、私が居た世界です》

そう問いかけてくる紅蛍は、先程の蛍と呼ばれていた少女と同じ顔をしているが、その笑みは実に機械的で人間味を全く感じさせない。

《予め言っておきますが、私のこの姿も記録の部屋が作り出した存在ですので、触れることはできません》

その言葉で、まだ夢見心地なエリーの伸ばす指先が紅蛍の頬の手前で止まる。

『そっか…。
ここにあるのは全部、幻なんでしたよね』

エリーが我に返ったように笑った。

ここは、紅蛍艦内に設置されている、記録保存を目的としたVRルームだ。

エリーが見せられていたのは、第二次アジア大戦が勃発した日の、東京都内での赤城博士とその娘である蛍を捉えた防犯カメラの映像をVR加工したものだ。

『あの男の人が創造主…。
最愛の娘を失い、その魂を宿した船であるアナタを創った…ってことですか?』

《そう解釈して頂いて結構です。
私と同等のスペックを有する兵器は、私の世界にも存在していません》

世界で唯一、次元転送システムの開発に成功した赤城は、それを兵器に転用することを頑なに拒んでいた。

しかし、娘が空爆の犠牲になったことでその考えは変わり、日本政府が開発中だったAI戦艦に娘の名前と姿を取り入れることを条件とし、次元転送装置の搭載に協力することにしたのだ。

『その、アカギって人は、今どこに…?』

《敵兵の銃撃により死亡、もしくは拘束されたと予想できます》

紅蛍の冷たい声がエリーの胸に刺さった。

『悲しくは…寂しくは、ないんですか?』

エリーの思わず口をついた問いかけに、やはり紅蛍は、間も躊躇もなく、まるで予め決まっているあらすじを読むかのように答えた。


《私に感情はありません》












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