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ジンリュウとラファール
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『ジン…リュウ…』
その男を見るなり、一瞬にして安堵の表情に変わった皇女の言葉に、グレンダは我が目を疑った。
『やはり、あやつら儂の留守を狙って来おったか』
開け放たれたバルコニーのガラス戸から吹く風に、長い黒髪を乱れさせながらその男は立っていた。
そして、その背後には両翼を広げた飛竜とそれに跨がる紅色の髪の人物が、こちらを見つめている。
『ジンリュウ何故ここに?
お前は確か、警備団の船でタワン島へ会合に向かったはずではなかったか?』
『皇女、会合というのは嘘で御座います。
なかなか尻尾を出さぬテロリストどもを誘き出す為に、儂が一旦シャーハンから離れることにしたのです』
ジンリュウはその場で片膝をつき、頭を垂れた。
そんな二人のやりとりを、グレンダはまるで物語を描いた絵画を前しているような感覚で茫然と見つめている。
剣一本で敵中に飛び込み、ドラゴンすら恐れず大軍の中を暴れ回ったとされるジンリュウ、それはまさに生ける伝説だった。
その伝説が今、目の前にいる。
グレンダの胸を沸き上がる興奮がしめつける。
『初にお目にかかります。
シーナ帝国飛竜軍タワン基地所属のラファールと申します。
緊急時とはいえ、このような無礼な入室、誠に申し訳ありません』
飛竜から降りてきた紅色の髪の男が、ジンリュウの隣りに膝まづく。
軍人とは思えないほど、柔らかな表情をした美しい男だ。
『儂らが出港するのと同じ日に、こやつにタワンから飛んでもらい洋上の警備船まで迎えに来てもらい、ここへ戻ってまいりました』
ジンリュウがそう言うと、皇女は頷き微笑んだ。
『ラファールよ。
そなたの協力に感謝すると共に、その功績は必ずやシーナ帝国の国王殿に御伝えさせてもらう』
『あー…、折角のありがたいお言葉なんですが、今回のことは僕が勝手にやってることなんで、国王には黙っておいて頂けませんか?
飛竜を勝手に持ち出していることが本国にバレてしまいますので…』
ラファールはそう言うとヘラヘラと笑った。
この状況下、しかも皇女を前にしているというのに、その様子からは緊張の欠片すら窺えない。
『そうか…ならばこの事はこの部屋にいる者たちの中で内密にしておくとしよう』
『おい!ドラゴンはまだか!』
扉越しに怒声が聞こえる。
『ジンリュウ様…外には大勢の軍隊と…それと、ドラゴンが…』
グレンダがやっとで声を出す。
『うむ。よくぞ堪えたな小わっぱ。
後は儂に任せよ。
おいラファールよ。皇女とリノハル様と子わっぱの守りは頼むぞ』
ジンリュウはそう告げると、腰の鞘から剣を抜き、威風堂々と扉の前に立った。
『えー…相変わらず人使いが荒いな~ジンリュウの旦那は。
んじゃ、とりあえず武器取ってきます』
ラファールは唇を尖らせながらボヤクと、広いバルコニーに居る飛竜のもとへと歩いて行った。
『あんなですが、飛竜さばきと剣の腕はかなりのものです。
国は違えど儂が唯一、背中をあずけられる男であることに間違いはありせん』
背を向けたままそう言うジンリュウの足元にリノハルが駆け寄る。
『ジンリュウ…怪我はいかんぞ』
『それが御命令とあらば』
ジンリュウが握る剣が窓から差す陽光を反射させる。
シャーハンの軍刀は、古来より伝わりし製法で造られており、刀身が緩やかな曲線を描いている片刃の剣だ。
その切れ味は世界一とまで云われている。
『もう、安心だ』
ツクヨミがリノハルとグレンダを両腕で抱き寄せた。
『この男、ジンリュウが来たということは…それはもう、全てが終わるということだ』
その男を見るなり、一瞬にして安堵の表情に変わった皇女の言葉に、グレンダは我が目を疑った。
『やはり、あやつら儂の留守を狙って来おったか』
開け放たれたバルコニーのガラス戸から吹く風に、長い黒髪を乱れさせながらその男は立っていた。
そして、その背後には両翼を広げた飛竜とそれに跨がる紅色の髪の人物が、こちらを見つめている。
『ジンリュウ何故ここに?
お前は確か、警備団の船でタワン島へ会合に向かったはずではなかったか?』
『皇女、会合というのは嘘で御座います。
なかなか尻尾を出さぬテロリストどもを誘き出す為に、儂が一旦シャーハンから離れることにしたのです』
ジンリュウはその場で片膝をつき、頭を垂れた。
そんな二人のやりとりを、グレンダはまるで物語を描いた絵画を前しているような感覚で茫然と見つめている。
剣一本で敵中に飛び込み、ドラゴンすら恐れず大軍の中を暴れ回ったとされるジンリュウ、それはまさに生ける伝説だった。
その伝説が今、目の前にいる。
グレンダの胸を沸き上がる興奮がしめつける。
『初にお目にかかります。
シーナ帝国飛竜軍タワン基地所属のラファールと申します。
緊急時とはいえ、このような無礼な入室、誠に申し訳ありません』
飛竜から降りてきた紅色の髪の男が、ジンリュウの隣りに膝まづく。
軍人とは思えないほど、柔らかな表情をした美しい男だ。
『儂らが出港するのと同じ日に、こやつにタワンから飛んでもらい洋上の警備船まで迎えに来てもらい、ここへ戻ってまいりました』
ジンリュウがそう言うと、皇女は頷き微笑んだ。
『ラファールよ。
そなたの協力に感謝すると共に、その功績は必ずやシーナ帝国の国王殿に御伝えさせてもらう』
『あー…、折角のありがたいお言葉なんですが、今回のことは僕が勝手にやってることなんで、国王には黙っておいて頂けませんか?
飛竜を勝手に持ち出していることが本国にバレてしまいますので…』
ラファールはそう言うとヘラヘラと笑った。
この状況下、しかも皇女を前にしているというのに、その様子からは緊張の欠片すら窺えない。
『そうか…ならばこの事はこの部屋にいる者たちの中で内密にしておくとしよう』
『おい!ドラゴンはまだか!』
扉越しに怒声が聞こえる。
『ジンリュウ様…外には大勢の軍隊と…それと、ドラゴンが…』
グレンダがやっとで声を出す。
『うむ。よくぞ堪えたな小わっぱ。
後は儂に任せよ。
おいラファールよ。皇女とリノハル様と子わっぱの守りは頼むぞ』
ジンリュウはそう告げると、腰の鞘から剣を抜き、威風堂々と扉の前に立った。
『えー…相変わらず人使いが荒いな~ジンリュウの旦那は。
んじゃ、とりあえず武器取ってきます』
ラファールは唇を尖らせながらボヤクと、広いバルコニーに居る飛竜のもとへと歩いて行った。
『あんなですが、飛竜さばきと剣の腕はかなりのものです。
国は違えど儂が唯一、背中をあずけられる男であることに間違いはありせん』
背を向けたままそう言うジンリュウの足元にリノハルが駆け寄る。
『ジンリュウ…怪我はいかんぞ』
『それが御命令とあらば』
ジンリュウが握る剣が窓から差す陽光を反射させる。
シャーハンの軍刀は、古来より伝わりし製法で造られており、刀身が緩やかな曲線を描いている片刃の剣だ。
その切れ味は世界一とまで云われている。
『もう、安心だ』
ツクヨミがリノハルとグレンダを両腕で抱き寄せた。
『この男、ジンリュウが来たということは…それはもう、全てが終わるということだ』
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