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革命の女神ソウリュウ
しおりを挟む素晴らしい時代が訪れた━━…。
大人たちは誰もがそんな言葉を口にしていたが、青年にはそれが全く共感できないでいた。
戦後から這い上がり、作れや建てろやで肥大してゆく街の中に蔓延する拝金主義と劣悪な労働環境。
路地裏に転がる浮浪者には目もくれず、大通りを練り歩くクジョー神の教えを謳うデモ行進。
そんな光景を横目にしながら建築資材を担ぐ青年に、現場責任者の怒鳴り声が飛ぶ。
もう一人の彼が問い掛けてくる。
こんな仕事に時間を費やしてて良いのか━━…?
こんな場所で寿命を切り売りしながら一生を終えるのか━━…?
停滞する日々に絶望に似た嫌気が差す中、街で耳にした1つの噂が彼に微かな希望をもたらした。
━━美しい女神に率いられし革命組織が政権転覆を狙っている━━
その組織とは所謂、新興宗教団体というものだが、実は治安科の中でも精鋭エリートが集まる部署の内務警備団、通称*内警*がマークしている危険組織でもあった。
戦前、戦時は認められていなかった宗教思想の自由が敗戦によりもたらされたシャーハン国内では、考え企むだけで実行にさえ移さなければ、どんな危険な思想を計画、主張しようが弾圧されることはなく、
もしも、そういったものに公権力が口や手を出そうものなら世論から強い反発を受ける事態になる社会風潮になっていた。
よって、敗戦直後に陸竜基地を襲撃した国際指名手配犯を匿い、ドラゴンを隠し持っている可能性が極めて高く、声高々に革命戦争の必要性を街中で叫んでいても、証拠が無く、しかもそれが宗教団体を名乗る以上は、内警も秘密裏に調査こそすれど大っぴらに強制捜査には踏み切れないでいるのが現状だった。
『革命軍へようこそ』
そう言ってドラゴンと共に女神が青年の前に姿を現したのは、彼が青い軍服に袖を通してから1年が過ぎようとしていた時だった。
宗教団体とはいえ、日々やっていることは軍隊訓練ばかりだった。
本部施設がある険しい山岳地帯で、旧シャーハン帝国軍陸竜暗部に所属していた老兵たちの指導のもと、当時さながらの厳しい訓練に、青年は人一倍励んできた。
やがて、幹部候補として認められた青年には、組織が長年その所在を隠し続けている女神とドラゴンに、直接忠誠を誓える権限が与えられたのだ。
『ああ…革命の女神様…』
初めて目にする実物のドラゴンと、あの伝説の戦士ジンリュウの実の妹と云われている女神*ソウリュウ*の美しい姿に、彼は感動と興奮のあまり、自然とその場に膝まづいていた。
『私を謁見できるのは選ばれし戦士のみ…。
そう、貴方は選ばれたの』
ソウリュウはそう言うと、カツカツとブーツを鳴らしながら近づき、恍惚の表情でこちらを見上げている青年を見据えた。
そして、そのまま自らの軍服のボタンをゆっくりと外してゆく。
青年は戸惑いながら辺りを見回すが部屋にはソウリュウとドラゴン以外は誰も居ない。
何処からともなく漂い始めた心地よい香りをおびた霧が部屋に充満してゆく。
脱ぎさられた青い軍服が音も無く
床に落ち、ソウリュウの白い肌が露になる。
『私に忠誠を誓い命を捧げなさい。
そうすれば、私の寵愛を存分に受けられるわ…』
理性を溶かす酸のような、甘い蜜のような女神の囁き声に、青年は我を忘れソウリュウへと飛びかかるように押し倒して覆い被さった。
『誓います!捧げます!この命を、魂を!』
青年は血走った眼を見開き、ソウリュウの胸元に唾液を垂らしながら、何度も何度も叫んだ。
もう、何も考えられない本能剥き出しの脳髄に、*絶対服従*という言葉だけが刻まれてゆく。
『よし…、私を貪りなさい』
ソウリュウは、まるで、おあずけ状態の犬に言い訊かせるかのようにそう言うと、ゆっくりと両脚を左右に開いてみせた。
その場から一歩も動かず佇んでいるドラゴンは、その様子を爛々と光る眼に捉え続けている。
まるで、交じり合い乱れる二つの肉体を映す、鏡のように……━━━。
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