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姉弟
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『申し訳ありませんが、そのドラゴン捜索は御断り致しますわ』
クフィールからの予想外の返事に、ウェイビーは眉をひそめた。
隣に座っているラッジストは口をあんぐりと開けて姉を見つめている。
『何故じゃ?
合同訓練は明後日…それまでどうせ暇じゃろ?
それとも、こんな老いぼれの頼みも聞けん程の用でもあるのかのぅ…』
『頼み…?
私には、命令に聞こえましたが?
私たちは飛竜軍であり、海竜軍ではありません。
私たちに命令を下したければ、飛竜軍総司令官を連れて来てくださいな』
クフィールはそう言うと微笑を浮かべた。
『姉上…!ウ、ウェイビー様…!ちょっ…と失礼します!』
ラッジストは慌てて立ち上がるなり、クフィールの手を掴むと引っ張るようにして部屋の外へと連れ出した。
『依頼を断るなんて何を考えている!
相手はあの*海の魔術師*だぞ…!』
ラッジストは声を圧し殺しながらも、クフィールへと詰め寄った。
ウェイビーは、水竜をまるで自らの手足のように操り敵を追い詰めることから、海の魔術師とまで呼ばれており、シーナ帝国だけでなくもはや世界中の海竜軍人の憧れの存在だ。
『だから、何なのよ。
私たちは誇り高きタワン飛竜隊なのよ?』
クフィールはツーンと唇を尖らせた。
『こんな時だけ、誇りとか口にするでないわ!
だいたい、姉上の素行が悪いせいで、弟の俺までもが、こんなちっぽけな島に追いやられてしまったのだぞ!』
『ママとパパが生まれ育った島よ』
『そんなことはどうでも良い!!』
ラッジストはそこまで言ったところで、ハッとして言葉を止めた。
クフィールの表情から、いつもの笑みが消えていたことに気がついたからだ。
その瞳は憂いの色に満ちている。
二人の両親は共に、このタワン島出身の名高い飛竜騎士だった。
だが、クフィールが飛竜軍に入隊したその年に、母が突然の病で亡くなり、それから半年もしない内に父も訓練中の事故でこの世を去ってしまっていた。
『と、とにかく…、ウェイビー様からの依頼は受ける…!
海竜軍総司令官のお眼鏡に叶えば、本国の飛竜隊への道も開けるかもしれんからな。
姉上は残ってくれ、酔っぱらいに付いて来てもらっても迷惑だけだからな』
ラッジストはそう言うと、部屋に戻ろうと振り返る。
『好きにしなさい。
但し、むやみな戦闘行為は絶対にダメ…。分かった?』
クフィールのその言葉に、ラッジストは無言のまま扉を開けてウェイビーの待つ部屋へと入って行った。
『また姉弟喧嘩か?』
背後からの声にクフィールが振り返ると、そこには見慣れた髭面が立っていた。
『ダンイル…丁度良かったわ。
一杯付き合いなさい』
そこに居たのは飛竜の世話係りであるダンイルだった。
『…ったく、隊長と飲んで一杯で済んだことはねぇや』
クフィールが腰にぶら下げている革のケースから酒瓶を抜くと、ダンイルが参ったように笑った。
『ドラゴンの出撃準備を整えたら向かうから先にやっててくれ。
どうせ、いつものあの場所だろ?』
ダンイルがそう言うとクフィールは、少し切なげに微笑んだのだった。
クフィールからの予想外の返事に、ウェイビーは眉をひそめた。
隣に座っているラッジストは口をあんぐりと開けて姉を見つめている。
『何故じゃ?
合同訓練は明後日…それまでどうせ暇じゃろ?
それとも、こんな老いぼれの頼みも聞けん程の用でもあるのかのぅ…』
『頼み…?
私には、命令に聞こえましたが?
私たちは飛竜軍であり、海竜軍ではありません。
私たちに命令を下したければ、飛竜軍総司令官を連れて来てくださいな』
クフィールはそう言うと微笑を浮かべた。
『姉上…!ウ、ウェイビー様…!ちょっ…と失礼します!』
ラッジストは慌てて立ち上がるなり、クフィールの手を掴むと引っ張るようにして部屋の外へと連れ出した。
『依頼を断るなんて何を考えている!
相手はあの*海の魔術師*だぞ…!』
ラッジストは声を圧し殺しながらも、クフィールへと詰め寄った。
ウェイビーは、水竜をまるで自らの手足のように操り敵を追い詰めることから、海の魔術師とまで呼ばれており、シーナ帝国だけでなくもはや世界中の海竜軍人の憧れの存在だ。
『だから、何なのよ。
私たちは誇り高きタワン飛竜隊なのよ?』
クフィールはツーンと唇を尖らせた。
『こんな時だけ、誇りとか口にするでないわ!
だいたい、姉上の素行が悪いせいで、弟の俺までもが、こんなちっぽけな島に追いやられてしまったのだぞ!』
『ママとパパが生まれ育った島よ』
『そんなことはどうでも良い!!』
ラッジストはそこまで言ったところで、ハッとして言葉を止めた。
クフィールの表情から、いつもの笑みが消えていたことに気がついたからだ。
その瞳は憂いの色に満ちている。
二人の両親は共に、このタワン島出身の名高い飛竜騎士だった。
だが、クフィールが飛竜軍に入隊したその年に、母が突然の病で亡くなり、それから半年もしない内に父も訓練中の事故でこの世を去ってしまっていた。
『と、とにかく…、ウェイビー様からの依頼は受ける…!
海竜軍総司令官のお眼鏡に叶えば、本国の飛竜隊への道も開けるかもしれんからな。
姉上は残ってくれ、酔っぱらいに付いて来てもらっても迷惑だけだからな』
ラッジストはそう言うと、部屋に戻ろうと振り返る。
『好きにしなさい。
但し、むやみな戦闘行為は絶対にダメ…。分かった?』
クフィールのその言葉に、ラッジストは無言のまま扉を開けてウェイビーの待つ部屋へと入って行った。
『また姉弟喧嘩か?』
背後からの声にクフィールが振り返ると、そこには見慣れた髭面が立っていた。
『ダンイル…丁度良かったわ。
一杯付き合いなさい』
そこに居たのは飛竜の世話係りであるダンイルだった。
『…ったく、隊長と飲んで一杯で済んだことはねぇや』
クフィールが腰にぶら下げている革のケースから酒瓶を抜くと、ダンイルが参ったように笑った。
『ドラゴンの出撃準備を整えたら向かうから先にやっててくれ。
どうせ、いつものあの場所だろ?』
ダンイルがそう言うとクフィールは、少し切なげに微笑んだのだった。
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