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レッドゾーン
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『この、ボーエンキョーってやつ凄いですね。あんな遠くにいる飛竜がまるで目の前に浮かんでいるようでした』
『ああ、この世界で使われている遠見レンズとは比べ物にもならんな』
甲板に備え付けられている望遠鏡を覗き込んでいるエリーとその隣に立つグレンダが会話をしている。
『あれは…偵察兵でしたよね。
顔も表情までハッキリ見えましたが、私よりも若い女性騎士でした…』
エリーは、どこか暗い表情で望遠鏡から顔を上げた。
『ああ…。あの偵察兵の報せで、後方で待機している飛竜隊が引いてくれたら良いのだがな』
グレンダは、先ほどの紅蛍の言葉を思い出す。
《まず、この艦から半径2000mの距離をレッドゾーンに指定します。
そして、このレッドゾーンに飛竜隊12騎の内の半数以上が入ってきた場合に攻撃を開始します。
その際、レッドゾーン外にいる飛竜に関しては攻撃対象外とします。
繰り返します…》
『無茶苦茶ですよね…。
2キロ以内に近づかなければ攻撃しないってことですが、向こう側はそんなことは知りませんし、何よりもここは公海です。
近くを飛ぶからって、撃ち落とす権限なんて誰にも無いはずです…』
『この世界で、この世界の者たちが決めたルールはベニボタル殿には通用しない。
話はお前も聞いていただろう』
グレンダにそう返されたエリーは拳を握り、唇を噛んだまま俯いた。
『…エリー、お前は熱心なクジョー神信者だったな。
不戦の翼を広げて世界を平和に導く神竜…。
こんなふざけた妄言に、先ほど我々は殺されかけたのだ』
『団長…?一体何を言って…』
エリーの目つきが一瞬にして変わる。
『やあ!エリー副団長さん、ここにいましたか!』
突然どこからか現れたアフレッタが二人の会話を遮った。
『いやはや、ベニボタル様に勧められたこの缶詰めの保存食の味が素晴らしいんですよ。
他の皆も食事中ですし、是非ともグルメのエリー副団長に食べさせたいと思いましてね!』
見ると、アフレッタの手には平べったい銀色の容器が握られており、その中にはタレに浸された魚の身が納められていた。
『しかし、この食品の密閉技術もさることながら、この船の設備装置はまさに魔法のようですよ』
『私、少し船内を見回ってきますね…』
嬉しそうに話すアフレッタの横をエリーが小走りですり抜けて行った。
『グレンダさん、申し訳ないが話は聞かせてもらいましたよ。
クジョー神の教えを、信者の前で否定するような危険な真似はおやめください。
貴方の立場が危うくなる…』
エリーが去るなり厳しい表情に変わったアフレッタが、グレンダへと歩み寄る。
『ああ…、分かっている。
シャーハン国で天才剣士と呼ばれているアイツは、*元老院*の推薦で副団長に選ばれた俺の見張り役だ。
いざという時に、速やかに俺を暗殺できるようにな…』
グレンダがそう言って海へと目をやった瞬間、紅蛍の声が辺りに響き渡った。
《レッドゾーンに8騎侵入。
レッドゾーンに8騎侵入。
これより、艦対空ミサイルによる先制攻撃を開始します。
これより、艦対空ミサイルによる先制攻撃を開始します》
『かん…対空…みさいる…?』
背後からの不気味な音で、弾かれたように振り返ったグレンダが目にしたのは、甲板に備え付けられた巨大なゲージのようなものが回転して、その中から尖った頭を出していた何かが、白煙を吹きながら斜め上の空へと撃ち上がる様だった。
『ああ、この世界で使われている遠見レンズとは比べ物にもならんな』
甲板に備え付けられている望遠鏡を覗き込んでいるエリーとその隣に立つグレンダが会話をしている。
『あれは…偵察兵でしたよね。
顔も表情までハッキリ見えましたが、私よりも若い女性騎士でした…』
エリーは、どこか暗い表情で望遠鏡から顔を上げた。
『ああ…。あの偵察兵の報せで、後方で待機している飛竜隊が引いてくれたら良いのだがな』
グレンダは、先ほどの紅蛍の言葉を思い出す。
《まず、この艦から半径2000mの距離をレッドゾーンに指定します。
そして、このレッドゾーンに飛竜隊12騎の内の半数以上が入ってきた場合に攻撃を開始します。
その際、レッドゾーン外にいる飛竜に関しては攻撃対象外とします。
繰り返します…》
『無茶苦茶ですよね…。
2キロ以内に近づかなければ攻撃しないってことですが、向こう側はそんなことは知りませんし、何よりもここは公海です。
近くを飛ぶからって、撃ち落とす権限なんて誰にも無いはずです…』
『この世界で、この世界の者たちが決めたルールはベニボタル殿には通用しない。
話はお前も聞いていただろう』
グレンダにそう返されたエリーは拳を握り、唇を噛んだまま俯いた。
『…エリー、お前は熱心なクジョー神信者だったな。
不戦の翼を広げて世界を平和に導く神竜…。
こんなふざけた妄言に、先ほど我々は殺されかけたのだ』
『団長…?一体何を言って…』
エリーの目つきが一瞬にして変わる。
『やあ!エリー副団長さん、ここにいましたか!』
突然どこからか現れたアフレッタが二人の会話を遮った。
『いやはや、ベニボタル様に勧められたこの缶詰めの保存食の味が素晴らしいんですよ。
他の皆も食事中ですし、是非ともグルメのエリー副団長に食べさせたいと思いましてね!』
見ると、アフレッタの手には平べったい銀色の容器が握られており、その中にはタレに浸された魚の身が納められていた。
『しかし、この食品の密閉技術もさることながら、この船の設備装置はまさに魔法のようですよ』
『私、少し船内を見回ってきますね…』
嬉しそうに話すアフレッタの横をエリーが小走りですり抜けて行った。
『グレンダさん、申し訳ないが話は聞かせてもらいましたよ。
クジョー神の教えを、信者の前で否定するような危険な真似はおやめください。
貴方の立場が危うくなる…』
エリーが去るなり厳しい表情に変わったアフレッタが、グレンダへと歩み寄る。
『ああ…、分かっている。
シャーハン国で天才剣士と呼ばれているアイツは、*元老院*の推薦で副団長に選ばれた俺の見張り役だ。
いざという時に、速やかに俺を暗殺できるようにな…』
グレンダがそう言って海へと目をやった瞬間、紅蛍の声が辺りに響き渡った。
《レッドゾーンに8騎侵入。
レッドゾーンに8騎侵入。
これより、艦対空ミサイルによる先制攻撃を開始します。
これより、艦対空ミサイルによる先制攻撃を開始します》
『かん…対空…みさいる…?』
背後からの不気味な音で、弾かれたように振り返ったグレンダが目にしたのは、甲板に備え付けられた巨大なゲージのようなものが回転して、その中から尖った頭を出していた何かが、白煙を吹きながら斜め上の空へと撃ち上がる様だった。
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