15 / 53
意思を持つ飛翔体
しおりを挟む
『なっ…!?あんなものが海に浮くのか…?』
その巨大な船を初めて見た見た時に、ラッジストは全身に恐怖が駆け巡るのをハッキリと感じた。
それこそ正直、グリペンからの報告を聞いた時に退却を選んでおくべきだったと後悔するほどに…。
『ありゃ~大きいね~。
あれ沈めるには対竜槍何本いるかな~』
そんな呑気なことを言っていたナンシーだが、次の瞬間に表情が一変した。
『ラッジストちゃん!
何か来るよ!』
『分かってる!!』
ラッジストは腕を高く上げて大きく回した。
これは、総員直ちに回避行動に移れ、の合図だ。
『あれは…?4本の…対竜槍…?
あんなの見たことない…』
グリペンは顔を青ざめさせた。
片目に装着した遠見レンズに映るソレが、真っ直ぐ此方に向かって飛んで来ているからだ。
『いきなり攻撃してくるとか、随分とせっかちさんだね~』
ナンシーは迫り来る飛翔体を迎え撃つかの如く、飛竜を全速力で前進させた。
『待て!!ナンシー!!』
ラッジストの声が虚空の空に響いた。
前を行く彼女の小さな背中に、二度と追いつけなくなる…、そんな予感がラッジストの胸を騒がせたのだ。
タワン生まれタワン育ちのナンシーは、まさに天真爛漫という言葉が似合う、そんな女性だった。
飛竜騎士としての腕も一級品で、ラッジストは赴任初日にして、彼女には今まで本国で培ってきた経験が全く通用しないということを思い知らされ、そのプライドは粉々に砕かれた。
『私以外の天才を初めて見たわ』
姉のクフィールがそう言っていたのにはラッジストも同感だった。
姉の飛竜さばきを、まるで合わせ鏡のようにトレースするナンシーの姿は、いつしかラッジストに嫉妬心と恋心を芽生えさせていた。
『ラッジストちゃん!
私に練習試合で勝ち越したら、結婚してあげるよ~』
そんなラッジストの胸の内を知ってか知らずか、ナンシーはよくそう言って笑っていた。
真っ青の空の中、気がつけばナンシーの背中は、もう遥か遠くになっていた。
ナンシーは自分の方へと迫り来る1つの飛翔体に狙いを絞っている。
『速っ…!』
あまりのスピードに危機を感じたナンシーは、瞬時に飛竜を斜め下へ滑空させ、間一髪のところで飛翔体をかわした。
『ほへ~長い筒…?
まあ、速いだけなら当たりはしないよね~』
通り過ぎてゆく見たこともない形の飛翔体を横目に、ナンシーは先の海に聳える灰色の巨船へと飛竜を進ませる。
とにかく敵の攻撃を自分に引き付けながら、急所目掛けて対竜槍を叩き込むことだけを、彼女は考えていた。
『まだ少し遠いかな~…っ!?』
突然ナンシーは、戦慄をおびた寒気に襲われた。
死の引力に導かれるように振り返るその瞳に映ったのは、さっき通り過ぎていった飛翔体が空中で弧を描き再びこちらに頭を向けている姿だった。
『ナンシーーー!!』
遠くでラッジストの声が聞こえたような気がした。
『嘘…何で戻ってくるの…?』
ナンシーは慌てて飛竜を上に逃がすが、まるで意思を持ったかのように自分の方へと的確に吸い寄せられてくる飛翔体に成す術がなく、その頬には既に死を覚悟した涙が伝っていた。
『ああ…ごめんね…
結婚…できなくなっちゃったや…』
直撃間近、最期にナンシーの瞼に浮かんだのは、不器用で優しいラッジストの笑顔だった。
その巨大な船を初めて見た見た時に、ラッジストは全身に恐怖が駆け巡るのをハッキリと感じた。
それこそ正直、グリペンからの報告を聞いた時に退却を選んでおくべきだったと後悔するほどに…。
『ありゃ~大きいね~。
あれ沈めるには対竜槍何本いるかな~』
そんな呑気なことを言っていたナンシーだが、次の瞬間に表情が一変した。
『ラッジストちゃん!
何か来るよ!』
『分かってる!!』
ラッジストは腕を高く上げて大きく回した。
これは、総員直ちに回避行動に移れ、の合図だ。
『あれは…?4本の…対竜槍…?
あんなの見たことない…』
グリペンは顔を青ざめさせた。
片目に装着した遠見レンズに映るソレが、真っ直ぐ此方に向かって飛んで来ているからだ。
『いきなり攻撃してくるとか、随分とせっかちさんだね~』
ナンシーは迫り来る飛翔体を迎え撃つかの如く、飛竜を全速力で前進させた。
『待て!!ナンシー!!』
ラッジストの声が虚空の空に響いた。
前を行く彼女の小さな背中に、二度と追いつけなくなる…、そんな予感がラッジストの胸を騒がせたのだ。
タワン生まれタワン育ちのナンシーは、まさに天真爛漫という言葉が似合う、そんな女性だった。
飛竜騎士としての腕も一級品で、ラッジストは赴任初日にして、彼女には今まで本国で培ってきた経験が全く通用しないということを思い知らされ、そのプライドは粉々に砕かれた。
『私以外の天才を初めて見たわ』
姉のクフィールがそう言っていたのにはラッジストも同感だった。
姉の飛竜さばきを、まるで合わせ鏡のようにトレースするナンシーの姿は、いつしかラッジストに嫉妬心と恋心を芽生えさせていた。
『ラッジストちゃん!
私に練習試合で勝ち越したら、結婚してあげるよ~』
そんなラッジストの胸の内を知ってか知らずか、ナンシーはよくそう言って笑っていた。
真っ青の空の中、気がつけばナンシーの背中は、もう遥か遠くになっていた。
ナンシーは自分の方へと迫り来る1つの飛翔体に狙いを絞っている。
『速っ…!』
あまりのスピードに危機を感じたナンシーは、瞬時に飛竜を斜め下へ滑空させ、間一髪のところで飛翔体をかわした。
『ほへ~長い筒…?
まあ、速いだけなら当たりはしないよね~』
通り過ぎてゆく見たこともない形の飛翔体を横目に、ナンシーは先の海に聳える灰色の巨船へと飛竜を進ませる。
とにかく敵の攻撃を自分に引き付けながら、急所目掛けて対竜槍を叩き込むことだけを、彼女は考えていた。
『まだ少し遠いかな~…っ!?』
突然ナンシーは、戦慄をおびた寒気に襲われた。
死の引力に導かれるように振り返るその瞳に映ったのは、さっき通り過ぎていった飛翔体が空中で弧を描き再びこちらに頭を向けている姿だった。
『ナンシーーー!!』
遠くでラッジストの声が聞こえたような気がした。
『嘘…何で戻ってくるの…?』
ナンシーは慌てて飛竜を上に逃がすが、まるで意思を持ったかのように自分の方へと的確に吸い寄せられてくる飛翔体に成す術がなく、その頬には既に死を覚悟した涙が伝っていた。
『ああ…ごめんね…
結婚…できなくなっちゃったや…』
直撃間近、最期にナンシーの瞼に浮かんだのは、不器用で優しいラッジストの笑顔だった。
0
あなたにおすすめの小説
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる
春野オカリナ
恋愛
初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。
それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。
囚人の名は『イエニー・フラウ』
彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。
その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。
しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。
人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。
その手記の内容とは…
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる