Al戦艦と異世界ドラゴン

やるふ

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意思を持つ飛翔体

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『なっ…!?あんなものが海に浮くのか…?』

その巨大な船を初めて見た見た時に、ラッジストは全身に恐怖が駆け巡るのをハッキリと感じた。
それこそ正直、グリペンからの報告を聞いた時に退却を選んでおくべきだったと後悔するほどに…。

『ありゃ~大きいね~。
あれ沈めるには対竜槍何本いるかな~』

そんな呑気なことを言っていたナンシーだが、次の瞬間に表情が一変した。

『ラッジストちゃん!
何か来るよ!』

『分かってる!!』

ラッジストは腕を高く上げて大きく回した。
これは、総員直ちに回避行動に移れ、の合図だ。

『あれは…?4本の…対竜槍…?
あんなの見たことない…』

グリペンは顔を青ざめさせた。
片目に装着した遠見レンズに映るソレが、真っ直ぐ此方に向かって飛んで来ているからだ。

『いきなり攻撃してくるとか、随分とせっかちさんだね~』

ナンシーは迫り来る飛翔体を迎え撃つかの如く、飛竜を全速力で前進させた。

『待て!!ナンシー!!』

ラッジストの声が虚空の空に響いた。

前を行く彼女の小さな背中に、二度と追いつけなくなる…、そんな予感がラッジストの胸を騒がせたのだ。

タワン生まれタワン育ちのナンシーは、まさに天真爛漫という言葉が似合う、そんな女性だった。

飛竜騎士としての腕も一級品で、ラッジストは赴任初日にして、彼女には今まで本国で培ってきた経験が全く通用しないということを思い知らされ、そのプライドは粉々に砕かれた。

『私以外の天才を初めて見たわ』

姉のクフィールがそう言っていたのにはラッジストも同感だった。

姉の飛竜さばきを、まるで合わせ鏡のようにトレースするナンシーの姿は、いつしかラッジストに嫉妬心と恋心を芽生えさせていた。

『ラッジストちゃん!
私に練習試合で勝ち越したら、結婚してあげるよ~』

そんなラッジストの胸の内を知ってか知らずか、ナンシーはよくそう言って笑っていた。



真っ青の空の中、気がつけばナンシーの背中は、もう遥か遠くになっていた。


ナンシーは自分の方へと迫り来る1つの飛翔体に狙いを絞っている。

『速っ…!』

あまりのスピードに危機を感じたナンシーは、瞬時に飛竜を斜め下へ滑空させ、間一髪のところで飛翔体をかわした。

『ほへ~長い筒…?
まあ、速いだけなら当たりはしないよね~』

通り過ぎてゆく見たこともない形の飛翔体を横目に、ナンシーは先の海に聳える灰色の巨船へと飛竜を進ませる。

とにかく敵の攻撃を自分に引き付けながら、急所目掛けて対竜槍を叩き込むことだけを、彼女は考えていた。

『まだ少し遠いかな~…っ!?』

突然ナンシーは、戦慄をおびた寒気に襲われた。

死の引力に導かれるように振り返るその瞳に映ったのは、さっき通り過ぎていった飛翔体が空中で弧を描き再びこちらに頭を向けている姿だった。

『ナンシーーー!!』

遠くでラッジストの声が聞こえたような気がした。

『嘘…何で戻ってくるの…?』

ナンシーは慌てて飛竜を上に逃がすが、まるで意思を持ったかのように自分の方へと的確に吸い寄せられてくる飛翔体に成す術がなく、その頬には既に死を覚悟した涙が伝っていた。

『ああ…ごめんね…
結婚…できなくなっちゃったや…』

直撃間近、最期にナンシーの瞼に浮かんだのは、不器用で優しいラッジストの笑顔だった。











    
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