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酒場にて
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『で…、どう思ってるの?』
ウィスキーの入ったグラスをテーブルに置いたクフィールは、酔いの回った気持ち良さそうな表情でダンイルを見た。
『は?どうって、何が?』
質問の意味が分からず、ダンイルは頬張ろうとしていたチーズピザを皿に戻す。
丘で飲んでいた二人だが、タワンの小さな街に唯一あるこの酒場に場所を移していた。
夜は住人や軍人たちで賑わう店内は、まだ昼間ということもあり人影はまばらだ。
『何がって、グリペンのことに決まってるでしょー』
クフィールはグラスの氷を指先で遊ばせながら微笑んでいる。
『グリペン?グリペンがどうかしたのか?』
『だーかーらー…。
よく、飛竜小屋にやって来てるじゃない』
相変わらず質問の意図が分からず、ダンイルは困ったように眉をひそめた。
『飛竜小屋?ああ、そうだな。
アイツは、えらく飛竜が好きみたいでな、よく世話するのを手伝ってくれるんだよ。
全く、若いのに感心だよグリペンは…』
ダンイルは、そう言ってチーズピザにかぶりついた。
『ダンイル、貴方ってホント飛竜の事以外は恐ろしく鈍感なのね』
『どういう意味だ?』
クフィールの呆れた様子に、ダンイルがピザをモグモグしながら訊く。
『グリペンが好きなのは、飛竜の世話なんかじゃなくて…貴方の事よ。ダンイル』
『ぶふぉ!!』
『ちょっと…汚ないわねー』
ピザを吹き出して噎せているダンイルを見て、クフィールが可笑しそうに口許を手で隠した。
『…たく、オジサンをからかうんじゃねぇよ隊長。
グリペンは20歳で、俺は36だ。
こんな髭面のオヤジを好きになるわけねぇだろ。
俺からしたって、可愛い妹って感じだ』
ダンイルは胸を拳で小刻みに叩きながらビール瓶に口を添えた。
『ふーん…。
まだ別れた奥さんの事を忘れられないの?』
数年前までダンイルには4つ年下の妻がいた。
ダンイルの実家の近くにある花屋の娘で、*ロサード*という名の気の強い女性だ。
幼少期から仲が良かった二人が、お互いを異性として意識し出した時くらいに、ダンイルの方から結婚を求めたのだった。
『忘れられないも何も…家が近いから毎朝のように顔を合わせてるぜ』
ボサボサの髪を掻きながらボヤくダンイルの様子を、クフィールが面白がっているところ、その席に一人の男が静かに近寄ってきた。
『あら、*セバス*じゃない。
どうしたの?』
そこに立っていた黒服の男は、クフィールとラッジストが住む屋敷に仕えている執事のセバスだった。
クフィールが物心ついた時には既に傍におり、姉弟とも今までずっと身の回りの世話をしてもらっているのだが、白髪に白髭のその顔は、その頃から少しも変わっていないように思える。
『御坊っちゃまが』
セバスはそれだけを言うと、クフィールを見つめた。
その瞳は、どこか虚空の色をおびている。
『ラッジストが?
ああ、何?ドラゴンは見つけたの?それで、私に基地に帰って来いって?』
セバスの言う*御坊っちゃま*とはラッジストの事で、クフィールの事は*御嬢様*だ。
『御嬢様、御坊っちゃまが』
再び、同じ言葉を繰り返したセバスのただならぬ雰囲気に、ダンイルが瓶から口を離した、その時…。
酒場へと走り込んで来た一人の軍人が、クフィールとダンイルを見つけるなり大声で叫んだ。
『隊長!ダンイル様!
緊急事態です!
直ちに基地へとお戻りください!!』
ウィスキーの入ったグラスをテーブルに置いたクフィールは、酔いの回った気持ち良さそうな表情でダンイルを見た。
『は?どうって、何が?』
質問の意味が分からず、ダンイルは頬張ろうとしていたチーズピザを皿に戻す。
丘で飲んでいた二人だが、タワンの小さな街に唯一あるこの酒場に場所を移していた。
夜は住人や軍人たちで賑わう店内は、まだ昼間ということもあり人影はまばらだ。
『何がって、グリペンのことに決まってるでしょー』
クフィールはグラスの氷を指先で遊ばせながら微笑んでいる。
『グリペン?グリペンがどうかしたのか?』
『だーかーらー…。
よく、飛竜小屋にやって来てるじゃない』
相変わらず質問の意図が分からず、ダンイルは困ったように眉をひそめた。
『飛竜小屋?ああ、そうだな。
アイツは、えらく飛竜が好きみたいでな、よく世話するのを手伝ってくれるんだよ。
全く、若いのに感心だよグリペンは…』
ダンイルは、そう言ってチーズピザにかぶりついた。
『ダンイル、貴方ってホント飛竜の事以外は恐ろしく鈍感なのね』
『どういう意味だ?』
クフィールの呆れた様子に、ダンイルがピザをモグモグしながら訊く。
『グリペンが好きなのは、飛竜の世話なんかじゃなくて…貴方の事よ。ダンイル』
『ぶふぉ!!』
『ちょっと…汚ないわねー』
ピザを吹き出して噎せているダンイルを見て、クフィールが可笑しそうに口許を手で隠した。
『…たく、オジサンをからかうんじゃねぇよ隊長。
グリペンは20歳で、俺は36だ。
こんな髭面のオヤジを好きになるわけねぇだろ。
俺からしたって、可愛い妹って感じだ』
ダンイルは胸を拳で小刻みに叩きながらビール瓶に口を添えた。
『ふーん…。
まだ別れた奥さんの事を忘れられないの?』
数年前までダンイルには4つ年下の妻がいた。
ダンイルの実家の近くにある花屋の娘で、*ロサード*という名の気の強い女性だ。
幼少期から仲が良かった二人が、お互いを異性として意識し出した時くらいに、ダンイルの方から結婚を求めたのだった。
『忘れられないも何も…家が近いから毎朝のように顔を合わせてるぜ』
ボサボサの髪を掻きながらボヤくダンイルの様子を、クフィールが面白がっているところ、その席に一人の男が静かに近寄ってきた。
『あら、*セバス*じゃない。
どうしたの?』
そこに立っていた黒服の男は、クフィールとラッジストが住む屋敷に仕えている執事のセバスだった。
クフィールが物心ついた時には既に傍におり、姉弟とも今までずっと身の回りの世話をしてもらっているのだが、白髪に白髭のその顔は、その頃から少しも変わっていないように思える。
『御坊っちゃまが』
セバスはそれだけを言うと、クフィールを見つめた。
その瞳は、どこか虚空の色をおびている。
『ラッジストが?
ああ、何?ドラゴンは見つけたの?それで、私に基地に帰って来いって?』
セバスの言う*御坊っちゃま*とはラッジストの事で、クフィールの事は*御嬢様*だ。
『御嬢様、御坊っちゃまが』
再び、同じ言葉を繰り返したセバスのただならぬ雰囲気に、ダンイルが瓶から口を離した、その時…。
酒場へと走り込んで来た一人の軍人が、クフィールとダンイルを見つけるなり大声で叫んだ。
『隊長!ダンイル様!
緊急事態です!
直ちに基地へとお戻りください!!』
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