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地獄の楽園島
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木々の隙間から差し込む陽光を見上げるグリペンは、先程まで、あんなに近かったはずの遠く高い空に、その瞳を潤ませた。
顔を下げ、伝う涙に手の甲を擦りつけると目の前で地に伏せている飛竜と、その巨体に寄り掛かるようにして瞼を閉じているラッジストを見つめる。
あっという間の出来事だった…。
あの時、ナンシーと飛竜が煙に包まれ欠片が海に落ちるのを目にしたラッジストは激昂し、単騎であの巨船へと向かいだしたのだ。
グリペンはそれを止める為にラッジストの後を追ったが、既にラッジストが乗る飛竜は巨船からの攻撃で片翼を失っていた。
グリペンは飛竜をはしらせ、転落したラッジストを空中でキャッチし、とにかく無我夢中、闇雲のままジグザグに飛竜を上下させて攻撃から必死に逃れた。
それでも、グリペンの飛竜は重傷を負わされこの島に降り立って直ぐに息絶えた。
ずっと意識がないラッジストの方もかなり重傷で、左肘から先は千切れグリペンが施した応急処置の包帯も、もう真っ赤に染まっている。
『早く、病院に連れて行かないと…。でも、この島は…』
グリペンは、何とか辿り着けたここが、*地獄の楽園島*と呼ばれ恐れられている島だということを知っていた。
豊かな緑と希少生物で溢れる、一見したら楽園のように美しい島だが、この地に古くから住む部族は、凶暴かつ残忍と言われており、過去にシーナ帝国が島を手に入れようと軍隊を派遣したこともあったが、ジャングルを知り尽くした部族相手に戦闘は難航し泥沼化…。
ついには、シーナ帝国軍は全軍撤退を余儀無くされたのだ。
その一件から、この島に手を出す国は無くなり、どこの国にも属さない楽園の孤島となった。
『奴等に見つかったら殺される…。
どこか、隠れる場所を探さないと…』
グリペンはラッジストを連れて行く為に、その腕を自分の肩に回した瞬間、周囲の気配に気がついた。
『そんな…』
グリペンは驚愕した表情で周りを見渡した。
いつの間にか、数人の者たちに囲まれていたのだ。
『帝国ノ飛竜兵カ…』
『女ダ…』
不気味な木製の仮面を付け動物の毛皮を身に纏う男たちが、茂みや木の陰から姿を現す。
全員、手には木と石で作った武器を持っており、その姿は間違いなくこの島に住む部族たちだった。
『ひぃ…っ』
グリペンは、恐怖にひきつる表情で腰の短剣を抜く。
『女トハイエ、流石ハ戦士…。
勇敢ダナ』
その中でも一際体の大きな男が前に出てきた。
仮面は鮮やかな色彩で模様を描かれ、毛皮も他の者たちとは色が違う。
『手向カエバ殺ス。
モチロン、ソノ怪我ヲシテイル男モナ…』
巨体の男が槍をグリペンへと向けて言う。
グリペンは剣術は得意な方ではないし、ましてや相手は戦闘民族十数人…。
明らかにグリペンに勝ち目はない状況だ。
『お…お願いします…。
僕はどうなっても構いませんから…この人だけは、どうか助けてください…』
顔を涙でグシャグシャにしながら、グリペンはその場に膝間づいた。
『ホウ…仲間ノ為二、ソノ身ヲ差シ出スカ…。
オマエナラ、サゾ勇敢ナ子ヲ産メルデアロウ』
『子を…産める…?』
グリペンは我が耳を疑う言葉に、血の気がひいたような顔で巨体の男を見上げた。
男は仮面越しに目を細め、グリペンの肢体へと視線を這わせながら告げる。
『ソウダ…。
オマエハ、コレカラ、我ガ部族ノ男タチト交ワリ、デキルダケ多クノ子ヲ産ミ続ケロ。
ソウスレバ、ソノ男ノ、手当ト命ノ保障ヲ約束シヨウ…』
顔を下げ、伝う涙に手の甲を擦りつけると目の前で地に伏せている飛竜と、その巨体に寄り掛かるようにして瞼を閉じているラッジストを見つめる。
あっという間の出来事だった…。
あの時、ナンシーと飛竜が煙に包まれ欠片が海に落ちるのを目にしたラッジストは激昂し、単騎であの巨船へと向かいだしたのだ。
グリペンはそれを止める為にラッジストの後を追ったが、既にラッジストが乗る飛竜は巨船からの攻撃で片翼を失っていた。
グリペンは飛竜をはしらせ、転落したラッジストを空中でキャッチし、とにかく無我夢中、闇雲のままジグザグに飛竜を上下させて攻撃から必死に逃れた。
それでも、グリペンの飛竜は重傷を負わされこの島に降り立って直ぐに息絶えた。
ずっと意識がないラッジストの方もかなり重傷で、左肘から先は千切れグリペンが施した応急処置の包帯も、もう真っ赤に染まっている。
『早く、病院に連れて行かないと…。でも、この島は…』
グリペンは、何とか辿り着けたここが、*地獄の楽園島*と呼ばれ恐れられている島だということを知っていた。
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その一件から、この島に手を出す国は無くなり、どこの国にも属さない楽園の孤島となった。
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どこか、隠れる場所を探さないと…』
グリペンはラッジストを連れて行く為に、その腕を自分の肩に回した瞬間、周囲の気配に気がついた。
『そんな…』
グリペンは驚愕した表情で周りを見渡した。
いつの間にか、数人の者たちに囲まれていたのだ。
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グリペンは、恐怖にひきつる表情で腰の短剣を抜く。
『女トハイエ、流石ハ戦士…。
勇敢ダナ』
その中でも一際体の大きな男が前に出てきた。
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『手向カエバ殺ス。
モチロン、ソノ怪我ヲシテイル男モナ…』
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グリペンは剣術は得意な方ではないし、ましてや相手は戦闘民族十数人…。
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『お…お願いします…。
僕はどうなっても構いませんから…この人だけは、どうか助けてください…』
顔を涙でグシャグシャにしながら、グリペンはその場に膝間づいた。
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