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ズムワルド
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『ようこそタワンへ。
飛竜雷撃隊隊長の*ズムワルド*さん…』
タワン基地に居る飛竜よりも一際巨大な黒い飛竜で基地に降り立った黒づくめの集団の一番前に立つ男を、クフィールが出迎えた。
『ご苦労。
貴様がこの基地の責任者か?』
『ええ。クフィールと申します。
この基地で隊長をやってる者です』
ズムワルドはフードから覗かせる鋭い眼光にクフィールを映す。
『我々との演習は初めてだったな。
せいぜい足を引っ張らないことだ』
『申し訳ないのですが、演習は中止となりました。
代わりに実戦へと出向いてもらいます』
『どういうことだ?』
クフィールの横をスタスタと通り過ぎようとしていたズムワルドが足を止める。
『詳しい作戦内容は、奥の部屋でウェイビー様を交えてお話しします。因みに、向かう場所は地獄の楽園島と呼ばれている、あの島です』
『地獄の楽園島だと…?』
ドラゴンも持たず軍隊ですらない部族を相手に撤退させられるという、
かつて、その島でシーナ帝国軍が付けられた汚点は、飛竜雷撃隊であるズムワルドも教えられ知っていた。
『そういえば、シェリラは来ているんですか?
確か、雷撃隊のメンバーだと思うのですが』
ふと、クフィールが思い出したようにピシッと整列している雷撃隊へと視線をやった。
13名いるが、皆同じく全身黒一色で、顔どころか性別すら分からない。
『ほう、シェリラを知っているのか?
おい、シェリラ前へ』
ズムワルドは振り返ると部下たちへと声を投げた。
すると、その中から1人の隊員が前に出てきた。
『貴女がシェリラ…?』
クフィールは、その人物に近づくと、俯き加減のフードの中を覗き込む。
だが、その顔を見るなりクフィールは、ズムワルドへと振り返った。
『これは…一体どうゆうことですか…?』
ズムワルドがシェリラと呼んだはずのその人物は、顔中を包帯で隠し、見えているのは輝きを失った虚ろな瞳くらいだったのだ。
『包帯をとらせるか?
だが、顔は原形が分からない程に焼け爛れているから、見ても分からんと思うがな』
『火傷…?何があったの?』
ズムワルドの言葉に、クフィールはシェリラへと向き直って訊く。
『シェリラ?私よ、覚えてる?』
無言で一点を見つめたまま立ち尽くしているシェリラに、再度声を掛けるが、彼女はうんともすんとも言わない。
『シェリラは精神をやってしまっていて口が利けん。
だが、任務遂行に支障はないから心配するな』
ズムワルドは更に続ける。
『まず、入隊初日に3週間の山岳訓練に放り込んだ。
極限状態の男たちの中に女が一人入ったらどうなるかなど、想像に容易い。
だが、それもまた訓練の一環、男たちには好き勝手にやらせた。
案の定、シェリラは三日目に部隊の訓練地から逃走したが、鍛錬された雷撃隊から逃げ切れるわけもなく、捕らえた後見せしめとして顔を焼いてやった。
逃げれば拷問。自ら命を絶てば家族を皆殺し…これは、雷撃隊の掟なのだ』
『掟…?
貴方は、部下を何だと思ってるんですか?』
クフィールはズムワルドへと詰め寄った。
『貴様の生温い尺度で我ら雷撃隊を測るな。
シェリラを含め、コイツらは部下ではなく俺の一部だ。
飛竜雷撃隊は帝国の為に在らず、主である俺の為に戦うのだ』
ズムワルドはそう静かに告げると、切れ長の目を更に細めたのだった。
飛竜雷撃隊隊長の*ズムワルド*さん…』
タワン基地に居る飛竜よりも一際巨大な黒い飛竜で基地に降り立った黒づくめの集団の一番前に立つ男を、クフィールが出迎えた。
『ご苦労。
貴様がこの基地の責任者か?』
『ええ。クフィールと申します。
この基地で隊長をやってる者です』
ズムワルドはフードから覗かせる鋭い眼光にクフィールを映す。
『我々との演習は初めてだったな。
せいぜい足を引っ張らないことだ』
『申し訳ないのですが、演習は中止となりました。
代わりに実戦へと出向いてもらいます』
『どういうことだ?』
クフィールの横をスタスタと通り過ぎようとしていたズムワルドが足を止める。
『詳しい作戦内容は、奥の部屋でウェイビー様を交えてお話しします。因みに、向かう場所は地獄の楽園島と呼ばれている、あの島です』
『地獄の楽園島だと…?』
ドラゴンも持たず軍隊ですらない部族を相手に撤退させられるという、
かつて、その島でシーナ帝国軍が付けられた汚点は、飛竜雷撃隊であるズムワルドも教えられ知っていた。
『そういえば、シェリラは来ているんですか?
確か、雷撃隊のメンバーだと思うのですが』
ふと、クフィールが思い出したようにピシッと整列している雷撃隊へと視線をやった。
13名いるが、皆同じく全身黒一色で、顔どころか性別すら分からない。
『ほう、シェリラを知っているのか?
おい、シェリラ前へ』
ズムワルドは振り返ると部下たちへと声を投げた。
すると、その中から1人の隊員が前に出てきた。
『貴女がシェリラ…?』
クフィールは、その人物に近づくと、俯き加減のフードの中を覗き込む。
だが、その顔を見るなりクフィールは、ズムワルドへと振り返った。
『これは…一体どうゆうことですか…?』
ズムワルドがシェリラと呼んだはずのその人物は、顔中を包帯で隠し、見えているのは輝きを失った虚ろな瞳くらいだったのだ。
『包帯をとらせるか?
だが、顔は原形が分からない程に焼け爛れているから、見ても分からんと思うがな』
『火傷…?何があったの?』
ズムワルドの言葉に、クフィールはシェリラへと向き直って訊く。
『シェリラ?私よ、覚えてる?』
無言で一点を見つめたまま立ち尽くしているシェリラに、再度声を掛けるが、彼女はうんともすんとも言わない。
『シェリラは精神をやってしまっていて口が利けん。
だが、任務遂行に支障はないから心配するな』
ズムワルドは更に続ける。
『まず、入隊初日に3週間の山岳訓練に放り込んだ。
極限状態の男たちの中に女が一人入ったらどうなるかなど、想像に容易い。
だが、それもまた訓練の一環、男たちには好き勝手にやらせた。
案の定、シェリラは三日目に部隊の訓練地から逃走したが、鍛錬された雷撃隊から逃げ切れるわけもなく、捕らえた後見せしめとして顔を焼いてやった。
逃げれば拷問。自ら命を絶てば家族を皆殺し…これは、雷撃隊の掟なのだ』
『掟…?
貴方は、部下を何だと思ってるんですか?』
クフィールはズムワルドへと詰め寄った。
『貴様の生温い尺度で我ら雷撃隊を測るな。
シェリラを含め、コイツらは部下ではなく俺の一部だ。
飛竜雷撃隊は帝国の為に在らず、主である俺の為に戦うのだ』
ズムワルドはそう静かに告げると、切れ長の目を更に細めたのだった。
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