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緩衝地帯
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『エリー、話とは何だ?』
紅蛍に呼ばれて、エリーが居る部屋を訪れたグレンダの目にまず飛び込んできたのは、テーブルの上に幾つも置かれているレトルト食品の空パックだった。
『これ、食べました?
ベニボタルさんの世界の食べ物って、凄く美味しいんですね』
エリーはそう言いながら、また一つ空にしたパックをテーブルへと追加した。
『それだけ食欲があるってことは、いつものお前に戻ったってことだな』
グレンダは向かいのソファーに腰を降ろすと、殺風景な周りへと視線を動かした。
『団長、先程は取り乱して失礼しました。
もう、あんなことにはなりませんので、ここから出して貰えませんか?』
『それが、俺を呼んだ理由か?
駄目だ。シャーハンに着くまで、ここに居ろ』
ある程度、予想はしていたエリーの申し出にグレンダは直ぐに首を横に振る。
『聞きましたよ団長。
この船を、シャーハンの港に入れ軍事同盟を結ばせるおつもりだとか…』
予想していたグレンダの返事を皮切りに、エリーは本題を持ち出した。
『我ら警備団を国まで送ってくれるのだから、入港は当然だろう。
その後の事は、ベニボタル殿とシャーハン国政府が決めることだ』
『そんなこと、元老院が許しませんよ?』
エリーはテーブルに両手をつき、身を乗り出すようにしてグレンダを見つめた。
『そんなこと、とは入港のことを言ってるのか?
それとも…軍事同盟のことか?』
『どちらもです!』
思わず声を上擦らせてしまったエリーは、慌てるようにソファーへと腰を降ろす。
『入港の許可を下ろすかどうかは港警備長が判断し、外交や有事に於ける最終判断は、皇女リノハル様がなさる。
警備団員や元老院はそれに従うだけ…違うか?』
グレンダの言葉に、エリーは唇を噛み俯いた。
シャーハン国は、破竜保有国であるユーナイト王国と隣接している小国だ。
シャーハンは、かの破竜大戦を引き起こした元凶国家と云われ、戦後その過ちを二度と起こさぬように竜を保有しないことを決め、平和竜クージョ神への信仰を推進する宗教国家として贖罪の歴史を重ねている。
憲法上は皇女リノハルが国家元首だが、内政や外交の殆どを元老院という組織に属している6人の男たちが牛耳っている状態だ。
緑豊かで農業と漁業が盛んな国だが、海の向こうにはシーナ帝国の大陸が広がっており、世界地図を見ればシャーハンは、ユーナイトとシーナという二つの竜軍大国に挟まれていことがよく分かる。
『この船は、シーナ帝国軍に攻撃をして、兵と竜を殺しているんですよ…?
帝国からしたら、完全にテロリストですよ…?
そんな船を港に招き入れ同盟なんて結んだら、それは即、宣戦布告と捉えられますよ…?』
エリーの声は震えており、怒りと恐怖が混ざり合ったような瞳にグレンダを映している。
『シーナ帝国がシャーハンへ侵攻すれば、隣のユーナイトも陸竜軍をシャーハン領内に展開させるだろうな。
破竜保有国同士の戦争は、どちらも避けたいはずだから、シャーハンに対してどちらも安易な軍事行動はとれない。
戦後、シャーハンが平和を謳歌できているのは、この*緩衝地帯*としての役割を両大国が認め必要としているからだということくらい、エリーお前も知っているだろう』
そして最後にグレンダは、念を押すように付け加えた。
『決して、クジョー神の御加護などではなかった…ということだ』
紅蛍に呼ばれて、エリーが居る部屋を訪れたグレンダの目にまず飛び込んできたのは、テーブルの上に幾つも置かれているレトルト食品の空パックだった。
『これ、食べました?
ベニボタルさんの世界の食べ物って、凄く美味しいんですね』
エリーはそう言いながら、また一つ空にしたパックをテーブルへと追加した。
『それだけ食欲があるってことは、いつものお前に戻ったってことだな』
グレンダは向かいのソファーに腰を降ろすと、殺風景な周りへと視線を動かした。
『団長、先程は取り乱して失礼しました。
もう、あんなことにはなりませんので、ここから出して貰えませんか?』
『それが、俺を呼んだ理由か?
駄目だ。シャーハンに着くまで、ここに居ろ』
ある程度、予想はしていたエリーの申し出にグレンダは直ぐに首を横に振る。
『聞きましたよ団長。
この船を、シャーハンの港に入れ軍事同盟を結ばせるおつもりだとか…』
予想していたグレンダの返事を皮切りに、エリーは本題を持ち出した。
『我ら警備団を国まで送ってくれるのだから、入港は当然だろう。
その後の事は、ベニボタル殿とシャーハン国政府が決めることだ』
『そんなこと、元老院が許しませんよ?』
エリーはテーブルに両手をつき、身を乗り出すようにしてグレンダを見つめた。
『そんなこと、とは入港のことを言ってるのか?
それとも…軍事同盟のことか?』
『どちらもです!』
思わず声を上擦らせてしまったエリーは、慌てるようにソファーへと腰を降ろす。
『入港の許可を下ろすかどうかは港警備長が判断し、外交や有事に於ける最終判断は、皇女リノハル様がなさる。
警備団員や元老院はそれに従うだけ…違うか?』
グレンダの言葉に、エリーは唇を噛み俯いた。
シャーハン国は、破竜保有国であるユーナイト王国と隣接している小国だ。
シャーハンは、かの破竜大戦を引き起こした元凶国家と云われ、戦後その過ちを二度と起こさぬように竜を保有しないことを決め、平和竜クージョ神への信仰を推進する宗教国家として贖罪の歴史を重ねている。
憲法上は皇女リノハルが国家元首だが、内政や外交の殆どを元老院という組織に属している6人の男たちが牛耳っている状態だ。
緑豊かで農業と漁業が盛んな国だが、海の向こうにはシーナ帝国の大陸が広がっており、世界地図を見ればシャーハンは、ユーナイトとシーナという二つの竜軍大国に挟まれていことがよく分かる。
『この船は、シーナ帝国軍に攻撃をして、兵と竜を殺しているんですよ…?
帝国からしたら、完全にテロリストですよ…?
そんな船を港に招き入れ同盟なんて結んだら、それは即、宣戦布告と捉えられますよ…?』
エリーの声は震えており、怒りと恐怖が混ざり合ったような瞳にグレンダを映している。
『シーナ帝国がシャーハンへ侵攻すれば、隣のユーナイトも陸竜軍をシャーハン領内に展開させるだろうな。
破竜保有国同士の戦争は、どちらも避けたいはずだから、シャーハンに対してどちらも安易な軍事行動はとれない。
戦後、シャーハンが平和を謳歌できているのは、この*緩衝地帯*としての役割を両大国が認め必要としているからだということくらい、エリーお前も知っているだろう』
そして最後にグレンダは、念を押すように付け加えた。
『決して、クジョー神の御加護などではなかった…ということだ』
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