【完結】ディープキス

コハラ

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3話

缶詰になります【3】

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「期待なんかしてない。眼鏡外さないでよ」
「なぜ?」
「だって……」

 眼鏡を外す時はキスをされるって知ってるから。
 とは、さすがに口に出せない。

 森山君がベッドから立ち上がって、こっちに来る。
 それから同じベッドに横になって、こっちを見た。
 至近距離で目が合い、鼓動が早くなる。

「近いって」

 横になったままベッドの端に逃げるけど、大して距離は変わらない。

「裸眼だと春川さんの顔がよく見えないんですよ」
「眼鏡かければいいじゃない」
「キスするのに邪魔なんで」
「な、何を言い出すの」
「ダメですか?」
「ダメに決まってるでしょ!」
「どうして?グラッと来るぐらい気持ちいいんでしょ?春川さんにとっても得になるじゃないですか」
「損得の問題じゃないの。こういうのは気持ちの問題なの。森山君は私の事、好きじゃないし、私だって」
「好きな人がいるって言いたいんでしょ?」
 図星だったので動揺した。
「な、何の事?」
「知ってるんですよ。春川さんが誰を好きか」
 森山君が意地悪く微笑んだ。
「何言ってるのよ」
「夏目さんの事が好きなんでしょ?」
 なんで知ってるの?
「なっ、そんな訳ないじゃない。私が社長を好きだなんて」
 森山君がクスクスと笑った。
「バレバレですよ」
 横になったままポンポンと森山君に頭を撫でられた。
 どうやら誤魔化せないらしい。
「そんなにバレバレ?」
「夏目さんの前では春川さん、女の子になってますから」
「普通にしてるつもりなんだけど」
 森山君が大笑いした。
「勘のいい人だったら絶対にわかりますよ」
「じゃあ、会社のみんなにバレてるの?」
「わかる人はわかるでしょうね」
 恥ずかしい。今度どういう顔をして出社すればいいの。
「でも、夏目さんは気づいてなさそうですよ」
「良かった」
 この際、夏目さんにさえ気持ちがバレなければいい。
「なんで気持ちを隠すんですか?」
「なんでって、気まずくなるのが嫌なの。夏目さんが私を好きになる事絶対にないもん」
「そんなに自分に自信がないんですか?」
「自信があったら10年も彼氏がいないって事になってない」
「確かに」
 森山君がまた可笑しそうに笑った。
「私の恋愛経験って大学生で止まってるのよね。これじゃあいけないなって思う事もあるけど、夏目さんに好きだって言う勇気もないし」
「キスしてる時の春川さん、物凄く色っぽいですよ」
「急に、何を言い出すのよ」
「だって全然、自分の魅力をわかってないようだから」
「魅力?」
「春川さん、自分で思ってるよりいい女ですよ」
「やめてよ」

 恥ずかしくて、森山君の顔が見れなくなった。

「春川さん」

 優しい声で呼ばれた。
 森山君が起き上がって、覆いかぶさってくる。
 そしてそのまま唇が重なった。
 重なった瞬間、頭が溶ける。
 柔らかな唇が器用に動いて、私の中に入ってくる。
 舌が絡んで、どんどんキスが深くなる。
 森山君のディープキスから逃げられない。

「ダメだって、ダメ……」

 抵抗するけど、全く力は入らない。

「その顔が堪らないんです」

 唇を離して、じっと森山君がこっちを見下ろす。

「こんなに魅力的なのに」

 森山君の人さし指がそっと私の唇を撫でる。

「今すぐ欲しいって思うぐらい」
「誘惑しないで。森山君のキスに弱いんだから」
「誘惑したくなります。でも楽しみは後にとっておきますから」

 森山君がクスリと笑って、ベッドから起き上がった。

「仕事しますか」

 その言葉にほっとした。
 だけど、楽しみは後にとって置くってどういう事?
 やっぱり襲う気?
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