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3話
缶詰になります【4】
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「始めますよ」
眼鏡をかけた森山君が険しい表情を浮かべた。
机にノートパソコン2台と、資料を並べて執筆作業を始めた。
メインは森山君が書いて、年下キャラと交わる胸キュンシーンは私が手を入れた。
「壁ドンって、もう古くないですか?」
私の書いたシーンを見て森山君が言った。
「いいの。この場合は壁ドンで」
「いやー、ないですよ」
「じゃあ、床ドンにする。ヒロインがこけて、年下君の上に覆いかぶさるのはどう?」
「さっきの俺たちのベッドシーンとは逆ですね」
「ベッドシーンとか言わない!もう、なんでもイヤらしい方向に持っていくのね」
「イヤらしいと思ってるから、そう聞こえるんですよ。客観的事実を言ってるんです。俺が春川さんの上に覆いかぶさりましたから、逆だと言ってるんです」
「会社だとそういう事言わないのに」
「春川さんと二人きりだから気楽なんです」
「もうっ、二人きりって言うのもダメ」
「敏感ですね」
「敏感になるような事を森山君がするからでしょう」
さっきのキスにまだ胸がドキドキしてる。
「春川さん、顔が真っ赤ですよ。俺の事、好きなんですか?」
「全然好きじゃありません。いーだ」
プッと森山君が笑った。
「そんな事、子どもでも言いませんよ」
「いちいち上げ足取らないで。何書いてたかわからなくなったじゃない」
「そうですか?」
森山君の顔が寄って、同じ画面を覗き込む。
シトラス系のコロンの香りがして、ドキドキする。
なんで一々森山君の気配に反応するんだろう。落ち着け、私。
「床ドンでちゃんと書けてるじゃないですか。さすがプロ」
森山君が頭を撫でてくれた。
乙女ゲームじゃないんだから、そんな胸キュンな事しないで欲しいと思いつつも、ちょっと嬉しい。
「凄く面白いですよ」
おだてるのが上手い。こうやってライターさんのフォローをしてるんだな。
「じゃあ、この後の続きはこっちで書きますね」
「うん」
さっきから森山君にドキドキしてる。調子狂うな。会社で仕事をしている時はそんな事なかったのに。
「森山君、お疲れ様でした」
夜10時。今日の執筆予定だった2話目が書き終わった。
ノートパソコンの電源を落として、立ち上がる。
「どこに行くんですか?」
疲れた顔をした森山君がノートパソコンを抱えた私を見上げた。
「帰るに決まってるでしょ」
「もう帰るんですか」
「明日は朝9時開始ね。それまでゆっくり休んで下さい」
「昼間のキスの続きは?」
「する訳ないでしょ」
「仕事終わりのキス、楽しみにしてたのにな」
人の心を揺らすような冗談はやめて欲しい。
こっちだって疲れてるんだから。
「私はあなたの彼女じゃありませんから」
「確かにそうですね。お疲れ様でした」
*
森山君の部屋を出て、向かい側の自分の部屋に帰った。
シングルベッドにゴロンと横になる。
そのまま靴を脱いで、手足を伸ばした。
解放感に浸る。
本当に疲れた。森山君に翻弄されっぱなしで。
一緒にいるとドキドキするし、顔も熱くなってくるし、まるで恋をしてるみたい。
「恋!」
自分の考えに驚いて起き上がった。
「いやいや、ないない。森山君に恋だなんて」
誰もいないのに、全力で否定をした。
そうしないといけない気がして。
疲れてるな。私。
再びゴロンとベッドに横になった。
もう余計な事は考えずに寝てしまおう。
明日もシナリオ書かないといけないし。
瞼が重くなってくる。
その重さに逆らうのをやめて、目を閉じた時、インターホンが鳴った。
まさか森山君?
眼鏡をかけた森山君が険しい表情を浮かべた。
机にノートパソコン2台と、資料を並べて執筆作業を始めた。
メインは森山君が書いて、年下キャラと交わる胸キュンシーンは私が手を入れた。
「壁ドンって、もう古くないですか?」
私の書いたシーンを見て森山君が言った。
「いいの。この場合は壁ドンで」
「いやー、ないですよ」
「じゃあ、床ドンにする。ヒロインがこけて、年下君の上に覆いかぶさるのはどう?」
「さっきの俺たちのベッドシーンとは逆ですね」
「ベッドシーンとか言わない!もう、なんでもイヤらしい方向に持っていくのね」
「イヤらしいと思ってるから、そう聞こえるんですよ。客観的事実を言ってるんです。俺が春川さんの上に覆いかぶさりましたから、逆だと言ってるんです」
「会社だとそういう事言わないのに」
「春川さんと二人きりだから気楽なんです」
「もうっ、二人きりって言うのもダメ」
「敏感ですね」
「敏感になるような事を森山君がするからでしょう」
さっきのキスにまだ胸がドキドキしてる。
「春川さん、顔が真っ赤ですよ。俺の事、好きなんですか?」
「全然好きじゃありません。いーだ」
プッと森山君が笑った。
「そんな事、子どもでも言いませんよ」
「いちいち上げ足取らないで。何書いてたかわからなくなったじゃない」
「そうですか?」
森山君の顔が寄って、同じ画面を覗き込む。
シトラス系のコロンの香りがして、ドキドキする。
なんで一々森山君の気配に反応するんだろう。落ち着け、私。
「床ドンでちゃんと書けてるじゃないですか。さすがプロ」
森山君が頭を撫でてくれた。
乙女ゲームじゃないんだから、そんな胸キュンな事しないで欲しいと思いつつも、ちょっと嬉しい。
「凄く面白いですよ」
おだてるのが上手い。こうやってライターさんのフォローをしてるんだな。
「じゃあ、この後の続きはこっちで書きますね」
「うん」
さっきから森山君にドキドキしてる。調子狂うな。会社で仕事をしている時はそんな事なかったのに。
「森山君、お疲れ様でした」
夜10時。今日の執筆予定だった2話目が書き終わった。
ノートパソコンの電源を落として、立ち上がる。
「どこに行くんですか?」
疲れた顔をした森山君がノートパソコンを抱えた私を見上げた。
「帰るに決まってるでしょ」
「もう帰るんですか」
「明日は朝9時開始ね。それまでゆっくり休んで下さい」
「昼間のキスの続きは?」
「する訳ないでしょ」
「仕事終わりのキス、楽しみにしてたのにな」
人の心を揺らすような冗談はやめて欲しい。
こっちだって疲れてるんだから。
「私はあなたの彼女じゃありませんから」
「確かにそうですね。お疲れ様でした」
*
森山君の部屋を出て、向かい側の自分の部屋に帰った。
シングルベッドにゴロンと横になる。
そのまま靴を脱いで、手足を伸ばした。
解放感に浸る。
本当に疲れた。森山君に翻弄されっぱなしで。
一緒にいるとドキドキするし、顔も熱くなってくるし、まるで恋をしてるみたい。
「恋!」
自分の考えに驚いて起き上がった。
「いやいや、ないない。森山君に恋だなんて」
誰もいないのに、全力で否定をした。
そうしないといけない気がして。
疲れてるな。私。
再びゴロンとベッドに横になった。
もう余計な事は考えずに寝てしまおう。
明日もシナリオ書かないといけないし。
瞼が重くなってくる。
その重さに逆らうのをやめて、目を閉じた時、インターホンが鳴った。
まさか森山君?
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