【完結】ディープキス

コハラ

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3話

缶詰になります【5】

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 ベッドから起き上がってインターホンに出た。

「お疲れ様です。新井あらいです」
「新井さん?」

 ドアを開けると、今年うちの会社に入って来た新井さんが立っていた。
 手にはレジ袋を持ってる。

「ここ、森山さんの部屋じゃないんですか?」

 マスカラを盛った睫の長いを瞳を新井さんが瞬きさせた。
 甘い香水も香ってくる。
 可愛らしいピンク色のワンピースがよく似合ってる。
 
 デート帰りかな?
 
 会社にいる時もお洒落だけど、今はかなり気合が入ってるように見えた。

「森山君の部屋は向かい側」
「森山さん、いますかね?」
「いると思うよ。今終わった所だから」
「お休みの所だったんですね。失礼しました」
 新井さんはレジ袋から栄養ドリンクを一本取り出して、笑顔でこちらに向けた。

「差し入れです」
「ありがとう」
「では、お休みなさい」

 新井さんがドアを閉めた。
 うん?今のは森山君目当てで来たって事?

「お疲れ様です!新井です」

 ドア越しに明るい新井さんの声が聞えた。
 どうやら森山君の部屋のインターホンを押した所らしい。

「由香ちゃん、来てくれたんだ」

 森山君の声も聞こえた。
 由香ちゃんって呼んでるの? 下の名前で呼ぶ程親しいの?

 はしたないのはわかってるけど、気になって、ドアスコープから外を覗いた。
 森山君と新井さんらしき人物が並んで立ってるのが見える。

「差し入れするって言ったでしょう。早速来ちゃった」
 
 新井さんが甘えるように言った。

「ありがとう。栄養ドリンクがいっぱい入ってる」

 いっぱい?私には一本だけだった。

「チョコレートもある」
「涼君、好きでしょ」

 りょ、涼君!

 何その彼氏みたいな呼び方。まさか付き合ってるの?
 でも、森山君は彼女いないって言ってたしな。

「うん。甘い物は助かるよ。シナリオ書くと特に欲しくなるから。肩も腰も痛くなるし」
「マッサージしようか。私、大学時代、マッサージ屋さんでバイトしてたから上手だよ」
「悪いよ」
「遠慮はいらないって。涼君をサポートする為だったら何でもするから」
「嬉しい事言ってくれるね」
「だっていきなり畑違いの事をさせられて大変だと思うし」
「そうなんだよ。無茶ぶりだろ?」
「うん。無茶ぶりだと思う。しかも休日もなくて、春川さんとホテルに缶詰めだなんて」
「酷い話だよね」

 森山君の相槌に腹が立つ。私を道連れにしたのは自分のくせに。

「なんか由香ちゃんと話してたら元気になった」
「マッサージするよ」
「でも、もう遅い時間だから」
「車で来てるから、終電とか大丈夫だよ」
「ダメだよ。男の部屋に女の子が一人で入るなんて」
「襲いたくなる?」
「うん」
「襲ってもいいよ」

 新井さんの発言にびっくり。
 なんでそんな事言えちゃうの?信じらんない。

「由香ちゃんは面白い事言うね」

 森山君の控えめな笑い声がした。

「でも、今は襲う元気がないな」
「じゃあ、気分転換に散歩でもしない?」
「散歩?」
「ずっとホテルにいたんでしょ?」
「うん」
「近くに大きい公園があるよ。夜風にあたって歩くのは気持ちいいと思わない?」
「それはいいアイデアだね。確かにちょっと歩きたい」
「じゃあ、決まり」
「上着取ってくるよ」
「はーい」

 森山君が一度部屋に戻った。それから出て来て、新井さんと出かけてしまった。
 なんだろう。この面白くない感じ。
 
 それに新井さん、会社の先輩に対してあの親し気な口の利き方は何?
 森山君はそれを全然気にしてないし。
 やっぱり付き合ってるの?彼女がいないってのは嘘?

 でも、新井さんを部屋には入れなかったよね。
 彼女だったら入れるよね。

 彼女がいたら私とラブホにも行かないよね。
 キスも……しないだろうし。

 だけど会社の先輩後輩の仲にしては親し過ぎる気がする。
 
 やっぱり彼女?

 真面目に見えて複数の女性に手を出すタイプ? 
 私は遊ばれたって事?
 
 うーん。どうなってるんだ。森山君は。

 段々腹が立って来た。イライラする。
 森山君に彼女がいようがこっちには関係ないのに。

 こんな事考えてないで、お風呂に入ってさっぱりしよう。
 もう、森山君の事は考えない。

 うん。そうしよう。
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