バイバイ、課長

コハラ

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すれ違い

《1》

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 次の日から一週間有給休暇を取った。

 大学生に見えるよう水色のパーカーとジーパンを着て、顔には黒縁の伊達眼鏡をかけて変装した。 
 向かった先は課長の娘さんが通う大学。
 
 課長の未練は娘さんの結婚だった。自分が亡くなった後、男と娘さんが結婚してしまう事が許せないらしい。
 まずは娘さんの交際相手がどんな人物なのかを探る事から始めた。

 男は沢木という名だった。
 平安文学の研究者で、著作も多数あり、それなりに売れているようだった。
 
 ネットで見た沢木の写真は彫りの深い顔立ちで、女性にモテそう。
 課長が心配するのもわかる気がした。

 こっそりと講義室に入り、一番後ろの席で沢木の講義を聞いた。

「島本くん、窓側の前から二列目で講義を受けているピンク色の服が娘の彩だよ」

 隣に座る課長が耳元で囁いた。
 近いに距離にドキンと心臓が脈打ち、ときめいてしまう。

「島本くん、見えた?」

 切れ長の目に見つめられ、慌てて言われた方に視線を向ける。
 ピンク色の服装の子を見つけた。

 あれが彩さんか。

「はい。見えました」

 頷いた課長は嬉しそうに微笑んで「妻に似て美人なんだ」と自慢するように言った。

 彩さんに視線を向ける表情は愛情に満ちていて、大切に育てて来たんだと感じる。
 課長って愛情深い人なんだ。そんな課長がいいなと思って横顔をこっそり見ていたら、眉間に縦ジワを作り、不機嫌そうな表情を浮かべた。

「今、沢木が彩をじっと見たぞ。なんだあいつ、授業中に! あ、また、あいつ彩をいやらしい目で」

 悔しそうな視線を沢木に向ける課長は今にも殴りにいきそう。

「課長、落ち着いて下さい」

 私から見た沢木は少しもいやらしい目はしてなく、真剣な表情で講義をしていた。
 課長はちょっと過保護かもしれない。
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