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7話
告白<3>
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次の日の昼、坂本が行きたいと言うから凪に行った。
僕が佐藤海人という偽名を使っていることと、凪では倉田と呼ばないことを約束させた。僕はまだ希美に嘘をつこうとしていた。
「佐藤さん、今日はお連れ様がいるんですね」
接客してくれたのは井上さんだ。
僕と坂本は一階の窓際の席に案内してもらった。
「会社の友人です」
井上さんに向かって言うと、坂本が「坂本です」と名乗り、「倉田さんはいますか?」と図々しく聞いた。
井上さんの表情が僅かに曇る。
「実は今日は倉田さんお休みなんです。体調を崩したみたいで」
一人暮らしの希美が心配になる。
「それは残念。お会いしてみたかったな」
「あの、体調が悪いって、どれくらい?」
僕が聞くと井上さんが「三十八度あるって聞いたけど」と答えた。
三十八度も!
居ても立っても居られない。今すぐにでも希美の所に駆け付けたい。
「倉田、落ち着けよ」
坂本が僕に言ったのを聞き、井上さんが眉を顰める。
「え、倉田?」
「あ、いや、その佐藤、落ち着けよ。倉田さんの名前を口にしたから混ざっちゃって。てへ」
坂本が愛想笑いを浮かべて誤魔化すと、井上さんが、そうですかと頷き、テーブルを離れた。
「あれほど言っただろ」
坂本に文句を言うと、「ごめん、ごめん」と軽い調子で言われる。
「それにしても心配だな。奥さん」
僕はメニューを開き、消化の良さそうな食べ物を探した。目についたのはリゾットだ。テイクアウトにして、希美に持って行こう。
「俺、シーフードカレーにしよう」
坂本が「すいません」と言って、井上さんを呼ぶ。シーフードカレーとテイクアウトのリゾットを頼んだ。
「奥さんに持って行くのか?」
坂本に聞かれ、頷いた。
「坂本ごめん。すぐ戻ってくるから、ゆっくり食事していてくれ」
「俺のことは心配するな。適当に過ごして、適当に帰るから」
「でも、坂本の車、僕の家に置いて来ただろう?」
凪には僕のコンパクトカーで来た。
「子供じゃないんだから一人で行ける。だから心配するな」
「すまないな」
リゾットを受け取ると、僕は凪を出て、希美のマンションに向かった。
*
希美の部屋はマンションの五階に入っていた。木更津の映画館に行った帰りに部屋番号は教えてもらっていた。
部屋番号を押して、エントランスのインターホンを鳴らすと、『え、佐藤さん?』という戸惑った希美の声がした。
「体調を崩したって聞いたから、お見舞い持って来た」
インターホンのカメラに映るようにレジ袋を掲げると、『すみません。今開けます』という声が返ってくる。オートロックの自動ドアが開き、中に入る。
右側に郵便ポスト、正面にエレベーターがあり、僕はエレベーターで五階まで上った。
希美の部屋はエレベーターから一番近い所にあった。
部屋のインターホンを押すと、バタバタという足音が聞こえ、マスク姿の希美が玄関ドアから顔を出した。熱がある時のとろんとした瞳で希美が僕を見る。
「わざわざすみません」
「いいんだよ。さっき凪に行って、リゾットテイクアウトしてもらったから。それから、コンビニでスポーツドリンクと、ゼリーを調達して来た」
「あ、お金払います」
「お見舞いだからいらない。受け取ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます。助かりました」
レジ袋を渡そうとした時、希美がふらつく。
「希美!」
倒れそうになる希美を支えると、水色のTシャツ越しに熱い体温が伝わってくる。
一人にしておけないと思った。
「すみません」
希美が不安そうに僕を見る。
「とりあえず、家の中に入ろうか」
「はい」
希美を支えたまま家に上がる。
僕が佐藤海人という偽名を使っていることと、凪では倉田と呼ばないことを約束させた。僕はまだ希美に嘘をつこうとしていた。
「佐藤さん、今日はお連れ様がいるんですね」
接客してくれたのは井上さんだ。
僕と坂本は一階の窓際の席に案内してもらった。
「会社の友人です」
井上さんに向かって言うと、坂本が「坂本です」と名乗り、「倉田さんはいますか?」と図々しく聞いた。
井上さんの表情が僅かに曇る。
「実は今日は倉田さんお休みなんです。体調を崩したみたいで」
一人暮らしの希美が心配になる。
「それは残念。お会いしてみたかったな」
「あの、体調が悪いって、どれくらい?」
僕が聞くと井上さんが「三十八度あるって聞いたけど」と答えた。
三十八度も!
居ても立っても居られない。今すぐにでも希美の所に駆け付けたい。
「倉田、落ち着けよ」
坂本が僕に言ったのを聞き、井上さんが眉を顰める。
「え、倉田?」
「あ、いや、その佐藤、落ち着けよ。倉田さんの名前を口にしたから混ざっちゃって。てへ」
坂本が愛想笑いを浮かべて誤魔化すと、井上さんが、そうですかと頷き、テーブルを離れた。
「あれほど言っただろ」
坂本に文句を言うと、「ごめん、ごめん」と軽い調子で言われる。
「それにしても心配だな。奥さん」
僕はメニューを開き、消化の良さそうな食べ物を探した。目についたのはリゾットだ。テイクアウトにして、希美に持って行こう。
「俺、シーフードカレーにしよう」
坂本が「すいません」と言って、井上さんを呼ぶ。シーフードカレーとテイクアウトのリゾットを頼んだ。
「奥さんに持って行くのか?」
坂本に聞かれ、頷いた。
「坂本ごめん。すぐ戻ってくるから、ゆっくり食事していてくれ」
「俺のことは心配するな。適当に過ごして、適当に帰るから」
「でも、坂本の車、僕の家に置いて来ただろう?」
凪には僕のコンパクトカーで来た。
「子供じゃないんだから一人で行ける。だから心配するな」
「すまないな」
リゾットを受け取ると、僕は凪を出て、希美のマンションに向かった。
*
希美の部屋はマンションの五階に入っていた。木更津の映画館に行った帰りに部屋番号は教えてもらっていた。
部屋番号を押して、エントランスのインターホンを鳴らすと、『え、佐藤さん?』という戸惑った希美の声がした。
「体調を崩したって聞いたから、お見舞い持って来た」
インターホンのカメラに映るようにレジ袋を掲げると、『すみません。今開けます』という声が返ってくる。オートロックの自動ドアが開き、中に入る。
右側に郵便ポスト、正面にエレベーターがあり、僕はエレベーターで五階まで上った。
希美の部屋はエレベーターから一番近い所にあった。
部屋のインターホンを押すと、バタバタという足音が聞こえ、マスク姿の希美が玄関ドアから顔を出した。熱がある時のとろんとした瞳で希美が僕を見る。
「わざわざすみません」
「いいんだよ。さっき凪に行って、リゾットテイクアウトしてもらったから。それから、コンビニでスポーツドリンクと、ゼリーを調達して来た」
「あ、お金払います」
「お見舞いだからいらない。受け取ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます。助かりました」
レジ袋を渡そうとした時、希美がふらつく。
「希美!」
倒れそうになる希美を支えると、水色のTシャツ越しに熱い体温が伝わってくる。
一人にしておけないと思った。
「すみません」
希美が不安そうに僕を見る。
「とりあえず、家の中に入ろうか」
「はい」
希美を支えたまま家に上がる。
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