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ピンチ
《3》
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雨宮課長が眉頭を寄せた難しい顔をし、「確かに、そうだ。彼女の存在を忘れていた」と呟き、こっちを見た。
「中島さん、秘密を守れる?」
「もちろんです」
「実は」と雨宮課長が周囲に誰もいない事を確認してから話し出した。
佐伯リカコの秘密を聞いて、成瀬君を使って映画のフィルムを奪ったのは彼女だと確信する。
「私、佐伯リカコに会ってきます。それで映画のフィルムを取り返します」
「気をつけて。それからこれは、どうしようもなくなったら使って」
雨宮課長が上着の内ポケットからシルバーのUSBメモリを取り出した。
「中身は何ですか?」
「『フラワームーンの願い』の脚本。もし映画のフィルムを望月先生に届けられなかったら、これで交渉を」
なるほど。フィルムがなくてもストーリーがわかるものがあれば、何とかなるかもしれない。課長、そこまで考えてくれていたんだ。
「ありがとうございます。心強いです」
「中島さん、行っておいで」
「はい。行ってきます」
病院からはタクシーで仙台駅に向かい、仙台駅からは12:31発の新幹線に乗った。東京着予定は14:08。
成瀬君が私と同じように新幹線で東京に向かったとしたら、おそらく一時間前の新幹線に乗っているだろう。
東京駅で捕まえる事が出来れば一番いいのだけど。
久保田に連絡して、成瀬君が映画のフィルムを持って行った事と、佐伯リカコが関わっているかもしれない事を伝えた。
久保田は東京駅で成瀬君を捕まえると言っていたけど、見つけられるだろうか。
身長170㎝、中肉中背で紺色のスーツという容姿と服装を伝えたけど、成瀬君はそれほど特徴がない。強いて言えば日曜日にスーツ姿で歩いている事ぐらいだ。
こうなるんだったら、昨日、成瀬君と連絡先を交換しておけば良かった。もう二度と会わないと思ったから、聞かれても連絡先を教えなかった。
あと私が知っているのは佐伯リカコのマネージャーの森さん。頂いた名刺にあった連絡先に何度も電話するが繋がらなかった。電話の電源を切っているようだ。
成瀬君を捕まえられなかったら、もう直接、事務所に行くしかない。佐伯リカコに会えるだろうか。もし会えなかったらと、嫌な想像ばかりが浮かぶ。
雨宮課長と一緒にいた時は何とかなる気がしたけど、一人になった途端、不安になる。課長の存在がどんなに心強いものだったか、今さらわかる。
「中島さん、秘密を守れる?」
「もちろんです」
「実は」と雨宮課長が周囲に誰もいない事を確認してから話し出した。
佐伯リカコの秘密を聞いて、成瀬君を使って映画のフィルムを奪ったのは彼女だと確信する。
「私、佐伯リカコに会ってきます。それで映画のフィルムを取り返します」
「気をつけて。それからこれは、どうしようもなくなったら使って」
雨宮課長が上着の内ポケットからシルバーのUSBメモリを取り出した。
「中身は何ですか?」
「『フラワームーンの願い』の脚本。もし映画のフィルムを望月先生に届けられなかったら、これで交渉を」
なるほど。フィルムがなくてもストーリーがわかるものがあれば、何とかなるかもしれない。課長、そこまで考えてくれていたんだ。
「ありがとうございます。心強いです」
「中島さん、行っておいで」
「はい。行ってきます」
病院からはタクシーで仙台駅に向かい、仙台駅からは12:31発の新幹線に乗った。東京着予定は14:08。
成瀬君が私と同じように新幹線で東京に向かったとしたら、おそらく一時間前の新幹線に乗っているだろう。
東京駅で捕まえる事が出来れば一番いいのだけど。
久保田に連絡して、成瀬君が映画のフィルムを持って行った事と、佐伯リカコが関わっているかもしれない事を伝えた。
久保田は東京駅で成瀬君を捕まえると言っていたけど、見つけられるだろうか。
身長170㎝、中肉中背で紺色のスーツという容姿と服装を伝えたけど、成瀬君はそれほど特徴がない。強いて言えば日曜日にスーツ姿で歩いている事ぐらいだ。
こうなるんだったら、昨日、成瀬君と連絡先を交換しておけば良かった。もう二度と会わないと思ったから、聞かれても連絡先を教えなかった。
あと私が知っているのは佐伯リカコのマネージャーの森さん。頂いた名刺にあった連絡先に何度も電話するが繋がらなかった。電話の電源を切っているようだ。
成瀬君を捕まえられなかったら、もう直接、事務所に行くしかない。佐伯リカコに会えるだろうか。もし会えなかったらと、嫌な想像ばかりが浮かぶ。
雨宮課長と一緒にいた時は何とかなる気がしたけど、一人になった途端、不安になる。課長の存在がどんなに心強いものだったか、今さらわかる。
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