魔法学園のFPSプレイヤー

青空鰹

文字の大きさ
7 / 13

第6話

しおりを挟む
真夜中の帝国内で、息を荒くして走っている男がいた。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・な、何なんだ! アイツらは一体何なんだ!!」

冒険者ギルドの仲間3人と一緒に飲んでいる時に、フードを被った2人がこっちに来て「お前は魔物使いか?」と聞いて来たから俺が「ああ、そうだ」と言ったら、いきなり襲い掛かって来た。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、クソッ! クソッ!?」

仲間は全員アイツらに殺られてしまい、酒場の店主に逃げて兵隊に言うように言われた為、今は帝都の門を目指して走っている。

あそこに行けば、門番達が助けてくれる! 早く、早く行かないと追い付かれる!!

「うわっ!?」

つまづいて転んでしまったので起き上がり顔を上げたら、そこに仲間を殺した2人が立っていた。

「ヒィッ!?」

「見つけましたよ。悪あしき能力を身体に持つ者よ」

「我々の手で君の魂たましいを救済しよう」

「救済? ふざけるな!? 何なんだ、お前達は何が目的で俺を殺そうとするんだ!!」

「何度も言ってるじゃないか我々の目的は君を助けると。そう、君のその呪われた身体に縛り付けられている魂を我々の手で救って上げようとしているのだよ。それなのに何故キミは逃げるのかな?」

「俺の仲間と店の客を殺しておいて救済だと、テメーらはただ人を殺しているだけじゃねえか!!」

「キミの悪しき身体から発する魔力に当てられて操られた為、ああ言う行動をしてしまったんだよ」

「だから私達は彼らの魂を救ってのだよ。きっと我らが神が彼らを許し、そして正しい道に導いて下さる」

コイツら、笑顔で何を言ってるんだよ。完全に頭が狂くるってやがる。

「だからキミの魂も救済しようじゃないか」

血に濡れた剣を見せつけるように構えながら、ゆっくり近づいて来る二人の姿を見て、男は恐怖で顔を歪ゆがませた上に身体を震わせて這いつくばりながら逃げる。

「だ、誰か、誰か助けてくれぇーーーっ!?」

「さぁ、行ゆきなさい。アナタを救って下さる神様の元へ!」

突くように振り下ろされた剣は彼の心臓を貫く。それと同時に彼は苦悶の表情を浮かべながら絶命をしてしまう。

「「あぁ、我らが神よ! 彼かの者を呪われた肉体から魂を救い上げました! どうか、彼の魂をアナタ様の手で救って導いて下さい!!」」

天に向かい祈りを捧げていると、何者かが近づいて来る気配がするので祈る事を止め、立ち上がる。

「ここらへんから声がしたな」

「はい、自分にも聞こえました」

「ヤツらがここらへんにいるはずだ。全員この一帯を捜索するんだ!」

『了解!』

その返事をした後に走り回っているのか、鎧の音が街中に響き渡る。

「・・・・チッ!? 何故だ。何故彼らは我々がやっている事を理解してくれないんだ!!」

「落ち着くんだ。我々の行動を理解して貰う為に明日あそこに行くんじゃないか」

「そうだな。今は身を引こう。あの場所にいる沢山の悪しき者達を救済すれば分かってくれるはずだ」

「あぁ、そうだな」

彼らはそう話し合うと、真夜中の帝都を走り始めるのであった。




「おはようシュンくん。今日も良い天気だね」

「シュンくん、おはようございます」

学園に登校する為に家の玄関を開けたら、リッシュとレイラが立っていた。

「・・・・何でお前らが家の前にいる?」

「せっかくキミを迎えに来たのに、冷たいなぁ~」

「学園の方で会えるだろ。はぁ」

俺はコイツらに気に入られたのか?

「まぁまぁ、良いじゃないか。とにかく学園に行こうよ」

「・・・・分かった。カギを締しめるからチョット待ってくれ」

何を言っても無駄と感じたので、諦めて二人と共に学園へ登校する事にした。

「良しカギを掛けたな。こっちは準備出来た」

「うんうん! それじゃあ出発~!!」

「あ! うん」

「はいはい」

元気歩いて行くリッシュに対して、テンション低い返事をしながらリッシュに付いて行くのであったのだが。

「・・・・ん?」

「シュンくん、キョロキョロしてどうしたの?」

「今、誰かに見られた気がする」

「え!? そうなの?」

「レイラ」

「ハ、ハイッ!?」

辺りを見回すレイラに対して両肩に手を置いてから話始める。

「俺の方で警戒するから、そんなに気にするな」

「・・・・うん」

ん? 何か顔が赤いな。

「大丈夫か、風邪でも引いてるのか?」

そう言いながらレイラの額ひたいに手を当てると、何故か顔をさらに赤くして身体を石のように硬直させた。

「・・・・ヒャウッ!?」

いきなり変な声を出した後に、何故か手を振り払ってくる。

「わ、私は大丈夫ですから! だからシュンくん、リッシュ王子様、学園に行きましょう!!」

早口の言った上、振り返り早足で学園へ向かい始める。

「・・・・俺、嫌われてるのか?」

「違うと思うよ」

「ならレイラは照れてるのか?」

「そうだよ」

「それほど男性と触る機会が無かったのか。今後は気安く触らないように気を付けるか」

「・・・・ハァ~」

「何呆れてるんだ?」

「キミ、よく鈍いと言われない?」

コイツは呆れた顔をしながら何を言ってるんだ?

「言われた事はないが・・・・どうした?」

「お二人共、早く来ないと遅刻してしまいますよ!」

「はぁ~い!」

「あぁ、分かった待ってくれ!」

先を歩いているレイラに駆け足で追い付いた時に、気配が消えている事に気が付いた。

一体何だったんだ? バッツが来たのか、はたまた昨日の決闘で俺に興味を持ったヤツが来たのか・・・・まぁ、どちらにせよ消えたんだから良いか。

警戒するのを止めて、レイラ達と話ながら学園に向かって歩いて行くと、校門の方から色んな人の掛け声が聞こえてくる。

「何だ? また一昨日みたいな騒ぎが起きてるのか?」

「違うよ。サークル勧誘をしているんだよ」

「え、勧誘!?」

勧誘するの早いな。普通はどんな物があるのかレクリエーション、とかで説明してからじゃないか?

「シュンくんは何処かのサークルに入るんですか?」

「俺は入らないつもりでいる」

「え! どうして入らないんですか?」

「アリスが俺のお金を使ってお酒を買い込んで飲んだせいで、金が無いから稼がないといけない。だからサークルに入って活動している暇がない」

その話を聞いた二人は苦笑いをしている。

「そのアリスさんは自分勝手な所があるんですね」

「本当に自分勝手な人だから困る。全く、この大陸で有名な魔導師だと思えない」

「有名な魔導師、アリス?」

リッシュはそう言いながら首を傾かしげると、何かに気付いたのか目を見開いて俺を見てくる。

「シュンくん! もしかして【セレス・ヴァレンタイン】理事長の姉の【アリス・ヴァレンタイン】魔導師様の事であってるよね?」

「リッシュの言う通り合ってるぞ」

「エェッ!?」

レイラもかなり驚いているのか口に手を当てて、目を見開いて俺を見てくる。

「アリスに様を付けるって、それほど有名なのか?」

「有名ですよ!!」

声を張り上げながら顔を近づけてくるレイラに対して、少し驚いたので体を仰け反りながら一歩下がってしまう。

「私達が使っている魔法や魔法陣のほとんどが、アリス様が作られた物を使用しています! それに魔法の理論の方も根本的な部分から変えた人なのですよ」

あの大酒飲みがそんな事をしてたのか。

「あの方と会う事が出来るなんて、シュンくんが羨ましいです」

「・・・・そ、そうか」

レイラの思い描いている人物像を壊さない為にも、アリスと会わせないようにした方が良さそうだ。

「・・・・ところで二人共」

「ん?」

「はい」

「僕達、校内に入るまでサークルに勧誘されなかったね」

「「あ!?」」

そう言えばそうだ。校内に入るまでに勧誘の声がなかったな。

「・・・・もしかして、俺達に声掛けづらかったのか?」

「そうだと思うよ」

まぁ、断る手間が省けたから、ある意味ありがたい。

「ここでお別れだな。じゃあな」

「うん、また後でね!?」

「え・・・・うん、またね」

二人と別れて、自分のクラスに向かうのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...